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英米でも深刻化する子どもの貧困
子どもの貧困が深刻だ。
ガーディアン紙は自社サイトの教師ネットワークを通じて全英591人の教師に調査を行い、その結果を6月に報じた。それによると、「朝の登校時にお腹をすかせている生徒がいる」と回答した教師は83%にものぼった。朝食を食べていない生徒のために食べ物を持っていったことがある教師が49%。昼食を買うお金を生徒にあげたことがある教師も、ほぼ5人に1人だった。55%の教師が「生徒の4分の1が十分な食事をとらずに学校に来る」「不況、失業、福祉削減で家族の経済事情が悪化している」と回答。低所得家庭の子どもたちには無料で昼食を提供する制度があるが、5人に4人の教師が、そうした子どもたちには登校時に無料の朝食も必要だと訴えた。
独自に「朝食クラブ」を実施している学校もあるが、GP(家庭医)協会、小児科学会、全国校長会は、無料の給食制度の適用となっている130万人の子どもたちに朝食も出すよう、大臣らに向けて呼び掛けている。また無料給食制度の適用条件も緩和するよう訴えている。
こうした事態を受け、世界120カ国で子どもたちへの支援活動を行ってきたチャリティ Save the Childrenが、初めて自国内での子どもたちの支援に乗り出した。“Eat, Sleep, Learn, Play! (食べて、眠って、学んで、遊ぼう!)”キャンペーンである。年間3万ポンド以下の収入で暮らす家庭では、子どもたちが温かい食事を取れず、冬用の温かい衣類もなく擦り切れた靴のまま暮らしている。年間所得17000ポンド以下の最貧困層では、子どもの8人に1人が1日1食すら食べられないことがあるという。「この国でこんなことがあってはならない」が同キャンペーンのスローガン。貧困状態で暮らす子どものいる家庭に調理器具やベッドなど生活必需品を支給するため、50万ポンドを目標に資金を募る。
またSave the Childrenでは、貧困の世代間連鎖を断ち切るべく、親子を対象にした学習支援プログラムFAST(Families and Schools Together)を行っている。同チャリティのFASTサイトのビデオによると、英国の子どもの3人に1人が基礎的な読み書き能力を身につけないまま小学校を終えるという。経済的ストレスが親の心身の状態に影響し、口論や離婚に至ったり、子どもたちに余裕をもって接することができなくなる。毎週のFASTセッションでは、親と子、教師と地域のつながりを強化し、子どもの力を伸ばすのが狙い。
米国でも18歳未満の子どもの5人に1人が貧困状態にあるという。国税調査局の9月の発表では、世帯所得の中間値がこの1年間で1.5%落ち込む一方で、最富裕層の総所得は4.9%アップ。所得分配の不平等を図るジニ係数は1.6%上昇するなど、貧富の格差も広がっている。目を引くのは、通常は富裕な地域とみなされるワシントンD.C.の郊外で貧困率が急上昇していることだ。無料で食糧を配布するボランティア組織に助けを求めてくる人たちの数は、過去4年間でほぼ倍増している。特にホームレスが急増したラウドン郡の福祉担当者は、最近では仕事も増え家も売れるようになってきたが、それが却って家賃など諸物価を上昇させて最下層には打撃となっている、と語る。
日本でも生活保護費用の増大と抑制策が問題となっているが、日本の子どもたちはどうしているのだろう。おなかをすかせてはいないか。これからの季節に向けて、みんな温かい衣類を身につけることができているだろうか。

ベンゾジアゼピンに認知症リスク?
 先月号の当欄で書いた向精神薬の副作用リスクに関連して、気になるニュースがあった。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに発表されたフランスの研究者らの論文で、ベンゾジアゼピンの高齢者における認知症リスクが報告されている。ベンゾジアゼピン系薬剤はソラナックス、デパスなどの名称で、不眠や不安の治療薬として日本でも、また世界中で広く使われている。フランスでは65歳以上人口の30%に処方されており、カナダとスペインでは20%、オーストラリアでも15%に及ぶという。
 しかし、この研究によると、65歳以上でベンゾジアゼピンを飲んでいる人は飲んだことがない人に比べて、その後の15年間に認知症を発症するリスクが50%増加した、という。著者らは結論付けるにはさらなる研究が必要としながらも、これまでも高齢者では転倒やそれによる骨折リスクなどの副作用が指摘されてもおり、今回新たに認知症リスクの懸念も出てきたことで、処方に慎重を呼び掛けている。

「世界の介護と医療の情報を読む」77
「介護保険情報」2012年11月号 
2012.12.07 / Top↑
イスラエルで、医師が終末期の娘を殺して自殺する事件があり、自殺幇助合法化議論に。
http://www.israelnationalnews.com/News/Flash.aspx/256438#.ULs4ZWejit0

HCRに女性器切除にはそれなりのメリットがあるとする論文が掲載になったらしい。:男児の包皮切除にHIV感染予防効果があると認めたり、女性器切除を「ピアスと同じ」と擁護するなど、米国小児科学会にはかなり前から男女児の性器切除に対してスタンスをシフトしたい気配があった。いずれも先導しているのはAshley事件のDiekema医師。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10328

【関連エントリー】
米小児科学会の女性器切除に関する指針撤回:Diekema医師の大チョンボ(2010/8/4)
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
2011年5月20日の補遺


メリンダ・ゲイツがロンドン・サミットで途上国の家族計画に取り組む必要について講演。
http://www.huffingtonpost.com/marianne-schnall/exclusive-interview-with-_7_b_2068757.html

クリントン国務長官が今後4,5年の内にAIDSを制圧するための青写真を提示。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/clinton-reveals-blueprint-for-reaching-an-aids-free-generation/2012/11/29/7e564160-39d0-11e2-b01f-5f55b193f58f_story.html

ビッグ・ファーマは2年前に比べると途上国での医療アクセス改善に尽力している、との調査結果。:これもまた昨日のエントリーとも繋がるし、ビッグ・ファーマが途上国で治験をやり始めて現地の医療インフラは崩壊の一途だという話もそこにリンクしたエントリーにあるのだけれど、ビル・ゲイツが本当に途上国の保健医療問題に関心があるなら、ワクチン一辺倒ではなく、むしろ現地の医療インフラや生活環境の整備に力を入れるべきなんでは、といつも不思議に思っている。たとえば、こういうこととか ⇒公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
http://www.medicalnewstoday.com/releases/253389.php

英国メディアによる電話盗聴問題を受けて行われた調査で、最終報告(Levenson報告)が行われ独立した規制制度が提案された。キャメロン首相は受け入れない方針。メディアの独立性をめぐっても論議に。
http://www.guardian.co.uk/media/2012/nov/29/leveson-report-published-and-brooks-and-coulson-in-court-live-coverage
http://www.guardian.co.uk/media/interactive/2012/nov/29/leveson-report-executive-summary
http://www.guardian.co.uk/media/2012/nov/29/victims-accuse-cameron-leveson-inquiry
http://www.guardian.co.uk/media/2012/nov/29/david-cameron-refuses-to-write-press-law

英国の社会保障費カットで、ヤング・ケアラー支援の予算までカットされている。
http://www.dailyecho.co.uk/news/10083942.Teen_s_desperate_plea_not_to_slash_young_carers_scheme/

上記問題で、介護者支援チャリティの前途は多難。
http://www.thisisgloucestershire.co.uk/Challenging-times-ahead-carers-charity/story-17454569-detail/story.html

11月30日は「介護者の権利の日」。でもメディアは全く取り上げず。
http://topnews.ae/content/213844-carers-rights-day-sadly-didn-t-receive-media-coverage
http://www.leftfootforward.org/2012/11/where-is-the-coverage-of-carers-rights-day/

日本 高齢母子 孤立死か やせ細った遺体発見 札幌のアパート
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/422716.html

日本tuta_9さんによる【うつけん語録】:宇都宮健児さんって、藤沢周平ファンだったんだ……。周平さんは、貧しい下級武士や市井の庶民への眼差しが温かいだけでなく、女性をきちんと「人」として扱っていると思う。
http://togetter.com/li/416238

