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ここ数日、あちこちから流していただく情報で
以下のようなところに「死の質 QOD」という言葉が登場した、ということを知った。

2013/08/02 社会保障制度改革国民会議・議事・資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/dai19/gijisidai.html

当該箇所を立岩真也先生がarsviのサイトに抜いてくださっていて、
なるほど「尊厳ある死」という文言と一緒に登場している。

(ついでに言えば、この箇所の向かっている方向は
そういう言葉を使わないまま、実は、日本型「無益な治療」論の指標づくりと、
それによる、日本型(コスト論に基づいた)「無益な治療」論に向けた
「国民の合意」形成という名前の誘導なのでは? という印象)

「Ⅱ 医療・介護分野の改革」より
 医療の在り方については、医療提供者の側だけでなく、医療を受ける国民の側がどう考え、何を求めるかが大きな要素となっている。超高齢社会に見合った「地域全体で、治し・支える医療」の射程には、そのときが来たらより納得し満足のできる最期を迎えることのできるように支援すること-すなわち、死すべき運命にある人間の尊厳ある死を視野に入れた「QOD(クォリティ・オブ・デス)を高める医療」-も入ってこよう。「病院完結型」の医療から「地域完結型」の医療へと転換する中で、人生の最終段階における医療の在り方について、国民的な合意を形成していくことが重要であり、そのためにも、高齢者が病院外で診療や介護を受けることができる体制を整備していく必要がある。また、慢性疾患の増加は、低い確率でも相対的に良いとされればその医療が選択されるという確率論的医療が増えることにつながる。より有効でかつ効率的な医療が模索される必要があり、そのためには、医療行為による予後の改善や費用対効果を検証すべく、継続的なデータ収集を行うことが必要である。例えば、関係学会等が、日々の診療行為、治療結果及びアウトカムデータ(診療行為の効果)を、全国的に分野ごとに一元的に蓄積・分析・活用する取組を推進することが考えられ、これらの取組の成果に基づき、保険で承認された医療も、費用対効果などの観点から常に再評価される仕組みを構築することも検討すべきである。」


でも、「形成」しようというのは
あくまでも「医療の在り方」についての「国民的な合意」なんですよね。

まさか、
「そのときが来たらより納得し満足のできる最期」とか
「死すべき運命にある人間の尊厳ある死」とかについて
「国民的な合意」を形成しようなんていう無謀な話ではなくて――。

だって「死すべき運命にある人間」て、終末期の人のことというよりも
「どうせ人間はみんな死ぬんだから」とも読めたりするので、
その路線で「国民的な合意」形成を試みられたら
ものすごく怖いし……。

                   -----

ところで、最初はぜんぜんピンと来ていなかったのだけれど、
このQODをめぐるFBでの議論を読ませてもらって、
記憶の向こうから、もわぁ~っと蘇ってきたのが
ちょうど3年前にあった「死の質」世界ランキングという調査の話題。

当時のエントリーを探して読み返してみたら、
米国では2000年くらいから論文が出ていたりした。 ↓

「死の質」は英国が一位だという調査(2010/7/16)
「死の質」は果たして「生の質」の対極にある概念なのか(2010/7/16)
「死の質」について、もうちょっと(2010/7/17)
「ターミナル」診断に対する医療職の意識調査:“生の質”も“死の質”も本当はただ“医療の質”の問題では?(2010/7/17)


で、当時の私が、この問題についてモヤモヤするところを
思うように言葉にできないまま、上の3つのエントリーを書き、
(もやもや感、ぐるぐる観が満載の、はっきりしないエントリーですんません)

それと平行して当時やっていたツイッターでどうやらつぶやいてみたのが、
4つ目のエントリーにコピペしてあったこちら ↓

「良い死」だったとか「豊かな死」だったというのは、
あくまでも人の人生の一回性の中で主観的にしか決められないことだと思うし、
私は、その一回性の中でドロドロしたり、グルグルしたりしながら、
ギリギリのところで何かを選択するという、そのドロドロやギリギリからこそ
人が生きることにまつわるいろんなことの意味というものは生まれてくるのだと考えるのですが、
「死の質」という言葉がそこにもちこまれることによって、
死に方に外側からの客観的な評価の視点が持ち込まれてしまうんじゃないのか、
で、それは結局、切り捨ての新たなツールになっていくんじゃないのか……

ホスピスが充実していて緩和ケアの質が仮に高いとしても、
だからといって個々の患者の「死の質」が高いことになるのかどうか、
という問題もあると思うのですが、

終末期の医療のいくつかのファクターによって評価された「死の質」が、
日本の記事のように、そのまま個々の患者の「死の豊かさ」として
翻訳されて流布されてしまうことには、それ以上の違和感があります。
じゃぁ、そこで何が飛び越えられてしまっているのか、ということ……

(最後のあたり、今の私の感覚を追加すると、
終末期医療のいくつかのファクターによって評価された
あくまでも医療的に達成された「死の質」のレベルの問題……とでもいうか。
あくまでも医療システムにおける指標の問題に過ぎない、というか。
ううう……うまく言えないので、この先はTBを見てください。)


で、当時、これだけ、もやもや・ぐるぐるする中から
やっと何がしか、「感想」めいたものにたどり着いて
それを4つ目のエントリーの最後に書いているのだけれど、

それを今こうして読み返してみたら
「平穏死」なんかについても同じことが言えるんじゃないのかなぁ、という気がしてきたので、
これもまた、以下にコピペしてみると、

こんなことをぐるぐる考えていたら、
今朝、ふっと頭に浮かんだことがあった。

この(各国の「死の質 QOD」)調査が対象としているのは
「死の質」でも「豊かな死」でもなくて、本当は
ただ、単に「40ヵ国の、緩和ケアの整備量と、ある一面から見た質」に過ぎないということ。

そこから、更に金魚のウンチ的に頭に浮かんできたこととして、

QOL(生活の質であれ生命の質であれ)とは
もしもどうしても使うつもりなのであれば「死の質」にしても
本来、「医療の質」を改善し、向上させるための指標として、医療の内部で、
医療職に対して、その実践を問い、医療の質を測るツールのはずではないのか、ということ。

それが、いつから、どのようにして、「医療が自らの質を問う指標」から
「医療に値するかどうか、医療が患者の質を問う指標」や、
「生き方や死に方を医療が評価して社会に提言するための指標」へと
転換させられていったのか、また転換させられていきつつあるのか。

そもそも緩和ケアの本来の理念が
患者さんが、その人の人生の一回性の中で死んでいくことを支える、というものだったはず。

そして、患者さんが人生の一回性の中で病むことの全体を見る医療が
たしか「全人的医療」と呼ばれて提唱されていたはず。

本当は、これら一切、「医療の質」の問題に過ぎないのでは――?


