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重症児の母親が医療系サイトに5年前の“アシュリー療法”論争について記事を投稿して、自分自身はやらないが利益があるのだからやろうと決断する親は責めるべきではない、と。:いかにも今さらだし、いかにも唐突。
http://healthmad.com/children/child-sterilization-and-growth-attenuation-human-rights-violation/

カナダの無益な治療訴訟 Rasouli事件の続報。Betancourt訴訟が避けた「決めるのは誰か」の明確な指針をカナダ最高裁は出すのでは、とGlobe & Mail。判決は12月の予定。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/05/rasouli-going-where-betancourt-refused.html
http://www.theglobeandmail.com/news/opinions/editorials/the-supreme-court-is-right-to-hear-life-support-case/article2441604/

テキサスの無益な治療法の利用実態に関しては実はデーターがないんだとか。そこでテキサスの病院協会が各病院の倫理委を対象に調査を始めた。
http://www.tha.org/HealthCareProviders/AboutTHA/Publications/HealthCareAdvocate/MayCEC0BC/AdvanceDirectivesSu0992.asp

英国でまた著名作家が自殺幇助合法化支持を表明。PD Jamesさん。
http://www.telegraph.co.uk/culture/9291945/PD-James-I-would-help-a-loved-one-die.html

インドの著名映画監督Srijitの最新作は“ヘムロック・ソサエティ”。ヘムロック・ソサエティとは、現在のC&Cの前身。
http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2012-05-24/news-interviews/31839928_1_suicide-hemlock-society-new-film

米国で低所得の高齢者と障害者をナーシング・ホームから地域に戻す取り組みが、予算をつけたにもかかわらず目的達成に至っていない。
http://www.mcclatchydc.com/2012/05/24/150049/feds-struggle-with-getting-elderly.html

米国で遺伝子組み換え技術を使った食品の表示の必要性を巡るバトルが激化している。:ワクチン忌避の構造と同じ気がする。共通点は確かに多い。科学や技術への不信というより、グローバル経済の利権構造への不信と捉えないと問題を見誤るという気がする。
http://www.nytimes.com/2012/05/25/science/dispute-over-labeling-of-genetically-modified-food.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20120525

ビル・ゲイツが「動物を食用にするのは、高価だし健康にも悪いし残酷だし地球環境にも良くないので、科学とイノべーションで植物性の代用物を作ろう」と、ゲイツ財団が進めるGM農業改革に沿って提言。
http://www.ecorazzi.com/2012/05/22/bill-gates-on-why-eating-plants-is-good-for-the-world/

東南アジアとアフリカのサブ・サハラ地域に出回っているマラリアの治療薬の42%がニセ薬だったり品質の悪いものだったり、とのデータ。:途上国への医療支援、特に製薬会社の利益に結びつく領域がゼニになる、というトレンドの中で、実際に何が起こっているかが国際社会から見えにくい途上国でこういうことが起こるのはある意味で必然なんでは? 途上国への医療支援を訴えてはビッグファーマの株主として利益を得ている慈善資本主義の帝王たちが、その現実を知らないわけではないだろうに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/245714.php

Savulescuが今度は、「人類の進化に伴い離婚率の上昇は避けられないので、そこは愛情ピルで問題解決を図り、みんなが結婚して子どもを作って子育てにいそしむ社会を維持しよう」と。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10075

自己意識と共感に関与する脳細胞がサルで分かったんだそうな。:こういう研究はさきざき、道徳ピルとか愛情ピルと繋がって行くんだろうし。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/245681.php

スマート・ドラッグは依存性があり、社会から使用に向けたプレッシャーもかかるので非倫理的だとドイツの生命倫理学者。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10084

ペンシルベニア大学生命倫理センターのArt Caplanが7月1日付けでNY大学の医療倫理のディレクターに。
http://www.newsworks.org/index.php/health-science/item/38545-art-caplan-reflects-on-a-career-in-bioethics-while-leaving-for-nyu&Itemid=3

英国の若い女性10人に4人に公共の場でセクシャル・ハラスメントを受けた経験。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2012/may/25/four-10-women-sexually-harassed?CMP=EMCNEWEML1355

南米各国のソーシャル・インクルージョンを測る指標がAmerican Quarterlyから発表され、Government Responsivenessの点で米国はグァテマラに匹敵。
http://www.americasquarterly.org/images/images_spring2012-charticle/Spring_2012_Charticle.pdf

中所得国の認知症の患者数は、これまで思われていた2倍で、国所得国と発症率は変わらないことが明らかに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/245760.php
2012.05.27 / Top↑
先週、この4月からミュウを担当してくださっている作業療法士さんから連絡があった。

