実は以下の記事、
書いたのは2年も前なのですが、
この果敢な潜入調査をやった Which? で
長年活躍してきたAnna Bradleyさんがトップとなって、
去年10月に英国で医療と社会ケアに特化した消費者保護団体、
Healthwatch Englandという団体が立ちあげられていました。
http://www.healthwatch.co.uk/our-people
英国医療技術評価機構も公式サイトで
Healthwatchへの支持を表明している。
なにしろ私がこの立ち上げを知ったのは、
認知症介護の質のスタンダードを示したNICEの「QS30」のサイトからでした。
なにやら胸躍るニュースなので、
「祝! Healthwatch !」エントリーとして
あっぱれな Which? の潜入調査について書いた連載記事を以下に――。
Which?(どれにする?)と、一風変わった名称を持つチャリティが英国にある。50年の実績を持つ消費者保護団体だ。洗濯機や車などの商品に使用者 の立場で厳密なテストを行って比較情報を雑誌やウェブを通じて届ける他、消費者を取り巻く様々な問題について考えてきた。また法律相談まで提供するなど、 広く消費者保護と支援の活動を行っている。
このWhich? が、今年初めに3人の俳優と女優を雇い、入所者として4つの高齢者施設に送り込んだ。洗濯機やアイロンにテストを行うように、介護施設のサービスを消費者 である入所者の立場でテストしたわけだ。ターゲットにしたケアホームは単独事業所から2か所、チェーン展開をしている事業所の施設から2か所をランダムに 選んだ。潜入中に3人がつけた記録を専門家を含むチームが分析し、調査結果が4月19日に報告された。そこで明らかになったのは、あまりにもお粗末な食 事、日中活動の不足、健康と安全への配慮の欠落、虐待に等しい劣悪なケア……。
覆面潜入した内の一人は一週間で体重が3キロも減少したという。ぱさぱさに乾いたサンドイッチなど、見るからに不味そうな食事は量が少なく、栄養バラン スも悪かった。3つの施設では夕食から次の日の朝食までの間が17時間もあり、その間を何も食べずに過ごさせられるかと思うと、1つの施設では朝食が10 時だというのに昼食が11時半に設定されていた。
日中活動は4施設のいずれにおいても不足しており、入所者は常に退屈していた。体操、クイズ、歌の時間などを一週間毎日欠かさずに行うと広報で謳ってい る施設で、その中のどの活動もまったく行われていない、というケースもあった。じめじめして不潔な施設やむき出しの電線が放置されたり、非常口が物でふさ がれているところもあった。
携帯電話で会話中の職員に片腕を掴まれてトイレへと引きずられる人。立ちあがろうとするたびに何度も乱暴に頭を押さえつけられ椅子に戻される人。まだ飲 みこんでもいないのにスプーンに山盛りの食べ物を次々と口に押し込まれる人。この人は「呑み込むまで待って」という合図で手を上げてスプーンを制したとこ ろ、もう要らないのだと誤解されて食事を下げられてしまった。「あの食事介助は見ていられないほど酷かった。もっと丁寧な介助だったら、あの人はもう少し 食べていたはずなのに」と記録者は書いた。食堂でトイレに行きたいと訴えたのに許されず、30分近くも放置されて泣きそうになる女性の姿も目撃された。
今回の調査結果はケアの質コミッション(CQC)に報告され、1つの施設は新たな入所者の受け入れ差し止め処分となった。またWhich?はCQCに監査・指導の実効性を高めるよう求めた。
この報告に、高齢者チャリティの間で衝撃が広がっている。英国年金生活者会議(the National Pensioners Convention)は「ケアホームは週800ポンド(約10万円)もかかるというのに、これでは介護とも呼べない。我々は自分で声を上げられない人の 代弁をしなければ。結局、監査システムが機能していないし、職員の専門性も欠けているということだ。ケアホームは安全な場所でなければ」。またAgeUK も「介護の質を上げるのはロケット科学のようにはいかない。歳をとって弱った人たちをどのように遇するかという、つまりは姿勢の問題。温かい言葉をかける とか、余分の時間をとって他愛のないおしゃべりをする、ちょっと手を貸すことなどによって全然違ってくる」。Which? では今後もAgeUKと連携し て、高齢者施設の介護の質向上に向け、活動していくとのこと。
