(前のエントリーの続きです)
③Angelaの「生命の危機」はもちろん、健康問題すらどこにあるのかがはっきりしない。
・「エビデンスにより、子宮摘出は緊急であり必要」とも
どうせAngelaは普通の青少年・成人として暮らすメリットはないのだから、
長期的な影響を考えるには値せず、「短期的問題の方が重要」として、
短期的には「健康全般とともに生命の危機が基本的な問題」とされているのですが、
非常にあちこちに分散されて説明され(わざとかと思うほど)把握しにくくなっている
Angelaの健康状態に関する事実関係を整理してみると、
どうせAngelaは普通の青少年・成人として暮らすメリットはないのだから、
長期的な影響を考えるには値せず、「短期的問題の方が重要」として、
短期的には「健康全般とともに生命の危機が基本的な問題」とされているのですが、
非常にあちこちに分散されて説明され(わざとかと思うほど)把握しにくくなっている
Angelaの健康状態に関する事実関係を整理してみると、
・出血が非常に多く、血の塊もある上に、特に夜間などに漏れるなど、
衛生上の問題が生じるほどである(母親)というのですが、
大量の出血は「2007年11月に収まった」のだから、解決している。
衛生上の問題が生じるほどである(母親)というのですが、
大量の出血は「2007年11月に収まった」のだから、解決している。
(ちなみに2007年とは、Angela9歳。初潮の年です)
・2007年11月に多量の出血が収まった際に、「貧血になっていたので、
鉄剤の治療で正常範囲に戻さなければならなかった」というのですが、
こう書いてあるのだから、結局これも解決している。
鉄剤の治療で正常範囲に戻さなければならなかった」というのですが、
こう書いてあるのだから、結局これも解決している。
・生まれた時からてんかんの発作があって、母親の話で
「生理が重い時に起こりやすい。発作の予兆は様子を見ていればなんとなくわかるが、
不順な生理がいつ起こるか分からないので、いつも気が抜けない」「生理が重い時によく起こる」
しかし、一方「てんかん発作は現在のところ薬でコントロールできている」とも
書かれているので、それなら母親の証言内容は、以前の話なのでは?
「生理が重い時に起こりやすい。発作の予兆は様子を見ていればなんとなくわかるが、
不順な生理がいつ起こるか分からないので、いつも気が抜けない」「生理が重い時によく起こる」
しかし、一方「てんかん発作は現在のところ薬でコントロールできている」とも
書かれているので、それなら母親の証言内容は、以前の話なのでは?
・また、発作の頻度や、程度、発作によって重積状態に至ったことがあるのかないのか、
発作そのものがAngelaに及ぼす影響は具体的に何なのかについては、
まったく情報が出てきた様子はない。
発作そのものがAngelaに及ぼす影響は具体的に何なのかについては、
まったく情報が出てきた様子はない。
・以上の事実関係から、現在も続いている健康問題は
生理による「痛みと疲れ」。それから「生理が重いと発作が引き起こされる可能性(can)」のみ。
生理による「痛みと疲れ」。それから「生理が重いと発作が引き起こされる可能性(can)」のみ。
・経口の避妊薬やDepo Provera(Diekema医師の03年論文で特記されていた薬)を含め
様々な治療が行われたが満足な効果が得られなかった、とある(現在完了形)のが
何を目的にした「治療」なのか、どういう「効果」がなかったのが不明。
様々な治療が行われたが満足な効果が得られなかった、とある(現在完了形)のが
何を目的にした「治療」なのか、どういう「効果」がなかったのが不明。
「痛みと疲れ」と「けいれん発作を誘発する可能性」、
「母親のケア負担」をなくすこと(後半になって突然出てきます)だけを目的に
生理そのものを止める「治療」が試みられていたのでは?
「母親のケア負担」をなくすこと(後半になって突然出てきます)だけを目的に
生理そのものを止める「治療」が試みられていたのでは?
