2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
8月末に以下のニュースがあった。

胎児のダウン症新型検査「精度99%」に賛否―命の選別につながらないか
JCAST, 2012年8月30日 

それからずっと、ネット上で様々な議論を目にしながら、
私自身はエントリーに何かを書くという気になれないままでここまできてしまった。

その背景としては、

一つには、この検査そのものについては
英語ニュースでは数年前から何度も話題になっていて、
日本にやってくるのも時間の問題だとずっと思っていたこともあるし、

これまで、この問題では多くのエントリーを書いてきたので、
今さら、それらをまとめ直して書くのも面倒臭いということとか、

この問題に限らず、
科学とテクノの簡単解決文化と、そこに繋がる
グローバル強欲ひとでなしネオリベ記入慈善資本主義による
メディカル・コントロールと新・優生思想にはもはや歯止めがきかないところまできて、
すべり坂どころか既に断崖絶壁……という気分になっているから
ということもあるのだけれど、

ここ数日の間に、
この問題で気になるブログ記事を立てつづけに2つ見つけて、
どちらも、たいへん重要な指摘がされているので、
自分自身のメモとしてもリンクしておきたいと思って。


①なぜかアドレスをコピペすると「登録できない文字列」とされ、リンクが張れません。
以下のエントリータイトルで検索してください。

眠られぬ当直(よる)のために3(2012/9/5)
(ブログ:Heaven’s Door Hospital ヘブンズドアホスピタル)

ブログ主は医師。
ユニークな設定の漫画で、
「99%精度のダウン症診断」と母体保護法の問題を
非常に分かりやすく解説してくださっている記事。

障害理由の中絶は現在の日本では違法行為なのだけど? 
というお話です。

ついでながら、このブログ、まだエントリーが12しかないのですが、
これ以外のエントリーも、いずれも爆笑の楽しさです。


② 私なりに思うこと(2012/9/7)
(ブログ:CSカナリア闘病記―回復を目指して)

こちらは、私も当ブログでずっと一貫して書き続けてきたのと同じことを
元現場職員、現在難病当事者の立場で書いてくださっている、ブログ友の方の記事。

その指摘の1つは、
私もちょうど昨日のエントリーで書いたばかりの点で、
障害当事者の実像は生活を共にして直接的に密接にかかわっていなければ分からない、
多くの議論が、その実像を置き去りにしたステレオタイプで行われている、ということ。

もう一つは、ラジオで荻上チキさんが指摘したとのことなのだけれど、、
遺伝子診断で障害のある子どもを産む・産まないを自己選択にすることは
養育を「自己責任」にしてしまう、という懸念。

私もそれとまったく同じ指摘を
未熟児の話だけど、こちらのエントリーで書いている ↓
「中絶か重症障害か……選ぶのは親のあなた(英)」(2010/5/16)

Art Caplanも、同じようなことをこの頃に書いてくれている ↓
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)


その他、これを機に
当ブログでダウン症を中心に出生前遺伝子診断に関連して書いてきた
エントリーの一部を以下に整理してみました。
(ゴチックは特に当該検査をめぐる話題)


2007年
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)

2008年
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/6/1)
障害胎児・新生児の親に情報提供保障する法案つぶれる(2008/7/29)
「中絶決断に情報提供不要」ヒト受精・胚法議論(2008/6/1)
羊水穿刺より侵襲度の低いダウン症検査、数年以内に(2008/10/8)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)

2009年
受胎前遺伝子診断:巧妙な言葉の操作が優生思想を隠ぺいする(2009/1/16)
出生前遺伝子診断で「あれもこれも調べたい」って?(2009/2/2)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
非侵襲出生前診断の倫理問題をJAMA論文が指摘(2009/5/28)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)

2010年
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)
2012.09.10 / Top↑
日本。尊厳死法案、臨時国会への提出目指す―超党派議連、役員会で確認
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38074.html

Lancetに、オランダの安楽死法施行以降の、安楽死と自殺幇助の実態について詳細な実証研究が報告されている。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961128-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F

日本語。精子育てる細胞作製=「セルトリ細胞」マウスでー男性不妊症治療に貢献・米研究所
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00000012-jij-int