3年前に書いたこともまだ言葉足らずだし、
今もまだすっきりと言葉になっていない感じはあるのだけれど、

考えるべき問題は、
本当は「医療・介護のあり方」つまり「医療・介護の質」の問題のはずであって
巷でよく言の葉に上る「老いて、いかに死ぬか」というような
「死に方」まして「死に方の質」の問題でもなく、

さらに、一つの「あるべき死に方」像みたいなものを
国民に啓発・推進していく運動みたいな話でもないはずなのに、

そこが「尊厳死」「平穏死」の議論のように、
いつのまにか「医療・介護の質」の話から
患者サイドに向けた「あなたの死に方」だったり
めざすべき「あるべき死に方」の話に摩り替わってしまうようなことが
あちこちで起こっているだけに、

「死の質」などという言葉が社会保障制度の議論に登場することに、
それもまたいつの間にか国民に向けた啓発・推進の具にされるのでは、という
警戒感がどうしてもぬぐえない……んじゃないのかなぁ。

……と、
自分の中にある今回の「もやもや感」を、とりあえず整理してみる。


                  ―――――――

ちなみに、
某MLで教えていただいた関連の日本語論文は以下。

望ましい死の達成度と満足度の評価
宮下光令 

それから3年前の私のエントリー(3つ目のやつ)では
米国で2000年から論文があった事実を拾いつつ、
2003年のものしかリンクしていませんが、

2000年の「先駆的な」論文が以下だとのこと。
http://annals.org/article.aspx?articleid=713475
2013.08.13 / Top↑
副作用としてあまりにもひどい神経症状が出る
マラリア予防薬、mefloquine hydrochloride (商品名Lariam)に
やっとのことでブラックボックス警告がつけられたが、

すでにあまりに多くの兵士や平和維持部隊、ボランティアや留学生や旅行者が
生涯続く可能性すらある副作用リスクにさらされた後では遅すぎる、と
自身も手ひどい副作用を経験し、現在も悩まされている著者。

著者が経験した副作用というのが、ちょっとすさまじくて、
まるで映画かSF小説みたい。

フルブライトの奨学生だった2002年10月16日、
著者はインドのSecunderabadのアパートを
電気をつけっぱなし、ドアも開けっ放し、ノートパソコンもつけっぱなしで出た。

出た記憶は本人にはまるっきりないが
アパートのガードマンが証言しているから間違いない。

翌朝、4マイルも離れた駅で目が覚めて、自分がインドにいることも、
そもそもなぜ自分がインドに来たのかも、さっぱり分からなかった。
警官が来て、精神病院でベッドに縛り付けられ、
3日間、幻覚にうなされた、という。

Lariamの認可は1989年。以来、
健忘、幻覚、攻撃性、パラノイア、その他バランス失調、めまい、耳鳴りなどの神経症状の
副作用がごくわずかの人に出ることは明らかになっていた。

販売元のF.Hoffman LaRoche社は
副作用が出るのは1万人に1人だといっていたが、
2001年にオランダで行われたランダム二重盲検試験の結果が報告されてみると、
なんと飲んだ人の67%が一つまたは二つの副作用を経験、
6%は病院にかからなければならない重い副作用を経験していた。

例えば、1999年にジンバブエのサファリから帰ってきたオハイオ州の男性が
牛乳を取りにいった地下室で、頭にショットガンを当てて自殺。

ソマリアでは
カナダ人の兵士がソマリア人の囚人を殴り殺して自分も自殺を図った。
この兵士の部隊では週に一度Lariamを飲む日のことを
「サイコの火曜日」と呼んでいたという。

Lariamはこのブランド名ではもう売られていないし
米軍もあちこちの圧力でやっと2009年に兵士の大半に処方するのをやめたが、
まだ飲んでいる兵士もある。

2012年に16人のアフガンの民間人を殺して有罪を認めている
Robert Bales二等軍曹もこの薬を飲んでいたと弁護士は言っている。

ベイルズと事件についてはこちらに
(Lariamについては記述ありません) ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%BA

Lariamのブランド名では売られていないとはいえ、
ジェネリックは今年上半期だけで12万通の処方箋が書かれた
米国で最も売れている抗マラリア薬の第3位。

確かにマラリア予防の効果はあるし、
妊婦でも飲めるし、週に1回飲めばいい優れものではある。
ただリスクが大きく、そのリスクの大きさがどこまでかは、いまだに把握されていない。

やっと先週、FDAは神経・精神症状の副作用があることを認め、
ブラックボックス警告を命じたが、これは少なすぎるし遅すぎる。

副作用があったら医者に見てもらえと警告されているが、
副作用に気がつくころには飲んだ人は携帯も通じないはるか遠くの国に行っているし、
そもそもLariamの副作用は、副作用を報告できる能力を奪う形でやってくる。

しかも神経症状は永続的に続くこともある。

著者自身、今なおウツ状態、パニック発作、不眠や不安症など
Lariamを飲む前には経験しなかった症状がある。

米軍の兵士や米国人旅行者らが今後
何世代にも渡って害されてしまったのでは、と軍からも懸念の声が出ている。

Science is a journey, but commerce turns it into a destination. Science works by making mistakes and building off those mistakes to make new mistakes and new discoveries. Commerce hates mistakes; mistakes involve liability. A new miracle drug is found and heralded and defended until it destroys enough lives to make it economically inconvenient to those who created it.

科学は旅の道のりである。
しかし商売が科学を目的地に変えてしまった。

科学は過ちを犯しては、それらに手を加えて
また新たな過ちと新たな発見をすることで発展する。

ところが商売は過ちを嫌う。
過ちには製造物責任が生じるからだ。

だから、新しい奇跡の薬が発見されると、先走りで宣伝されては、
もうここまで多くの人の人生を台無しにしたら、さすがに
製造元にとっても経済的にマズイな、というところまでは、
いえ安全な薬です、と言われ続ける。


副作用は目に見える傷跡を残すわけではない。
目に見える具体的な損傷を起こすわけでもない。

でも、もしもLiriamが車で、
心理・神経的な副作用が骨折のように目に見えるものだったとしたら、
何年も前に市場から引き上げられていたはずだ。

Crazy Pills
NYT, August 7, 2013


最後の引用部分を読むと、
なんかデジャヴがある。

それも決して遠い過去からのデジャヴではなく、
最近ものすごく身近なところで起こっていることの、デジャヴ……。
2013.08.13 / Top↑
米国で93歳の父親 Joseph Yourshawさんに致死量のモルヒネを渡したとして、看護師である娘Barbara Manciniを起訴。訴訟に。それにしても本人も弁護士も何も語っていないのに、C&Cが何のつもりかペラペラ「代弁」している。
http://wnep.com/2013/08/01/woman-headed-to-trial-for-aiding-fathers-suicide/
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2382255/Judges-right-die-guidance-nurse-helps-stroke-victim-end-life-prosecuted.html

カナダ医師会の調査で、終末期の患者に死の幇助をする気があると答えた医師は26%のみだった。
http://www.montrealgazette.com/health/Most+Canadian+doctors+oppose+physician+assisted+suicide/8749691/story.html

Falconer議員から英国議会に提出された自殺幇助合法化法案について、上院議員らが所属する団体Living and Dying Wellから、「安全でない」とする報告書。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10622

長く母乳を続けると頭のいい子どもになる……って、ボストン子ども病院の研究者らが。母乳に含まれる何とか言う成分となんとかいう成分が脳の発達を促すんだとか。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/264080.php