それでは子宮摘出を医師が「唯一の治療法」と主張するのも、
「生理を止めることを目的とすれば」あとは子宮摘出だけが「唯一の治療」ということでしかありえず、
「生理を止めることを目的とすれば」あとは子宮摘出だけが「唯一の治療」ということでしかありえず、
まるで貧血を防いだり、けいれん発作を防ぐための「唯一の治療」であるかのような印象を
全文を通じて与えているのは、非常に恣意的なミスリードだということになる。
全文を通じて与えているのは、非常に恣意的なミスリードだということになる。
これら事実関係のどこにも「健康一般」改善の必要、
まして「緊急」に回避すべき「生命の危険」は見当たらない。
まして「緊急」に回避すべき「生命の危険」は見当たらない。
したがって、なぜ子宮摘出が「緊急」で「必要」なのかについては全く説明されていない。
④手術のリスクの検討は、重大な事実から目をそむけている。
・判事は医師らが「手術のデメリットは非常に少ない。
内臓を傷つける可能性がないことはないが、開腹手術は初めてだから大丈夫だろう」
というので満足しているが、
内臓を傷つける可能性がないことはないが、開腹手術は初めてだから大丈夫だろう」
というので満足しているが、
Angelaは以前に全身麻酔で埋め込み型避妊薬のロッドを入れる手術を受けており、
その際には感染症を起こして術後1カ月difficult consequencesを体験している。
しかし、この事実は子宮摘出手術のリスク検討で全く顧みられていない。
その際には感染症を起こして術後1カ月difficult consequencesを体験している。
しかし、この事実は子宮摘出手術のリスク検討で全く顧みられていない。
⑤結論では、根拠が「生命の危険回避」から「QOLが向上する」ことにすり替わっている。
他に、「母親の生理ケア負担が軽減される」ことも持ち出されており、
一体何の目的で行われる子宮摘出なのか、何を根拠に認めるのかが曖昧なまま
「法にのっとって判事が子どもの最善の利益と判断したのだ」と言い張っている。
一体何の目的で行われる子宮摘出なのか、何を根拠に認めるのかが曖昧なまま
「法にのっとって判事が子どもの最善の利益と判断したのだ」と言い張っている。
―――――――
個人的に特に不可解だと感じる点は、
なぜ11歳で判断してしまわないといけないのかという点。
なぜ11歳で判断してしまわないといけないのかという点。
・あれこれ検査しても生理不順や多量の出血の原因は不明だった、とされているのですが、
生理って、始まりの数年間は不順だし量も多いのが普通なのではありませんか?
生理って、始まりの数年間は不順だし量も多いのが普通なのではありませんか?
でも、たいていの女性は、そのうち周期も量も安定してくるのだとすれば、
現在12歳になる直前だというAngelaは07年には9歳、初潮の直後。
割と早期に大量の出血は収まったということになるし、
初潮から2年や3年しかたっていない子どもの生理不順を根拠に、
子宮摘出を「唯一の治療法」だと、目的不明のまま、正当化する産婦人科医というのが理解できない。
現在12歳になる直前だというAngelaは07年には9歳、初潮の直後。
割と早期に大量の出血は収まったということになるし、
初潮から2年や3年しかたっていない子どもの生理不順を根拠に、
子宮摘出を「唯一の治療法」だと、目的不明のまま、正当化する産婦人科医というのが理解できない。
・また、私は専門家ではないし、娘もRett症候群ではないけど、
うちの娘にも難治性のてんかんがあって、てんかんのある重症児は沢山見てきました。
うちの娘にも難治性のてんかんがあって、てんかんのある重症児は沢山見てきました。
確かに、生理の時に発作が起きやすいということは、あるかもしれない。
私は娘が小さい頃は、低気圧の日は要注意だと感じていました。
私は娘が小さい頃は、低気圧の日は要注意だと感じていました。
ただ、てんかん発作も生理と同じように子ども期から思春期を経て成年期へと
ライフサイクルによる変化が非常に大きいような気がする。
思春期に増加傾向を見せ、青年期に落ち着くというパターンが
一般的にはあるんじゃないでしょうか。
ライフサイクルによる変化が非常に大きいような気がする。
思春期に増加傾向を見せ、青年期に落ち着くというパターンが
一般的にはあるんじゃないでしょうか。
それなら、何度も重積を起こして死にそうになったというのでない限り、
あと数年は様子を見てから考える余地だって十分あるような気がするのですが
