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昨年、カナダなどいくつかの映画祭で上映されたという
フランスのアニメ作品“Suicide Shop”が
Thaddeus Popeの無益な治療ブログで紹介されている。
(英語のトレーラーあり)


In a grey and brown Paris of oppressive concrete towers and rain-soaked streets, everyone, even the pigeons, is miserable. The one paradoxical ray of hope is a quaint little old-fashioned back-alley boutique known as The Suicide Shop, where the Tuvache family are delighted to help customers end their suffering. The shop sells poisons, nooses, rusty razor blades, seppuku swords and other life-taking paraphernalia, aimed at every budget. For a homeless customer, it’s a simple plastic bag and a piece of tape, compliments of the house.

陰鬱なコンクリートの建物がそびえ立ち、雨に濡れそぼった通りが続く灰色と茶色のパリの町では、誰も彼もが、鳩さえもが、みじめな暮らしをしている。そんな中、たった一つだけ、人々に希望の光を投げかけているのは、皮肉にも、裏通りにある、時代がかって奇妙で小さな 「自殺ショップ」だ。その店で、お客様の苦しみを終わらせて差し上げようとお待ちしているのはTuvache一家。売っているのは、毒薬、首吊り用の輪っか、錆ついたカミソリ、切腹用の刀、その他、自殺するためのグッズのあれこれ。どんなご予算にも応じられるよう、ずらりと取りそろえられている。ホームレスのお客様には、何の変哲もないビニール袋とセロテープを。お代はいただきません、とのこと。
(ゴチックはspitzibara)

The Suicide Shop
Medical Futility Blog, January 11, 2013


トレーラーでは店の主人がMishima Tuvacheという名前で、
Popeの紹介の中にも seppuku sword という表現があるので、
「三島由紀夫から……??」と思ったら、

英語のWikiによると、やっぱりそうだった
(Mishimaは姓の方なんだけど) ↓
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Suicide_Shop

Wikiによると、
店の商品を作っている長男ビンセントの名前はヴァン・ゴッホに、
ミシマの奥さんのマリリンはマリリン・モンローに由来するのだとか。
(だから、ミシマは姓なんだってば)

それから、Wikiの解説によると、
原作は2006年のJean Teuleという人のブラック・コメディ小説だとか。

近未来のパリの人たちが希望を持てないのは、
あまりの大きな気候変動のせい、という設定らしい。


なお、この映画を紹介してくださっている日本の方の個人ブログから、
カンヌ国際映画祭公式サイト[日本語版]内の作品紹介の一部を借りてくると、

人々が何に対してもまったく意欲を見い出せないとある町。町のなかで最も繁盛している商店と いうのが、自殺するための毒や首吊り用の紐を販売する店だった。ところがある日、その店の女主人が子供を出産。その子は生きる喜びそのものだった。自殺用 品店の内部で、何かが崩れ始める...。


それにしても、Popeの記事が強烈に響いてくるのは
やっぱ最後の「ホームレスの客には……」の下り――。
2013.01.14 / Top↑
昨年、臓器不足解消に向けて
16歳以上の全員にドナーになる意思確認をするよう制度改正が行われたばかりのドイツで
国内47か所の全移植センターに医療委員会の調査が入る深刻な事態となっている。

現在のところまでに明らかになっているのは
少なくとも4つの権威ある大学病院で
待機リスト順位を上げてEurotransplantから臓器を獲得する目的で
患者データの不正操作が組織的に行われていた、という事実。

例えば患者の血液に尿を混ぜたり、
別の患者の血液サンプルを使ったり、
人工透析データを改ざんしたりして、
容体が実際以上に悪化しているように見せていた。

また、調査が入ると外科医らは、
患者の透析記録が書かれたカルテを隠すなどして
医療委員会の調査を妨害。

これまでに判明しているのは少なくとも103ケースだが
これから調査が進むとさらにたくさん出てくるだろうと医療委員会は言っている。

4病院の上級医師や移植医は調査の間、停職に。

それらのケースで贈収賄が絡んでいるかは今のところ不明だが、

他にも背景として
多くの移植センターがある一方で移植臓器は世界的に不足しており、医師らには
成功事例を作り、資金獲得のため病院の評価を上げるプレッシャーがかかっていた、とも。

4病院の1つの医師は、
肝臓を一つ移植するごとにボーナスを受け取れるよう契約内容に盛り込んでいたといわれ、
こうした報酬システムには、医療関係者の間から以前より批判が出ていたところ。

当初は散発的な事例だと思われていた不正が、
国内の移植センターに広がる組織的な不正スキャンダルの様相を呈してきたことで
臓器移植に対するドイツ国民の信頼が失われ、ドナー希望者が激減しているという。