片やフロリダ大の犯罪学の研究者らからは、ティーンが2回喧嘩をすると1年間まるきり学校へ行かなかったのと同じだけIQが「破壊される」との調査結果。女子では1回でそれだけのIQロスになるんだとか。:学校へ行かなかったらIQは下がるというのも、そもそもIQが「壊れる」という発想そのものも、よくわからない。この研究が重大である理由として、研究者らは「IQが下がれば成績が下がるし、仕事のパフォーマンスが落ちるし、問題行動が起こったり、精神障害が起こったり、寿命が短くなるから」。なんだか「知的障害者も精神障害者もみんな頭が悪い人たち」という理解でしかなかったTHニストさんたちを髣髴とさせるような……。けど、犯罪学の研究者がこの程度の認識でいいのか?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/264356.php

日本。異常胎児選んで減胎手術36件…長野の産科医。:新型出生前診断が広く受け入れられていけば、当然の帰結としてこういうことが起こってくるだろうとは思っていたけれど、ああ、そうか、やっぱりこの人から出てくるのか……と。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130804-00000973-yom-sci

日本語。産科医が赤ちゃん人身売買か=「障害ある」と親だますー中国:すごく不快な想像なんだけれど、こういうことを生殖技術を使って産業化することだって技術的には可能……ですよね。そのときには当然ながら遺伝子診断や操作もセットになるのだろうけれど。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130805-00000010-jij-cn

Bill Peaceが「自殺幇助と医療テクノロジー:社会の失敗」というブログ・エントリーで、アシュリー事件に首を突っ込んだのをきっかけに自殺幇助の問題を追いかけるようになって、その後自分がじょくそうの悪化で苦しんだ体験を通じて、医療でも経済でもテクノロジーへの依存度を高める社会で、テクノロジーによる解決に目を奪われて社会的解決が見えなくなっていくという共通の問題があるのだと考察している。アシュリー事件から自殺幇助や安楽死の問題に興味が広がっていったという点も、そういう広がりの中から、アシュリー事件に象徴的に見られる科学とテクノの簡単解決万歳文化とその利権構造が、そのまま実はこの補遺の上の諸々にも通じていく問題の根っこだという認識に至ったのも、当ブログもまったく同じ。
http://badcripple.blogspot.jp/2013/07/assisted-suicide-and-medical-technology.html

日本語。汚染水漏れ口を2年間超放置 福島第一、対策発表の一方で。:このニュース、今日のCNNで大きく報じられていたので、その直後のNHKのニュースでトップに来るのかと思ったら、そうではなかったのにびっくり。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130801-00000013-asahi-soci

英国の労働者の中にゼロ時間契約(待機労働者のことでは?)の人の割合が急増して、社会問題化している。マックの従業員の9割がゼロ時間契約だとか。これも日本にきっと来る。
http://www.theguardian.com/uk-news/2013/aug/05/zero-hours-contracts-cover-1m-uk-workers?CMP=EMCNEWEML6619I2&et_cid=44125&et_rid=1398245&Linkid=http%3A%2F%2Fwww.theguardian.com%2Fuk-news%2F2013%2Faug%2F05%2Fzero-hours-contracts-cover-1m-uk-workers
http://www.theguardian.com/law/work-blog/2013/jul/29/sports-direct-zero-hours-contracts
http://www.theguardian.com/business/2013/aug/05/mcdonalds-workers-zero-hour-contracts?CMP=EMCNEWEML6619I2&et_cid=44274&et_rid=1398245&Linkid=http%3A%2F%2Fwww.theguardian.com%2Fbusiness%2F2013%2Faug%2F05%2Fmcdonalds-workers-zero-hour-contracts

ワシントン・ポスト紙、アマゾンの創始者に売却。:世界中の主要メディアが、いわゆるトップ1%に買われていく。それは、メディアが権力の番犬としての役割を担えなくなっていく、ということ。
http://www.theguardian.com/media/2013/aug/05/washington-post-sold-jeff-bezos-amazon?CMP=EMCNEWEML6619I2&et_cid=44274&et_rid=1398245&Linkid=http%3A%2F%2Fwww.theguardian.com%2Fmedia%2F2013%2Faug%2F05%2Fwashington-post-sold-jeff-bezos-amazon

ミネソタ州選出の民主党下院議員 Keith Ellison氏が「別に米国が破産しているわけではないし、金はたくさんある。ただ、政府がその金を持っていないだけだ。政府には権利があるし、政府と米国民には米国の事業を実施する権利がある。医療、福祉、住宅施策、そういういろんな事業を」。株や債権、ディリバティブの取引に課税しようとの法案をめぐる議論で。
http://www.americanthinker.com/blog/2013/08/rep_ellison_theres_plenty_of_money_its_just_that_the_government_doesnt_have_it.html

清潔な水と石鹸のない地域では子どもの成長が抑制されている、との調査結果。:ワクチンさえあればいいという問題ではない。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/264350.php

シアトルのEcho ParkとSilver Lake地域で開催される「新学期健康フェア」で、無料で散髪、歯科検診、予防接種、糖尿病検査が受けられます。
http://echopark.patch.com/groups/around-town/p/free-haircuts-immunizations-offered-for-echo-park-silver-lake-residents-at-backtoschool-health-fair

日本。<柔軟剤>「高残香」タイプで体調不良を訴える人が増加
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130803-00000035-mai-soci

【関連エントリー】
ナノテク化粧品の安全性に懸念?(2008/11/6)
大統領がんパネルが「化学物質はやっぱりヤバい」(米)(2010/5/10)
化粧品には、安全性が確認されていない化学物質がたくさん使われている(2013/2/7)


日本。経済理由の治療中断、4人に1人の医師経験
https://news.cabrain.net/regist.do;jsessionid=F8B27C8F0C3AE619F3B26856A560307D;jsessionid=F8B27C8F0C3AE619F3B26856A560307D
2013.08.13 / Top↑
バーモント州が自殺幇助を合法化(米)

 米国バーモント州で、5月14日、終末期の人に一定の条件付きで医師による自殺幇助を認める法案が議会を通過。11年に当選した際、選挙公約に自殺幇助合法化を挙げていたピーター・シュムリン知事は20日に署名し、「終末の選択法(the End of Life Choices law)」が成立、即日施行された。

すでに医師による自殺幇助を認める法律があるオレゴン州とワシントン州では共に住民投票によって合法化が決まったのに対して、バーモント州は立法議会によって決まった米国で最初の州となった。米国ではここしばらく、多くの州の議会で同様の法案提出が相次いでおり、4月にはコネチカット州、モンタナ州、5月末にはメイン州で否決されたが、まだ7州で審議中という。

 米国以外でも、オーストラリアのニュー・サウスウェールズ州議会が医師による自殺幇助合法化法案を否決。アイルランドでは多発性硬化症(MS)患者、マリー・フレミング(59)が死の自己決定権を求めて起こした裁判で、判事は死ぬ権利は存在しないと判決した。フレミングは立法府に対しても合法化を訴えたが、エンダ・ケニー首相もこれを拒否。一方、英国では5月20日、かねてより合法化推進派の最先鋒であるファルコナー上院議員が議会に法案を提出し、大物医師らからも連名で法案を支持する声明がTimes紙に寄せられた。いずれの国でも、メディアが大きく取り上げて激しい論争となっている。