この点、日本の専門家のお医者さんたち、いかがお考えでしょうか。
あと数年は様子を見てから考える余地だって十分あるような気がするのですが
この点、日本の専門家のお医者さんたち、いかがお考えでしょうか。
以下の米国イリノイ州の検討過程と比べてみてもらうと、
この判決の検討姿勢がいかにいかがわしいか、よく分かると思います。
この判決の検討姿勢がいかにいかがわしいか、よく分かると思います。
イリノイの上訴裁判所 知的障害助成の不妊術認めず(2008/4/19)
IL不妊手術却下の上訴裁判所意見書(2008/5/1)
ILの裁判からAshley事件を振り返る(2008/5/1)
ILの裁判から後見制度とお金の素朴な疑問(2008/5/1)
IL不妊手術却下の上訴裁判所意見書(2008/5/1)
ILの裁判からAshley事件を振り返る(2008/5/1)
ILの裁判から後見制度とお金の素朴な疑問(2008/5/1)
その他に、非常に大きな問題点として、
Ashley事件でのDiekema医師らの正当化の論理が
そのまま使いまわされているとしか思えない点、
Ashley事件でのDiekema医師らの正当化の論理が
そのまま使いまわされているとしか思えない点、
Ashley事件で出てきた批判を前提に、
それに対してあらかじめ応えておく、といった箇所などが多々あり、
それに対してあらかじめ応えておく、といった箇所などが多々あり、
AngelaケースはAshley事件からKatie事件に繋がる大きなキャンペーンの中に
十分に意識的に位置付けられているという感じを受けるのですが、
これについては、また別途まとめます。
十分に意識的に位置付けられているという感じを受けるのですが、
これについては、また別途まとめます。
2010.03.11 / Top↑
Angelaケースの判決文を読んでみました。
絶句……。
正直、私はもう気力がなくなりそうです。
が、どうも口だけは勝手に動く業でも背負っているみたいなので
「なんで、こんなのがまかり通るんだ?」と頭の血管がブチ切れそうになった
問題点をまとめてみました。
が、どうも口だけは勝手に動く業でも背負っているみたいなので
「なんで、こんなのがまかり通るんだ?」と頭の血管がブチ切れそうになった
問題点をまとめてみました。
全部で5点あるので、2つのエントリーに分けます。
英語で書くための論点整理など準備段階として、ちょっと先走りでアップしています。
この後、あれこれと細かく修正していく可能性はありますので、どうぞ、ご了承ください。
英語で書くための論点整理など準備段階として、ちょっと先走りでアップしています。
この後、あれこれと細かく修正していく可能性はありますので、どうぞ、ご了承ください。
また、医学・法学の専門知識などない素人が分析したものですから、
専門家の方々からフィードバックいただけると非常にありがたいです。
よろしくお願いいたします。
専門家の方々からフィードバックいただけると非常にありがたいです。
よろしくお願いいたします。
①判決理由を一言で要約するなら
「判事の私が親と医師らの言う通りでいいと思うから」を超えるものではない。
「判事の私が親と医師らの言う通りでいいと思うから」を超えるものではない。
② Angela自身の利益を代表する「中立の、子どもの弁護士:
Independent Children’s Lawyer」の任命と敵対的審理が検討手続きから省かれている。
Independent Children’s Lawyer」の任命と敵対的審理が検討手続きから省かれている。
その理由とは
・1975年の家族法の規定は
「必要とみなした場合に、裁判所はICLを任命してもよい」というものであり、
私はこのケースではICLの任命はAngelaの最善の利益にならないと考えた。
「必要とみなした場合に、裁判所はICLを任命してもよい」というものであり、
私はこのケースではICLの任命はAngelaの最善の利益にならないと考えた。
・なぜICLの任命がAngelaの最善の利益にならないと考えるかという理由は2点で、
a.ICLの仕事の1つは調査だが、調査なら両親の弁護士と主治医とによって
包括的かつ広範に、既に行われているので、これ以上の調査は必要がない。
包括的かつ広範に、既に行われているので、これ以上の調査は必要がない。
b.IClを任命したとすれば役割は反論することだが、
治療のデメリットについては主治医が述べていることで十分。
治療のデメリットについては主治医が述べていることで十分。