NYでマックやバーガー・キングなどファスト・フードの従業員らが生活できないほどの低賃金で酷使するな、とデモ行進。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/nov/30/fast-food-strike-new-york

ビルマでは、銅鉱山労働者のデモと警官隊が衝突し、50人以上の負傷者。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/nov/29/burma-riot-police-mine-protest
2012.12.07 / Top↑
スイス医療弁護士協会(SMLA)がヨーロッパ12カ国で実施した世論調査で
ほぼすべての国で、回答者の3分の2から4分の3が
自殺幇助の合法化を支持した、という結果が報告されている。

アンケートが行われた国は
ドイツ、フランス、オーストリア、英国、デンマーク、フィンランド、
ギリシア、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン、スウェーデン。

自分で死ぬ時と死に方を決める死の自己決定に最も支持率が高かったのはドイツで、
87%が支持。

(ディグニタスで自殺している人の国籍ごとのデータで
ドイツが1位であることを考えると頷ける結果)

そこから徐々に下がって、11位のデンマークでも71%。
最低の支持率はギリシアで52%。

不治の病、重症障害、コントロール不能な苦痛を追うことになったら
自殺幇助を求めることを考えると答えた人が最も多かったのはスペインで78%
次いでドイツの77%、フランスの75%、英国の71%。

ここでも支持率が最も低かったのはギリシアで56%。

12カ国の回答者のマジョリティが
自殺幇助は医師か訓練を受けた医療者が行うべきだ、と答えた。

回答者の約30%が
合法化されれば死に瀕した患者にプレッシャーがかかることがある、と答え、
ざっと30%がそんなことは起こらない、と答えた。

ドイツ議会では、一定の条件のもとに自殺幇助を合法化する法案が審議中とのこと。
医師が幇助に対して報酬を得ない場合に限って自殺幇助を認めるという条件には
この調査ではドイツの回答者の76%が反対だと答えた。

Large Europe majorities for assisted suicide: survey
Reuters, November 30, 2012


この結果を英国のDaily Mail紙が報じているのだけれど(記事はざっと読んだだけ)、

記事に寄せられたコメントの中に
「リバプール・ケア・パスウェイの機会的適用で
高齢者がケアの手間を省くため、ベッドを空けるために死なされるという形の高齢者虐待が
今でも進行しているのだから、自殺幇助が合法化されれば金銭的な動機からもこうした虐待が増える」
との意見があるのが目を引いた。

Majority of Brits want assisted suicide legalised as new poll reveals strong support for change in the law across Europe
Daily Mail, November 30, 2012


その他、オーストリアのメディア記事はこちら。
Austrians vote in favour of assisted suicide
AUSTRIAN independent, December 2, 2012
2012.12.07 / Top↑
Graeme Tyldesleyさん(57)は
2002年に病気で引退するまで21年間病院職員として働いてきたが、現在は
進行性の脊髄の病気があり身体が不自由で(写真では歩行器を使って歩いている)
認知症の母親(82)と同居してフルタイムの介護を担っている。

母親がパニックを起こすので見守りが欠かせず、
2時間しか眠れないこともあるという。

これまでは
病院の年金と、障害者手当のほかに
incapacity benefit(働けない人に支給される手当?)を月に280ポンドもらっていたが

このたび職業年金局(DWP)はTyledesleyさんに
電話をとる動作とか座る動作など身体的な動作をさせる簡単なアセスメントで
「デスクワークなら働くことができる」と判断し、手当の支給停止を決定。

Tyledesleyさんはショックから抗ウツ剤の服用量が増えたという。

Tyledesleyさんの支援に入っている権利擁護チャリティ、Craven Advocacyでは
他にも支給停止が決まったと助けを求めてくる人が増えていると言い、

「こうした(身体機能だけの)アセスメントは
その人が置かれた状況全体を考慮しておらず、
人を数字のように扱っていて、問題です」

DWPからの通知書には
資格決定では健康状態や障害は検討対象とされず、
何ができるかという視点の審査である、と書かれていた、とのこと。

記事の最後にも、DWPの広報担当の以下の発言が引用されている。

「状況によって人はそれぞれ影響を受けることは承知しておりますので
雇用と支援給付は、働ける能力をアセスメントし、
その人には何ができるかを見るものです。

ある人が働けるだけ健康だと判断する際には、
直接会って詳細な面談によるアセスメントを行い、
請求者から提出された医学的エビデンスを検証します。

構成で効果的な就労能力判定に向けて改善を行ってきましたが、
不服がある人には、新たなエビデンスを出して不服申し立てをされる権利があります」

Disabled carer told ‘you’re fit to work’
Craven Herald, November 29, 2012


日本の生活保護を含めて、
なにか、こういうことが世界中で行われているような気がしてならないし、

そういう現象が
昨日のエントリーから透けて見えてくるような今の世界のあり方と
実は直接的に繋がってもいるんじゃないかという気がしてならない。
2012.12.07 / Top↑
米国とカナダの労働組合
TeamstersとJobs With Justiceそれぞれのアトランタ支部のメンバーが
11月21日、同地で行われたビル・ゲイツの講演で抗議行動を行おうとして
強制排除されたという報告がTeamstersから出ている。

ここ何年かビル・ゲイツが有害廃棄物処理業界に投資してきたことは
11月19日の補遺で拾ったとおり。

その中でも特に株式の保有率が高いのがRepublic Servicesで、
4分の1を所有している。

Teamstersが問題視しているのは、
今年5月に、退職金を受け取れなくなる契約を突きつけられた組合労働者らが
それを拒否したところ、80人がEvansvilleの工場から締め出された、というもの。

その一方でRepublicはCEOと死亡障害保障2300万ドル付きの契約を交わしており、
今年第2期の収益が前年の3倍となったことから株主には7%の追加配当をつけている。

「これらの労働者は公衆衛生のために日々、
文字通り自分の命を危険にさらしているんですよ。

ビル・ゲイツが公衆保険施策を支援すると言いながら、その一方で
自社の労働者を締め出して公衆衛生の危機を生じさせる企業の主要オーナーだなんて
許し難い」とTeamstersの当該地域担当者。

Teamsters confront Bill Gates over sanitation firm’s actions
POPLE’S WORLD, November 29, 2012



小さな絵としては、
ワタミの渡邊美樹社長が頭に浮かぶのだけれど、

大きな絵としては、
こういうことを考えて、とても暗示的なニュースでもあるなぁ、とも。 ↓
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
2012.12.07 / Top↑
糖尿病の治療薬Avandiaをめぐるスキャンダルは
補遺で何度も断片情報を拾ってきたので、気にはなりながらも、
製薬会社と研究者の癒着スキャンダルの構図は結局のところ
ずっと同じことが繰り返されているだけだという気がして、
手間をかけてエントリーにする気力が沸かずにいたのですが、

WPが25日に、
製薬会社の資金により治験のあり方そのものが変わってきていることに問題を提起しており、
その中でAvandiaスキャンダルの全容が取りまとめられていたので、読んでみました。

GlaxoSmithKlineって、
抗ウツ薬のパキシルでやったのと同じことをAvandiaでもやってる……と唖然としたのと、

治験資金のすでに半分が製薬会社となっており、そうした実態につれて、
治験が大学や研究機関への委託から民間の営利企業へと移行している、
すでに論文のディスクロージャー程度ではバイアスを見抜くことは不可能だと
NEJMの編集長までが嘆息する事態となっている、という内容が
なんとも衝撃的だったので、以下に。

(ちょうどマイケル・サンデルの「それをお金で買いますか」を読んで
絶句したところだったので、治験データも「お金で買える」うちの一つになったのかぁ……とも)


ちなみに、グラクソのパキシル・スキャンダルとは、
小児には効かないとか副作用で自殺念慮が起こるなどのデータを隠ぺいし、
ゴーストライターに書かせて有名研究者らの名前を連ねた論文によって
DFAの認可を受けて販売し、副作用から子どもを含む多くの自殺者を出した、というもの。

参考エントリーはこちら ↓
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)


