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オバマ大統領が作った医療制度改革法 the Affordable Care Act(ACA)に対する
最高裁の判決と次の大統領選挙の行方が注視される中、

Health Affairs誌に発表された
Urban Institute研究者らの大規模な調査によって、

2000年から2010年の10年間に
メディケイドとs-CHIPの拡充により子どもの医療アクセスは改善されてきたものの

ACAの主たる対象である19歳から64歳の成人では
歯科を含め、医療を受けることができない米国人が激増している実態が明らかに。

費用を理由に必要な治療を受けていない65歳未満の米国人は
2000年には8人に1人だったが、2010年には5人に1人に。

ACAの下では2014年からスタートして医療保険が3000万人に拡大されるが

医療費の自己負担分が上がっているために
個人で医療保険に加盟している人の中にも受診を控える人が増えてきていること、

メディケアの患者を診る医師が減っていること
歯科受診へのメディケア給付の判断が州に任されていること、などを考えると、

同法によってアクセス問題がすべて解決はできないだろうが、
しかし基本的には保険のある人の方が無保険の人よりもアクセスは良く、
同法が撤回されたり縮小されることになれば、
すべての成人において事態はさらに悪化する、と結論

元論文はこちら ↓
http://content.healthaffairs.org/content/31/5/899.abstract


また、別の分析では、
米国の4人家族世帯の医療費は2002年以降、倍増しているとのデータもあり、

地域によっては医療費よりも医師不足が要因となっている場合も。

また手早く稼ぎを増やしたい医師らが
慢性病患者の定期診断など、回転の良い患者の予約をなるべく入れたがっている傾向もあり、

貧困で無保険の成人患者は医療費の支払いの問題だけでなく
診てくれる医師を探すのにも苦労する事態となっている。

無保険の成人のうち費用を理由にすぐに受診できなかった人は2000年には25%だったが、
2010年には4100万人のうち3分の1に増加。

治療を必要としているのに受けられていない人も2000年の33%から
2010年には約半数に増加した。

地域の医療センターにこの10年間、連邦政府の予算が注がれているにもかかわらず、
家庭医や地域の医療センターといった「かかりつけの医療機関」がある無保険者は
2010年には38%で、2000年の44%を下回った。

メディケイドなど、公的な医療保険プログラムに登録している成人でも
必要があるのに受診していないと答えた人が2010年に26%もおり、
2000年の20%から増加。

費用以外の理由で受診を先延ばしにした経験がある人も2010年には19%で
2000年の14%を上回った。

歯科受診の必要がありながら受診していない人は2010年には4人に1人。
2000年には15%だった。

専門家は
メディケイドの患者を診る医療提供者が少なすぎること、
歯科医療をメディケアの対象外とする州が増えてきていることなどを
その要因として挙げる。

米国の医療費の総額はこの10年で倍増しているというのに
多くの米国人は治療を受けられないでいるのが実態、と専門家。

Health Care Increasingly Out of Reach For Millions Of Americans
Kaiser Health News, May 7 2012


【関連エントリー】
「なぜ大国アメリカで?」と医師が憤る無保険者の実態(2008/11/11)

上記の記事を別記事のショッキングな写真と一緒に再掲したものが以下。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54711663.html

子どもたちに経済不況の影響、深刻(米国)(2009/4/23)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)
2012.05.31 / Top↑
来年、自殺幇助合法化に向けた住民投票を実現しようとの
キャンペーンが着々と進むマサチューセッツ州で、
それに抗う運動をしている団体のサイトに、

住民投票によって尊厳死法を作ったワシントン州に住む
高齢者施設の経営者がBoston Globe紙に投稿した書簡が転載されている。

全文を以下に。


編集長さま

妻と私は自殺幇助が合法となったワシントン州で高齢者介護施設を運営しており、読者のみなさんに住民投票では反対されるようお薦めするべくお便りしております。

ワシントン州の尊厳死法は08年11月の住民投票で決まりました。その投票の4日後、私たちの施設のクライアントの一人の、すでに成人した子どもさんから「あの薬」を手に入れたいとの相談がありました。父親を殺すために手に入れたいというのです。その方の父上ご自身が死にたいと望まれていたという話ではありません。