死後提供は20%から40%減少したとのこと。

Mass donor organ fraud shakes Germany
The Guardian, January 9, 2013



【2011年の関連エントリー】
「“生きるに値する命”でも“与えるに値する命”なら死なせてもOK」と、Savulescuの相方が(2011/3/2)
WHOが「人為的DCDによる臓器提供を検討しよう」と(2011/7/19)
UNOSが「心臓は動いていても“循環死後提供”で」「脊損やALSの人は特定ドナー候補に」(2011/9/26)
「DCDで生命維持停止直後に脳波が変動」するから「丁寧なドナー・ケアのために麻酔を」という米国医療の“倫理”(2011/11/24)
「丁寧なドナー・ケア」は医療職の抵抗感をなくしてDCDをさらに推進するため?(2011/11/24)

これまでの臓器移植関連エントリーのまとめ(2011/11/1)

【2012年の関連エントリー】
「重症障害者は雑草と同じだから殺しても構わない」と、生命倫理学者らが「死亡提供ルール」撤廃を説く(2012/1/28)
米国の小児科医らが「ドナーは死んでいない。DCDプロトコルは一時中止に」(2012/1/28)
英国医師会が“臓器不足”解消に向け「臓器のためだけの延命を」(2012/2/13)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilkinson(2012/2/22)
臓器マーケットの拡大で、貧困層への搾取が横行(バングラデシュ)(2012/3/15)
闇の腎臓売買、1時間に1個のペースで(2012/5/28)
経済危機で臓器の闇市、アジアからヨーロッパへ拡大(2012/6/10)
脳損傷の昏睡は終末期の意識喪失とは別: 臓器提供の勧誘は自制を(2012/7/20)
「病院職員に脳死判定への圧力がかかっている」と元移植コーディネーターが提訴(米)(2012/9/30)
2013.01.14 / Top↑
【久々にAshley療法関連】:アシュリー療法関連の文献はちょっと食傷気味なので、もう敢えて探そうという気にもならないのだけれど、たまたま目にしたので記録。

男女児2人それぞれの親から成長抑制の要望を受けた病院の医師らによる、「倫理的に疑問のある親からの要望に対処するには」と題した論文。11年。アブストラクトからすると、本人に意思決定能力があった場合に、それを望むかどうかを検討し、望むと思われた場合にはその先に裁判所の判断を仰ぐことを提言している模様。2つのケースでこの病院がどういう結論を出したのかは、アブストラクトからは不明。
Managing ethically questionable parental requests: Growth suppression and manipulation of puberty, David Isaacs, et al., Journal of Paediatrics and Child Health,Sept 27, 2011
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1440-1754.2011.02156.x/abstract;jsessionid=F67C6A5BC52FB42A6C580A989C627155.d03t01?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

こちらは去年の心理学者Jenna Nicole Mercadenteによる論文 ”Growth Attenuation, Sterilization, and Cochlear Implants: Ethical, Legal and Social Themes”.「歴史を通じ、障害のある人々は侵襲的な医療の対象とされ、身体的権利と統合性を侵されてきた」:成長抑制と強制不妊と人工内耳に共通する倫理、法律、社会の問題……といえば、ウ―レットの“Bioethics and Disability”の第4章そのもの。
http://etd.ohiolink.edu/view.cgi?acc_num=wsupsych1309537482

また、09年にミネソタ・ロー・スクールの博士号候補者が書いた「アシュリー療法」に関する論文。現在の法律の枠組みは、生殖権と身体不可侵の権利を重視しすぎていて、その結果、個々人の尊厳や苦しまない権利、子どもについての親の決定権などが十分に尊重されないという問題がある。これではアシュリー療法の適用となる重症児の最善の権利は守れない……という論旨の模様。:思い出すのは、これ。(これも確か博士号候補者だったんじゃなかったっけ?) ⇒ 憲法が保障する“基本的権利”をパーソン論で否定する“Ashley療法”論文(前半)(2009/10/8)
http://heinonline.org/HOL/LandingPage?collection=journals&handle=hein.journals/mipr10&div=26&id=&page=


【それ以外】

アイルランドのALS患者、 Marie FlemingさんのPAS禁止違憲裁判で、Flemingさん敗訴。The three judge High Court ruled today the absolute ban is justified to protect vulnerable others from involuntary death and does not breach Marie Fleming's personal autonomy and equality rights under the Constitution and European Convention on Human Rights.:これは、まぁ予想通り。
http://www.irishtimes.com/newspaper/breaking/2013/0110/breaking1.html

ヘリウムが世界的に不足し始めている中、新手の自殺幇助の方法となりそうな「断食による自殺」の勧め。VSED:voluntary stopping eating and drinking という文言まで出来ているんだそうな。それにしても、ホスピス職員が基本的には健康な高齢者のその決断を受け入れ、サポートした、とは。そういえばFENが08年の事件で閉じるまで、HPで施設入所者などにこの方法を勧めていたっけな。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/01/sons-perspective-on-using-vsed-to.html

合法化されているORとWA州で、医師に処方された致死薬を飲んでも20%は死に切れなかった、というデータ。これは前から年ごとの報告にちらほら出てきている事実。:だからVSEDを、という話にそのうち向かうのか、まさか?
http://www.lifenews.com/2013/01/08/20-percent-who-take-drugs-in-assisted-suicides-dont-die/