日本。京都の人口より多い認知症:「昔は経済が成長し、金利も高く、給料も伸びたのでマネープランを考える必要性は低かったと思います。右肩上がりで成長するなら、あまり悲観的になる必要はないからです。しかし、これからは違います。あなたの人生を自分でコントロールできるように計画を立て、準備をしてから行動しましょう」:人生を自分でコントロールできるように計画」って、どうすればコントロールできるの?
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/trend/tsumitate/20120906-OYT8T00543.htm

日本。窓口無料を廃止 重度障害者の医療費で県 来年度以降 国の“懲罰”理由、召喚式に(山梨)
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2012/09/07/3.html

日本。重度心身障害者の医療費助成「現物方式」に 宇都宮市
http://www.shimotsuke.co.jp/town/region/central/utsunomiya/news/20120906/869792

日本。福祉乗車パス「生活保護世帯、交付廃止を」検討会が神戸市に報告書
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120907/hyg12090702040003-n1.htm

日本。<国旗>購入費用を補助、補正予算案を提案 石川・中能登町
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00000049-mai-pol

日本。電車ベビーカー論争にギャルモデル「子供優先車を検討して」:これ、08年にもネット上で論争になったことがあった ⇒ 想像力と寛容をなくしていく社会(2008/5/20)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120907-00000002-pseven-soci

日本語。イランで核武装の準備着々……イスラエル駐日大使
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00001068-yom-int
2012.09.10 / Top↑
ここ数年、脳死や植物状態からの回復事例が相次いだり、
実は最少意識状態だったと植物状態の誤診ケースが次々に明らかになっています。

そうした事件それぞれの詳細は、以下のエントリーにリンク一覧があります。
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)

こうなってくると、
いずれ必ず、標題のようなことを言う人が出てくるだろうと思っていたし、
それは恐らくは、この辺りの誰かだろうとは予想していましたが、
やっぱり予想通りの人たちから予想通りの内容の発言――。


Journal of Medical Ethicsで
Dominic WilkinsonとJulian Savulescuが
「最少意識状態は植物状態よりもベターなのか」というタイトルのコメンタリーを書き、

昨年の英国女性Mの事件(エントリー後半にリンク)を取りあげて論じた後に、
NO と結論しているらしい。

BioEdgeによれば、その根拠は2点で、

① 意識があるだけ本人には苦痛である可能性があるし、
どうせ意味のあるコミュニケーションはとれない。

② 公平な資源の分配の観点から、
最少意識状態のまま生かしておくことには
カネがかかり過ぎる。

「仮に最少意識状態で生かされることに何がしかの利益があるとしても
(我々は利益が負担を上回ることには懐疑的だが)
限りある医療資源を他に回すことと比べれば、
その利益の影響は小さい」

Is it better to be minimally conscious than vegetative?
BioEdge, September 7, 2012


ここで2人が言っていることは、
08年のカナダのGolubchuk事件と
10年の同じくカナダのMaraachli事件で、
Peter Singerが言っていたことにそっくり ↓

Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
Peter Singer が Maraachli事件で「同じゼニ出すなら、途上国の多数を救え」(2011/3/22)


ちなみに、昨年の英国での匿名女性Mの関連エントリーは以下。
(仮名がこちらの記事ではMargoとなっていますが同じ事件と思われます)
「生きるに値しないから死なせて」家族の訴えを、介護士らの証言で裁判所が却下(2011/10/4)

この訴訟については、戸田聡一郎氏が「現代思想」6月号「尊厳死」特集の
「意識障害における尊厳死で何が問われるか」という論文で取り上げておられます。

私も「介護保険情報」1月号の連載で書きましたが、

私がこの事件で特に注目したいのは、
当該患者さんの意識状態を正確に知っていたのは家族でも医師でもなく、
日々の介護に当たっていた直接処遇職員だった、ということ。

これは「アシュリー事件 メディカル・コントロールと新優生思想の時代」でも書いたし、
当ブログでもあちこちのエントリーで書いていますが、

その人に「意識」があるかどうか、その人が何をどのような分かり方で分かり、
どのような表現方法で感情や意思を表現することができているか、ということは
その人と日々の生活を共有している者にしか分からない。

(「どうせ何も分からない」と思っている人には共に暮らしていても
「その人は分かっている」ということが分からない)

この1点を主張することが当ブログの最も大きな目的の一つと言ってもいいくらいに、
私はずっとこのことを書き続けてきたような気がします。

理屈でそれを書いたエントリーも「ステレオタイプという壁」の書庫に沢山ありますが、

娘を含め重症重複障害のある人たちがどんなふうに「その人なりの分かり方」で
多くのことを知り、分かり、感じ、表現し、訴えながら、生きてそこに在るか、
その姿を少しでも描くことで、それを伝えたいと願って書いているのが
「A事件・重症障害児を語る方へ」という書庫のエントリーたちです。