(ただし、判事が意見を採用した3人の医師のうち1人が主治医で
あとの2人の意見書も主治医が書いてもらって提出したもの)
あとの2人の意見書も主治医が書いてもらって提出したもの)
この公判には地域局の局長代理としてMr.Gが加わっており、
Mr.Gは賛成も反対もしていない。それは反論する必要がないからである。
公益を代表する地域局が中立を保っているのは
現在のエビデンスで十分だからである。
特に地域局が母親の立場に反対していない点を重視。
Mr.Gは賛成も反対もしていない。それは反論する必要がないからである。
公益を代表する地域局が中立を保っているのは
現在のエビデンスで十分だからである。
特に地域局が母親の立場に反対していない点を重視。
(この後、関連の法文からICLの職務に関する項目を羅列し)
「これらの規定に鑑みて、
Angelaがこのケースで代理されることには利益がないと考えることに私は問題を感じない」と結論。
Angelaがこのケースで代理されることには利益がないと考えることに私は問題を感じない」と結論。
しかし、その結果、そこに引用された規定の中でICLの仕事とされている、
(5)の(c)手続きの過程で当人に関する報告や文書が使われることになる際には
その内容を分析して、最も子どもの最善の利益の決定に重要と考えるものを見極めて
裁判所がそれらの事項に適切に注意を払うことを保証する、ことや
その内容を分析して、最も子どもの最善の利益の決定に重要と考えるものを見極めて
裁判所がそれらの事項に適切に注意を払うことを保証する、ことや
(5)の(d)手続きに関連して子どものトラウマが最小になるよう努める、こと、
(5)の(e)それが子どもの最善の利益になるように問題解決の合意を手助けする、こと
は誰によっても行われなかったことになるし、
・一方「地域局の局長代理のMr.Gなる人物は
如何なる法的資格によって参加しているのか」
「地域局による公益判断は、このような“特別医療”の判断において
法的にどういう位置づけで重要視されるのか」については全く説明されていない。
如何なる法的資格によって参加しているのか」
「地域局による公益判断は、このような“特別医療”の判断において
法的にどういう位置づけで重要視されるのか」については全く説明されていない。
・「親と医師らのいう通りに、子宮摘出は本人利益だと判事が考えるので、
本人利益を代表するICLは本人の利益にならない」とは、一体どういう検討“プロセス”なのか。
本人利益を代表するICLは本人の利益にならない」とは、一体どういう検討“プロセス”なのか。
こんなの、すべて、本人のみの利益を代理する人を除外するための牽強付会の合理化に過ぎない。
・ついでに指摘しておくと、
「この子宮摘出は不妊を目的とするものではなく不妊は結果に過ぎないので、
本当は特別医療の規定対象にならないのだけれども、
侵襲度が高く不可逆であることから、敢えて高裁の判例によって判断する。
関連法では、親ではなく裁判所の命令で、ということなので親ではなく判事の私が判断した。
「この子宮摘出は不妊を目的とするものではなく不妊は結果に過ぎないので、
本当は特別医療の規定対象にならないのだけれども、
侵襲度が高く不可逆であることから、敢えて高裁の判例によって判断する。
関連法では、親ではなく裁判所の命令で、ということなので親ではなく判事の私が判断した。
また、子どもの福祉に関する命令を出す時には
裁判所は子どもの最善の利益を最優先にしろということなので
それに従って、子宮摘出が最善の利益だと私が判断した」ということも
書かれているのですが、
裁判所は子どもの最善の利益を最優先にしろということなので
それに従って、子宮摘出が最善の利益だと私が判断した」ということも
書かれているのですが、
そのプロセスは上記の通り。これでは
「私に権限がある、その権限で私が認めた。文句あるか?」と言っているに等しい。
「私に権限がある、その権限で私が認めた。文句あるか?」と言っているに等しい。
(次のエントリーに続く)
2010.03.11 / Top↑
今朝のエントリーで紹介した豪の重症児の子宮摘出訴訟について。
えらそーにリンクしてみたものの、実は判決文はまだ読めていないので、
事実関係の情報ソースは以下の記事3本のみです。
事実関係の情報ソースは以下の記事3本のみです。
(その後、読んで、こちらにまとめました。)
Parents win permission to sterilize their profoundly disabled 11-year-old daughter
