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8月31日の朝日新聞朝刊に、
三井住友フィナンシャルグループの「ワクチン債」の大きなカラー広告が出ていた。

キャッチは 「投資で始める、あなたの支援」。

「ワクチン債とは」に続く説明は
「70カ国以上の発展途上国の子どもたちに」
ワクチン接種の機会を提供するために発行される債券です。」

もっとも、この説明は、ごく小さく書かれていて、それより何よりも広告の中で目立つのは、
くっきり黄色の背景に緑で大きく書かれた「利率 年 6.00%」の部分。
発行体は「予防接種のための国際金融ファシリティ IFFlm」

ワクチン債については
以下のエントリーのコメント欄にまとめたように
当ブログでも何度か話題にし、首をかしげてきた。

やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)

ずっと感じている基本的な疑問の第一は、上記の「6.00%」に見られるように、
一体どうして途上国の子どもにワクチンを届けるための人道支援が投資になりうるのか
一体どういうカラクリで、そこに利益が生まれてくるというのか、という点。

でも、この広告を前に、しばし座り込み、
デカデカとした「6.00%」という文字を眺めていたら、
もう1つ、第2の疑問も頭に浮かんできた。

上記6月16日のエントリーとその翌日のこちらのエントリーで書いたように、
6月13日にロンドンで開かれた国際ワクチン会議で、
今後10年間に途上国の子どもたちにワクチンを届けるための資金は調達済みなのです。

だからこそ、13日の会議ではビル・ゲイツが
「これで世界中の子どもたちにワクチンを打てる」と感謝のスピーチをしていたはず。
それなのに、なぜ、まるでまだ資金が足りないかのようなフリして「ワクチン債」?

――で、今度こそ、検索してみた。

まず、ワクチン債を売っている人たちは
だいたい、みんな上記の三井住友フィナンシャルグループと同じことを言っている。

マネックス証券のワクチン債サイトのキャッチは「幼い命を救う投資があります」

説明には
「世界には、貧しさゆえに予防接種を受けられず、
幼く尊い命が失われている現実があります。
私たちが自身にもリターンを得られる投資をしながら、
そうした幼い命を救う『人道的な貢献』を行うことが出来ます。
IFFlm発行のワクチン債投資によって調達された資金は、
世界約70カ国以上の予防接種プログラムに活用されます」

大和証券のワクチン債のキャッチは
「世界の子供たちを救う国際活動 ~ワクチン債が支える予防接種~」。

で、ワクチンのカラクリを詳しく説明してある証券用語辞典のワクチン債とはによると、

ワクチン債とは、開発途上国の子供たちにワクチンを提供することを目的として、2009年6月24日からHSBC証券会社、予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)、GAVIアライアンス、世界銀行の4者によって発行される債券。同6月1日から販売の勧誘が開始された。
ワクチン債によって調達された資金は、世界の70カ国以上で子供たちの予防接種や保健サービスのための財源とされる。
販売会社は19社。格付けはS&PでAAA、ムーディーズでAaaなど。40億米ドルを調達して、5億人の子供たちへのワクチン接種を目指す。
なお、IFFImは、欧州と南アフリカ共和国の計7カ国と、2006年から2026年までのワクチン提供費用の寄付金協定を締結しており、寄付金を償還原資とした債券を発行している。




実際には、2009年以前から売られていた事実は上記コメント欄で指摘したし、
その他、検索で出てきた情報でも裏付けられているのだけれど、それよりも何よりも、

ビル・ゲイツや英国首相やボノなんかが世界各国政府や金持ちに向けて
マネックス証券とそっくり同じことを言っては拠出を迫ってきた目標金額が
その「40億米ドル」だったし、

その「40億米ドル」こそが
上記6月13日の会議で「めでたく確保された」金額なんだけど……?

ゲイツ財団の”慈善”が世界各国から吐き出させて既にめでたく確約させた金額と同じだけを、
今なお世界中の証券会社が一般人からワクチン債に吐きださせようとしているわけで、

前者の寄付金が後者の償還原資とされていることを思えば一致しているのも「なるほど」にせよ、
それでは利息分が不足するはずなんだけど……?

それに、その仕組みそのものが、基本的にヘンじゃないです?

日本も13日の会議でGAVIに8億3000万円を約束しているのだけど、
それは「途上国のワクチン支援」の資金として拠出したのであって、
世界中で売られているワクチン債の償還原資として拠出したわけではないはず。

なに、それ――?