身体障害者への医療差別

マサチューセッツ州のベイステイト医療センターのタラ・ラグ医師らが、米国内科学会誌3月号で興味深い調査結果を報告している。肥満した半身まひの架空の患者を想定して、米国の4市で様々な診療科の256の医療機関に診察予約の電話をかけたところ、22%が受け入れられないと答えた。理由に挙げられたのは「患者を車いすから診察台に移すことができない」「建物がアクセス不能」など。高さ調節の可能な診察台またはトランスファー用のリフトがあると答えたのは、わずか9%だった。

この調査について、ある医師がニューヨーク・タイムズに「医師の診察室での障害と差別」と題した論考(5月23日)を寄せた。米国障害者法ADAの制定から23年になろうとするのに障害者は適切な医療を受けることができていないと指摘、医療サイドのADA理解や意識の改善と、物理的な環境整備にかかるコスト面での対応が必要だと説いている。

知的障害者への医療差別

 英国の知的障害者アドボケイト団体、メンキャップは、知的障害者への医療差別の問題と取り組んできた。2007年には衝撃的な報告書『無関心による死』を刊行し、保健省の費用による非公開の実態調査の実施につながった。

その調査結果が3月19日に報告されたところによると、NHS病院での知的障害者の死亡件数のうち37%は死を避けることができたケースと考えられる。年間1238人の知的障害児者が、適切な医療を受けられないために落とさなくてもよいはずの命を落としていることになる。調査に当たった専門家らは、今後もデータ収集を続け、深刻なケースでは調査を行えるよう、知的障害者死亡率調査委員会という全国組織の立ち上げを提唱している。

 メンキャップは一貫して医療差別解消に向けたキャンペーンを行っており、このほど医療専門職と各種医学会と協働で「医療差別をなくす憲章」を作成した。冒頭に書かれているのは「障害ではなく、その人を見てください」「知的障害のある人はみんな、医療を受ける平等な権利があります」「すべての医療専門職は知的障害のある人々に提供する医療において合理的な配慮をする義務があります」「すべての医療専門職は知的障害のある人々に高い水準のケアと治療を提供し、その命の価値を重んじなければなりません」。

その後、病院サイドの視点で「私たちは○○します」と書かれた9つのチェックボックスのついた宣言が並んでおり、各病院ごとにチェックを入れた「憲章」を掲示してもらおう、という趣旨。そこで宣言されているのは、例えばスタッフへの知的障害の啓発研修や、家族や介護者の意見の尊重などだが、私が特に興味深いと思ったのは「私たちの病院に知的障害のある人々のためのリエゾン・ナースを置きます」という項目だ。これは知的障害者に限らず、精神障害者、難病患者、高齢者、認知症の人々にも通じていく「憲章」なのではないだろうか。

「死の自己決定権」が仮に成立するならば、その前提には、誰もが平等に医療を受けられる権利がまず保障されていなければならないはずだ。

連載「世界の介護と医療の情報を読む」
『介護保険情報』2013年7月号
2013.08.13 / Top↑

Harrison Ellmer君。
健康で生まれたが、その後、病院へ運ばれ、
蘇生の後に髄膜炎と診断された。

CTを2回撮ったのち、
医師らはこれ以上できることは何もないと告げ、
両親はHarrison君の人工呼吸器を取り外す目的で
子どもホスピスに移った。

母親が腕に抱き、その周りを家族が取り囲んだ。
看護師が人工呼吸器のスイッチを切って部屋を出て行き、
みんなでHarrison君が自力で息をするのを無言でじっと見つめていると、
彼は少しずつしっかりとした息をするようになっていった。

その間20分間。
家族にとって人生で最もハッピーな時だったという。

Harrison君には右耳の聴力が失われ、軽度の脳性まひが残ったが、
生後6ヶ月の現在、それ以外は正常に発達している。

Baby taken to die in hospice survives after life support shut off
The Telegraph, August 2, 2013
2013.08.05 / Top↑
8月2日のエントリーをアップした際に
effective altruism (効果的利他主義)という用語が気になったので、
検索してみたところ、

ピーター・シンガーがこの effective altruism を唱えていると知り、

同時に今年3月にシンガーがeffective altruismについて講演した際の
以下のビデオ(17分19秒)にヒットしたので、ざっと聞いてみた。

Peter Singer: The why and how of effective altruism
TED(Technology, Entertainment, Design), May 2013


英語の聞き取りにはあまり自信がないので
固有名詞などの詳細は除き、また
細部に聞き間違いもあるかもしれませんが、
だいたいこんな内容みたい……という、
なんとも驚きの概要を以下に。


(シンガーは最初に、
中国でバンにひかれた2歳の女の子が倒れているそばを
何人もの大人が見て見ぬふりで通り過ぎて行った映像を見せる。

そして「自分だったら助けると思う人?」 
見たところ、聴衆全員が手を挙げる)


それが良心というものだ。
しかし、そう思っていながら、我々は
途上国で予防可能な病気で死んでいく多数の子どもたちのためには
何もせず見殺しにしているではないか、
救うために何かをしようと思えばできるはずなのに。

例えば Against Malaria財団。
防虫蚊帳を配ってマラリアを防止している。
こういうところに寄付することで自分にも何かができる。

これをeffective altruismという。
しかし利他行為は効果的にやらなければ意味がない。
そのために哲学、経済学、数学が役に立つ。

世界で最も愛情深い effective altruist は、ゲイツ夫妻とバフェット氏である。
ゲイツ財団のサイトには All lives are equalと書かれている。
これこそeffective altruismの精神である。

ゲイツ財団はこれまでにすでに580万人の命を救ったという推計がある。
これからも何百万人を救うだろう。

しかしeffective altruistであるためには億万長者でなくともよい。
それぞれ身の丈に合ったカネと時間を利他主義に使うことができる。

頭のいい人たちがエリートとしてのキャリアを捨てなければならないことはない。
キャリアで成功してカネをたくさん稼げば、それだけ沢山カネを与えられるのだから。
銀行家になり、金融で成功すればいい。

倫理的に生きるとは、
自分がしてほしくないことを人にしないだけでは十分ではなく
自分が十分なだけ手に入れたら、それをシェアしなければ。
その富をわずかしか持たない人のために使うこと。

ただし効果があるチャリティを選ぶことが重要。

目の見えない人に盲導犬をあげよう。
これはもちろん良いこと。

が、盲導犬1匹を養成するのには、40000ドルかかる。
一方、20から50ドルあれば途上国で眼病の人を治すことができる。

それならば1人の米国人に盲導犬をあげることと
その金で途上国の人の眼病を治すことのどちらを選ぶべきか。
答えは明らかだ。

Effective altruismを実践するために
参考になるウェブサイトはたくさんある。

ただカネを稼いでは使い、また稼いでは使うだけなら
永遠に岩を坂の上まで運んでは、転げ落ちたのをまた抱え上げて運ぶ無為な行為に等しいが
その金で人のためになることをすれば達成感もあり、自尊感情も持てる。