The Mail, Mach 10, 2010
The Mail, Mach 10, 2010
(Telegraphは Ashley事件には触れているのに自国の Katie事件には一切触れていない)
【とりあえずの事実関係の整理】
・名前はAngelaとのみ。11歳。
・レット症候群。
・意思疎通できない。
「三か月児のようにふるまう acts as a three-month-old baby would」
話すことができない。
身体の動きを制御することができない。
食事も移動も入浴も両親の介助に依存。
「膀胱をコントロールできないのでオムツを使用」。
立つことができないので、(歩く時は?)特殊な歩行枠に「体を縛り付けなければならない」。
「三か月児のようにふるまう acts as a three-month-old baby would」
話すことができない。
身体の動きを制御することができない。
食事も移動も入浴も両親の介助に依存。
「膀胱をコントロールできないのでオムツを使用」。
立つことができないので、(歩く時は?)特殊な歩行枠に「体を縛り付けなければならない」。
・生まれて以来てんかん発作があるが、現在は薬でコントロールできている。
9歳の時から生理の出血が多いと発作が起こりやすい(「と両親は考えている」との表現も)。
母親の話では生理の不順で痛みと疲れがある。
母親の話では3人の産婦人科医が子宮摘出が最善の解決策だと合意した、とのこと。
9歳の時から生理の出血が多いと発作が起こりやすい(「と両親は考えている」との表現も)。
母親の話では生理の不順で痛みと疲れがある。
母親の話では3人の産婦人科医が子宮摘出が最善の解決策だと合意した、とのこと。
・2009年3月に専門家から子宮摘出を勧められたが
Queensland Health(英国のNHSに当たる)は弁護士の助言により
裁判所の命令なしにはできないと判断した。
Queensland Health(英国のNHSに当たる)は弁護士の助言により
裁判所の命令なしにはできないと判断した。
・オーストラリアでは92年に、子どもへの侵襲度の高い不可逆的な医療については
親の判断ではなく裁判所の命令が必要と高等裁判所の判例があり、
それに基づいて、家庭裁判所が判断することとなっている。
親の判断ではなく裁判所の命令が必要と高等裁判所の判例があり、
それに基づいて、家庭裁判所が判断することとなっている。
・判決は子宮摘出について「緊急であり必要だった」
「Angelaには正常な青少年・大人として生活することはできない」
「検討の基本は、Angelaの健康全般と生命へのリスク」
「Angelaには正常な青少年・大人として生活することはできない」
「検討の基本は、Angelaの健康全般と生命へのリスク」
・Brisbane 家庭裁判所のPaul Cronin判事は
この決定はAngelaの生活を改善し、したがって「本人の最善の利益だ」と。
この決定はAngelaの生活を改善し、したがって「本人の最善の利益だ」と。
・両親は南アメリカで結婚、91年にオーストラリアに移住。
【メディア記事に引用された各方面のリアクション】
Mark Patterson, the National Council on Intellectual Disability
92年以降のシステムが良好に働いた事例として、支持。
人権よりも、“本人の尊厳”が優先されたケースだ、とも。
人権よりも、“本人の尊厳”が優先されたケースだ、とも。
「こういう子の家族は、本当に大変な思いをしてきているんです。
できる限りの手を尽くしてから、お手上げ状態となり
『これ以上、どうすればいいんだ?』と言っているんです。
そういう人の言うことなんだから、give them a bit of a break 聞いてあげましょうよ」
できる限りの手を尽くしてから、お手上げ状態となり
『これ以上、どうすればいいんだ?』と言っているんです。
そういう人の言うことなんだから、give them a bit of a break 聞いてあげましょうよ」
「難しい問題ですが、我々としては現実的に考えます。
我々が不妊手術をダメだと言ったら、家族の日々の生活は楽になりませんからね」
我々が不妊手術をダメだと言ったら、家族の日々の生活は楽になりませんからね」
(この人だけは、3本の記事のすべてに登場しています。
どうも、ちょっと、言うこともヘンだ。まさか、手が回っている……?