ぜひ、一度のぞいてみてください。


アシュリー事件でも
「どうせアシュリーは赤ちゃんと同じで
自分が尊厳を侵されているかどうかすら分からないのだから、
本人に利益があるなら医学的には無用の侵襲を加えてもよい」という
論理が成り立っていたことや、

シャイボ事件を始め、私たちにはただの重症障害者だとしか思えない人たちが
これまでも植物状態だと言われて死なされてきたことを思い、

尊厳死や死の自己決定権議論が
ターミナルな人と、ターミナルでも何でもない重症障害者とを
ぐずぐずに混同したまま進められていく各国の議論のあり方を思い、

また「こういう状態の人をそのまま生かし続ける費用を考えると、
その費用を他に使うことの利益の方がよほど大きい」というモノの言い方が、
本人の最善の利益論をも否定しつつ、医療拒否の論拠として出てきつつあることを思えば、

脳死状態の人から植物状態の人へ、
ここで植物状態の人から最少意識状態の人へ、と移動させられていく「線引き」は、
その内にはさらに最少意識状態の人から重症障害児・者へと移動していくことは
間違いないのでは?


そして、敢えて追記しておくならば、
Wilkinson と Savulescuは、ここ数年の発言から推測すれば、臓器不足の解消策として
安楽死希望者と無益な治療論で切り捨てられる重症障害者の”有効利用”を狙っている ↓

「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
臓器提供は安楽死の次には”無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
「腎臓ペア交換」と「臓器提供安楽死」について書きました(2010/10/19)

Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)
「“生きるに値する命”でも“与えるに値する命”なら死なせてもOK」とSavulescuの相方が(2011/3/2)

脳死者減少が必至なら倫理の線引き変更も必至?「人為的脳死後臓器提供安楽死」も?(2012/2/14)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilskinson 1(2012/2/22)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilskinson 2(2012/2/22)
2012.09.10 / Top↑
今週初めの英国の内閣改造で新たに保健省副大臣に任命されたAnna Soubry氏が
自殺幇助関連法規を「バカげている」と批判。

先ごろ、医師による自殺幇助を求めたTony Nicklinsonさんが
法の明確化の判断は議会の仕事だとして敗訴した直後に
食を断ち、肺炎で死亡したケースについては意見を保留し、

医師は人を殺すよう求められるべきではないとしながらも、

「死ぬのに手助けを必要とするターミナルな病状の人たちが
海外へ行かなければならないのは言語道断」

「どういう時に起訴しないかというルールはあるし、
それで認められていることもあるけれど、
それについて、もうちょっと正直に、しっかり議論をするべき」

Minister slams assisted suicide law
UKPA, September 8, 2012


他に同じ話題の記事としては以下も。
Newly-appointed minister attacks assisted suicide law
The Independent, September 8, 2012


The rules that we have about who we won’t prosecute とは、
例のDPPのガイドラインのことですね。

これまでの動きの方向性も私にはそう見えたし、
今回の副大臣の発言の方向もそうですが、

オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、米国のオレゴン、ワシントンと違って、
英国は、医師による自殺ほう助を違法としたまま
近親者による自殺幇助を合法化していく……という流れ??


【Nicklinson訴訟関連エントリー】
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/23)


【DPPのガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
警察が「捜査しない」と判断する、「英国自殺幇助基礎ガイドライン」の”すべり坂”(2011/7/15)
2012.09.10 / Top↑
Planned Parenthoodの幹部だった人が、自殺幇助ロビーC&Cで活動中。:やっぱり繋がったかぁ。ここのところは、つながりがいつか表面化すると思っていました。しかも、他ならぬWA州のPP幹部だった人物。PP―産児制限―中絶―高齢者・重症者への死への圧力……そこにはもちろんアシュリー療法や障害者への強制不妊も繋がっている。
http://www.lifenews.com/2012/09/05/planned-parenthood-insider-now-works-for-assisted-suicide-group/

地球規模で気候を操作して温暖化に歯止めをかけようと試みるgeoengineeringの研究へと、ビル・ゲイツらの資金提供受け、科学者らが各国政府にロビー活動。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/feb/06/bill-gates-climate-scientists-geoengineering