で、今回のアバンディアでは、
他の糖尿病治療薬よりもアバンディアが優れていたとの治験ADOPTの結果が
2006年にNew England Journal of Medicineに報告されたが、
その治験自体がグラクソの資金によるものだっただけでなく、
著者11人のうち4人は同社の株を有する社員で、
残る7人全員が同社からグラントや顧問料をもらう学者だった。

そして、その論文では、
アバンディアには悪玉コレステロールを上げて心臓病リスクを高めるとの
データが隠ぺいされていた。

その隠ぺいのやり方が手が込んでいる。

上院委員会の調査情報によれば
グラクソは2003年段階でWHOから
このタイプの薬には心臓リスクがあると警告を受けており、
2005、2006年と14000人に治験を行って血栓症リスクが30%上がることを掴んでいた。
が、この情報は社外秘とされた。

FDAも認可に当たって心臓病リスクについて確認の治験を行うよう求めた。
そこで行われた治験がADOPT。

しかし
治験を依頼された研究者らにはFDAの警告もリスクも知らせないまま、
デザインの段階から既に別の目的のものにされてしまった。

この論文に疑問を抱いたクリーブランド・クリニックのNissen医師が
グラクソが行ったDREAMという別治験のデータを調べたところ、
アバンディアを飲んだグループで明らかに悪玉コレステロールが上がっていた。

訴訟で明らかになったところでは
42の治験が行われていながら結果が公にされていない治験が35もあり、
それらはすべてグラクソの資金によるものだった。

すべてのデータを分析すると、アバンディアは
心臓発作リスクを43%、心臓病による死亡リスクを64%も上げることが判明。

Nissen医師らは、これらについてNEJMに論文を投稿。
通常、受理から掲載まで数カ月かかるが、
2000年に編集長となり問題の改善に取り組んできたJefffrey Drazen(ハーバード大の医師)は
問題を重視し、受理から19日で掲載させた。

ところが驚くことに、上院の調査で明らかになったところによると、
この論文は掲載前にグラクソ側にリークされてしまった。
査読者の誰かが、ADOPTに関わったテキサス大の教授にリークし、
この教授がグラクソに論文コピーをファックスしたのだという。

その情報を元にグラクソ側はNissen医師らの論文に反撃態勢を整える。
当時進行中だったRECORDという治験のデータで反論を試みたのだ。

実際には対象者の数が少ないばかりか、
未だに確定的な結果が得られていない治験であるにもかかわらず、
中間報告を論文発表して、問題を曖昧にすることを図った。

RECORDもまたグラクソの資金による治験で、
この論文の著者8人のうち1人はグラクソの社員、
その他7人は全員がグラクソから何らかの金銭を受けている学者だった。

発表された論文には説得力はなかったが、
臨床医と患者に安全をアピールするグラクソ側のこうした抵抗によって、
アバンディアが市場から引き上げられるまでにはさらに3年の時間がかかり、

2010年9月に市場から回収されるまでの4年間に、
FDAの試算で8300人が心臓発作を起こし、死者まで出すことになった。


                  ―――――

WPの上記記事によると、同様の問題は
Vioxx(メルクの関節炎治療薬)とCelebrex(ファイザーの消炎鎮痛剤)でも起きたことから、
薬の治験データから製薬会社の影響を取り除くための努力がさまざま試みられている。

市場に出ている薬に関する治験データの全公開を求める動きもあるが、
製薬会社が資金を出している治験でそれが保障されるかどうかには疑問もある。

WPの調査によると、
8月までの1年間にNEJMに発表された新薬のオリジナル研究論文は73本あり、
そのうち60本が製薬会社の資金による研究。
50本は製薬会社の社員が共著者となっており、
37本で主著者はスポンサー社から顧問料やグラント、講演料をもらった学者。

1980年代まではこうした実験は政府の資金で行われていたが、
だんだんと製薬会社の資金への依存度が高まり、
去年は製薬会社が390億ドル、NIHが310億ドル。

ペンシルベニア大の調査によると、
製薬会社の資金による治験では結論がその会社に都合のよいものとなる確率が
政府資金やNOPの資金によるよりも3.6倍も上がる、という。

さらに気がかりな傾向として、WPは
治験を請け負う民間企業まで登場しており、
大学や研究機関から、こうした営利企業へと治験が流れているという。
既に製薬会社の治験資金はすでに半分以上がこうした企業に流れており、
そうした仕組みの中では研究者は製薬会社に使われる手足と化してしまう。

(この部分を読んで思い出したのは、
遺伝子治療で死者が出た2007年のニュースの中にあった
新しい治療の安全性を審査する審査委員会が米国では
すでに民間企業にゆだねられている、という実態 ↓
遺伝子治療で死者 続報(審査委員会は民間企業!)(2007/8/7))


「論文発表の際に金銭関係のディスクロージャーがあれば
それでバイアスが防げると考えられたのは、
査読が厳しく行われる時代だったからで、
もはや論文報告にバイアスがかかっているかどうかなんて
編集者にも査読者にも読者にも、分からない」という人も。

NEJMのDrazen編集長はそうしたバイアスの排除に向けて努力してきたが、
最近ではNEJMに発表された論文であっても、
製薬会社資金の治験であれば医師らが信頼しなくなりつつあり、
医学研究そのものが崩壊の危機の様相を呈してきた、とも。

Drazen氏の以下の言葉が印象的。

This is a business built on people telling the truth.
医学研究というのは関係者がウソをつかないという前提で成り立っている業界。



同じような構図のスキャンダルは他の問題でも繰り返されており、
それらは以下のエントリーにリンクしてあります。 ↓
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
2012.12.07 / Top↑
米国で昨年12月から売り出されている新型出生前遺伝子診断、
販売している企業によれば、すでに何万人もの女性が受けたと言うが、

FDAの規制対象とはなっておらず、
また正確性やどういう役割を果たすことになるかについて疑問視する声もあり、

そのために保険会社は未だ実験的なものと捉えて給付に踏み切っていないため、
最大1900ドルもする、たいへん高価な検査となっている。

したがって、この新型検査が
羊水穿刺のような侵襲的な検査数と早産件数を減らすことで
医療コストの削減につながるものか、それとも
もともと早産リスクから羊水穿刺など受けようとも思わなかった女性が
新型なら受けることで却って医療コストを膨らませるものか、まだ分からない。

米国産科婦人科学会は11月20日に初めての見解を追発表し、
「ルーティーンで行う出生前検査に含めるべきではない」と結論。

ただし、検査の限界についてきちんとカウンセリングを行う限りにおいては
トリソミーのリスクが高い患者には申し出てもよい、としており、

これらの点では、これまでに出されている
米国遺伝カウンセラー協会や出生前診断国際協会の見解と同じで、

新型検査がこれまでの侵襲的な検査と同程度に正確かが証明されていないので
この検査で陽性と出た人には羊水穿刺や絨毛検査を受けるように勧めている点でも
これら3団体の見解は同じ。

保険会社は慎重に今後の研究結果を見極めると言っている一方、
販売企業は精度や患者の意思決定への影響に関するデータがとり揃うのを心待ちにしつつ
「医療費削減効果があるとなれば、それは嬉しいボーナス」。

既に多くの女性が検査を受けることを望んでおり、
「これほどまでに消費者の需要があるとはだれも予測しなかったのでは」とも。

現在は販売価格1900ドルとか1200ドルのうち、
販売会社がコストの大半を引き受けているため、
保険のある人で200ドル程度の負担、

保険のない人には特に自費プランが用意されていて
450~500ドル程度で受けられる。

(保険会社が給付対象にしていないという情報との整合性は私には?)