BBCが自殺幇助で商売を始めた若者3人組を主人公にコメディの放送を始めたことがちょっと前に話題になっていたけれど、それについて議員さんからBBC批判。BBCについては前にも議会から「公費で合法化ロビーやるな」という批判が出た。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2257994/MP-blasts-BBC-new-comedy-series-Way-To-Go-makes-assisted-suicide-matter-fun.html

赤ちゃん死なせたスリランカ人メイドを斬首、サウジアラビア
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130110-00000032-jij_afp-int

スリランカ人メイドの体内からクギ24本、サウジ雇用主の体罰か(2010年8月27日)
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2751170/6110038

こういうニュース、サウジの法律の問題もあるにせよ、本質的にはグローバルひとでなし強欲ネオリベ金融資本主義が広げている奴隷労働や、貧困層のバイオ資源化の問題と繋がっているんだと思う。介護や育児労働が奴隷労働化している実態は、2006年に既にこういう状態だった ↓
“現代の奴隷制”輸出入される介護労働(2009/11/12)


ドイツの移植医が待機リストを飛ばしたかなんかで、移植センターにスキャンダル:これから読む。たぶん。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jan/09/mass-donor-organ-fraud-germany

州当局や保健局など、行政が小まめにお知らせすることで、子どものワクチン接種率は上がります、という米国の研究。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/254690.php

英国政府は個々人が負担する介護費用上限額(それを超えたら国が負担する)に、先のDilnot提言(下にリンク)よりも2倍も高い所得制限を設けようとしており、その批判をかわすべく、年金を使って介護保険を購入する人に支援策を提案するとか?
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/jan/09/pensions-insure-long-term-care

【関連エントリー】
英国「介護と支援財政員会」提言(2011/7/5):これがDilnot提言
介護費用負担総額に上限設定へ(英)(2012/8/18)


ProPublicaって本当にすごいといつも思うのだけれど、今度は連邦政府に情報開示請求をして、米国のナーシングホーム監査の完全記録を公開。
http://www.propublica.org/article/feds-release-nursing-home-inspections

ゲイツ財団の4500万ドルかけた研究の結果によると、学校の先生の最も信頼性のある評価方法は、①生徒のテスト・スコア、②複数のレビュアによる教室観察、③生徒による先生評価だそうな。
http://www.washingtonpost.com/national/gates-study-weve-figured-out-what-makes-a-good-teacher/2013/01/08/05ca7d60-59b0-11e2-9fa9-5fbdc9530eb9_story.html

ゲノムデータ使ってガン診断と治療の向上を目指すFoundation Medicine Inc.にビル・ゲイツが多額の投資。
http://www.boston.com/businessupdates/2013/01/08/bill-gates-invests-foundation-medicine-which-uses-genome-data-for-cancer-diagnostics/BtipX6STIA5prjmrjJkHzI/story.html

自殺念慮のある子どもたちへのメンタル・ヘルス治療は実は効果が出ていない……って、ずいぶん前からあちこちで言われ続けていると思うのだけれど、大きな調査でデータが出たらしい。JAMA Psychiatryの論文。
http://www.nytimes.com/2013/01/09/health/gaps-seen-in-therapy-for-suicidal-teenagers.html

フランスからは痩せ薬による死者続発スキャンダルの続報。ヤセ薬についてはエントリーいくつかあるけれど、これ以後はたぶん補遺か。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jan/06/france-scandal-weight-loss-drug

英国で初の手のフル移植。
http://www.guardian.co.uk/society/video/2013/jan/04/uk-first-hand-transplant-patient-video

曽野綾子「東電に責任はない」「放射能の強い所は、じいさんばあさんを行かせればいい」:11年の記事なんだけれど、教育再生会議に曽野綾子が入ったという話から芋づるで出てきたて、ものすごく怖かった。
http://d.hatena.ne.jp/dj19/20110518/p1
2013.01.14 / Top↑
生活書院のHPで毎月初めにアップされているWeb連載
福井公子さんの「障害のある子の親である私たち――その解き放ちのために」の
4回目、「勇気」「運動会」「ケイタイ」「虐待」の4編を読んだ。

http://www.seikatsushoin.com/web/fukui04.html

特に1編めの「勇気」から、
ずっと思ってきたことを、私も書きたくて収まらなくなったので。


「勇気」に書かれているのは、
障害のある子どもの親に対して
作業所や施設を作るとか、障害のある子どものために地域で活動したり事業を起こすなど、
「社会的に行動する親であること」を求めるプレッシャーのこと。

福井さんは
「グループホームぐらい立ち上げたらどうなんだ」と
親仲間に言われたことがあるという。

私もミュウの幼児期に、行政の人から
「どうして親の会を立ち上げないんですか」と言われたことがある。

別の町の行政の人から、
「親が動かなかったら、施設もサービスもできませんよ」
「今すぐ運動を始めたって、形になるのは10年も先のことですよ」と
すぐにも活動を始めなさい、という趣旨のアドバイスをされたこともある。