それとも、ここは知的障害者のアドボケイトじゃなくて親のアドボケイトなのか?)
どうも、ちょっと、言うこともヘンだ。まさか、手が回っている……?
それとも、ここは知的障害者のアドボケイトじゃなくて親のアドボケイトなのか?)
Dr. Leanne Dowse, the University of NSW
「2008年7月にオーストラリアは国連障害者人権条約に署名している。
条約は障害者に身体の統合性を尊重される権利を認めている。
それは、すなわち、こういうことから障害者が守られることが第一義」
条約は障害者に身体の統合性を尊重される権利を認めている。
それは、すなわち、こういうことから障害者が守られることが第一義」
Carolyn Frohmader, Women with a Disability Australia
「不妊手術と言えば、いつでも女の子ばかり。
不妊の事例を調べてみたら分かりますが、男の子は一人もいません。
どんなに知的障害が重くても、男の子はいないんです」
不妊の事例を調べてみたら分かりますが、男の子は一人もいません。
どんなに知的障害が重くても、男の子はいないんです」
Therese Sands, People with Disabilities Australia
「未だに子どもたちが不妊手術を行われているなんて問題だと思います。
私たちの考えでは、判事であろうと親であろうと、それが生死にかかわるのでない限り
子どもに不妊手術を行う権利は誰にもありません」
私たちの考えでは、判事であろうと親であろうと、それが生死にかかわるのでない限り
子どもに不妊手術を行う権利は誰にもありません」
Daily Mailに引用された「ある障害児の母親」
「これに関してはAngelaの両親に完全に賛成。
重症児の娘がいて、ずっと闘い続けているのだけど、
まだ娘の子宮摘出を実現できていません。
生理の間は、癇癪を起すし、ものすごく攻撃的になるんです」
重症児の娘がいて、ずっと闘い続けているのだけど、
まだ娘の子宮摘出を実現できていません。
生理の間は、癇癪を起すし、ものすごく攻撃的になるんです」
(こういう理由で許されるとなると、重症児だけではなく、
いろんな障害児に適用されていきそうですが)
いろんな障害児に適用されていきそうですが)
【ブログ:支持】
この人は「米国では年間5万人がてんかん発作で死んでいるのだから
この決定はAngelaの命を救うものだ」と。
この決定はAngelaの命を救うものだ」と。
(てんかん発作のある女性みんな子宮摘出させるんですか? 命を救うために?)