この記事の冒頭で紹介されているハイリスクとされる妊婦さんの主治医は
どういう使い方がよいのかについては疑問点もあるにせよ、
目の前の患者さんには知らせる必要がある、と語り、

「出たばかりの検査なので、どういう使い方がベストなのか分からない。
でも自分には患者にそういう選択肢があることは知らせる倫理的な義務があると思う」

ちなみにこのドクターは
MaterniT21という新型検査の販売元であるSequenom社の
講演陣の一人で、同社の求めで講演する際には講演料を受け取っている。

また、もう一人別の産婦人科医は
患者は従来の検査をパスして、いきなり新型を受けたいと言っている、と言い、
「私の患者は平均的なニュー・ヨーカーですからね。
結果が今日出るとしても遅いんですよ」

A new prenatal test for spotting genetic issues is less invasive, but it’s pricey
WP, November 27, 2012


この記事のうち、「倫理」という言葉が使われているのは一か所で、
医師である自分には患者に選択肢を知らせる「倫理的義務」がある、という個所のみ。

以下のリンクのように、
英語圏では私がこのブログで拾ってきただけでも
2008年の早くから、この非侵襲的な出生前診断については
様々に倫理問題が議論されてきているはずなのだけれど……?

ちなみに、Sequenom社に関して2008年に当ブログが拾っていた情報は以下 ↓
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)


それ以外の関連エントリーはこちら ↓

2007年
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)

2008年の米連邦法関連
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/4/1)
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案つぶれる(2008/7/29)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)

2008年のその他関連
「中絶決断に情報提供不要」ヒト受精・胚法議論(2008/6/1)
羊水穿刺より侵襲度の低いダウン症検査、数年以内に(2008/10/8)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)

2009年
“乳がん遺伝子ゼロ”保証つき赤ちゃん英国で生まれる(2009/1/10)
受胎前遺伝子診断:巧妙な言葉の操作が優生思想を隠ぺいする(2009/1/16)
出生前遺伝子診断で「あれもこれも調べたい」って?(2009/2/2)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
非侵襲出生前診断の倫理問題をJAMA論文が指摘(2009/5/28)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)

2010年
アニメ・ソング「ダウン症ガール」巡り「コケにされる平等」インクルージョン論争(米)(2010/8/31)
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)

2012年
IVFの妊娠でダウン症を理由に中絶、5年間で123人(英)(2012/7/24)
「ダウン症だから」と本人にも家族にも無断でDNR指定(英)(2012/9/13)

日本で議論になってから書いたエントリーは以下。
ダウン症の新型検査をめぐって(2012/9/9)
新型出生前遺伝子診断に関する米英の動きと議論(2012/11/22)
2012.12.07 / Top↑
11月13日の日本産科婦人科学会・公開シンポ「出生前診断―母体血を用いた出生前遺伝学的検査を考える」での財団法人日本ダウン症協会 玉井邦夫理事長講演録「何を問うのか 新しい出生前検査・診断とダウン症」必読。「どんなDNAなら生まれてきてもいいのか」:何故ダウン症なのか、という点について前にエントリーを書いたことがある。⇒ 「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)  2007年にこのエントリーを書いた時にはまだそこまで考えられなかったので私も同じことを書いているのだけれど、玉井氏の講演録を読んでいると、ダウン症で線引きされていくことに対して抵抗するために「介護負担が大きいわけじゃない」「当たり前に元気に生きている」と言わなければならなくなることの悩ましさというものもある。決して、介護負担が大きな障害があるなら中絶してもよいと言いたいわけでも、当たり前に元気に暮らせるんだから受容される範囲の障害だと言いたいわけでもないはずなのに。
http://www.jdss.or.jp/info/201211/symposium.pdf

また、この問題で「ハイリスク」な女の声を届ける会(HRW)立ち上げ。
http://hrwomen2012.blogspot.jp/

当ブログでこの問題について書いてきたことは沢山あるので、以下のエントリーにリンクしました ↓
新型出生前遺伝子診断に関する米英の動きと議論(2012/11/22)

その新型出生前遺伝子診断の米国での事情を昨日のWPが記事にしている。:なんせ高価。なので、これを導入した時のコスト・パフォーマンスはどうなのか、などなど。明日、できたらエントリーに。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/a-new-prenatal-test-for-spotting-genetic-issues-is-less-invasive-but-its-pricey/2012/11/26/8dd799de-2780-11e2-b4f2-8320a9f00869_story.html?wpisrc=nl_cuzheads


『日本国憲法改正草案』がヤバすぎだ、と話題に…:これも絶対必読。ヤバいことこの上ない。これを読まずに自民党に投票する人、後からでは責任とれないんでは……?
http://www.geocities.jp/le_grand_concierge2/_geo_contents_/JaakuAmerika2/Jiminkenpo2012.htm



LCPの機会的適用でNHSが調査に(2012/10/28)問題の続報。いよいよ独立の委員会に調査が命じられた。
http://www.bbc.co.uk/news/health-20503932

26日のエントリーでとりあげた医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLSTが、VT州では「治療が無益」な場合には患者本人や代理決定者の同意なしに一方的なDNR指定に使われている、とのこと。:私みたいな素人でも26日のエントリーで「無益な治療」論との整合性は?と疑問に思ったというのに、Thaddeus PopeはPOLSTを本当に患者の選択権の保障だと信じていたみたい。C&Cを絶賛してみたり、この人、なんか、ナイーブ過ぎない?
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/polst-dnar-without-consent.html

VT州のShumlin知事は10年の選挙公約にも自殺幇助合法化を謳っていた人物。Wesley Smithによると、次の議会に合法化法案が出る模様とか。Smithは医療費削減策として提案されるのだと批判している。
http://www.nationalreview.com/corner/334223/vermont-governor-pushes-assisted-suicide-wesley-j-smith

NJ州議会に自殺幇助合法化法案が提出されている。
http://www.app.com/article/20121125/NJOPINION06/311250028/Hospice-care-offers-death-dignity

このところ相次いでいる各国の安楽死・自殺幇助に関する報告書のデータが偏っている、と安楽死防止連合のSchadenberg。……と思ったら、自著の宣伝も兼ねているか。
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2012/11/one-sided-reports-in-canada-and-the-uk-ignore-data-concerning-euthanasia-in-belgium-and-the-netherlands/

英国の自殺幇助合法化提唱者で作家のTerry Pratchettがプレゼンターを務めたBBCのドキュメンタリーが英国ドキュメンタリー賞に続いて、国際エミー賞も受賞。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10323

【関連エントリー】
作家 Terry Partchett “自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
自殺幇助ガイドラインに、MSの科学者とアルツハイマーの作家それぞれの反応(2009/9/23)
作家 Pratchette氏「自殺幇助を個別に検討・承認する委員会を」(2010/2/2)
Pratchett氏の「自殺幇助委員会」提言にアルツハイマー病協会からコメント(2010/2/3)
BBC、人気作家がALS患者のDignitas死に寄り沿うドキュメンタリーを作成(2011/4/15)


10代の女子に、予防手段として緊急避妊薬を処方しておくことを米国小児科学会が提唱。いざという時に間に合わなくては意味がないから、と。10代の女の子の妊娠率はこれまでになく下がっているというのに。:米国小児科学会は、ビタミンDサプリを勧めたり、栄養と水分の補給の中止を認めるガイドラインを出したり、女性器切除を容認してみたり、男児の包皮切除でも積極的に利益を認めてみたり……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/253175.php

ナイジェリアでゲイツ財団と連邦政府、Kano州政府などが、ポリオ撲滅のためのワクチン普及で提携。
http://allafrica.com/stories/201211270823.html

NJ州で、同性愛転換療法を信じて行ったが効果がなかったとして、消費者詐欺法違反で男性3人が訴えた裁判。
http://www.nytimes.com/2012/11/28/us/gay-conversion-therapy-faces-tests-in-courts.html?_r=0

大気汚染で発達障害リスクが高まる。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/253272.php

小島慶子、角田光代も母がしんどかった!:角田さんの小説にはAC問題が色濃いものが多い。
http://ddnavi.com/news/87245/
2012.12.07 / Top↑
1ケ月前の記事ですが、
またもデンマークで「無益な治療」停止+臓器提供が決められた患者の回復事例。

去年10月、車の事故で大けがを負ったCarina Melchoirさんは
Aarhus 病院に運ばれて3日後に脳の活動が消え始めたため、
医師らが治療の停止を家族に相談。

家族はその時に臓器提供にも同意した。

ところが生命維持を中止して24時間も経たない内に
Carinaさんは突然目を開け、脚を動かし始めた。

20歳になった彼女は現在リハビリセンターで良好な回復を見せており、
歩き、しゃべれるだけでなく馬にも乗れる。
将来はグラフィック・デザイナーになると夢を語っている。