年頃の女性なので、個別OTの時間に
化粧水をつけたり、ハンドクリームを塗って手をマッサージしたり、というのを
やってみたいがどうだろうか、

合う・合わないがあるものなので、もしもやってよければ、
そちらで用意していただけないか、

ハンドクリームはちょっと香りのついたものにしてもらえると
マッサージしながら、よりリラックス効果があるのではなかろうか、
ということだった。

ミュウは20歳の誕生日に、母の友人から
ファンデーションとピンクの口紅をプレゼントしてもらったのだけれど、
お出かけの際にさっそく使ってみたところ、もともと肌が弱いところに持ってきて
じゃぶじゃぶ洗顔できない彼女は拭いて落とすことしかできず、
ファンデーションにひどくかぶれてしまった。

その体験に親の方が臆してしまって、
そういえば、いつのまにか、お風呂上りにもヒルドイド保湿軟膏……。
確かに色気もへったくれもないよなぁ。

若いOTさんの提案が嬉しくて、
一応、肌が弱いことをお伝えすると共に
さっそくこの週末に本人と買いに行きます! とお返事した。

化粧水とハンドクリームなら近所の薬局でも用は済むのだけれど、そこは、やっぱり
ミュウにとっても楽しい「お化粧選び」のショッピングに盛り上げてやりたい。

そこで今日のお出かけは、日頃のTシャツ姿をやめて、
一昨年の夏にブティックで買った黄色のチュニックと、その下に
買ってまだ一度も袖を通していない大人っぽい白シャツで、バシッと決めた。

元の職員さんが成人のお祝いに手作りしてくれた
きれいな赤いネックレスもかけて。

横になっていることが多いため、常にてんで好き勝手な方角にバクハツしている髪の毛も、
丁寧に髪の付け根をまんべんなく湿らせて、車では帽子をかぶっておいたら
ショッピング・モールに着くころには、なんとか平和な頭になった。

「ミュウの化粧水を買うんだよ」と昨夜から何度も言われているから
いつもは買い物嫌いのミュウもまんざらでもない様子だった。

お店に入って、応対に出てきてくれた店員さんに
「この人の化粧水なんですけど……」と言って振りむいたら、
車いすのテーブルの上で自分の財布をしっかり握ったミュウは、
そう何度も見せたことのない緊張した顔になっていた。

そうだよね。
自分で自分の化粧品を買う、あんたの初体験なんだものね。

ありがたいことに超敏感肌用の化粧水というのがちゃんとあった。
ちょっとボトルが大きいのが気になったけど、ミュウがそれにするというので購入。

ハンドクリームは、何種類か出してもらった中に
バラの香りがするというヤツがあり(キャップもバラの形!)、
ミュウが気に入ったので、それに決めて、

ついでにボディ・ローションやリップクリームも物色。

そういうお店で(といってもDHCなんだけど)
そういうオネエサンに、そういうものをいくつも目の前に並べられて
手につけてみたり、匂いを嗅いでみたり、という体験は新鮮だった様子。

その後、そういうものを入れる小さめのバッグを求めてモール中をウロウロする。

なかなかピンと来るものがなく、ミュウも首を振り続けたのだけれど、
最後に入ったお店でキプリングのバッグを見ると、
即座に目を輝かせて大口を開けた。

やっぱり親子かしらね。キプリングは母が大好きなバッグ。
お母さんとお揃いになるね。しかも、ここ40%オフじゃん!

OTの時間の化粧品を入れるバッグにするにゃ、ちと高いけど、
な~に、あんたが気に入ったなら買ってしまいんさい。
今日は、女のオトナ買いよ。

レジに向かう途中で財布を握らせると、
白手袋をしたレジのお姉さんに、ミュウがまたちょっと緊張する。

「おかあさんといっしょ」DVDを買うのに何度もこのシチュエーションは経験しているのに、
そういうのとは、やっぱり勝手が違うらしい。
大丈夫よ。お母さんが一緒にやってあげるから。

無事に支払いを済ませ、ミュウは車いすのテーブルの上に
DHCのビニール袋とExellの紙袋とを大事に抱えて車に戻った。


夕方お風呂から上がって、ためしに化粧水をコットンでつけてみる。
さすが超敏感肌用だけあって、ぜんぜん大丈夫だった。

やっぱヒルドイド軟膏のべたべた感より、このしっとり感はいいね。
ボトルもちょっとオシャレだしね。

買ったばかりのバッグを開くと、
ミュウは気まじめな顔で化粧水のボトルに手を伸ばした。

化粧水と、バラの香りのハンドクリームと、
口紅みたいなリップクリーム、
コットンを入れた小さなポーチを、
一つずつ、自分で入れる。

それから、どこかの景品でもらってきたピンクの手鏡と
どこかのホテルで母がもらってきたレディスセットの中から、髪止めと、
パステルカラーのコットンボールやら、あぶら取り紙やらを、
ガサガサと家中から探してきては、バッグのポケットに詰め込んだ。

最後に、キプリングのゴリラの隣に、
裏にミュウと名前を掘った革製ウサギのマスコットを父がぶら下げて、
(これは養護学校時代に使っていた通学カバンから外してきた)
今日のイベントは終了。