そのたびに、私は困惑した。

当時の私は、3日と元気だということのない幼いミュウを抱え、
大学の専任講師の仕事をしながら、心身ともに限界との闘いのような日々を送っていたし、
その後もミュウを施設に入れざるを得なかったことで自責の思いや
そこに至るまでに積み重なった自分自身の気持ちの不安定とで、
自分が生き延びることだけで精いっぱいだった。

天職と思い決めていた職業をあきらめざるを得ないかと悩んでいるような
ぎりぎりの生活状況で、それでも、この上まだ
社会的に行動を起こせと求められるのか……。

私も福井さんのように、
「不平不満ばかり言っていないで、自分でやったら」と叱られているような気分になり、
しばらく気持ちが落ち込んだ。

直接的に「やったら?」と言われないまでも、
社会の矛盾や問題について自分なりの思いを語っていると、相手の人から
行動し何かを成し遂げた親として著名な人の名前や本のタイトルを挙げて
「この人のことを知っているか」と問われる、ということも少なくはなかった。

それもまた私には
「モンクばかり言っていないで行動を起こし何かを成した親だっている。
あなたも行動したらどうか」というメッセージとして届いた。

そのたびに、
「親の会を立ち上げたり、事業を興したりという社会的な活動をできない自分」のことを
私はあれこれと心でいじり回さないではいられなかった。

アドバイスしてくれた人は
それなりに「買って」くれたつもりの激励だったかもしれないし、

実際、熱心にその人と話をしている時には、私自身、
「そのくらい辞さない!」くらいのトーンで熱く語っていたのだろうと思うし、

できることならやりたい、実現できたらいいなぁ、と思い描く「夢」なら
正直、これまでに、いくつもいくつも数え切れないほど心に抱いてきた。

そして、その、どれひとつについても、
私は実現に向けた行動を起こせなかった。

私が「行動できなかった」のは、
本当はただミュウとの生活だけでも限界を超えていたから、というだけではなかった。
心身ともに余裕がなかったから、というだけでもなかった。

私自身に「人と一緒に何かをやる」ための協調性が欠けているから、というのが
たぶん一番大きな要因だったと思う。

そのことに、いつからか私は気付いていたし、
気付いてからは、ずっと「対人関係で能力がない」自分を情けなく感じてきた。

もちろん、言い訳すれば他にもいろいろあるのだけれど、それらをひっくるめて、
要するに「そういうことができた人ほどに人間が優れていないから、私にはできなかった」と
いつからか考えるようになった。

だから、人から「行動しないの?」メッセージを受けるたびに
自分の「人格的な欠陥」のことをぐずぐずと弄くりまわしてきた。

そして、そういう時、同時に、

障害のある子どもの親にだって、いろんな人がいるはずなのにな、
その中には人をまとめてリーダーとして引っ張るのが得意な人もいれば
人と一緒に何かをやることが苦手なタイプだっていて当たり前なのにな…と
小さな、本当に小さな、誰にも聞こえない声で、こっそりとつぶやいてきた。

ずいぶん長いこと、そうやってイジイジと生きてきて、
さすがに私も、ちょっとだけ強い人になった。

だから、最近の私は、思っている。

簡単に言えば、
私は、そういうことに向いていない、ということに過ぎないんだ……って。

いいじゃない。その代わりに
自分に向いていることは、私なりに懸命にやってきたんだから――。

そして今は、そこで、さらに
「ちょっと待ってよ」と考えるようになった。

ちょっと待ってよ。

障害のある子どもの親になったからといって、
何かに懸命になって生きなければならないと感じたり、

自分や誰かに対して、それを証明して見せられなければ
社会に対してものを言う「資格」がないと感じたりって、
それって、そもそもヘンじゃない――?


福井公子さんの「勇気」から。

たとえば、若い親たちが「保育所が少ない、子育て支援が不十分だ」と訴えた時、社会の人は「不平ばかり言ってないで、自分たちで保育所を創ったらどうなんだ」と言うでしょうか。……(中略)……

「それであなたの息子さんに良い支援が届かなかったら、どうなんだ」と言われるかもしれません。そうだとしても、「それは私の責任ではない」と言いたい。つまり、私たち親が「それは社会の役割だ」。そう言い切きる勇気がなかったのではないか。……(以下略)

           ―――――

ずっと前に初めて『私は私らしい障害児の親でいい』という本を書いた時に、
「あなたは、モノは言えても行動は起こせない人なのではないか」と
ある人に言われたことがあった。

それ以来、
障害のある子どもの親として社会で行動したり何事かを成したわけでもない私には
障害のある子どもの親という立場でものを書く「資格」などないのでは……という
心もとなさのようなものが、どこかに居座っている。

その心もとなさに対しては
「いや、まだまだ親について語られていないこと、語られるべきことは沢山ある。
それなら、誰にだって、それを語る『資格』はあるはずだ」と
きっぱりと反論する声を、最近ようやく獲得できてきたところ。