家族は
医師らが臓器ほしさのあまり治療を怠ったとして、病院を訴える準備中。

デンマークでは、
Carinaさんの事例がテレビのドキュメンタリーとして放送されたことから
臓器提供と終末期医療について論争が巻き起こり、

医師にさっさと諦められるのではないかという恐れから
臓器提供のドナー登録を取り下げる人が出ている。

デンマーク政府は、
患者が臨床的な死を公式に宣告されるまで臓器を摘出する準備をしてはならないとする
ガイドラインを準備中だが、

移植医らからは、
患者が脳死宣告される前から摘出の準備をすることは
ドナーとレシピエントの適合のためには不可欠だとの声が上がっている。

記事によれば、
Aarhus病院の医師らはCarinaの治療中のコミュニケーションがうまくいかなかったことについて謝罪し、
間違いを犯したと認めた、とのこと。

この「間違い(a mistake)」が何を指しているのかは不明。

家族の弁護士によると、
家族は生命維持を停止して臓器を提供する以外にできることはないと思いこんでいただけに
トラウマは大きく、Carinaさん自身も何度も
医師らが自分を殺そうとしていたのかと質問し続けている、という。

父親はデンマークの新聞に対して
「白衣を着た悪党どもが、臓器ドナー欲しさに早々とギブアップしたんだ」と。

記事には、
医師らは脳死になった場合には臓器提供をという意図で話したことにすぎず、
医師らとコミュニケーションがうまくいかず、それを家族が誤解しただけなのでは、
そもそもこの人を助けたのは医師らの治療だったわけだし、
と語る「あるデンマークの医師」のコメントが紹介されているのだけれど、

この人は当該ケースとはまったく無関係な医師なので、
そもそも関係者でもない人がどうしてこんな無責任なコメントができるのか、不思議……。

The girl who wouldn’t die: Incredible story of the 19-year-old who woke up as doctors were preparing to harvest her organs
Daily Mail, October 18, 2012


記事を読んで思い出したのは、こちら ↓
脳損傷の昏睡は終末期の意識喪失とは別:臓器提供の勧誘は自制を(2012/7/20)


たまたま今日の直前のエントリー・シリーズとも関係してくるのだけれど、
直前シリーズの3にリンクしたNot Dead YetのDrakeらによる生命倫理学への批判の中に、

このFin医師の臓器摘出勧誘への自制の呼びかけについても、
また5月のNDRNの報告書に書かれていた障害者の命の切り捨てについても
生命倫理学者らは口を閉ざしている、との批判が含まれている。


なお、
これまでに当ブログが拾ってきた回復事例については
以下のエントリーにリンク一覧があります。

Owen教授の研究で、12年以上「植物状態」だった患者に意識があることが判明(2012/11/13)
2012.12.07 / Top↑
前のエントリーからの続きです。


ビル・ピースが11月17日に書いたエントリーは以下。

Conference Controversy
Bad Cripple, November 17, 2012/11/27


ピースはこのシンポについて知った時に、
まずスピーカーのほぼ全員にC&Cとつながりがあることを考えると同時に、
知り合いもいることだし生命倫理と障害者の溝問題は目下の関心事だから行こうかと考えたけれど、
偏向した内容のシンポなんて、いくらでもあることだし、
いくつかの理由から辞めたのだという。

ただ、Stephen Drakeの激烈な口調の行き過ぎはともかく、
Drakeが指摘しているのとまったく同じ点が気になったという。

書かれている問題点とは、おおむね以下。

C&Cとの繋がりがあるスピーカーは明らかにすべきだったと思うし、

特に以下の3点によって
障害者の権利という視点を代表するスピーカーが欠けていたことは問題。

① もし自分が出かけて行って、一人で反論の声を挙げていたとしても
ヒステリックな障害者という世間のステレオタイプを演じることにしかならない。

② 「特別な人々、特別な問題」というタイトルはあり得ないし、
OuelletteとNewmannがこのタイトルに強く反対しなかったのも驚き。
ここでは過去20年間の障害者差別をめぐる議論がまるきり意にも介されていない。

③ 生命倫理学と障害者の権利の間の緊張関係はよく知られているし
私自身もアシュリー事件やクリストファー・リーヴへの批判によって
その溝を広げたのかもしれないけれど、

このカンファのあり方そのものが、
なぜ障害学者や障害者運動の活動家らが生命倫理学を批判しなればならないかを物語っている。

ウ―レットは生命倫理学者/法学者であり、障害者アドボケイトではなく、
障害者の権利を代理するスピーカーはここには一切存在しない。

議題の立て方も絶望的なほど偏向しており、
力の不均衡があからさまで、最初から障害者側は防衛する側に置かれている。

偏見と無知だらけの議論によって、
障害に対するバイアスは障害者の命を現に脅かしているのである。
仮に考えてみよう、というような呑気な話ではないのだ。
障害者がそうして差別されてきた歴史は既に多くの文献が証明している。

で、Peaceがナイーブかもしれないけど、と言いながら
最後に提案しているのは、

We need to get people from Compassion and Choices and Not Dead Yet, lock them in a room and not let them out until they learn to show mutual respect for each other. We need to do the same with bioethicists like Peter Singer and Jeff McMahan and disability studies scholars such as Anita Silvers and Eva Kittay. I have always felt one can learn more from others who you strenuously disagree with. Such an encounter can force one to hone their views and writing.

C&C と NDYの関係者を一つの部屋に閉じ込めて、互いに尊重し合えるようになるまで部屋から出さない、ということをしなければ。

同じように、Peter Singer と Jeff McMahan のような生命倫理学者と、Anita Silvers と Eva Kittay のような障害学者も一部屋に閉じ込めるべき。

自分がどうしても同意できない相手からこそ、学ぶことが多いのだと私は常に感じてきた。そうした出会いにこそ、意見も書きものも研ぎ澄まされていく可能性があるはずだ。


Peaceは、今
ウ―レットのBioethics and Disabilityの書評を書いているとのこと。

ウ―レットのBioethics and Disabilityに関するエントリーは
以下にリンク一覧があります ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65111447.html


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一連の議論を読んで、私がいちばん「象徴的だなぁ」と感じたのは、
ドレイクの10月のNDYのブログコメント欄での「朝食をご馳走するから」という
ポウプの善意に滲んでいる、とても無邪気な傲慢。

それで思い出したのが、7月にピースがHCRに
「死の自己決定を教唆された」という体験エッセイを発表した時に、

それを受けてドレイクが
「体験そのものは障害者には珍しいものではないが
生命倫理学ジャーナルにそれが載ったことが大事件なのだ。
生命倫理学は障害者を議論から締め出してきたのだから」と書いたエントリーのこと ↓

あのBill Peaceが病院で「死の自己決定」を教唆されていた!(2012/7/17)
PeaceのエッセイにNot Dead Yetが反応し「生命倫理学は障害者の命の切り捨てに口を閉ざしている」(2012/7/18)


あくまでもアカデミズムの高みに留まって歩み寄ろうとしない生命倫理学の目線の高さと、
対等の議論の機会を許されず、声を届かせられずに苛立つ当事者――。

それが、あのポウプの
「私はスピーカーの一人だけど、聞きに来るんだったら次の日に朝食をご馳走するから、
発言のどこに問題があったか聞かせてくれないかな」という善意のコメントであり、

さらに彼のブログ・エントリーでの
NDYの存在はベタンコート事件の法廷でも、このシンポの会場周辺でも、
人々の意識を障害者の視点に向けるのに役立ったと「評価」する眼差しにも通じている気がする。

それが対等な議論の相手としてではなく、あくまでも抗議者としての相手に対して
高いところからの善意で「聞いてあげる」「認めてあげる」姿勢であることに
まったく気付かないまま――。
2012.12.07 / Top↑
前のエントリーからの続きです。


実際のシンポ当日、
NDYの関係者3人が会場で抗議のビラを配った。

それについて書かれたDrakeの11月19日のエントリーがこちら ↓

NDY Activists Leaflet Justice Action Center (NY Law School) Featuring Opponents Discussing “Disability Concerns” Without Including Disability Rights Activists to Speak for Ourselves
NDY, November 19, 2012