IVFの胎児は凍結したものの方が生まれてから健康かも?:それなら凍結して使いましょう……て?
http://www.guardian.co.uk/science/2012/sep/04/ivf-embryos-frozen-healthier-babies?CMP=EMCNEWEML1355

メタボは子どものIQを下げますよ~。:こういう研究がPediatricsに発表されるというのが、そもそも私にはよく分かりませぬ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249799.php

日本。フェイスブックで意思表示=臓器提供、日本でも
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120905-00000074-jij-soci

ハイテクセンサーで監視し、毎日のルーティーンが崩れたら介護者センターに連絡してくれる「ビッグ・ブラザー介護システム」の治験。豪。
http://www.theaustralian.com.au/news/breaking-news/trial-for-big-brother-care-system/story-fn3dxix6-1226465483454

十分に食べるものも冬服もない子どもたちが増えて、チャリティSave the Childrenが50万ポンドを目標に募金活動を開始。:英国では、社会福祉の機能をチャリティが担うしかなくなりつつある? でもチャリティの伝統のない国は?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/05/save-the-children-uk-campaign

でもCameron首相は内閣改造でさらに右寄りに。
http://www.guardian.co.uk/politics/2012/sep/04/david-cameron-government-reshuffle-cabinet

日本。全盲男性はねられ死亡=山手線ホームから転落―JR新橋駅
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120906-00000092-jij-soci

日本語。白い杖をよろしく! (視覚障害者に会ったら)
http://www.kyoto-lighthouse.or.jp/knowledge/read/id/4#home

病院・入所施設の敷地可へ 障害者の共同住宅設置【岐阜】
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20120904/CK2012090402000030.html

日本。「カタカナ語と漢字どっちが分かり易い?」(ブログ A Spoonful of Osatou):ジェネリックへの強引な切り替えに、制度誘導でもあるのか?? じゃなくて、あるのよね。
http://blogs.yahoo.co.jp/yukari_aoyama_2009/38729323.html

2週間前に鉱山労働者のストライキに警官隊が発砲し34人が死亡した南アで、またも警察の発砲で4人が負傷。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/03/four-miners-shot-south-africa?CMP=EMCNEWEML1355

日本語。インドで少数民族対象に「人間サファリ」、ツアー運営者に逮捕状
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE80C02O20120113?rpc=122

日本語。アマゾン先住民虐殺か、ベネズエラ政府は「証拠発見できず」:すみません。こんなイヤな話題ばっかり拾って……。自分でも嫌になってきた……。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120904-00000059-reut-int
2012.09.10 / Top↑
入院中の患者が心停止になった時に、
どれだけの長さ心肺蘇生(CPR)を続けるべきかについては
明確なエビデンスベースのガイドラインはなく、

これまでは一般に、長く続けることは
それで蘇生できても患者が永続的な神経障害を負う確率が高いために無益である、と
考えられてきたが、

Lancetに発表された
同種としてはこれまでで最大規模で、唯一CPRの長さと救命率をリンクさせた調査により、

平均して現在行われているよりも9分間長く続けるほうが
救命率が良い、との結果が出ている。

The American Heart Associationの世界最大のデータベースから
2000年から2008年までに米国435の病院で心停止を起こした64339人の患者を特定。

救急救命室の患者と、治療中に心停止に至った患者を除き、
通常病棟とICUの成人入院患者を対象とした。

病院によりCPR続行の時間には
最短の病院では中央値で16分、
最長の病院では中央値が25分というバラつきがあり、その差は50%以上。

最長の病院群で患者が救命され退院できる確率が
最短の病院群よりも12%上がることが分かった。

また神経機能は、CPRの長さを問わず、だいたい同じだった。

時間の延長で最も利益があるのは
除細動に反応しない症状の患者。

CPRの時間が長くなることで
医師らが状況分析ができ、様々な介入を試みられるからではないか、と著者ら。

論文にコメンタリーを書いた英国NHSの医師は
「30分以上もCPRで血流を確保し酸素を送り続けて、なお救命できて、
それだけではなく神経的にも良い状態で救命できる患者がいる可能性がある、ということ」

また別の医師からは
終末期の患者の場合や、その他の理由で長くCPRを行うことが不適切なケースもある、との指摘。

論文著者らも、
どの患者でもCPRを今より長くやった方がいいということではない、と。

Prolonged CPR Holds Benefits, a Study Shows
NYT, September 4, 2012
2012.09.10 / Top↑
2月にオーストラリアでスキー中に雪崩に巻き込まれて
重症の脳損傷を負い、