福井公子さんは私から見れば、親の会のリーダーとして活躍してこられて、
「行動し、多くを成し遂げた」人、立派に「資格」をお持ちの方でもあるけれど、

福井さんの「勇気」という文章と出会ったおかげで、
私も自分の中にくすぶり続けていた思いをやっと
思い切って表現することができ、このエントリーになった。

それは、福井さんの「資格」とは無関係に、
福井さんが書かれた文章そのものの力が起こしてくれたことだ。

やはり表現することは、それ自体が「行動」なのだと、
改めて確認させてもらった気がする。

それに、表現することだって、
本当は相当な「勇気」を奮い起さなければできないことだったりもする。

福井さん、いつも
表現する「勇気」を、ありがとうございます。
2013.01.14 / Top↑
生命倫理学者で腫瘍科専門医のエゼキエル・エマニュエルについては、
2009年に以下のような断片的な発言を拾ってきており、
その中で医師による自殺幇助に反対のスタンスの人だと知った程度だったのですが、

「障害者は健常者の8掛け、6掛け」と生存年数割引率を決めるQALY・DALY(2009/9/8)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)

昨年秋のMA州の住民投票の直前に、
NYTに以下のようなPAS批判を書いたことが非常に印象に残った人。

Dr. Emanuel「PASに関する4つの神話」(2012/11/5)


そのエマニュエルが
1月3日のNYTのオピニオンのページに、
終末期医療について論考を寄せていて、なかなか興味深い内容でした。

Better, if Not Cheaper, Care
Ezekiel J. Emanuel
NYT, January 3, 2013


エマニュエルは、まず
「終末期医療のコストが医療費全体に占める割合が大きくなっているので
このコストをどうにかしないと医療が崩壊する」といった物言いについて
データを挙げて、事実ではない、と否定する。

彼が指摘しているのは、以下の点。

・毎年、死亡するメディケア患者の約6%の医療費が
メディケア・コストの27%から30%を占めているが、
この数字は何十年も大きく変動はしていない。

・年齢を問わず、毎年米国総人口の1%以下が死んでいるが、
その全員にかかった医療費は医療費全体の約10から12%にすぎない。

・確かに終末期医療のあり方は病院によってバラつきが大きく、
そこに改善の余地はあるが、

実際に終末期医療をどうしたらコストが削減できるのかという
きちんとした研究は存在しない。

・ガン患者ではホスピスでコストが1,2割削減できるとの調査結果もあるが、
その調査でもガン以外の病気で死んだ患者ではコスト削減はならず、
その理由ははっきりしない。

・一方、死亡患者の20%はICUや、退院直後に死んでおり、
適切な緩和ケアが受けられれば抑制できる痛みで苦しむ患者もまだまだ多い。

それならば、
コスト削減効果があろうとなかろうと終末期医療の改善が急務である、
というのがエマニュエル医師の論旨。

そのために同医師が提案しているのは、以下の4点。

① 終末期医療について患者や家族ときちんと話ができるよう、
医師と看護師全員にコミュニケーション・スキルの研修を。

② 終末期について患者や家族と話をすることは時間もかかり、感情的な消耗を伴う以上、
診療報酬が付くべき。

③ すべての病院に緩和ケアサービスの整備を義務付け、
死にゆく患者には病院で、また退院させるなら在宅で
丁寧な緩和ケアが提供されるべきである。

④ 余命6カ月以内と診断されて、
かつ延命治療を放棄しなければホスピスに入れないという基準の見直しが必要。
確実な予測が不可能な余命ではなく、患者のニーズで判断すべき。


エマニュエルは、
これらをしたからといって、コスト削減になるエビデンスなどないし、
これで絶対に終末期ケアが改善されるというつもりもないが、
医療制度全体にケアの質が上がっている中で
終末期の患者の支援にだけは努力を払わないというのは
許されることではない、と。


エマニュエルの提言の①と②は、
今の自殺幇助合法化に向けた大きな流れと切り離して考えたら
そうなんだろうとは思う反面、

今のような「切り捨て文化」が広がりつつある中では
なんのために話をするのか、というところで
やっぱり誘導にならないのか、という懸念がどうしてもある。

ただ、読んでいて、エマニュエル医師という人は
やっぱり腫瘍科の現場で誠実に患者ケアを考えるドクターとして、
こういう提言になるんだろうな、という印象はとても強く受けた。

その点、ちょっと「無益な治療」を論じる際のTruogに通じるものを感じないでもない。

個人的に「よくぞ言ってくださった」と思うのは③で、
これがきちんと保証されれば、PAS合法化に賛成という人だって
実はかなり減るんじゃないのかなぁ……。

だって、みんな前提もなしに「死なせてほしい」わけじゃなくて
「苦しんで死なないといけないなら、いっそ死なせてほしい」ということなんだろうと思うので。

それに、この論考の行間に隠された趣旨そのものが、
医療全体に質の向上努力がされているにもかかわらず終末期医療だけは改善の努力もせず、
むしろコスト削減を言いたてては終末期医療そのものを切り捨てようとするとは何事か……
……というものであるように私には読めるし。