尊厳死法ができて以降、医療職の中には最初から治療など考えず、さっさとモルヒネを持ちだして緩和ケアを始める方が目につくようになっています。時には、クライエント本人にも代理人である家族にも言わずに、独断でそういうことをやられる医療職もあります。

またQOLが低すぎるから高齢者は治療しないと一律に切り捨ててしまう医療職も見てきました。かつては、たいていの医療職が高齢者のケアに喜びを感じ、クライエントもまたそれに喜びと敬意で応えていたものでしたのに。

いつの日か、私たちも老います。その時に、私自身は治療しケアしてほしいし、自分の選択を尊重してもらいたいと思います。このような事態の推移に私は心を痛めており、そちらの皆さんが自殺幇助の合法化を止められるものなら、と願っております。

Juan Carlos Benedetto


Benedetto Letter to Boston Glove
Mass. Against Assisted Suicide, May 26, 2012
2012.05.31 / Top↑
WHOの試算によると
闇での腎臓売買は年間10000件にのぼり、
1時間に1個が売買されている計算に。

世界中で糖尿病、高血圧、心臓病が増加していることなどを背景に、
移植用腎臓の需要は常に供給数を上回っていることから
中国、インド、パキスタンへ行って腎臓を買う患者が増えており、
患者が支払うのは最高20万ドルだけれど、
弱者である売る側が手にするのはせいぜい5000ドルだとか。

先週イスラエルの警察が闇売買で10人を逮捕した事件では
国際的な臓器売買組織の存在と、それに加担する医師の存在が明らかになったが
同様の組織はインドとパキスタンにも。

Guardianは
「腎臓を売ってiPadを手に入れよう」というキャッチで
腎臓一つで2500ドル、手術は10日以内にできます、と
商売している中国のブローカーと接触したという。

WHOの関係者によると、
2006年から07年にかけて移植ツーリズムはいったん下火になったが、
受容の増加と利益の大きさから、またぞろ違法な臓器売買が増えているのでは、と。

国によって警察の取り締まりや法規制の緩さも影響している。

世界中の違法な臓器売買の75%が腎臓。

中国では営利目的の臓器移植は法で禁じられてやれないはずなのだけれど、
ここ2,3年の間にまた増えてきており、中東、アジア、時にヨーロッパからも
10万から20万ドルを払って患者が移植にやってくる。

中国陸軍病院の中に移植を手掛けているものがあると見られている。

(この情報は以下の新疆プロトコルのエントリー情報に通じている ↓
政治犯から生きたまま臓器を摘出する「新疆プロトコル」(2011/12/13))

中国政府はこうした移植を違法とし
死刑囚からの臓器摘出も2017年までに取りやめにすると約束したばかり。

移植ツーリズムのメッカの一つ、フィリピンでも
イスタンブール宣言以降に法律改正が行われたとはいえ、
売買は今なお続いているばかりか増加すらしている。

Leicester大学病院 NHS トラストのJim Feehally腎臓病科教授は
売買で利益を得ているのはカネ持ちのレシピエントと医師、病院経営者、それに
仲介者やブローカーで、貧しい弱者が搾取されている、
この状況は道徳的に問題である、と。

WHOの関係者は各国に向け、
死者、生者からの臓器提供件数を増やし、
糖尿病など予防のための健康的なライフスタイルを推進することを呼び掛けている。

Illegal kidney trade booms as new organ is ‘sold every hour’(2012/5/27)


【関連エントリー】
バイオ企業と結託した葬儀屋が遺体から組織を採り放題(2009/7/30)
被災地に“救助”ではなく“臓器狩り”に人が駆けつける“腎臓バザール”パキスタン(2009/7/31)
医療のネオリベ“医療ツーリズム”(2009/8/3)

イスラエルの貧困層から米国の富裕層へ、腎臓を闇売買(2011/10/29)
ウクライナで広がる闇の臓器売買(2011/10/29)
エジプトでアフリカ難民から生きたまま臓器を採って闇売買(2011/11/7)

【中国の死刑囚からの摘出問題】
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
2012.05.31 / Top↑