このエントリーによると、配られた抗議ビラの内容は
10月のDrakeのエントリーの第3パネルに関する部分の抜粋だけど、

ビラのタイトルを含め、主張の柱に
「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というスローガンとともに、
障害者のアドボケイトがシンポのスピーカーに含まれていないとの批判が追加されている。

エントリーには当日の写真が何枚かあり、
1枚では、シンポ会場入口付近でサッデウス・ポウプが
3人の一人で旧知のNadiana Laspinaさんと話をしている。

そのポウプはその後、
自身のブログでこの件について以下のエントリーを書いている。

Not Dead Yet and the NYLS End-of-Life Symposium
Medical Futility Blog, November 21, 2012


このエントリーでポウプが書いているのは、概ね以下。

① 3人の活動家が法科大学の奥にまで入れてシンポ会場までこれたことは、それまでのNDYのブログ活動とともに、終末期の医療の問題での障害者の視点への意識を高めてくれて良かった。
② Nadinaとは2010年4月にBetancourt事件の上訴審での弁護活動の際に出会った。あの日、法廷にNDYが抗議に来ていたことは、様々な弁論と同じく、3人の裁判官に向けた強力なメッセージになった。
(Betancourt事件については ⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60827258.html)
③ しかしこの度のシンポへのNDYの批判は本当にフェアで正確なのだろうか。ウ―レットも所属するアルバニー法科大学も、障害者の権利については多くの仕事を成してきたはずだ。
④ 問題となっている第3パネルの「特別な人々」という表現は、障害者だけでなく囚人など弱い立場の人が含まれていることから簡単に説明がつく。


この最後の点については、
ビル・ピースがコメント欄で反論し、
ここでも興味深いやり取りになっている。

ピ「弱い立場の人を特別と称すること自体が、軽視であり、
そういう表記に問題を感じないこと自体が、障害者の権利を理解していない証拠」

ポ「私はスピーカーの一人にすぎず、企画にはかかわっていない。
しかし言葉の選択がまずかったにせよ、200人を超える参加者があり、
それだけの人たちが障害者と囚人の視点を時間を割いて検討したことも事実と思う」

ピ「言葉の選択がまずかったのではなく、問題のある表現なのである。
囚人と障害者の問題は注目すべき大問題。どんどん悪くなる一方なのだから」

そのビル・ピースはシンポの翌日、
自身のブログでエントリーを書いている。

それについては次のエントリーで。
2012.12.07 / Top↑
11月16日にニューヨーク法科大学のJustice Action Centerのシンポジウム
「終末期の選択の自由―変わりゆく法的・政治的情勢における患者の権利」をめぐって、
Stephen DrakeらNot Dead Yetの関係者らが激烈な批判をし、
Thaddeus PopeやBill Peaceらがブログで反応して
興味深い議論となっているので、

それぞれを簡単に取りまとめてみた。

問題のシンポのサイトはこちら ↓
Symposium: Freedom of Choice at the End of Life
Patients’ Rights in a Shifting Legal and Political Landscape
A Justice Action Center Symposium
Friday, November 16, 2012


このシンポについて、まず10月にStephen Drakeが書いたエントリーがこちら ↓
NY Law School – Justice Action Center’s Upcoming Annual Justice Symposium Not Fair to Disability Advocates, Let Alone “Just”
NDY, October 24, 2012


この中でDrakeが指摘しているのは、

① 3つのパネルのいずれにも(自殺幇助合法化ロビー)C&Cの役員や関係者が含まれてモデレーターまで務めることになっており、これでは事実上、C&Cが企画し実施するシンポと変わらない。
② 3つ目のパネルの「特別な人たち、特別な問題」というタイトルにもC&Cの障害者に向ける意識が滲んでおり、価値中立ではない。
③ 障害者の権利アドボケイトの主張を取り上げるこのパネルで、障害者アドボケイトの懸念を代理する役割を振られているのは、最近刊“Bioethics and Disability”で障害者に理解ある生命倫理学者を気取るAlicia Ouelletteのようだが、同書でウ―レットは障害者アドボケイトの主張を正しく理解していない。そもそもBouvia,  McAfee, Schiavo事件に触れながら、彼女はそれらに直接かかわったアドボケイトに接触すら試みていない。
④ このパネルでは、障害者アドボケイトの主張が宗教右派の主張と作為的に重ねられて論じられることが予想される。Bill Peaceと親しいことを煙幕に、そうした混同を敢えて行って障害者アドボケイトの主張を捻じ曲げてきたAnn Neumannがスピーカーに含まれていることからも、シンポのサイトのパネルの趣旨説明からも明らか。


そして、Drakeは
社会正義の実現に向けて行動することを謳うセンターが
障害者アドボケイトや活動家の視点がフェアかつ正確に代表される配慮をしないことに対して、
また、こんなC&Cの茶番にこれら共催団体までもがこぞって賛同して見せることに対して、
「恥を知れ」と。


このエントリーには、無益な治療ブログの著者でこのシンポにも参加予定の
Thaddeus Popeからコメントが入っていて、とても興味深いやりとりになっている。

Popeは、「この言い方はひどい。自分もスピーカーだから、
NDYの代表者がシンポに来るのであれば、翌日に朝食をおごるから
スピーカーの発言のどこが間違っていたかを聞かせてくれないか」と書いている。

それに対して、Drakeが返しているのは、

酷いと思うのは、これまでのC&CやFENと障害者アドボケイトのやり取りを知らない証拠。
彼らの障害者コミュニティに対する姿勢は以下の2つのどちらかしかない。
① カトリックの主張との対立の構図を描く戦略のために、障害者はこの議論の部外者であるかのように装い、相手にしない。
② 障害者はこの問題でキリスト教右派と手を結んでいる、または彼らに操られているにすぎない、というスタンス。
ここでシンポについて書いたことの「ひどさ」など、私がこれまでの15年間に経験してきた「ひどさ」とは比べ物にもならない。
「朝食」については、あなたが求めているのは発言の質、不正確さやバイアスに関する専門的なレベルの分析と情報提供のはず。それなら朝食代くらいでは済まない。

実際のシンポ当日の出来事については次のエントリーで。
2012.12.07 / Top↑
最近ちょこちょこ目にするので気になっていたPOLSTを
NYTの社説が取り上げている。

POLSTとは、
Physician Orders for Life Sustaining Treatmentのことで、
生命維持治療に関する医師の指示書。

医師が主導して患者の終末期医療について話し合いをして
終末期医療に関する患者の意思を確認し、
医師の指示書という形で1枚の様式に記録しておく、というもの。

POLSTの公式サイト(英語)はこちら ↓
http://www.ohsu.edu/polst/programs/index.htm

日本語の説明は例えば、こちらに ↓ 
http://ichiba-md.com/medical/iryou/polst-2.html
http://www.c-mei.jp/BackNum/103n.htm

日本語版もできていて、こちらに ↓
http://www.ohsu.edu/polst/programs/documents/POLSTnewestwithJapanese.pdf


「適切に用いられれば、患者の受けたい治療が受けられる可能性が大きくなるのと同時に、
医療コストを削減するという2つ目のメリットもある」として、
NYTの社説はこのPOLSTにたいへん前向きで、
プロライフからのデマゴーグに負けずに普及させるべきだ、と。

(「患者が受けたい治療を受けられる」というよりも、システムの趣旨は
「患者が受けたくない治療をはっきりさせておく」という点にあると思うのだけど、
なぜかこの記事は「患者が望む治療を受けられる」という表現に終始する)

現在、NY州を含む15の州がPOLSTを用いることを認める法律や条例を作っており、
その他にも28の州で同様の方向性が打ち出されている。

一般には、医療機関ごとにPOLSTを患者に提案するかどうかを決めさせ、
使うかどうかは常に患者と家族の自発的な意思に任される。

医師が(州によってはナース・プラクティショナーや医師のアシスタントも)
患者や家族、代理決定権者との会話をリードし、
進行した病気のある患者が終末期にアグレッシブな生命維持を行うか、
それとも限定的な介入に留めるか、たんに緩和ケアやホスピスケアにするかを決めて、

患者が自分で決めることができない状態になった場合に備えて
救急医療やその他医療提供者に向けた医師の指示書として内容を1枚にまとめる。

多くの州では、インフォームド・コンセントの徴に
患者または代理者のサインが必要となる。

できあがると、患者の電子カルテの中にハイライトで記録され、
救急搬送されたり、ナーシング・ホームに入所しても
その患者が行く先々で患者の意思として尊重されることになる。

POLSTは1990年代にオレゴン州で使われ始めて、
現在では同州のほぼすべてのホスピスとナーシング・ホームで自発的に使われている。
(skilledなナーシング・ホームという表現があるのは
POLSTを使っているようなホームがケアの質が高い、との示唆か?)