この記事を読んで、なんとなく思い出したのは、こちらのエントリーだった ↓
日本の終末期医療めぐり、またも「欧米では」論法(2011/12/16)


ついでに思い出したので、
認知症患者への終末期ケアを一律に「過剰な治療」視するMitchell論文に対して
老年科医Sachsの論文が「アグレッシブな医療か医療を全然しないかの2者択一ではなく、
緩和ケアとはアグレッシブな症状管理なのだ」と反論した2009年の論争を以下に。

「認知症患者の緩和ケア向上させ、痛みと不快に対応を」と老年医学専門医(2009/10/18)
「認知症はターミナルな病気」と、NIH資金の終末期認知症ケア研究(2009/10/18)
MYTもMitchell, Sachsの論文取りあげ認知症を「ターミナルな病気」(2009/10/21)
2013.01.14 / Top↑
インドのバス・集団レイプ事件で、護身のために銃を持つ女性が増えている。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jan/01/indian-bus-rape-delhi-rush-guns

同事件の日本語の記事はこちら。実際の犯行内容はあまりに陰惨で、露骨に書いていない記事が多いです。探せば日本語でも詳細ありますが、リンクするに忍びないのでパスしました。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130104/frn1301041215002-n1.htm

インドの同事件で、国連事務総長が女性の保護と人権尊重を訴え。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/dec/30/india-gang-rape-un-call-action

インドの同事件からLancetも「性的暴力:グローバルな啓発、インドから」との論説。経済大国となったインドが今なお自国民の基本的な保護と自由に無関心であることへの警告。there is agreement that India has failed to address a pervasive culture of sexual violence and gender injustice. This political neglect has created a permissive environment where men can rape, beat, and kill a woman with impunity. India is a respected democracy that has delivered phenomenal economic success for its growing middle class. But the country's inattention to fundamental protections and liberties for its citizens reveals a nation facing a moral turning point.
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960003-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F

この事件の加害者たちが住むスラムから起こっている擁護の声を読んで思うのは、社会に何の希望も持てない貧困層の男性たちが、いわば「うっぷん晴らし」のために女性への暴力に傾斜していること。それと同じことは、社会の弱者が女性だけでなく障害者やホームレスなど、さらなる弱者に振るう暴力として、日本でもどこの国でも、各国経済が破綻の度合いを深めるにつれ、じわじわと増えつつあると思う。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/dec/31/delhi-slum-home-rape-accused

インドの集団レイプ事件(被害者の女子大生はこの記事によるとDamaniさん)関連の記事は沢山あるけど、この記事に共感を覚えた。先進国のメディアはいかにもインドがレイプ大国で女性の人権後進国であるという問題の捉え方をしているけれど、西側先進国だって女性への蔑視や暴力、犯罪を許容する文化はあるじゃないか、と。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/jan/01/delhi-rape-damini

また別の角度から、インドでは今なお生理のスティグマが根強く、少女たちは初潮前にきちんとした知識を教えてもらえず、手当の方法も知らないまま成人し、生理について話すことすらタブーとして暮らしている。そのため不潔な布の使用で感染症を起こして最悪は子宮摘出に至るケースも。また学校に清潔なトイレがないため、生理中は学校を休まざるをえないなど、インドの女性が解放されるには生理のタブー解消と学校に清潔なトイレの整備を、というNYTのOp-Ed記事。
http://www.nytimes.com/2012/12/29/opinion/the-taboo-of-menstruation.html

日本語。酸で顔を失ったインド女性、決意のクイズ番組出演 「大学生だった9年前、同級生の男子学生3人に襲われた。抵抗すると彼らはムカジーさんの顔に酸を浴びせかけ」「インドの法律では、酸による暴力はドメスティック・バイオレンス(DV)法の範囲となる。だが、これは比較的軽い罪にしか問われない」
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2918049/10026630

YWCAの「健康な関係」DV・デートDVチェックリスト。:DVだけでなく、また自分自身を被害者側に置くだけでなく、人との関係のあり方を振り返るために時にやってみるといいかも、と自省を込めて。
http://ywcapeterborough.org/healthy-relationships-2

日本語。ベアテ・ゴードンさん死去 日本国憲法の男女平等条項起草:「憲法の平和、男女同権条項を守る必要性を訴えていた」奇しくも、それら条項が今脅かされている。
http://www.47news.jp/CN/201301/CN2013010101001215.html

粥川準二【特別寄稿】「中絶、先端医療、フクシマ」:後半は有料のため、読めていないけど、いつもながら丁寧に基本的なことから解き明かしつつ本質に迫ってくださっていて、とても勉強になる。
http://ch.nicovideo.jp/article/ar25027

前ケアサービス大臣のPaul Burstow氏「介護の財源改革には、高所得層の年金受給者への暖房手当カットを」と提言。英国の燃料貧困問題とその対応については11年3月に「介護保険情報」で書いたことがあります。⇒ ヘルシー・ホームズ事業:英国リヴァプール
http://www.guardian.co.uk/society/2013/jan/03/winter-fuel-pensioners-care?CMP=EMCNEWEML1355