【ブログ:批判】
2010.03.10 / Top↑
【お詫び】
某MLに「FENの4人に有罪判決」と誤報を流してしまいました。
実際は「起訴」に過ぎないのを、早とちりしてしまったものです。
逮捕からずいぶん経っているので、もうとっくに起訴されたんだとばかり思いこんでいたところに、
オーストラリアの重症児の子宮摘出ニュースで頭がオーバーヒートして、
つい、見たいものを見てしまいました。お詫び申し上げます。
実際は「起訴」に過ぎないのを、早とちりしてしまったものです。
逮捕からずいぶん経っているので、もうとっくに起訴されたんだとばかり思いこんでいたところに、
オーストラリアの重症児の子宮摘出ニュースで頭がオーバーヒートして、
つい、見たいものを見てしまいました。お詫び申し上げます。
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当ブログで事件当時、かなり追いかけたFEN事件で
プレジデントのThoman Goodwinら4人に対して
自殺幇助、証拠隠滅、組織犯罪防止法(?)違反の容疑で起訴。
プレジデントのThoman Goodwinら4人に対して
自殺幇助、証拠隠滅、組織犯罪防止法(?)違反の容疑で起訴。
FENそのものも起訴された、とのこと。
この大陪審で起訴になったのは、当初逮捕のきっかけになった癌患者男性の自殺幇助。
事件発覚のきっかけは、このジョージア州での自殺幇助ですが、その後、
いくつかの州にまたがる活動で何十人もの自殺を幇助したことが確認されています。
いくつかの州にまたがる活動で何十人もの自殺を幇助したことが確認されています。
弁護士は、「なに、ウチのクライアントは無罪になるさ」と。
こちら、Seattle Post-Intelligencerにもっと詳細な記事。
(シアトルの地元大手新聞は、自殺幇助関連記事は熱心に報道していますね。さすがに、と言うべきか)
http://www.seattlepi.com/national/1110ap_us_assisted_suicide_network.html
(シアトルの地元大手新聞は、自殺幇助関連記事は熱心に報道していますね。さすがに、と言うべきか)
http://www.seattlepi.com/national/1110ap_us_assisted_suicide_network.html
事件の詳細は以下に関連エントリーをリンクしましたが、
我ながら、いくらなんでも、こんなにあったら読みたくねーよ……と感じます。
我ながら、いくらなんでも、こんなにあったら読みたくねーよ……と感じます。
(リンク記事の後半がFEN事件です。
FENのHPは今は閉鎖されたようですが、
当時読んだ仰天の内容をまとめています)
FENのHPは今は閉鎖されたようですが、
当時読んだ仰天の内容をまとめています)
【FEN自殺幇助事件関連エントリー】
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
FEN事件で精神障害者の自殺を幇助したボランティア、有罪を認める(2010/1/13)
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
FEN事件で精神障害者の自殺を幇助したボランティア、有罪を認める(2010/1/13)
2010.03.10 / Top↑
オーストラリア、クイーンズランドの11歳の重症児Angelaに対して、
生理が不順で貧血を起こしたり、てんかん発作を誘発しているとの理由で
両親が子宮摘出を求めていた裁判で、
Queenslandの家庭裁判所は2月16日、
両親の訴えを認める判決を下した。
生理が不順で貧血を起こしたり、てんかん発作を誘発しているとの理由で
両親が子宮摘出を求めていた裁判で、
Queenslandの家庭裁判所は2月16日、
両親の訴えを認める判決を下した。
Angelaは食事も移動も入浴も全介助の重症児。
意思疎通ができず「3か月の赤ん坊のようにふるまう」。
記事の書き方をそのまま引くと
「膀胱のコントロールが全くできず、おむつをしている」。
意思疎通ができず「3か月の赤ん坊のようにふるまう」。
記事の書き方をそのまま引くと
「膀胱のコントロールが全くできず、おむつをしている」。
母親によると9歳の頃から生理不順で、痛みと疲労がみられたが、
薬が効かず、医師3人がAngelaには子宮摘出が望ましいとの見解を示した。