英国の病院に運ばれたオランダのFrisco王子(43)をめぐって、

オランダの政治家から「連れて帰って、生命維持装置を切るべき」との声が上がり、
「死ぬ権利」議論が再燃している。

王子はこの6カ月間、昏睡状態で、
妻がずっと付き添っており、母親のBeatrice女王も
毎週末にはロンドンに飛んでいるとのこと。

Heleen Dupuis 上院議員は
「王子が再びノーマルな生活を送れるようになるか疑問。
もしオランダの病院に運ばれていたら
回復の可能性がこれほど小さい以上、
医師らは生命維持を切っていたはず」

ロイヤル・ファミリーは王子を自国に連れ帰りたがっているとも言われ、
もしも生命維持が切られて王子が死ぬということになれば、
安楽死法ができて以来の大物人物への適用となる。

Dutch coma prince ‘should leave UK so he can die’ in Netherlands
The Evening Standard, August 31, 2012


その他の報道は以下。
http://www.theaustralian.com.au/news/world/debate-leaves-prince-in-limbo/story-fnb64oi6-1226462703107
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/prince-friso-dutch-royal-family-been-in.html
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10213


ちなみに王子が事故当時、英国の病院に運ばれたのは、
自国オランダには25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関がないため。

その情報については、こちらのBioEdgeの記事に ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9958


オランダの国民は、
自分たちは無益な治療論が制度化された医療によって
受けることがかなわない「25歳以上の重症脳損傷」の治療を
王子だけは他国へ運んでもらって受けられている事態に、
疑問を持たないんでしょうか。


また、今回の上記記事を読んで、
いつも「無益な治療」論に思うことをやはり思います。

もともとの無益な治療論というのは
「救命可能性がない」「にも拘らず本人に苦痛を強いている」治療を無益とするものだったはずなのに、

ここで「生命維持を停止すべき」理由として挙げられているのは
「ノーマルな生活を送れるようになる見込みがない」。

ノーマルな生活を送れないなら、
救命は可能であっても死んでもらいましょう……?
2012.09.10 / Top↑
補遺で追いかけてきた(なぜか見つけられないんだけど)、事故で重症の脳損傷を負ったオランダの王子(まだ英国の病院に入院中。なにせ自国には25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関が存在しないため)に尊厳死議論。:これ、明日できたらエントリーにしたいですが。
http://www.theaustralian.com.au/news/world/debate-leaves-prince-in-limbo/story-fnb64oi6-1226462703107
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/prince-friso-dutch-royal-family-been-in.html
http://www.standard.co.uk/news/london/dutch-coma-prince-should-leave-uk-so-he-can-die-in-netherlands-8099209.html
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10213

11月に自殺幇助合法化の住民投票が予定されているMA州で、障害者団体が再考を呼び掛けている。:日本の尊厳死法案に対して障害者が言っていることと非常に似ている。というか、同じ。
http://www.thebostonpilot.com/article.asp?ID=15055

当然ながら議論が激化しているMA州で、「モンタナでも合法化されている」との発言をめぐり、モンタナ州の上院議員が「合法化はされていない、最高裁のBaxter判決の判例があるだけ」と訂正。
http://www.massagainstassistedsuicide.org/2012/08/assisted-suicide-is-not-legal-in-montana.html

父と母の介護をする6歳のヤング・ケアラー。こういう子どもたちをテーマ・パークに招待して息抜きを、という支援。
http://www.chad.co.uk/news/local/helping-hand-for-six-year-old-carer-ruby-who-looks-after-mum-and-sister-1-4877185

6月27日の日本ケアラー連盟フォーラム2012 「ケアラーの暮らしを地域で支える」の概要、HPにアップされました。spitzibaraも最後に5分ほどしゃべっています。よかったら、覗いてみてくださいね。
http://carersjapan.com/forum2012report.html

米国小児科学会が包皮切除に対するスタンスを変更したことについて。へースティング・センターのフォーラムで、変節の過程がたどられているらしい。1971年に「医学的には無用」、89年に「利益があるかも」、99年に「たぶん利益なかったみたい」。で、今回「やっぱ利益の方が害より大きい」。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10212#comments