そんなオトナの女の一日に疲れたウチの愛しい娘は、
さっき「世界で一番受けたい授業」の途中でいつの間にか眠りこけてしまい
父親に「あんた、もうちゃんと寝んさい」と優しい声をかけられて、
眠ったままテレ笑いを浮かべ「ふわぁ」と答えておりました。
2012.05.27 / Top↑
現代思想6月号 尊厳死は誰のものか 終末期医療のリアル
5月28日発売


特集の内容は以下。

特集=尊厳死は誰のものか 終末期医療のリアル
【討議 Ⅰ】
生きのびるための、女子会 / 川口有美子+大野更紗
【当事者】
生きよ。生きよ。 在宅人工呼吸療法の黎明期を生きた男の遺言 / 長岡紘司 [解題=川口有美子]
死に向けた 「自己決定権」 の異様さにおののくこと
 尊厳ある生をすべての人に保障する社会を求めて / 山本眞理
【エッセイ】
看取りの医療とは・・・・・・ / 町亞聖
尊厳死法の危険な可能性 / 山田真
【討議 Ⅱ】
尊厳死法制化をめぐる係争点
 日本尊厳死協会×全国遷延性意識障害者・家族の会 / 井形昭弘+桑山雄次
【臨床から】
尊厳死論を超える 緩和ケア、難病ケアの視座 / 中島孝
「在宅で看取る」 とはどういうことか 訪問診療の現場から / 佐々木淳
福島の医療現場から見えてきたもの / 小鷹昌明
【討議 Ⅲ】
尊厳死法における生権力の作動 / 小松美彦+市野川容孝
【死/終末期をめぐる政治経済】
死に場所を探して / 小泉義之
胃ろうの一〇年 ガイドライン体制のもとグレーゾーンで処理する尊厳死システム / 天田城介
「ポスト・ヒポクラテス医療」 が向かう先
 カトリーナ “安楽死” 事件・“死の自己決定権”・“無益な治療” 論に “時代の力動” を探る / 児玉真美
【生/死の 「選択」】
犠牲を期待される者 「死を掛け金に求められる承認」 という隘路 / 大谷いづみ
生と死の 〈情念的語り〉 についての覚書 / 荒井裕樹
意識障害における尊厳死で何が問われるか その予備的議論 / 戸田聡一郎
【医療×司法】
灰色の領域で太るもの 終末期医療と刑事介入の一〇年 / 岡本とをら



どう考えても、執筆者のうちで私だけが場違いな感じですが、

このブログで07年から追いかけてきた内容のうち、
「アシュリー事件 メディカル・コントロールと新・優生思想」にはあまり盛り込めなかった、
ブログの書庫でいうと「尊厳死」「無益な治療」のあたりのことを
カトリーナでの安楽死事件を中心に書かせてもらいました。

よかったら読んでいただけると嬉しいです。


【関連エントリー】
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 1/5: 概要(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 2/5: Day 1 とDay 2(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 3/5 : Day 3(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 4/5 : Day 4(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 5/5 : その後・考察(2010/10/25)
2012.05.27 / Top↑
南アフリカで自殺幇助合法化に向けて活動家が運動を始める。:誰かと思ったら、Sean Davisonと言えば、06年にNZ在住の母親の自殺を幇助したとして、NZで有罪判決を受け(といっても自宅謹慎程度だった)、この前、自宅謹慎がとけたばかりの科学者さん。帰国するなり、合法化ロビーとして活動を始めた、ということですね。組織としては、Ethics South Africa と Dignity South Africa.
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10071#comments

介護者アセスメントが法制化されている英国で、でも自閉症児・者のケアラーのニーズには自治体がきちんとアセスメント対応していない、と抗議。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/may/21/councils-failing-carers-autism-survey?newsfeed=true

アイルランドのヤング・ケアラー、28000人。女児だけでなく、6歳からMSの母親のケアをしている10歳男児も。
http://www.independent.ie/lifestyle/young-carers-the-stats-3113163.html

ProPublicaがFacebookで医療過誤の被害者フォーラムを立ち上げ。
http://www.propublica.org/article/introducing-the-propublica-patient-harm-community-on-facebook

カナダで、世界初の幹細胞薬を認可。Osiris Therapeutics Inc. から。骨髄移植後に起こるGvHDという症状の治療薬として。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/245618.php

NYTのエディトリアルも、アルツハイマー病のリスクが高い人が飲むと、症状が出る前に予防になる薬の治験を取り上げている。
A New Attack on Alzheimer’s:A bold research program will test whether a drug can prevent the onset of Alzheimer’s disease well before any symptoms appear.