「包皮切除手術でガンが見つかったからって無断でペニス切除なんて」訴訟(2011/8/29)の続報。ケンタッキー州の上訴裁判所の陪審員は、医師はSeatonさんの同意を得ていたと解釈。原告の敗訴。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/01/phillip-seaton-loses-case-against.html

農業カンファで、英国国民はGM作物の安全性を信じるべきだ、とOwen Paterson。
http://www.guardian.co.uk/environment/2013/jan/03/gm-food-british-public-persuaded-benefits

NYTが社説で、従軍慰安婦問題の存在を否定し村山談話を取り下げようとする安倍総理の最近の発言(読売新聞のインタビュー内容を大晦日にロイターが引用)について、「またも日本の歴史の否定」「重大な過ちで任期を始めようとしている」と。
http://www.nytimes.com/2013/01/03/opinion/another-attempt-to-deny-japans-history.html?nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20130103&_r=0

数学の成績は、IQだけじゃなくてモチベーションと勉強の習慣と:……って、そんなのわざわざ科学的に調査研究するようなことなんだろうかね。そういえば中学生の時に、男子にザマーミロ口調で言われたことがあったな。「ウチのお母ちゃんが言うとったぞ。いくらオマエが今は成績が良くたって、女子は高校にあがったら数学ができなくなるってよ」。そもそも勉強してなかったアイツは、高校の3年間もずっと数学だけでなく全面的に成績は私よりも悪かったと記憶しているけど。でも振り返ってみれば、あれもまた目の前の女に勝手に脅かされた男が、その当の女を「女は男よりも劣った存在である」として貶め差別することで自尊感情の修復作業を試みるという、実に定型パターンだったのだなぁ。それって、Guardianの女性記者がインドのレイプ事件について書いてたことそのものなんだけど。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/254420.php
2013.01.14 / Top↑
オピオイド鎮痛剤の過剰処方の問題については、
以下の記事を始め、いろいろと拾ってきていますが、

“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)

続報といってもよい記事が大晦日のWPにありました。

Rising painkiller addiction shows damage from drugmakers’ role in shaping medical opinion
WP, December 31, 2012


上記10月のエントリーで拾ったProPublicaの記事の主なポイントが
オピオイド鎮痛剤の処方拡大のロビー活動を行ってきたAmerican Pain Associationの背後に
いかに製薬会社の資金力・影響力が働いているか、という点にあったのに対して、

今回のWP記事のポイントは、
OxyContinの製薬会社Purdueや販売会社などがいかに論文で治験データを隠ぺい・操作し、
FDAの諮問機関にいかにそれら企業と金銭繋がりのある研究者が含まれて、
「オピオイド鎮痛剤の依存リスクは非常に小さい」との通説が形成されていったか、

それによって、いかにガンや急性疼痛から慢性痛への処方拡大が誘導されてきたか、
そして、現在いかに多くの患者が依存に苦しみ、時に命まで落としているか、という点。

ざっと、事実関係を中心に以下に。


連邦政府の統計によると
処方鎮痛剤への依存症は実はコカインやヘロインへの依存患者よりも既に多く、
全米でほとんど200万人。

オピオイド鎮痛剤の処方数は過去20年間で3倍に急増している。

この記事は、その増加を後押ししたのは
a massive effort by pharmaceutical companies to shape medical opinion and practice
(医学的見解と医療実践に手を加えて形成しようとの製薬会社による多大な努力)
だったと書く。

例えば、年間20人が薬物のオーバードースで命を落としていて
一時は人口8万人の地域にピル・ミルが9軒も林立し
昨年は住民一人当たりにつき100回分以上のオピオイド鎮痛剤が処方・販売されたというポーツマスでは
保健師がこの状況を「ファーマゲドン」だ、と。

(「ピル・ミル」とは、カネ儲けのために処方麻薬でショーバイする医師や診療所のこと。
「ピル・ミル訴訟」についてはこちらのエントリーに)

もともと90年代までは
医師らはオピオイド鎮痛剤の処方には慎重で、
ガン患者と急性疼痛の患者以外にはほとんど処方されていなかったが、
少しずつ規制が緩和されていき、

1995年のPerdueによるOxiContin発売で一気に処方が急増。
2000年代に入るとオーバードースや依存症者の報告も急増した。

2003年にNew England Journal of Medicineに発表された論文は
依存リスクを最小限と報告したが、

この論文の主著者はその後
オピオイド鎮痛剤処方のあり方を先頭に立って批判しているとのこと。

また上記を始め、当時の「離脱症状はまれで依存リスクは小さい」との知見形成に影響した論文を
WPが調査したところ、

16の治験のうち、5つはPurdueの資金によるもので、2つはPurdueの職員との共著、
2つはPurdue以外のオピオイド鎮痛剤の製薬会社の資金によるものだった。

発表後、Purdueが離脱症状を否定する根拠として繰り返し使った論文では
離脱症状が疑われるケースを削除したデータがPurdue側から研究者に渡され、
研究者らはPurdueから受け取ったデータを分析しただけだったとか。