NYTのOp-Edで、このまま生殖技術が発達すれば、健康度が低くて犯罪率が高い男は不要の世の中が来る、と生命倫理学者/犯罪学者。:私はどこかのエントリーで書いたと思うけど、逆に女が生殖に不要となって、男の世界で男のニーズに奉仕する役割に必要な女だけが存在することを許される世界を思い描いていたし、今もそう考えている。だって世の中の定義権を握っているのは男だからね。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10216

健常者がスポーツでドーピングをやるように、障害者のスポーツでは自分の体を傷つけて感覚刺激としてエンハンスすることが行われているらしい。パラリンピックでピトリウスが負けて、勝った人のブレードが長すぎるとかイチャモンつけているらしいけど、科学とテクノで障害者スポーツの精神が損なわれているみたいな気がしないでもない。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10220

ピトリウスの記事はこちら。
http://www.guardian.co.uk/sport/2012/sep/03/paralympics-oscar-pistorius-angry-loss

日本。芸人の母の生活保護受給報道、BPOに審議要請へ:注目したい。
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY201208300744.html

日本。新しい出生前診断をめぐる議論について( ブログ「関わり合いの場から」)
http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/article/461/
2012.09.10 / Top↑
Zach McDanielくん(12)をめぐるテキサスの無益な治療事件の続報で、Zachくん、治療を受けられる病院へ転院。:よかった。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/update-mcdaniel-v-cook-childrens.html

FEN事件があったGA州で、自殺幇助禁止法が上院を通過。
http://www.ajc.com/news/news/state-regional-govt-politics/assisted-suicide-ban-passes-senate/nQSZt/

病気の妻の自殺幇助で逮捕されたCA州の男性Alan Purdyさん、立証不能で不起訴に。
http://www.huffingtonpost.com/huff-wires/20120822/us-assisted-suicide/

包皮切除の是非論争をGuardianが取り上げている。:米国小児科学会がこのたび包皮切除のメリットとして認めた中には、尿路感染やHIV感染予防の他にもHPV感染予防も含まれているというから、その内には日本でもHPVワクチン接種と一緒に包皮切除を、という掛け声が起こってくるかも? そういえばビル・ゲイツが軽井沢に別荘を立てているという噂もあったな。そういえばGuardianはゲイツ財団のパートナーでもあったな。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/28/circumcision-the-cruellest-cut?CMP=EMCNEWEML1355

認知症の患者さんの家族が目覚まし時計に仕込んだ隠しカメラで、ケアホームの2人の職員による虐待が明らかとなり、有罪に。:こういう事件が後を絶たない。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/29/care-home-worker-hidden-camera?CMP=EMCNEWEML1355

英国で精神科の閉鎖病棟に入院治療中の15歳の少年を、介護人が外部の生活に慣れさせると称して売春宿に3回連れて行ったことが明らかに。その後で少年の状態が悪くなったとして、親は訴えると言っている。少年の相手をしたとされる売春婦の一人は日本人だとか。
http://india.nydailynews.com/business/1ead69eac9a13fc322bd5f053ac1c778/carer-takes-boy-from-mental-health-unit-to-brothel

日本。胎児のダウン症新型検査「精度99%」に賛否―命の選別につながらないか
http://www.j-cast.com/tv/2012/08/30144480.html

ミシガン医大の研究で、ガン細胞の増殖を抑える薬が学習障害のリスクを軽減するのに有効だ、と。:この研究は「だから学習障害リスクのある子どもに、ガンの治療薬を」という方向に向かおうとでも??
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249645.php

インターネット中毒も遺伝子変異によるんだとか?:じゃぁ、私もそう?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249641.php

極端にカロリーを落とせば長生きできるというのは、もう何年も前から流通している説だけれど(特にHTニスティックな人たちの間で)、どうもそういうわけでもないみたい。:だから、「○○したら長生きできる」情報に飛びついたり、そういうのに振り回されたりしない方がいいんでは? 
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249649.php

日本。がんの要因は過剰鉄分か=ヒトと同様の染色体変化―名古屋大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120830-00000026-jij-soci

日本。乙武洋匡さんがツイッターで暴露「24時間テレビのメインパーソナリティを断った」
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/rbbtoday_93616
2012.09.10 / Top↑
死体は見世物か ― 「人体の不思議展」をめぐって
末永恵子 大月書店 2012