女性の更年期障害の治療法として大人気だったホルモン補充療法に発がん性が指摘されたのが2002年。その後、療法を受ける女性が激減し、乳がんの件数も減ったが、10年の節目に改めて同療法の効果とリスクが検証され、比較的若い層では利益がリスクを上回る、との結論。
http://www.washingtonpost.com/blogs/the-checkup/post/hormone-replacement-therapy-10-years-after-claims-of-a-cancer-link/2012/05/21/gIQAx8RMgU_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

前立腺がんの血液検査は利益よりもリスクの方が大きいと、米国政府のタスクフォースが指摘。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/government-task-force-discourages-routine-testing-for-prostate-cancer/2012/05/21/gIQAhFMFgU_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

英国NHSでIVF給付年齢を42歳まで引きあげ。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/may/22/ivf-nhs-age-42-fertility?CMP=EMCNEWEML1355

生殖ツーリズムのメッカ、インドで、2人の我が子を養うために米国人女性の代理母となったPremila Vaghelaさん(30)が定期健診に訪れた際にけいれんを起こして倒れ、緊急帝王切開が行われるも、死亡。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10062#comments

女性が襲われる事件が増えているインドで、富裕層の女性が銃を携帯し始めている。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/may/21/indian-women-take-up-firearms?CMP=EMCNEWEML13
2012.05.27 / Top↑
最終第8章の内容の大まかのところは、
以下のエントリーにある通り。

Ouellette「生命倫理と障害」概要(2011/8/17)

「うわわわっ! 」というほど驚いたのは、

あんなに「女性器切除と同じくらいの慎重なセーフガードを」と
09年の論文では徹底的に批判していたウ―レットが、なんとなんと、

アシュリー事件でのシアトルこども病院が組織したWGの検討と提言を
障害に配慮した生命倫理の手続きのモデルにしろ、なんて
言いだしちゃっていること。

どどどーしたの?

どうやら、
WGに障害学の学者が入っていて、
セーフガードにもインフォームドコンセントやら手続きがちゃんと盛り込まれていて、
その歩み寄りと丁寧な検討と障害学からの提言を盛り込んだ姿勢がよい、ということみたい。

そう言えばBill Peaceも、
WGの論文が出た時にブログでそんなことを書いていた。

私は、Peaceはへースティング・センターに弱いからなぁ、と思っていたんだけど、
Ouelletteよ、おまえもか……と、がっくり。

私の独断的な推理では、
やっぱり生命倫理学そのものが、基本的にプロセス重視だから、というのが1点。

もう1点は、アシュリー事件はやっぱり複雑すぎる。コワすぎる。

それから、やっぱりOuelletteさんは、ナイーブ過ぎる。

その証拠に、
3月に出てきた“アシュリー療法”の新規12ケースのうち、
WG論文でウ―レットが誉めているセーフガードが採用されたケースがどれだけあったと?

多くは担当医の独断で決まっていたようだったけど?????


【「生命倫理と障害」】

Alicia Ouelletteの新刊「生命倫理と障害:障害者に配慮ある生命倫理を目指して」(2011/6/22)
Ouellette「生命倫理と障害」概要(2011/8/17)

エリザベス・ブーヴィア事件: Quellette「生命倫理と障害」から(2011/8/9)

幼児期
Sidney Miller事件: 障害新生児の救命と親の選択権(2011/8/16)
Ouelletteの「生命倫理と障害」:G事件と“無益な治療”論について(2011/12/17)ここから3本。

児童期
Ouellette「生命倫理と障害」:人工内耳と“Ashley療法”について(2011/12/19)ここから2本。

生殖期
Ouellette「生命倫理と障害」第5章:「アリソン・ラッパーの像」(2012/1/17)ここから3本。

成年期
Ouellette「生命倫理と障害」第6章 成年期: Maryのケース(2012/3/31)
Ouellette「生命倫理と障害」第6章 成年期:Larry McAfeeのケース(2012/3/31)
Ouellette「生命倫理と障害」第6章: Scot Matthewsのケース(2012/3/31)

終末期
Ouellette「生命倫理と障害」第7章: 人生の終わり(2012/5/18)


【今年3月に公になった“アシュリー療法”実施事例について】
論争から5年、アシュリー父ついに動く(2012/3/16)
「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子(2012/3/16)
広がる“Ashley療法”、続報をとりあえずピックアップ(2010/3/17)
“Ashley療法” Tomのケース(2012/3/28)
“Ashley療法”Ericaのケース(2012/3/28)
成長抑制をやったEricaの母親の意識について(2012/3/30)
2012.05.27 / Top↑
Alicia Ouellette“Bioethics and Disability”最終の2章を読んだ。
読み始めたのが去年の夏だから、ほぼ1年かけて読んだことになる。
ほとんど内容を覚えていないはずだわ。エントリーにしておいて、よかった。
(これまでのエントリーは、次のエントリーの末尾にリンクします)

以下、書いておかないと週明けには忘れていそうなので
ごくごく簡単にメモ。

第7章は「人生の終わり」

障害者の終末期医療を巡る判断の倫理問題がテーマ。

取り上げられているのは
当ブログでも何度か触れているTerri Shiavo事件と、Sheila Pouliot事件。

後者はあまり広く議論になったものではなく、
恐らく、Ouellette自身が検察サイドで関わり、
この本の冒頭、障害者と生命倫理の溝に気付いたきっかけとなった事件として
触れられているものではないかと思うけど、そう断ってあるわけではない。