薬が効かず、医師3人がAngelaには子宮摘出が望ましいとの見解を示した。
Angelaの担当医は裁判で、多量の出血が貧血を引き起こしている、
将来の妊娠を考慮しなければならないような知的な能力を
Angelaが身につけることは、この先も決してない、と証言。
将来の妊娠を考慮しなければならないような知的な能力を
Angelaが身につけることは、この先も決してない、と証言。
ある小児科医は「妊娠するようなことがあったとしたら
それはAngelaにとっては、たいへんな悲惨なこととなる」と。
それはAngelaにとっては、たいへんな悲惨なこととなる」と。
家裁のCronin判事は、この決定はAngelaの生活を改善するだろう、と。
しかし障害者団体からは虐待、人権侵害であり、
障害児をケアすることに苦労している夫婦のための「簡単解決」だと批判。
障害児をケアすることに苦労している夫婦のための「簡単解決」だと批判。
NSW大学の障害学の学者 Dr. Leanne Dowseは
両親が障害のある子どもに侵襲度の高い不可逆な医療を求めた訴訟で
裁判所がそれを認める判決は長年出ておらず、珍しい“unusual” と指摘。
両親が障害のある子どもに侵襲度の高い不可逆な医療を求めた訴訟で
裁判所がそれを認める判決は長年出ておらず、珍しい“unusual” と指摘。
障害のある子供のための決定権が誰にあるかという問題のほかにも、
この事件によって障害者の介護者への支援サービスが足りないという問題も
浮き彫りになった、
この事件によって障害者の介護者への支援サービスが足りないという問題も
浮き彫りになった、
1980年代から政府が地域生活支援を改善することなしに
入所サービスを削減してきた結果、家族の負担が大きくなってしまった、
入所サービスを削減してきた結果、家族の負担が大きくなってしまった、
「それでなくともニーズが満たされずに苦労している家族にとって、
生理は、また厄介が一つ増えた、ということになってしまう」と。
生理は、また厄介が一つ増えた、ということになってしまう」と。
ニュースを知ったばかりで、今は、まだ、ちょっと戸惑い気味。
早速に、物書きをやっている障害児の母親が
ブログで、Ashley事件、Katie事件と一緒にして批判している。
ブログで、Ashley事件、Katie事件と一緒にして批判している。
このケースは、今後、やはり
AshleyやKatieのケースを引き合いに出して
同じ問題として論じられるのだろうなというのは
私も記事を読んで、すぐに思った。
AshleyやKatieのケースを引き合いに出して
同じ問題として論じられるのだろうなというのは
私も記事を読んで、すぐに思った。
特に、「どうせ生後3カ月の赤ん坊と同じ」
「どうせ、この子には無用の子宮」
などはAshley療法正当化の論理と全く同じ。
「どうせ、この子には無用の子宮」
などはAshley療法正当化の論理と全く同じ。
それから
親と医師は「生理による貧血や発作」など「健康上の問題解決」を理由にしているのに、
判事の「生活を改善させる」という発言は「QOL向上=本人利益」と捉えるもので、
じゃぁ、容認の根拠は健康上の問題ではなくQOLにすぎないのか、という点が、ものすごく不可解。
親と医師は「生理による貧血や発作」など「健康上の問題解決」を理由にしているのに、
判事の「生活を改善させる」という発言は「QOL向上=本人利益」と捉えるもので、
じゃぁ、容認の根拠は健康上の問題ではなくQOLにすぎないのか、という点が、ものすごく不可解。
ただ、「貧血とてんかん発作」は
Ashley事件にもKatie事件にもなかった「本人の健康問題」なので、
そこは整理した上で考えなければならないケースなのではないか、という気もするけど、
Ashley事件にもKatie事件にもなかった「本人の健康問題」なので、
そこは整理した上で考えなければならないケースなのではないか、という気もするけど、
なにしろ、もっと詳細な事実関係が分からないうちは何とも言えない。
ものすごく気がかりなニュースではある。
……というか、自殺幇助合法化ロビーが世界中で次々いろんな事をしでかしてくれるように
Ashley事件でも、これから世界のあちこちで、いろんな事がしでかされていくのかなぁ……なんて
つい考えさせられてしまうのが、本当にウンザリだ。
Ashley事件でも、これから世界のあちこちで、いろんな事がしでかされていくのかなぁ……なんて
つい考えさせられてしまうのが、本当にウンザリだ。
2010.03.10 / Top↑