この問題は当ブログでも08年から
折に触れて以下のエントリーで取り上げてきたもの。

死体の展覧会(2008/2/22)
「人体の不思議展」中止要望書への緊急署名(2008/5/5)
2011年5月30日の補遺(京都府警が立件見送り)
2011年2月26日の補遺(京都地裁、訴えを棄却)


著者は 「『人体の不思議展』に疑問を持つ会」の中心となって
批判活動を続けてこられた末永恵子氏。

以下の論文を書いておられて、
「『人体の不思議展』の倫理的問題点について」「生命倫理」20 (2009)

私も、11年5月の補遺にこの論文をリンクした際に読んでいたので、
この本が出たことを知った時に、お名前には記憶があった。

福島県立医科大学講師。
日本の植民地における医学史を研究しておられるとのこと。

当ブログの問題意識も同じような方向だったから、
京都での訴訟の結末に釈然としないものを感じて以来、
いつか誰かがこういう本を書いてくれるのを待っていたけれど、

これは実に骨太の告発の書です。

また驚いたのは、なんと、著者にこの本の執筆を勧めたのが
あの「重い障害を生きるということ」の高谷清先生だったということ。

高谷先生は昨今のパーソン論の広がりを危惧しておられる
元・びわこ学園園長。なるほどなぁ……。

人は、強い思いを抱えて
どうしてもやらないでいられないことと取り組んでいると、
会うべき人と巡り会うんだなぁ、と、ちょっと感動してしまった。

そして、医療の世界の中にも、
科学とテクノの簡単解決文化とその利権構造が突き動かしていく世の中に疑問を抱き、
様々な形で異議申し立てを続け闘っている方々があるのだということ、

著者や高谷先生をはじめとして、思いを同じくする各界の人たちが集まって、
人体の不思議展を中止に追い込んだということ、

そして、そういう粘り強い闘いの成果として、
この本が生まれたということが、
何よりとてもすばらしいと思う。

それだけに、
著者が詳細に調べ上げてこの本に取りまとめている、
人体の不思議展の背景の根深さ、医療界、行政、マスコミの余りの恥知らずには、
ほとんど茫然としてしまうのでもある。

なにしろ、問題のプラスティネーション技術を開発し、
その後BODY WORLD展でショーバイに精を出しているのは
ドイツのグンター・フォン・ハーゲンスだけれど、

その標本を展示公開した世界で最初の国は、実は日本だったとは……。

1995年、日本解剖学会がハーゲンス作成の標本を借りてきて
一般市民を対象に展示を行った「人体の世界」展。

言いだしっぺは、あの養老猛司先生。

展覧会の目的は、将来日本でもプラスティネーション標本を作りたくて、
そのための献体者を得るための、いわば宣伝、啓蒙、地ならしだったという。

そしてこの時に既にプラ標本は様々なポーズを取らされたり、
胎児や妊婦の身体がスライスされたりしている。

興味深いのは、この2年後の97年に臓器移植法が成立している当時の時代背景。

その後、世界中で最も誠実にこの問題における遺体の尊厳について正面から検討し、
最高裁が最終的に違法と判断したフランスでの議論で、主催者側が
臓器提供の推進のためにも死体に対するタブーを打ち破るべきだと
主張した(p.146)と書かれているのも、興味深い話だ。

さらに私が目を引かれた一致は、
織田敏次という医師が書いた「『人体の不思議展』に関心とご理解を」という文章で
「ありのままの人体に触れるのも、先人が子孫に残した心暖まる贈り物」と書いている点。

「科学とテクノの簡単解決」文化時代の医学の世界では、臓器提供も代理母も、
同意なき遺体の加工や展示という、こんなあからさまないのちの冒涜までが
こんなにも簡単に「贈り物」に祭り上げられてしまう。

ともあれ日本解剖学会による「人体の世界」展の大成功に目をつけて
金儲けを考えついた人たちがドイツからハーゲンス作成の標本を買ってきて
翌96年から始めたのが「人体の不思議展」。これも大成功。

99年にハーゲンスと金銭問題でトラブルとなると、
主催者らが目をつけたのが中国の、似て非なる(ならぬのかも?)技術でプラストミック標本。

死刑囚や政治犯からの臓器摘出で名を馳せた中国のこととて、
標本に使われている死体の出所は誰が考えたって怪しいのだけれど、

その買い付けにも医師がかかわっていたし、
各地の医師会が共催したり広告塔役や各会場での解説役など、
直接的・積極的に協力し、巡回展示を支えた医師らが少なくない。

監修委員会には、日本の医学、歯学、看護分野の重鎮がずらりと並んで
死体の展覧会に箔をつけた。

日本赤十字社、日本医学会、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会が後援。
地方での展覧会では地元の医師会、歯科医師会、看護協会が後援。