前者は健常者の女性が心臓発作から植物状態と診断され、
生命維持中止を求める夫と、継続を求める両親が対立して、訴訟へ。
政治が介入する騒ぎにまで論争が発展した有名なケース。

事前指示書のようなものはなく、
元気な頃のエピソードからの本人意思の確認が大きな論点となった。

後者は、生まれて以来一度も自己決定能力を有したことのない重症障害のある女性が
州立のグループホームで暮らしていた42歳の時に重い肺炎となり、
NYの州法が硬直的だったために、悲惨な延命治療で本人が苦しみ続け非業の死となった。

この2つのケースを通じてウ―レットが解説するのは
大きく言えば、障害者運動は障害のある生を価値なきものとみなすなとの観点から
原理的にone-fit-for-all な法的措置を求めるが、それは後者のケースように
本人を苦しめるだけなのだ、という点。

それから
生命倫理の側では、既にクインラン事件、クルーザン事件から
いくつかのスタンダードができていて(両事件についてはエントリーあります)、

・自己決定能力のある患者には治療を拒否する権利がある。
・自己決定能力のない患者には治療を拒否してもらう権利がある。
・終末期の意志決定は裁判所ではなく医療現場で行う。
・決定能力のない患者の医療決定では近親者に代理決定者として行動する権利がある。
・終末期の意志決定において代理人は患者の望みの根拠に事前指示書をおいてよい。
・医療的に供給される栄養と水分は治療である。
(障害者運動は基本的なケアと捉えている)

その他、生命倫理学者らの議論を紹介した後に、
たぶん自身が関わったからだろうと思うのだけれど、
さすが法学者の本領発揮の詳細な法学的分析が行われています。
私には手に余るので、ここはパス。

この章を読んで、一番気になったのは
この人が生命倫理学の政治性みたいなものに気付いていないらしいこと。

米国に「御用学者」がいないはずもないんだけれど。

本当に生命倫理学者は全員が
患者の利益と自己決定権を守るべく公正な分配のために尽くしていると信じてるみたい。
「ピーター・シンガー問題」とウ―レットが称する辺りを別にすれば。

ちょっと、その世界観はナイーブ過ぎないかなぁ……? 
2012.05.27 / Top↑
英国で画期的な障害児医療と教育と社会ケアの統合支援策。特別教育予算枠で親が地元自治体のサービスと専門家の支援とを選べるように。
http://www.guardian.co.uk/education/2012/may/15/parents-special-educational-needs-budgets?CMP=EMCNEWEML1355

日本語。「性別の選択」と「死ぬ権利」を合法化、アルゼンチン:タイトルが紛らわしいけど、前者は異性装者やトランスジェンダーの人が公式な性別を選べるようになった、という話(生殖補助かと思った)。後者も英米で進むPAS合法化の話ではなく、どちらかというと日本で進んでいる尊厳死法案に近い。それだけに、それで植物状態の人が家族同意で死なされることになるらしいことは重要ポイントか。安楽死は違法。
http://www.afpbb.com/article/politics/2877851/8942052?ctm_campaign=txt_topics
http://blog.goo.ne.jp/rose429/e/0414b9f1cb778791d14957a42daa7413

CA州で84歳の女性の自殺幇助で夫を逮捕。家に帰ったら妻が椅子に座ってビニール袋を顔にかぶっていた、机に遺書があって苦痛耐え難く死ぬことにした、臓器はなるべく早く取れるだけ取ってほしい、と書かれていたので、助けずに見ていた、と。:こういうケースで、夫の証言以外に目撃者がいない時に、どうやって殺人と自殺幇助の区別がつくんだろう、といつも思う。
http://myhealthbowl.com/latest-health-news/an-marcos-calif-88-year-old-arrested-on-suspicion-of-assisted-suicide-of-his-wife/

09年のFEN事件のミネソタ州でおきた事件部分について、金曜日にFENの4名を起訴。:GA州は不起訴になっています。アリゾナもあったんだけど、関連ニュースが多すぎて、すぐには思い出せません。有罪はまだ出ていないような気が……。
http://kaaltv.com/article/stories/S2618484.shtml?cat=10728
http://kennesaw.patch.com/articles/grand-jury-indicts-assisted-suicide-group
http://rosemount.patch.com/articles/final-exit-organization-insists-actions-were-legal

バチカン新聞に、「障害胎児の安楽死と中絶の論理はナチの優生思想と同じ」
http://www.washingtonpost.com/national/on-faith/vatican-newspaper-says-nazi-eugenics-still-alive/2012/05/04/gIQATkQz1T_story.html

重症心身障害者:ショートステイ、受け入れ施設不足 看護師足りず、体介護報酬も要因/
岐阜
http://mainichi.jp/area/gifu/news/20120513ddlk21100002000c.html

英国の社会サービス予算カットで、地方自治体から無料の在宅介護サービスを受けられる人は11%も減。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/may/16/free-home-care-elderly-people?CMP=EMCNEWEML1355