(「結論として」と断って、シンガーは
右の腎臓を見知らぬ人に提供した手術後の回復中という人の誇らしげな写真を見せる)

1つの腎臓を提供すれば、チェーン移植で4人の患者が救われる。

こんな人の写真を見せられたら、私は恥ずかしい。
私はまだ腎臓を2つ持っているから。

しかし、私と同じように感じる人も大丈夫。
腎臓を1つあげて救える命の数と年数をお金に換算すれば、
5000ドルをAgainst Malaria財団に寄付するのと同じことだという話だ。

それを知ると気持ちがちょっと楽になる。
なぜなら私は既に5000ドル以上を同財団に寄付しているし、
その他の目的の慈善団体にもいろいろ寄付しているから。

だから、腎臓を2つ持っていることに罪悪感を覚える人は
気が楽になるためにはそういう方法があります。


すぐに頭に浮かんだのは
息子バフェット氏の論考にあった「良心ローンダリング」という表現。


ちなみに、息子バフェット批判の論考を書いた著者のWilliam MacAskillは
シンガーのeffective altruismの信者で、そのMacAskillが
その名もEffective Altruismというタイトルの自分のブログで
このシンガー講演に対して出てきた批判の論点を取りまとめたうえで、
「もちろん、ぜんぶ間違っている」と書いている。

http://effective-altruism.com/peter-singers-ted-talk-effective-altruism

彼の取りまとめによれば、それらの論点とは、

1. Charity starts at home
慈善は自分の足元から。

2. Doing some amount of good is what matters, not trying to maximize
大事なのは善行をすることであって、それを最大限にしようとすることではない。

3. It's unfair only to focus on the most cost-effective programs, when there are other causes you could focus on
他にも注目すべき大事な問題はあるのに、コスト効率がよいものだけに注目するのはフェアではない。

4. There's too much focus on the symptoms (which charitable donations do) rather than the root causes of global problems
現象にばかりとらわれすぎて(慈善の寄付とはそういうものだが)グローバルな問題の根源的な原因に目が向いていない。

5. Worries about some people (e.g. Gates) doing harm through
慈善家の中には(例えばゲイツのような)害を成している場合もあるのでは、との懸念。

6. It's impossible to compare effectiveness across charities because the outcomes are so different
アウトカムが違いすぎて、慈善それぞれの効果を比較することなど不可能。

7. You have no reason to be altruistic (and if you're doing it because it makes you feel good, then that's just another form of egoism)
利他的でなければならない理由はない(それに利他行為は自分がよい気持ちになるためにやるのだから、エゴイズムの一形態に過ぎない)。



なお、シンガーが言及している腎臓のチェーン移植については、こちらに ↓
「腎臓がほしければ、他人にあげられる腎臓と物々交換で」時代が始まろうとしている?(2010/6/30)
2013.08.05 / Top↑
Warren Buffettの息子のPeter Buffettが
NYTのOp-Edで慈善資本主義に疑問を投げかけている。

論考のタイトルは「the Charitable-Industrial Complex 慈善家・産業複合体」

タイトルの同意語を本文中から探してくると、
Philanthropic Colonialism. 慈善植民地主義。

著者は作曲家。
2006年に父親のバフェット氏が自分の富を社会に還元するとして
3つの財団に私財を分けて子どもたち一人一人に運営にあたらせたことから
慈善に関わるようになったという。

そして間もなく 
これはPhilanthropic Colonialismだと疑問を感じるようになる。

特定の地域について何の知識も持ち合わせない彼自身を含めた人々が
ある地域で有効だったというだけで、ある問題解決法を、
文化にも地理にも社会にも疎いまま別の地域に持ち込もうとする。

その結果、
例えば、売春地域でエイズの蔓延を防ごうとコンドームを配布して
結局は無規制のセックスの値段を吊り上げてしまうなど、
却って想定外の悪影響をその地域に及ぼすことになる。

しかし、彼が懸念しているのはそこにとどまらず、
富の不均衡に伴って民間の非営利セクターが急成長した結果、

慈善それ自体が、
富の不均衡への罪悪感を覆い隠す「良心ロンダリング」システムであると当時に、
富を偏在させ多くの人々の生活や地域を破壊させてきた現行システムを
維持するための仕掛けとなっていること。

さらに非営利セクターの拡大でビジネス原理が慈善に持ち込まれ、
これらの会議では「投資収益率」が云々され、その説明責任が問われたりしている。

しかしマイクロ・ファイナンスや金融リテラシーを途上国に持ち込んでも、
それは格差を広げている大元を利するだけなのでは?

清潔な水や医療アクセスや自由市場、教育、安全な居住環境などが
途上国にありさえすれば、と嘆く声をよく聞くが、
慈善の介入でそれらが解決できるわけはなく、

Money should be spent trying out concepts that shatter current structures and systems that have turned much of the world into one vast market. Is progress really Wi-Fi on every street corner? No. It’s when no 13-year-old girl on the planet gets sold for sex. But as long as most folks are patting themselves on the back for charitable acts, we’ve got a perpetual poverty machine.
It’s an old story; we really need a new one.

世界を巨大市場にしてしまった
現行の構造と制度を破壊する概念を試すためにこそ、カネを使うべきである。

どこの街角にもWi-Fiが整備されることが本当に進歩なのだろうか。

そうではなく、
13歳の少女が一人としてセックスのために売買されることがなくなった時に
それが進歩といえるのだ。

人々が慈善行為を互いに讃えあっている限り、
それは貧困を永続化させる装置にすぎない。

それは、これまでも繰り返し行われてきたこと。
我々はやり方をかえなければならない。

the Charitable-Industrial Complex
Peter Buffett,
NYT, July 26, 2013


とても興味深いことに、
Julian Savulescuが中心になってやっているOxford大学の
実践倫理学ブログ、Practical Ethicsがこの論考を取り上げて反論している。
(著者はSavulescuではなくて Will Crouchまたの名をMacAskillという人物)

Does philanthropy propagate an unjust system?
PRACTICAL ETHICS, August 1, 2013

What Warren Buffett’s son doesn’t understand about the world
William MacAskill,
Quarts, August 1, 2013


CrouchはPeter Buffetの論考の趣旨を
「つまり、新たなメガ慈善家たちは片方の手で与えてもう一方の手で奪っている」と
独自の言葉で要約したうえで、

そういうことも言えるだろうけれど、
すべてがそうだというわけではないだろう、
「例えばビル・ゲイツがいるじゃないか」という。

ゲイツ財団はワクチンを提供し、結核やHIV治療研究に資金を投じて
500万人の命を救ったといわれている。その金をビル・ゲイツは
ソフトウエアを作って売ることで得たんじゃないか、と書いて、

Peter Buffetのいうことは
経済についても世界の現実についてもわかっていない青二才の
具体的なエビデンスに何ら基づかない漠然とした批判にすぎない、と
突っぱねている。

でも、
ビル・ゲイツが慈善に使っている資金は
彼の個人的な投資会社Cascadeを通して投資で得たカネだし、

その金が投資されている先は
彼の慈善で潤うビッグ・ファーマだったりもする……んでは?