つまり日本の医学会は、解剖学会の展示から始まり、その後、商業展示として
どんどん恥知らずな“興行”(著者の表現ではなくspitzibaraの印象)と化していく間、
「医学会を挙げて応援していたと言っても差支えない」(p.101)。

その後、全国的な批判の広がりを受けて、
こうした団体は後援をやめるのだけれど、そこには一切の説明も謝罪もない。

(ここで私の頭に浮かんだのは731部隊に所属していた人たちが
終戦後に日本の医療界の重鎮に居座ったという話だった。
この本の中でナチスはちょっと言及されているのだけど
731部隊についてはまったく言及がないのが私にはちょっと不思議)

一方、04年、05年と、
主催者から東京大学へ合計8400万円の寄付が行われている。

著者はレイチェル・カーソンの
「餌をくれる飼い主の手を噛む犬などいない」という言葉を引用し、

「利益相反を見事に比喩したこの言葉が、
『人体の不思議展』の主催者と研究者との関係をも言い当てているだろう」(p.100)と書く。

重大な倫理問題が、
いかにももっともな理屈と名目をつける「専門家の権威」によってスル―され、
巧妙に言い抜けられていく様は、まさに現在の生命倫理の各種問題とそっくりで、

当ブログで散々追いかけてきた、ビッグ・ファーマと研究者の癒着、
慈善資本主義の利権に群がる科学とテクノの研究者と企業の利益相反……。

そこでも医学会だけでなく、行政もマスコミも同じ穴の狢で……。

これらはアシュリー事件の議論や背景の構図にもそのまま通じている。

どの問題でも、実はさほど「巧妙に」言い抜けてなどいないのに通ってしまうのは、
彼ら権力と利権の側が、一般の我々のゲスな欲望を食い物にすることで、
我々一般人の方も自分の中にある欲望をどんどん肥大化させられて抑制が利かなくなり、
倫理問題や法律問題をなし崩しに不問にすることに
一緒に加担していくからではないんだろうか。

「どうせ」と思っているゲスな自分をみんなで一緒になって解放すれば
一般人はそれぞれに自分よりも弱い存在を踏みつけて
自分だけが美味しい思いをできる(したと錯覚させられる)し
一般人がそっちに雪崩を打ってくれれば、それでがっぽりと稼ぎつつ
メディカル・コントロールをさらに根付かせて
グローバル支配を確実にしてゆける人たちがいる。

この死体の展覧会をめぐって
米国があくまでも個人の選択権重視に動き、
フランスが死体の尊厳にこだわり違法とみなしたことは象徴的でもある。

もっとも、グローバルな科学とテクノの利権の前にはフランスの生命倫理も
結局は英米の後追いを強いられていくしかないのだろうという気はするし、

その点で、あとがきにあるように
「弱者からの搾取と身体の商品化という問題は表裏一体」(p.197)は
グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義そのものを
ズバリと言い現わしている。

人体の不思議展に関わった医療界の団体や個人を実名で批判したことについて
著者は「医学界がレッドマーケットの搾取性と決別するため」と書いている。

「レッドマーケット」とは、スコット・カーニーの命名で
人骨、臓器、卵子、血液、代理母、毛髪、養子縁組などを扱う市場のことで、
カーニーは「レッドマーケットには、人体が必ず
社会の下の階層から上の階層へと動いていく、という
不愉快な社会的側面がある」と書いているという。

死体の尊厳の問題は、
レッドマーケットで搾取される社会的弱者の尊厳にも繋がっているし、

アシュリー事件であからさまに否定された重症障害者の尊厳にも、
尊厳死をめぐる議論でなし崩しに否定されていく「生きるに値しない命」の尊厳にも
そのまま通じていく。

つまり今の世界で起こっていることは、みんな一つのこと。

だからこそ
行政やメディアを巻き込んでメディカル・コントロールが敷かれていく事態の恐ろしさに
そろそろ私たち一般人も気付かないと、と思うのだけれど、

この頃は、もう
ポイント・オブ・ノー・リターンはとうに過ぎてちゃったよね……という気がしている。
2012.09.10 / Top↑