米国の認知症患者ではナーシング・ホームよりも自宅で亡くなる人の方が多い。死因は心臓病、がん、肺炎など。認知症の人は進行した人も含めて、自宅と病院とナーシング・ホームを行き来している。入院後にNHにいったんは入るが、4分の1は再入院となり、残りの多くは自宅に戻っている。認知症患者の多くは地域で家族の介護を受けている。:どう解釈するか、難しそうなデータ。なにしろ、次のような情報も。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/245396.php

米国の高齢者に飢餓の危機。米国の高齢者の14.85%、7人に1人、総勢八百三十万人に飢餓の危機。:日本にもないはずがないですね、この危機は。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/245409.php

米国8州で、失業保険の給付縮小へ。
http://www.washingtonpost.com/business/economy/extended-jobless-benefits-cut-in-eight-states/2012/05/10/gIQAX8X4GU_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

またスタチンの心臓病予防効果で何百万人が助かる可能性。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/may/17/statins-benefit-millions-heart-health?CMP=EMCNEWEML1355

アルツハイマー病リスクのある人に発症前から発症を止める治療薬の治験が始まった。
http://www.nytimes.com/2012/05/16/health/research/prevention-is-goal-of-alzheimers-drug-trial.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20120516

ビル・ゲイツがブルガリアの大統領と会談。:この人が既に世界中どこへ行っても一国家元首以上の「要人」になっていることの危うさって、どうして言われないのだろう?
http://www.focus-fen.net/index.php?id=n278093

スーダンの紛争で、南スーダンに飢餓。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2012/may/17/south-sudan-border-conflict-sudan?CMP=EMCNEWEML1355
2012.05.27 / Top↑
WA州保健省からの報告で、
2011年に尊厳死法を利用して死んだ人は70人。

ちなみに最初の年09年は36人で、10年が51人。
着実に増加している。

103人が致死薬の処方を希望し、
80人の医師が書いた。

その処方薬で死んだ71人(1人増加したのは?)のほかに、
薬は受け取ったものの自然死だった人が19人。
薬を飲んだかどうか情報がない人が5人。

死にたいと願った理由は、
自立(autonomy自己決定能力?)、尊厳、人生を楽しむ活動に参加する能力を
喪失することへの不安。

90%が白人で、
75%が何らかの大学教育を受けており、
80%がガン患者だった。

この報告書について
True Compassion Advocatesでは
医師から処方線を書いてもらった後の患者については不明なので
この報告書の正確性は疑問、

この報告書からは、法により安全と自発性が守られているか不明、と指摘。

また、
WA州で住民投票した人たちは、選択を保障してもらえると思ったはずだけれど、
我々のところに届く声は全く違って、場合によっては
高齢者虐待や金銭目的での強要ツールともなっている。

州政府と連邦政府の双方が高齢者施策、介護者施策、障害者施策の予算を削減した影響で、
要介護状態になった人が自殺幇助を求めるのでは、と心配する声が
医療職や家族や友人らから多く寄せられている、と。

経済的な理由でうつ病の治療を受けられないままの人が尊厳死法で自殺したり、

シアトル地域の病院からマヒのある重病患者が早期に退院させられて
介護資金の手持ちもなく家族の負担になることを案じて自殺幇助を希望したケースも
報告されている。

また、他の家族は反対しているのに若い妻(相続人)が夫に自殺幇助を勧め、
自殺パーティまで開いたという話や、

無保険で治療費を払えないし家族に迷惑もかけられないと
希望したうつ病男性の話も。

そして、OR州の報告書で指摘されたのと同じく、

死後報告は処方した医師が書き、そこには
どのような状況で薬を飲んだか、死ぬまでにどれくらいかかったかの情報が
盛り込まれることになっているが、

実際には、薬を飲む際に同席した処方医は4%のみ。

それで、どうして死後報告を書けるのか、と疑問を呈している。

Washington Assisted Suicide Increase, 71 Died in 2011
Life News.com, May 14, 2012


オレゴン州の2011年についてはこちら ↓
OR州2011年に尊厳死法を利用して死んだ人は71人の最高記録(2012/3/14)
OR州の尊厳死法報告2011についてBioEdge(2012/3/28)

去年のWA州報告書については、こちら ↓
WA州から2010年の尊厳死法報告:処方を受けた人は前年より22人増加(2011/3/11)
WA州とOR州の2009年尊厳死法データ(2010/3/5)


【WA州尊厳死第1例、第2例ほか関連エントリー】
WA州の尊厳死法で初の自殺者をC&Cが報告(2009/5/23)
WA尊厳死法に反対したALS患者、第1例女性と同日死去(2009/5/28)
WA自殺幇助第2例:またもC&Cが報告、詳細は明かさず(2009/6/4)
WA州とOR州における尊厳死法の実体(2009/7/6)