【関連エントリー】
慈善資本主義に新たなネーミング、「人道帝国主義」:インドのポリオ“撲滅”のウラ側(2013/6/11)
慈善資本主義の“マッチポンプ”なカラクリ(2013/6/11)
2013.08.05 / Top↑
必見ビデオ。Mark Diceという、ちょっと癖のあるジャーナリストが街頭に立ち「高齢者には安楽死を義務付ける法律を求める署名活動をしています。高齢者の存在が医療費に大きな負担となっています。義務付けです。署名をお願いします」と呼び掛ける一種のドッキリを仕掛けたところ、けっこうな人が賛同し署名。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/07/petition-for-mandatory-euthanasia-for.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29

Not Dead YetのCEO、Diane Colemanの自殺幇助批判の論考。the real world of families that are not necessarily all loving and supportive……
http://blog.nj.com/njv_guest_blog/2013/07/the_dangerous_help_of_assisted.html

SavulescuがJournal of Medical Ethicsの論説で、合法的な自殺ほう助の一つの方法として palliated starvation 緩和ケアを得ての餓死を提言。:これはFENが事件を起こす前に、HPで認知症や施設入所者らに勧めていた方法でもあり、ずっと推進派の中にはあった声。
http://jme.bmj.com/content/early/2013/07/17/medethics-2013-101379.extract

OR州の調査でホスピスで働く医療職に、自殺ほう助をめぐる葛藤。
http://www.christianconcern.com/our-concerns/hospice-workers-struggle-to-balance-their-core-values-with-assisted-suicide-laws

オーストラリアのDr. DeathことDr. Philip Nitschkeが上院議員選挙に出るんだとか。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10616#comments

カナダ、Victoria州の電話によるアウトリーチ・プログラム。研修を受けたボランティアによるもの。
http://www.fightdementia.org.au/services/telephone-outreach-program.aspx

NYのCuomo知事、収容施設の4000人の精神障害者を支援付き住宅に移す、と。
http://www.nytimes.com/2013/07/25/opinion/justice-for-the-mentally-disabled.html?_r=0

英国議会による障害を理由にした中絶に関する調査の報告書。軽微な障害でも40週まで中絶可能な法律の訂正を提言。
http://www.abortionanddisability.org/resources/Abortion-and-Disability-Report-17-7-13.pdf

世界で初めての試験管ベビーを作ったPatrick Steptoe医師の元患者 Satdra Crashleyさんが自費出版で、本人の同意なしに片方の卵巣ともう一方の半分を摘出されたばかりか、その手技の未熟で健康を害したと告発。SteptoeとEdwardsが採取手続きの倫理面については明らかにしていない『ボランティア』の一人だったのでは、と。避妊ピルの開発研究でも、プエルトリコの貧しい村の女性たちに実験とは断らずに投薬された事実があり、タスキギ実験になぞられられているとのこと。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10613#comments

がんの過剰診断・治療に対する警告が米国医師会誌に。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/experts-warn-of-dangers-of-overdiagnosis-and-treatment-of-cancer/2013/07/29/2659035e-f88d-11e2-b018-5b8251f0c56e_story.html

NYT.乳がんの生存率に、黒人と白人とで3年の格差。
Black-White Divide Persists in Breast Cancer: New research shows that white women with breast cancer live three years longer than black women because of a troubling pattern of inferior care and a delay in treatment for black women.

ProPublicaの高齢者施設Assisted Livingの実態シリーズLife and death in Assisted Living 3/5まで
http://www.propublica.org/article/emeritus-1-the-emerald-city
http://www.propublica.org/article/emeritus-2-theyre-not-treating-mom-well
http://www.propublica.org/article/emeritus-3-a-sinking-ship

上記シリーズからのTV番組。洗濯室に入りこみ洗剤を飲んで死んだ認知症の男性入所者。ナーシング・ホームに比べて人員配置も規制も緩い。
http://abcnews.go.com/Health/assisted-living-facilities-loosely-regulated-understaffed/story?id=19808799

日本語。ニュージーランド移民局、肥満理由に滞在拒否=130キロの南ア男性
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130727-00000064-jij-asia

【関連エントリー】
「ダウン症の息子が社会の重荷」とドイツ人医師に永住権を拒否(2008/11/10)
カナダ政府、「障害のある子どもが社会の負担」と相次いで永住権を拒否(2011/5/3)


HPV感染予防の決め手は男児へのワクチン接種。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/263811.php

ナイジェリアの国務大臣兼保健省のMuhammed Pate医師、大臣を辞職してデューク大学のグローバル・ヘルス研究所のポストへ。そして同時に、ワシントンDC拠点のゲイツ財団のシニア・アドバイザーに就任へ。ナイジェリアといえば、この前ポリオ撲滅で成果があった州の知事にビル&メリンダ・ゲイツ賞が贈られていたけど、あの贈呈役だった「保健相」はそれではこの人だったわけですね。ナイジェリアでは同じ日に武装集団が学校を襲撃して42人を殺害していたのが印象的だった。
http://niyitabiti.net/2013/07/nigeria-health-minister-resignsgrabs-bill-gates-offer/

MITの科学者らがマウスの脳への偽の記憶植え付けに成功。
http://www.theguardian.com/science/2013/jul/25/false-memory-implanted-mouse-brain

日本。東大43論文に改ざん・捏造疑い 元教授グループ。分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授のグループ。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130725-00000014-asahi-soci

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『援助じゃアフリカは発展しない』ダンビサ・モヨ著 小浜裕久監訳(東洋経済新聞社 2010):ミニメモ

6月5日の補遺で拾って図書館にリクエストしておいたもの。6月の話題は、この本をビル・ゲイツが批判して、著者が激怒してゲイツに反論した、というもの。

「援助依存モデルの問題点は、アフリカ諸国が永遠に無邪気な子どものような国家として扱われていることにある」(p. 43)という指摘に象徴されるように、読んでいて頭の中で重なっていったのは、障害当事者からの医学や生命倫理の「医学モデル」に対する「社会モデル」からの批判。

アフリカへの先進諸国の援助が、アフリカの国々の生活や文化や社会や価値意識をまるきり無視して先進国が「指導し教育し支援しながら」先進国が自分たちの科学とテクノと経済学の論理で考える「本来国家とはこうあるべき」姿へと目指させるモデルになっている。それがまったく機能していないのは、たとえば援助と称してマラリア予防のための蚊帳を大量に届ければ、地元の蚊帳製造業者は倒産するし、汚職をはびこらせて国家機能をさらに弱体化させていく。

それに対して著者が提言しているのは、小規模な国債発行とかグラミン銀行のマイクロクレジットなど、身の丈に合った方法での「自立」を目指し、それによって国家機能をエンパワーしていくこと。ルワンダのカガメ大統領「われわれ以上に自分の国を知っている者はいないのだし、われわれ以上に何がいいことかを知っている者はいないのだ」(p. 232)。つまり、アフリカの国々を代弁してモヨがこの本で言っていることは Nothing about us without us. なんでは?