まさか、日本政府もその他各国政府も、ぜ~んぶ承知でやっていることだ……とでも?


そこで個人投資家の方々のブログでの考察を覗いてみると、

ワクチン債って…(一流証券マンへの道 2008/2/3)
ワクチン債 vaccine bond は現時点では押し込み型(雄牛と熊と慾豚と 2008/1/30)
(もう1つリンクしたいのだけど、アドレスとブロブ名だけなのに
何故か「登録できない文字列」になってしまって含められず、リンクできませんでした)

指摘されているのは、だいたい以下の2点で、
① 個人にせよ各国政府にせよ、ワクチン債よりもワクチン購入に直接寄付した方が貢献できる。
② 機関投資家向けに売り出そうとして失敗したので小口化して個人投資家をターゲットとし、
人道貢献をウリにすることで条件の悪さを糊塗しているのでは?

非常に分かりやすく面白かったのは
Q:お役にも立てる「ワクチン債」は買いでしょうか?(マネデリカ 2009/5/3)に回答した人の以下の分析で、

一般債券のお金の流れは、「投資家→発行体→投資家」という形で利払い・償還されますが、ワクチン債の場合は「投資家→発行体(IFFIm)→ワクチン購入」までで、利払いや償還の場合は「IFFIm設立各国(イギリスなど)の寄付金→発行体→投資家」という別の流れになります。

この図式では、「IFFIm」は単に「他人のふんどしで相撲を取る」だけです。ただ、もともとワクチン購入は世界各国の寄付金等によってなされているという事実から考えれば、投資家のお金でワクチンを買っても、各国政府の寄付金で投資家にお金を返すのなら、結果的には「各国政府のお金で買った」ことになり、「投資家に利息を払うならその分でワクチンを買えよ」と言われれば「ごもっとも」ということになります。

ひねくれ者の私などは、資金調達と満期償還の間の時間的なズレのなかで、なにか「美味しい儲け話」があるんだろうなあ、と思ってしまいます。

裏の事情はともかく、この債券で確実に言えることは、
① 債券を買った投資家は「社会貢献したような満足感」を得られる。
② 一番得をするのは、販売手数料がもらえる証券会社(D証券)。
(ゴチックはspitzibara)



各国政府の拠出金も
ワクチン債を買った投資家のカネも、
こんな回りくどい仕組みを経ることなくダイレクトにワクチン資金に提供されるのが
途上国の子どもたちにとって一番の利益になることは明明白白だし、

さらに、途上国のワクチン事業に必要な40億ドルは
既に各国政府からGAVIに約束されて集まっているのだから
この上「ワクチン債」を売って集める必要なんか全然ない。

だから、そこは、つまりは、単に、カネが余計なルートを経回って動くことが
誰かの利益を生む経済のカラクリ作りに過ぎないということなのでは?

そして、そのカラクリに関してマネデリカの回答者が言う「美味しい儲け話」とは、
例のグローバルな「ワクチンの10年」祭りやゲイツ財団がビッグファーマの株主であることと
ちゃんと繋がっていたりするんじゃないのだろうか?

それにしても、これらの情報を考え併せると、
上記の用語辞典にあるように、そもそもワクチン債を仕組んだのがGAVIや世界銀行とくるのだから、
GAVIの事実上の親組織であるゲイツ財団や、その親分のビル・ゲイツが
そのカラクリ作りに乗っかっていないわけはないし、

まさか、こうした「ワクチン債」のカラクリを各国政府が知らずに
GAVIに多額の拠出金を出しているとも、ちょっと考えられないこと、ないですか?

それなら世界中の人々が善意を信じて疑わない
「途上国の子どもたちにワクチンを」「貧しい子どもの命を救うために」というキャッチは
いろんなところからカネを出させてカネを回すための、単なるニセ看板に過ぎないのでは?

「ワクチンで子どもたちの命を救おう」には、
やっぱり子ども達の命の問題よりも世界経済の問題の匂い、
グローバル強欲ひとでなし金融・慈善資本主義の匂いがプンプンしている……という気がする。


【ゲイツ財団と「ワクチンの10年」について】
新興国でのワクチン開発・製造に、巨大製薬会社がマーケット・チャンスと乗り出している(2009/11/8)
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
2011.09.04 / Top↑
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