【その他関連エントリー】
Oregon尊厳死法による自殺者増加(2008/3/21)
2008年にオレゴン州で医師による幇助受けて自殺したのは60人(2009/3/4)
C&Cが移植医と一緒に「尊厳死法に参加しましょう」と医師らに呼びかけ(2009/4/16)
オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず(2010/8/17)
WA州の尊厳死法、殺人の可能性あっても「問わず語らず」で(2010/9/16)
WA州尊厳死法の「すべり坂」、エビデンスがまた1つ(2010/11/2)
2012.05.27 / Top↑
オーストラリアで学生生活を送っておられる日本人の女性のブログに
アシュリー事件に関するアンケートのお願いという記事が出ているのだけれど、

(お願い)“アシュリー事件”生命倫理に関するアンケート
南十字星の下で☆☆オーストラリア的生活☆☆ (2012年5月9日)

大学の授業で統計の課題として出されたものらしい。

アンケート本文はこちら ↓
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dElSZ0c0WXVvTFk0cE0xVC1QdzVYNXc6MQ#gid=0

かなり詳細な質問になっています。

性別、出身、年齢層、宗教のほかに、
質問は、ざっと訳したものが以下。

選択肢にチェックするもの以外は
すべて「絶対にNO」から「断然YES」までの5段階のいずれかをチェック。

アシュリーの親の生活は非常に困難となるだろう。

思春期以降、彼女のケアはより困難となるだろう。

アシュリーと親のQOLは密接に関連している。

あなたにアシュリーのような子どもがいるとして、介護が難しくなってきたらあなたは度の選択肢を選びますか。
・家族支援を得て家でケアし続ける
・施設に入れる
・家族の負担を軽減する選択肢を探して在宅を続ける
・その他

“アシュリー療法”はあなたの子どもの健康にリスクが少なく、合法で親・介護者にとっても実際的また効果的だと医師が言ったら、あなたはこの選択肢を選びますか。

子どもに決定能力がないとしたらこのような重症障害のある子どもの医療決定を行う法的権利は親が有するべきだ。

以下があれば“アシュリー療法”は必要ない。
・デイケアや特別な介護者など
・経済的な支援
・親の抱える問題を話し合える支援ネットワーク

介護者の便宜ではなく生命の尊厳が最優先事項である。

この話は大変グロテスクで複雑である。気がめいるので、このような問題については出来れば考えたくない。


質問設定が誘導的だと感じるのはわたしの偏見でしょうか。


アンケート冒頭の事件の解説の事実関係にも問題がいくつかあるのですが、

日本語エントリーでこの人が紹介している事件の概要はさらに誤りだらけなので、
アンケートそのものはこの人が作成したものとも思えません。

統計の授業で、既に出来上がったアンケートが学生に配られて、
それぞれにネットで回答を集め、集計するようになっているのでは、と推測。

オーストラリア、というところが気になります。
2012.05.27 / Top↑
「施設解体」がしきりに言われている頃だったと記憶している。

ある男性と話をしている時に、
「施設解体のみが善だ」といった話の流れに違和感を覚えたので、

「でも、個々の親にとっては、自分たち親子が暮らしている地域に
現に今すぐ自分たち親子が利用できる制度やサービスがなければ、
または自分が死んだ後に子どもの安全な生活が保証される受け皿がなければ、
日本のどこかにどんなに優れた実践があったとしても
それは存在しないのと同じなんです」と言ったら、

相手が激昂されたことがあった。

立ちあがり、本棚に寄ると、
そこから次々に本をとりだしては

「今はもう時代が違うんだ。
アンタがそれを知らないだけなんだよっ。
ほら、こんなことをやっているところも、
こんなことをやっているところだって今はちゃんとあるんだよっ」

激しい口調で言いながら、立ったまま、
私の目の前のテーブルに次々に本が投げつけられていった。

読んだことのある本もあったし、
タイトルや内容くらいは知っている本もあった。

その人は、向かい側の席に戻ってくると、
「だいたい、親はすぐに、親が死んだら、死んだら、と言うけど、
そんなことを言って実際に死んだ親なんか、いないんだよっ」

いますよ。親だって死にますよ――。

そう思ったけど、言えなかった。

私が専門家や父親だったら、この人はこんな態度は取らないんだろうな……と
ぼんやり考えながら、目の前の本を見ていた。

投げつけられて私の前に乱雑に積まれている本は、
身体障害者または知的障害者の周辺での実践について書かれた本ばかりで、

その中には、
ミュウのような重症重複障害のある人の生活を支える話は1冊もなかった。


       ――――――――


昨日、突然、ツイッターをやめました。

ここしばらく、ずっとやめようかと考えてはいたのですが、
昨日、ついに限界がきてしまいました。

多くの方と交流させていただき、たくさん学ばせていただき、
「その節」にも「あの節」にも、言葉で尽くせないほどにお世話にもなったり
またご迷惑をおかけした方々も多々あったのに