事前指示書を書いている少なくとも5万人のオレゴン州民に
医師または看護師の署名入りのPOLSTがあるという。

このオレゴン・モデルは
ウィスコンシン州のGundersen Lutheran ヘルス・システムも採用し、
介護施設とホスピスの患者ほぼ全員にPOLSTが出ている。
家族も喜び、コストも下がった。

国内のメディケア・コストの比較データでは
2010年にはGundersonは終末期の患者の治療に関しては
全米で最もコストの低い病院群の中に含まれていた。

そこでウィスコンシン医師会は同州のほかの地域でも
Gundersonアプローチを試みるパイロット企画を立てたが、
カトリックの主教たちからの安楽死のリスクがあるとの強硬な反対を受けてとん挫。

結局、パイロット企画は
健康な成人に事前指示と代理決定者の任命をしておくよう提唱するに留まることに。

2009年のオバマ医療改革法案に含まれた同様のシステムの提案が
右派や共和党から「死の委員会」だと批判されて削除されたことで
こうした改革は時間がかかってしまったが、

終末期医療についての話し合いと医師による指示書があることは
患者がいざその時に自分の意思を尊重してもらえるという安心感に繋がって、
医学的利益もない高価な検査や思い切った医療の回避につながるはずである、と。

Care at the End of Life
NYT, November 24, 2012


すぐに頭に浮かんだのは、
一方には「無益な治療」法の広がりがあるんだけれど、
これらの整合性って、どういうことになるんだろう??

患者がPOLSTで「やってほしい」と望んでいる終末期の治療があるとして、
病院側が「それはこの患者には無益」と判断した場合には……?


それにしても、
これもまたオレゴン州から、かぁ……。

そして、続こうとしたのが
Norman Fostのおひざ元、ウィスコンシン州……。


【関連エントリー】
障害者差別としてボツになった配給医療基準「オレゴン・プラン」が、HIMEによってグローバルに復活することの怪(2011/12/20)


【28日追記】
案の定、Thaddeus Popeのブログに
VT州では、治療が無益な場合には患者本人にも代理決定者にもコンセントをとらずに
DNR指定するツールとしてPOLSTが使われている、との情報がアップされています。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/polst-dnar-without-consent.html
2012.12.07 / Top↑
【POLSTについて】

最近あちこちで目にして気になっていたPOLST(Physician Orders for Life Sustaining Treatment)をNYTが取り上げている。事前指示書を患者の判断で書かせようとしてもなかなか普及しないから、医師の主導で話し合いを持って患者から聞き取る形で医師に作成させよう、という意図のもの? オレゴン・プランやろうとしたり自殺幇助を合法化しているオレゴン州がやっている、というのがなんだか……? オレゴン・プランについては、こちら ⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64513213.html
http://www.nytimes.com/2012/11/25/opinion/sunday/end-of-life-health-care.html

POLSTの公式サイト。
http://www.ohsu.edu/polst/programs/index.htm

POLSTの日本語の説明。
http://ichiba-md.com/medical/iryou/polst-2.html

もう一つ、日本語のPOLSTの説明。「オレゴン州では1991年にPOLST(The Physician Orders for Life-Sustaining Treatment:生命維持治療に関する医師の指示)が試行された。効果の期待できなくなった人への不必要なあるいは無駄な医療を行わないようにするもので、あらかじめ一定の書式が用意され、医師は本人や家族と終末期にどのような治療を受けるか話し合って、その意向に従って、急変時の蘇生術、病院への 搬送や侵襲的医療行為、経管栄養、抗生物質の使用など具体的な指示を医師が記入するようになっている。2004年の調査によると、オレゴン州のナーシング ホームの71%で行われ、88%の入所者がPOLSTを利用していた」
http://www.c-mei.jp/BackNum/103n.htm

POLSTの日本語版。
http://www.ohsu.edu/polst/programs/documents/POLSTnewestwithJapanese.pdf


【その他の話題】

世界で最も長く42年間も意識不明状態だったフロリダの女性Edwarda O’baraさんが21日に亡くなった。16歳で肺炎と糖尿病の合併症で意識不明になる前、最後に母親に行った言葉が「どこへも行かないで」だったことから、母親が24時間介護を続けた。母親が2008年に亡くなってからは妹(姉?)が介護してきた。妹は「話しかけると注目しているのは目を見れば分かった」亡くなる直前、「まっすぐ私を見て、今まで見たこともない大きな微笑みを浮かべた」。それでもコラムの解説には「意識不明状態だと意識があるように見えることもあるが、意識的に感じることも話したり聞くことも動くこともできない」。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2237593/Floridas-Sleeping-Snow-White-dies-42-YEARS-coma--longest-recorded----mother-sister-left-side.html

自殺幇助をビジネスにした3人の男を主人公にしたコメディがBBCに。
http://hotair.com/greenroom/archives/2012/11/24/great-news-assisted-suicide-sitcom-coming-to-bbc/
http://www.atvtoday.co.uk/3329-assisted-suicide-sitcom-for-bbc-three/
http://www.digitalspy.co.uk/tv/news/a440181/inbetweeners-star-for-bbc-three-assisted-suicide-comedy.html

英国NHSでコストカットが優先されるあまり、患者の10人に1人は敬意と尊厳ある扱いを受けられていない。ケアの質コミッションからの報告書。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/23/nhs-cost-cutting-patients-welfare
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/22/shocking-treatment-nhs-hospitals-care-homes

4Dのスキャンで胎児のあくびとただ口を開けている違いまで分かるように。「健康な乳児の識別に役立つ」とMNT。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/253139.php

出国を「電子追跡」、女性の自由制限するサウジ政府。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121125-00000008-jij_afp-int

サウジ国王、車運転した女性へのむち打ち刑を撤回。
http://www.afpbb.com/article/politics/2831430/7836455

全日本おばちゃん党 始動。
http://osakanet.web.fc2.com/AJOP/
2012.12.07 / Top↑
英国で問題になっているLCPを家族の同意なく適用されたとして、Alan Boothさん「医師らに妻を殺された。自然死でもないしガンで死んだのでもない。死なすためのLCPにされたんだ。そうしておいて、それを「ケア」だというんだから」。保健相は、LCPは家族の同意なしには適用されないはず、と。:でも今英国で問題になっているのは、一方的かつ機械的なLCPの適用。ついこの前、NHSが実態調査を約束したばかり。⇒ LCPの機会的適用でNHSが調査に(2012/10/28)
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/man-claims-doctors-murdered-my-wife.html

中国で自殺幇助合法化の声。
http://www.scmp.com/article/1086568/legalisation-assisted-suicide-option-china

安楽死防止連合のAlex Schadenbergが“Exposing Vulnerable People to Euthanasia and Assisted Suicide”という本を出版。カナダの自殺幇助合法化議論を中心に、ベルギーやオランダのデータも分析し、弱者がいかに危険にさらされることになるか、という内容みたい。
http://www.lifenews.com/2012/11/19/new-book-exposes-how-assisted-suicide-euthanasia-prey-on-people/