その論文では、100人中離脱症状があったのは2名と報告されたが、
内部文書によると11人が起こしていた。

(現在はだいたい50%が依存を起こすと理解されている、と専門家)

FDAが2002年に諮問したパネルでは
10人の外部委員のうち5人がPurdueとの金銭関係がある研究者だった。
そのうちの一人はその後オピオイド鎮痛剤の「宣教師」役を演じた後悔を語って
次のように発言している。

「プライマリーケアの聴衆が……オピオイドを使いやすくなるような説明を創ろうと……」

「主な目的はオピオイドのスティグマを解消することだったので、
我々はしばしばエビデンスはなおざりにして……」

「今では依存症や本人の意図しないオーバードース死が多発し、
ここまで影響が広がってしまって、私のような人間が推進した処方拡大が
部分的にはこうした出来事を引き起こしたと思うと、まったく恐ろしいです」

     ------

前にも書きましたが、
これまで向精神薬や骨減少症や心臓ステントなどを巡って当ブログが拾ってきたスキャンダルと
まったく同じ構図がここでも繰り返されている――。

読めば読むだけ、それが確認されるばかり――。

例えば、最近の糖尿病治療薬Avandiaのスキャンダルでは
製薬会社資金での治験が増えて論文の治験データの信憑性が揺らぎ
医学研究そのものが崩壊の危機に瀕している、と
New England Journal of Medicine の編集長自らが認めている ↓

製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)


【追記】
今日のNYTにも OxiContin関連のニュースあり、
近くOxiContin と Opana のジェネリック薬が発売されるにあたり、
濫用防止のため砕きにくく溶けにくくするなど錠剤の工夫を求められてきたPurdueなどが
同様の工夫が十分でないと主張してジェネリックの発売を阻止しようとしていたが失敗したらしい。
「儲けのためじゃなく、国民の安全のためだ」と主張していたらしいけれど、
上のWP記事を読んだ後でそれを言われても……。
http://www.nytimes.com/2013/01/02/health/drug-makers-losing-a-bid-to-foil-generic-painkillers.html?_r=0



【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)

【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)

最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)

あと、この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
(ここにも鎮痛剤関連のスキャンダルが出てきています)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)


【骨減少症関連エントリー】
骨減少症も“作られた”病気?……WHOにも製薬会社との癒着?(2009/9/9)
更年期は、ビッグ・ファーマの提供でお送りしました……(2009/12/14)
ビッグ・ファーマが当てこむ8つの“でっちあげ病”(2010/4/17)

【米不整脈学会、高血圧学会を巡るスキャンダル関連エントリー】これもGrassley議員の調査で明らかに
学会が関連企業相手にショーバイする米国の医療界(2011/5/11)
1つの病院で141人に無用な心臓ステント、500人に入れた医師も(2011/5/15)
2013.01.14 / Top↑
この4月に地域住民のウェルビーイングと保健衛生の責任が
NHSから地方自治体に移されることを受け、

保守系のWestminsterの自治体 と、
地方自治体情報ユニットというシンクタンクが
A Dose of Localism: the Role of Councils in Public Healthという報告書を刊行。

福祉の受給者で肥満している人にGP(一般医)からエクササイズを指示(処方)させ、
スマートカードなどの新興テクノロジーを使って
個々の受給者のエクササイズ施設の利用状況をモニターし、
十分な努力が認められなければ給付を差し止める権限を
地方自治体に認めるよう提言。

すでに地方自治体によっては
GPに水泳やヨガ、ジムやウォーキング・クラブなどを「処方」させていることもあるとか。

Obese and unhealthy people could face benefit cuts
The Guardian, January 3, 2013/01/04


記事タイトルからは、
「肥満である」ということと「健康でない」ということが等価に扱われている印象も。


この記事にはコメントが多数寄せられていて、
ざっと見で目についたのは

「福祉の世話になっておきながら
肥え太って家でダラダラしてんじゃねーよ」みたいトーンのものと、

「運動しろと言うからには、受給者の施設利用は当然タダにしてくれるんだろうね」という
こちらは至極まっとうな疑問。


【追記】
今夜のニュースにはこんなのも。

労働党は福祉受給者に甘いという与党からの批判をかわすべく、
2年以上失業状態にある25歳以上の成人は
政府が与える仕事に6カ月以上つかなければならないとするプランを
影の福祉相 Ed Ballsが提案。
(頭の部分しか読んでいないので細部は?)

http://www.guardian.co.uk/politics/2013/jan/04/ed-balls-welfare-work-scheme?CMP=EMCNEWEML1355

【追追記】
追記のついでに、
このエントリーをアップした後に頭に浮かんだこととして、

貧しいからこそ、栄養価の高い食事が取れなくて
高カロリー高脂肪食で肥満になる、ということだってある……と思うんだけど、
それが本人が痩せる努力をしていない自己責任となり、ペナルティの対象になるのかぁ……と。
2013.01.14 / Top↑