だから、やめるならやめるで
それぞれの方にそれぞれに言いたいお礼もお詫びも沢山あったのに、

それもせずに突然にアカウントを削除して大変申し訳なく思っております。
本当にありがとうございました。それから、いろいろ、ごめんなさい。


「アシュリー事件」という本を書いたこと、
その直後にツイッターを始めたことの2つによって
私は自分でその覚悟が十分に決まっていない内に
障害者運動の方々との距離を急速に縮めてしまうことになりました。

そういう方々が障害者の権利や自立生活を勝ち取ってこられた
運動や闘いには深い敬意を持っていますが、

そういう方々のナマの言葉と思いがけない近さで接することは
私にとっては上で書いた日の体験が何度も繰り返されるに等しいものがありました。

あの日、私はあの後なにも語れなくなり、黙りました。

あの時に投げつけられた本の中の1冊で、
福岡寿さんという人が以下のような発言をしておられます。

……自分は、親御さんから「自分たちは福岡さんのホームヘルプや支援センターやグループホーム施策のために、親をやっているんじゃない」と言われたことがあります。だから「施策のための本人」なのか「本人のための施策」なのかを混同してしまうとダメだと思うんです。
……(中略)ホントに変わるためには、「この方を何とか支援しなくては」「この家族を何とかしなくては」という生のリアリティが必要なんですね。


さっき、これを書くために改めてざっと目を通してみて、
ああ、でも、この人たちは「親御さん」と言ってくださるんだな、ということ、
親も支援の対象に含める眼差しを持ってくださっていたのだな、ということに、
改めて救われる気持ちがします。

アシュリー事件で親と障害者運動の対立の構図が利用されていることに気を揉んで以来、
ずっと「でも対立ではないはずだ」と、考え続けようとしてきたし、

だから、そのために誹謗中傷を受けることは承知の上で、
娘の施設やその周辺の人に対しても、ことあるごとにそれを言ってきたし、

どちらに向いても、どんな議論の中でも、
そこに立ち続け丁寧に説明し続けようと自分なりに努力してきたつもりだったけれど、

今は、あの日、投げつけられた本を前に座っていた時とまったく同じ気分です。
何かを語りかけてみようとする気力が完全に萎えてしまいました。

もちろん、これだけだという単純な話ではなく、少しずつ積み重ねられてきた思いですが、
「支援者」の方による「麻薬」「常習化」という言葉の選択に、トドメを刺されました。

根本解決でなければレスパイトは麻薬で常習化して施設入所になるからダメだと言うなら、
その根本解決まで現に今も目の前の現実を生きている介護者に一体どうしろというのか。

……というよりも何よりもメゲるのは、
「支援者」を名乗る人が「麻薬」「常習化」という言葉で親に向ける断罪の視線と、そのゴーマンさ。

その人がどんなに優れた仕事をしてきた人なのか私は知らないけれど、
なぜ親が支援者から、こんな断罪の視線を向けられなければならないのか。

地域移行や自立生活が実現すれば問題は解決するのだから、
それに逆行する家族介護を肯定する介護者支援はダメだ、という主張も同じく、

では現に今も目の前の現実に生きあぐねて心身の健康を害している介護者は
それまでどうしろ、と?

家族からの暴力を受けている介護者がいるというデータがあるというだけの話に、
「でも本人の方がより被害者じゃないか」と反射的に反応されることも同じ。

家族や介護者が加害者でしかありえなかった事実はあるでしょう。

でもそれは家族や介護者個々人の悪意だったのか。
彼らがまさに支援を必要とするのに得られない状況が
加害者にならざるを得ないところへ親や家族や介護者を負い詰めていたのではないのか。


あなたがたの言う社会モデルが
親や介護者だけは個人モデルに置き去りにした社会モデルであり、

あなたがたの言う社会的包摂が
親と介護者だけは除外した上での包摂でしかないのなら、

共に考えることは、私にはできない。
2012.05.27 / Top↑
オーストラリアでWesley Mission により
精神障害のある人をケアする1000人のケアラーを対象とした調査結果が報告されている。

それによると

自身の心身の健康に有害な影響を報告したケアラーはほとんど90%で、

家族や友人との関係に悪影響があったとするケアラーは4人に1人。

仕事や経済状況が悪化したとする人が60%。

43%が10年以上、ケアラー役割を担っている。

気がかりなデータとして、
約3割のケアラーが家族の暴力を経験していることで、

特に統合失調症や双極性障害などの複雑な障害のある人をケアしている人でリスクが高い。
また女性のケアラーが特に被害に遭いやすい。

さらにケアラーの3分の1が
助けを求めることに憶したことがある、と答えた。

報告書 Keeping minds well: caring till it hurts では
ケアラー・サポートに関して、

GPその他の専門職にケアラーについてもっと教育を行う、
緊急時のレスパイトサービスを増やす、
自らの法的権利についてケアラーに教育を行う、など、

8点の提言を行っている。

Sticking with you:carers in the spotlight
The Sydney Morning Herald, May 14, 2012


報告書のサイトに行ってみようと yahoo!7 で検索をかけてみたのですが、
今の段階でヒットするのは報道のみのようです。
2012.05.27 / Top↑