この本には「ただ、何をなすべきか、アフリカを後退から防ぐために何が役立つのか、といった点について、アフリカの(選挙で選ばれた)行政担当者や開発問題担当の政策立案者が、意見を述べているのを見ることはほとんどない。多くのアフリカ人が戸惑い、無念に思う中で、この意図や目的についてのもっとも重大な責任は、アフリカの外に住むミュージシャンの手にゆだねられている」(p. 35)と書かれているように、民間ではボノやゲルドフなどミュージシャンの慈善家には何度も言及されているのだけれど、ビル・ゲイツの名前はなぜか一度も出てこない。私が気付いたのは、訳者あとがきに1回登場したのだけ。
2013.08.05 / Top↑
出版されるや世界中で1000万部を売り上げた
“A Brief History of Time”を執筆中の1985年、
Stephen Hawking(現在71歳)はスイスで肺炎を起こした。

「私は重体で、薬でこん睡状態にされ、
そして生命維持装置につながれました。
医師らは私はもう助からないと考えて、
私の最初の妻ジェーンに生命維持装置を切ることを提案しました」

しかし、ジェーンさんは拒否し、
スイスからケンブリッジの病院へ移すことを主張したという。

Stephen Hawking’s doctors offered to cut life support
The Sunday Times, July 28, 2013

Stephen Hawking – Life Support Decision
Medical Futility Blog, July 28, 2013


映画 Hawking の予告編(2分12秒)はこちらから見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=nCTWnCvDleU



1980年代のスイスの病院には
既に「無益な治療」論がそこまで浸透していたということなのでしょうか。

それにしても薬でこん睡状態にしてしまったら、
回復の兆候があったとしても、それすらわかりようがない……という点で、

頭に浮かぶのは、去年のSteven Thorp事件と、
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)

それから、
高齢患者は「さっさと鎮静・脱水」死のベルトコンベアーに
乗せられていることが懸念される英国の機械的LCP適用問題――。

“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)
2013.08.05 / Top↑
以下のエントリーで追いかけてきたNicklinson訴訟の続報。

“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/23)
Nicklinson 訴訟の上訴裁、四肢マヒの男性によって継続へ(2013/4/19)


交通事故で四肢まひとなった男性、 Paul Lamb氏と
脳卒中の後遺症でロックトイン症候群となり先の高等裁での敗訴で
食を断って肺炎で亡くなったTony Nicklinson氏の未亡人が起こしていた
死の自己決定権をめぐる上訴審で、

上訴裁判所は
自殺ほう助に関する法改正は司法の決定事項ではなく議会の仕事として訴えを却下。

Lamb氏自身がGuardianに発表した文章が以下 ↓
I don’t want sympathy in life, I want dignity in death
Paul Lamb,
Guardian, July 31, 2013


一方、
かねてNicklinson氏と一緒に裁判を起こしていた四肢まひの男性 Martinの訴訟では
法にはさらなる明確化が必要との判断が示された。

British court dismisses landmark right-to die appeal
Reuters, July 31, 2013

UK court rules against euthanasia but says more clarity needed on prosecuting assisted suicide
Brandon Sun, July 31, 2013


【8月2日追記】
Martin訴訟では、
3人の裁判官のうち2人がDPPに対して、さらなる法の明確化を求めたのに対して、
主任最高裁判事はそれに反対して、DPPに法改正に等しい権限を与えるべきではない、と。

既に2010年にPurdy訴訟での最高裁の判断を受けて
自殺ほう助の起訴ガイドラインを出しているDPPのStarmer氏は、
この判決に即座に、英国公訴局長としては先に最高裁の判断をいただきたい、と反論。
(ちなみにStarmer氏はこの秋でDPPを辞任予定。それなりに筋の通った正論を説く人だったけど)

四肢マヒのMartinさんは餓死を試みるもかなわず、
残された手段はスイスのディグニタスへ行くことのみだが
看護婦の妻は自殺ほう助に当たる行為をしたくないと言っている。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2382255/Judges-right-die-guidance-nurse-helps-stroke-victim-end-life-prosecuted.html
2013.08.05 / Top↑
オーストラリア健康高齢化省(DoHA)が2012年8月に制定した「全国介護者レスパイト・プログラム」
(National Respite for Carers Program:NRCP)の概要について、

同局から出ているNRCPガイドラインのイントロダクションから。


・NRCPとは、
全国介護者アクションプランの1996-97年度の予算措置で導入された
オーストラリア政府のプログラム。

・2056年までに国民4人に1人が65歳以上となる高齢化予測を受け
首相とマーク・バトラー健康高齢化大臣は2012年4月20日、
高齢者ケアの改革10年計画 the Living Longer Living Betterを発表し、
5年間で37億ドルの予算を付けた。

・優先課題は、
在宅への支援とケアの強化、入所施設へのアクセス改善、認知症対策と介護職の強化。

・2010年3月17日に介護者法案(the Carer Recognition Act 2010)が通過し、
NRCPの資金を受けるサービス機関や提供者は従業員に
「オーストラリア介護者声明」の理念を尊重・実行するよう徹底することが義務付けられた。

・その中には
介護者が自分が介護している人が十分なケアを受けられるという安心のもとに、
自分自身の健康とウェルビーイングを守るべく、休息をとれるよう
レスパイトサービスにも予算措置が行われた。
その対象者は以下の人々を介護するケアラー。

認知症の人。
認知症で介護の困難な行動のある人。
虚弱高齢のオーストラリア人(65歳以上の人、病気であれば50歳以上)
在宅で生活している中等度・重度・重症障害のある若年者
(65歳未満、病気であれば50歳未満)
緩和ケアを必要とする終末期の人。

・介護者支援の新規予算は
レスパイトその他のサービス提供事業者にグラントとして提供され、
それらが継続されることによって地域資源として定着することを狙うもの。
NRCPのグラントは3年間の給付を基本とする。

・2012-13年度予算で5年間で3200万ドルの予算がつけられており、
NRCPプログラムのもとで分配される。


このプログラムの大変興味深い点として、

① レスパイトサービスの形態が多様であること。

デイセンターや施設、コミュニティセンターでの一時預かりのほかに、
介護者の自宅で提供されるレスパイトも含まれている。

12-13年度ではNRCP下で全国500の地域ベースのレスパイト・サービスに
グラントが提供される。

②NRCPの一環としての「全国介護者カウンセリング・プログラム:NCCP」。

全国的な介護者支援組織、Carers Australiaへの委託により、
介護者に特有のうつ状態やストレス、グリーフと喪失、コーピングといった問題について
カウンセリング提供体制を整備。

NCCPの詳細については、たとえば以下の情報に ↓
NATIONAL CARER COUNSELLING PROGRAM

Cares Australiaが介護者向けに出しているNCCPのパンフレットは以下 ↓
http://carersqld.asn.au/wp-content/uploads/Talking+it+over+brochure.pdf


【注記】
DoHAから出ているNRCPのレスパイサービス提供者向けマニュアルの
10.2 Charging Fees (利用料金)の項目(p.47)に以下のように書かれていることから、
レスパイトもカウンセリングも利用は原則として応能負担のようです。

Consistent with the Government’s policy support for ‘user pay’ arrangements, all carers using Australian Government funded respite services are encouraged to contribute to the cost of Respite Care when they can afford to. While no carer should be refused services due to an inability to contribute to the cost of those services, it is important that those carers who can afford to pay all or some of the costs are required to do so, as this may result in the provision of Respite Careto more carers.
2013.08.05 / Top↑
Statement of Australia’s Carers(オーストラリア介護者声明)

オーストラリア政府が2010年に制定した介護者法
The Carer Recognition Act 2010のセクション12として挙げられているもの。
(日本で『介護者憲章』と訳され紹介されているのがこれかも?)