11月16日にNYロー・スクールで行われたシンポ「終末期の選択の自由」で「特別な人たち、特別な問題」と題して障害者と囚人に特化したパネルを設定しながら、そこに障害当事者を含んでいないことに対して、Not Dead Yetの活動家3人が抗議のビラを配った。その中で、パネリストの一人Alicia Ouelletteについても、著書“Bioethics and Disability”で障害者に理解のある生命倫理学者を気取ろうとしているが、障害者アドボケイトの主張に対する理解が間違っている、と痛烈に批判。:私はアシュリー事件からのOuelletteの論文など一連の流れの先にあの本を読むと、ある種のナイーブさは鼻につくけど、生命倫理に対して障害者運動の声にもっと誠実に耳を傾けろ、というOuelletteの呼びかけは真摯なものと感じるんだけど。あと、Thaddeus Popeも、Ouellette自身も彼女の所属するAlbany Law Schoolも障害者の権利については多くの仕事を成してきたのに、その批判は本当にフェアなものか、とブログでコメントしている。ウ―レットの本についてはこちらにリンク一覧 ⇒ Ouellette「生命倫理と障害」最終章:障害に配慮した生命倫理に向けて(2012/5/18) 
http://www.notdeadyet.org/2012/11/ndy-activists-leaflet-justice-action-center-ny-law-school-featuring-opponents-discussing-disability-concerns-without-including-disability-rights-activists-to-speak-for-ourselves.html

C&Cの年次報告。:Thaddeus Popeが「C&Cほど終末期の自己決定権と安全を守るための努力を払っている組織はない」と書いているのに、ちょっとびっくりした。
http://viewer.zmags.com/publication/98abaf6f#/98abaf6f/44

日本語。Togetter で「風船も検査もできないヘリウム不足がきた」:C&Cは薬の多剤併用だけど、FENはヘリウムを使う……。
http://togetter.com/li/410671

米国CA州のナーシングホーム入居者の権利擁護団体CANHRによる、NHでの高齢者への抗精神病薬投与防止キャンペーン・サイト。
http://www.canhr.org/stop-drugging/

ガーナでもゲイツ財団による農業改革。
http://www.ghanabusinessnews.com/2012/11/21/two-ghanaian-districts-to-benefit-from-bill-gates-funded-farming-project/

ハーバードやMITのオンライン授業が地方の小規模大学でも受けられるように、ゲイツ財団の資金で。
http://www.newstrackindia.com/newsdetails/2012/11/20/79-Bill-Gates-foundation-to-fund-new-online-teaching-model-in-US.html

ヨーロッパで医療費が何十年ぶりに縮小。OECD。
http://www.oecd.org/newsroom/healthspendingineuropefallsforthefirsttimeindecades.htm

日本。生活保護受給者の受診回数制限 自民検討チームが改正案
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121120-00000044-asahi-pol

英国教会、女性主教を認めず。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/nov/20/church-of-england-no-women-bishops

2006年にインドネシアで1日に248人の女児に女性器切除が行われた。その場に居合わせたジャーナリストのレポート記事。ハサミでクリトリス切除……。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/18/female-genital-mutilation-circumcision-indonesia

世界中で毎日45人の子どもたちが性的搾取を受けている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/21/child-risk-sex-exploitation-gang

タイで浮気した夫のペニスを妻が切り取る事件が続発して、調査に。:タイやベトナムの女性のこういう「強さ」については、近藤紘一さんのベトナムものシリーズで何度も紹介されていたっけな。
http://www.guardian.co.uk/education/2012/nov/19/improbable-research-thai-women-cut-off-penis

世界中の使用者を対象にした、薬物使用に関する大規模調査が今日から始まる。インターネットで。約20分かかるそうな。何を、どういう理由で、どのくらいの頻度で使い、その結果、社会的に医学的に法的に、どういうことが起きたか、について。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/22/independent-drug-use-survey-launched

英国NHSの病院とケアホームは今だに質が低く、患者が不当な扱いを受けている、という報告書。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/22/shocking-treatment-nhs-hospitals-care-homes

日本。「子どもの予防接種」なぜ必要? 自身と周囲を感染症から守る
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121122-00000519-san-soci

日本。NHKがんワクチン報道がダメな訳(2012年11月18日)
http://togetter.com/li/409474

あの人に会った:乙武洋匡さん 作家:新刊小説『だいじょうぶ3組』について、「この小説は経験をもとにしたフィクション。割とハッピーエンドで終わっていますが、実際はそうでないこともありました。あったことをそのまま書くか、フィクションにするか迷いました」。
http://mainichi.jp/feature/maisho/news/20121014kei00s00s018000c.html

漫画家さかもと未明さんの「再生JALの心意気」騒動と、その続報。:飛行機の中で起こったことの内、書かれてないことがあるよね……というのを最初に思った。「着陸準備中の機内を、出口に向かって走り始めた。その途中で、子供とお母さんにはっきりいった」と「そして私は、陸に降りても、激しくクレームをし続けたのでした」の間で、走り始めた彼女はACによって阻止され、たしなめられたはずなのだけれど、そのことはまったく書かれていない。それは彼女が「私は飛行機で騒ぎを起こして叱られた」という事実を「私は泣きわめく赤ちゃんの迷惑問題に対して、前向きな問題提起をしJALに改善策を要求したのだ」という事実に書き替えるために、「クレームをし続けた」のであり、その事実の書き換えを自分に対して定着させるために、この文章を書かないでいられなかったからなのでは? さかもとさんは、自分がしたこと、その結果起こった出来事に屈辱感を味わい傷ついたのではないか、それ以後の言動はすべて、その自尊感情の傷つきの修復作業だったのではないか、という気がする。そして、最初の文章を書いてゴウゴウの非難を浴びたことからの屈辱感と自尊感情の傷つきを修復するために、また次の文章を書くしかなかったのかな、と。事実を自分の中で無意識に書き替えるというのは誰でもある程度はやることだけれど、事実の書き換えを確認したり定着させるために新たな行動を起こしてまで自分の傷つきを否認しなければならない人は、永遠に事実の書き換えをやり続け、それをどんどん習性にしていくしかなくなるような気がする。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121119-00000002-voice-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121122-00000005-rbb-ent
2012.12.07 / Top↑
侵襲度の低い新型出生前診断については、
英語圏で問題になっていた08年、09年を中心に考え書いてきたので、
日本で議論になってからは9月に以下のエントリーを書いたきりですが、

ダウン症の新型検査をめぐって(2012/9/9)


10月末に米国からダウン症の専門医が来日したことに関連して、
以下のニュースなどがありました。

妊婦に最新、十分な情報を 米専門医が重要性強調 新出生前診断の導入で
47NEWS, 2012年11月20日


このインタビューの中で、
マサチューセッツ総合病院のダウン症プログラム共同主任、
ブライアン・スコットコー医師が語っている「2008年にできた連邦法」の
前後の議論については、当ブログでいくらか追いかけているので、
同法関連のエントリーを以下に。

障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/4/1)
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案つぶれる(2008/7/29)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)


なお、スコットコー医師らの調査結果について
詳細なデータとともに日本語で取りまとめてある記事を見つけました ↓
圧倒的多数の親がダウン症の子どもを持つ決断に満足
DS21.INFO, 2011年10月24日


また、この問題をめぐる米英での議論や関連事件のエントリーは以下。

2007年
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)

2008年
「中絶決断に情報提供不要」ヒト受精・胚法議論(2008/6/1)
羊水穿刺より侵襲度の低いダウン症検査、数年以内に(2008/10/8)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)

2009年
“乳がん遺伝子ゼロ”保証つき赤ちゃん英国で生まれる(2009/1/10)
受胎前遺伝子診断:巧妙な言葉の操作が優生思想を隠ぺいする(2009/1/16)
出生前遺伝子診断で「あれもこれも調べたい」って?(2009/2/2)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
非侵襲出生前診断の倫理問題をJAMA論文が指摘(2009/5/28)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)

2010年
アニメ・ソング「ダウン症ガール」巡り「コケにされる平等」インクルージョン論争(米)(2010/8/31)
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)

2012年
IVFの妊娠でダウン症を理由に中絶、5年間で123人(英)(2012/7/24)
「ダウン症だから」と本人にも家族にも無断でDNR指定(英)(2012/9/13)
2012.12.07 / Top↑