1. All carers should have the same rights, choices and opportunities as other Australians, regardless of age, race, sex, disability, sexuality, religious or political beliefs, Aboriginal or Torres Strait Islander heritage, cultural or linguistic differences, socioeconomic status or locality.

すべての介護者は、年齢、民族、性別、障害の有無、セクシュアリティ、宗教また政治的信条、アボリジニまたはトレス海峡諸島民の子孫であること、文化的言語的な違い、社会経済的な地位やローカリティを問わず、他のオーストラリア人と同じ権利、選択と機会を与えられなければならない。

2. Children and young people who are carers should have the same rights as all children and young people and should be supported to reach their full potential.

介護者である児童と青少年は他の児童と青少年と同じ権利を有すべきであり、その潜在的な可能性に十全に達することができるよう支援されなければならない。

3. The valuable social and economic contribution that carers make to society should be recognised and supported.

介護者が社会に対して行っている価値ある社会的また経済的な貢献が認められ、支援されなければならない。

4. Carers should be supported to enjoy optimum health and social wellbeing and to participate in family, social and community life.

介護者は最も健康な状態と社会的なウェルビーイングを楽しみ、家族生活、社会生活、地域生活に参加できるよう、支援されなければならない。

5. Carers should be acknowledged as individuals with their own needs within and beyond the caring role.

介護者は介護役割の中にも、またその役割の外にも自分自身のニーズのある、一人の人であることが認められなければならない。

6. The relationship between carers and the persons for whom they care should be recognised and respected.

介護者と介護者が介護している人との関係性が認められ、尊重されなければならない。

7. Carers should be considered as partners with other care providers in the provision of care, acknowledging the unique knowledge and experience of carers.

介護者はケアの提供において、介護者ならではの知識と経験を尊重され、他のケア提供者のパートナーとして位置づけられなければならない。

8. Carers should be treated with dignity and respect.

介護者は尊厳と敬意をもって遇されなければならない。

9. Carers should be supported to achieve greater economic wellbeing and sustainability and, where appropriate, should have opportunities to participate in employment and education.

介護者は経済的なウェルビーイングと持続可能性を増大させる支援を受けると同時に、可能であれば雇用と教育に参加する機会を与えられなければならない。

10. Support for carers should be timely, responsive, appropriate and accessible.

介護者への支援はタイムリーで、ニーズに沿っており、的確で、アクセス可能なものでなければならない。

Appendix 5 – Statement of Australia’s Carers
Section 12 of the Carer Recognition Act 2010



なお、英語圏に伝わる読み人知らずの「介護者の権利章典」を訳してみたものはこちら ↓

介護者の権利章典 再改定版(2011/10/23)



【オーストラリアの介護者週間関連エントリー】
今日から豪・介護者週間……because I care(2008/10/19)
56歳の母親が語る息子の介護(豪・介護者週間)(2008/10/20)
2013.08.05 / Top↑
カナダ政府が1940年代から1950年代にかけて
インディアンの子どもたちに行った一連の非倫理的な栄養実験の詳細が明らかになっている。

Social History誌に発表された論文はこちら ↓
Administering Colonial Science: Nutrition Research and Human Biomedical Experimentation in Aboriginal Communities and Residential Schools, 1942-1952
Ian Mosby (bio)
Social history Volume 46, Number 91, May 2013

アブストラクトは以下。

Between 1942 and 1952, some of Canada’s leading nutrition experts, in cooperation with various federal departments, conducted an unprecedented series of nutritional studies of Aboriginal communities and residential schools. The most ambitious and perhaps best known of these was the 1947–1948 James Bay Survey of the Attawapiskat and Rupert’s House Cree First Nations. Less well known were two separate long-term studies that went so far as to include controlled experiments conducted, apparently without the subjects’ informed consent or knowledge, on malnourished Aboriginal populations in Northern Manitoba and, later, in six Indian residential schools. This article explores these studies and experiments, in part to provide a narrative record of a largely unexamined episode of exploitation and neglect by the Canadian government. At the same time, it situates these studies within the context of broader federal policies governing the lives of Aboriginal peoples, a shifting Canadian consensus concerning the science of nutrition, and changing attitudes towards the ethics of biomedical experimentation on human beings during a period that encompassed, among other things, the establishment of the Nuremberg Code of experimental research ethics.


1942年から1952年の間に、カナダの一流栄養学者数人が各種連邦機関と協働しつつ、アボリジニの地域と寄宿学校において、それまでに前例のない一連の栄養研究を行った。その中で最も野心的で最も有名なのは、1947年から1948年にかけて行われたthe Attawapiskat and Rupert’s House Cree First Nations(クリ―・ファースト・ネイションは先住民の意。その他は??)のJames Bay 調査だった。その調査ほど知られてはいないが、2つのそれぞれ別個の長期研究もあった。

その中には、被験者のICもなければ被験者に知らせることもなしに、マニトバ北部のアボリジニの低栄養状態の人々に対して、後にはインディアンの寄宿学校6校で、栄養状態をコントロールする実験まで含まれていた。

本稿はこれらの研究と実験を調べ、そのほとんどが未調査のままとなっているカナダ政府による搾取とネグレクトについて、いくらかでもナラティブの記録を提供できればと意図するものである。同時に、これらの研究をアボリジニの人々の生活を統治する連邦政府の方針といった、さらに大きな文脈に位置付ける。その文脈とは、ことにニュールンベルグ綱領が成立した時期に、栄養科学に関するカナダ人のコンセンサスが変化し、バイオ医学の実験倫理に対する姿勢が変わってきたことである。


この論文を受け、Nature 誌が掲載した記事は以下。
Canada used hungry indigenous children to study malnutrition
Nature, July 23, 2013


BioEdgeの解説によれば、

実験目的で寄宿学校の子どもたちに基本的な栄養を欠いた食事を与え、
基本的な医療ケアも行わなかった、というもの。

ある実験では
マニトバ北部で低栄養状態が広がっていることが分かった後、
コントロール群を作るため175人の子どもたちに
意図的にビタミン・サプリを与えないままにした。

また別の実験では
州立の寄宿学校の子どもたち1000人に対して
牛乳を1日に必要な摂取量の半分以下しか与えないことによって
ビタミンCのサプリメントの効果を調べるための「ベースライン」を作った。

その後、6校の子どもたちに
歯科治療が差し控えられた。

上記のNatureの記事によれば、
先住民組織(the Assembly of First Nations)では
この一連の研究に関する全データの公開を求めており、

アボリジニー局は寄宿学校での虐待を調査する委員会に
900の文書を提出した、と言っている。

commentsNew evidence of unethical research on Canadian Indians
BioEdge, July 27, 2013



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2013.08.05 / Top↑