英国では2009年に、潜入ルポをウリにしているBBCの「パノラマ」という番組が、レポーターをヘルパーとして事業所に就職させ、在宅介護サービスの お粗末を暴いたことがあった。来るはずのヘルパーが来ず24時間も放置される高齢者や、6か月も入浴はおろかシャワーすら浴びていない高齢者、ケイタイで 喋りながら清拭を行うヘルパー……。この時には、番組の隠し撮りに協力した看護師が看護師・助産師協会から資格登録を抹消されるや、看護学会がケアの質を 懸念した彼女の行動を支持し署名活動を展開するというオマケの論争もあった。
AgeUKや年金生活者会議が言うように、数値化できない面が大きいこと、サービスを受ける人たちが声を上げにくいこと、施設であれ在宅であれ密室空間 で行われることなどによって、いわば“普段着”の介護の質を評価することは難しい。それならば、こうした覆面潜入の“ミシュラン”方式も、一つの選択肢な のかもしれない。
連載「世界の介護と医療の情報を読む」
『介護保険情報』2011年6月号
2009年のパノラマについては
BBCの潜入ルポが在宅介護の実態を暴いてスキャンダルに(2009/4/11)
在宅介護のお粗末を暴いたBBC潜入ルポに反響2つ(2009/4/19)
病院ケアの怠慢を隠し撮りしたナースの登録抹消を労働組合が批判(2009/4/20)
書いたのは2年も前なのですが、
この果敢な潜入調査をやった Which? で
長年活躍してきたAnna Bradleyさんがトップとなって、
去年10月に英国で医療と社会ケアに特化した消費者保護団体、
Healthwatch Englandという団体が立ちあげられていました。
http://www.healthwatch.co.uk/our-people
英国医療技術評価機構も公式サイトで
Healthwatchへの支持を表明している。
なにしろ私がこの立ち上げを知ったのは、
認知症介護の質のスタンダードを示したNICEの「QS30」のサイトからでした。
なにやら胸躍るニュースなので、
「祝! Healthwatch !」エントリーとして
あっぱれな Which? の潜入調査について書いた連載記事を以下に――。
Which?(どれにする?)と、一風変わった名称を持つチャリティが英国にある。50年の実績を持つ消費者保護団体だ。洗濯機や車などの商品に使用者 の立場で厳密なテストを行って比較情報を雑誌やウェブを通じて届ける他、消費者を取り巻く様々な問題について考えてきた。また法律相談まで提供するなど、 広く消費者保護と支援の活動を行っている。
このWhich? が、今年初めに3人の俳優と女優を雇い、入所者として4つの高齢者施設に送り込んだ。洗濯機やアイロンにテストを行うように、介護施設のサービスを消費者 である入所者の立場でテストしたわけだ。ターゲットにしたケアホームは単独事業所から2か所、チェーン展開をしている事業所の施設から2か所をランダムに 選んだ。潜入中に3人がつけた記録を専門家を含むチームが分析し、調査結果が4月19日に報告された。そこで明らかになったのは、あまりにもお粗末な食 事、日中活動の不足、健康と安全への配慮の欠落、虐待に等しい劣悪なケア……。
覆面潜入した内の一人は一週間で体重が3キロも減少したという。ぱさぱさに乾いたサンドイッチなど、見るからに不味そうな食事は量が少なく、栄養バラン スも悪かった。3つの施設では夕食から次の日の朝食までの間が17時間もあり、その間を何も食べずに過ごさせられるかと思うと、1つの施設では朝食が10 時だというのに昼食が11時半に設定されていた。
日中活動は4施設のいずれにおいても不足しており、入所者は常に退屈していた。体操、クイズ、歌の時間などを一週間毎日欠かさずに行うと広報で謳ってい る施設で、その中のどの活動もまったく行われていない、というケースもあった。じめじめして不潔な施設やむき出しの電線が放置されたり、非常口が物でふさ がれているところもあった。
携帯電話で会話中の職員に片腕を掴まれてトイレへと引きずられる人。立ちあがろうとするたびに何度も乱暴に頭を押さえつけられ椅子に戻される人。まだ飲 みこんでもいないのにスプーンに山盛りの食べ物を次々と口に押し込まれる人。この人は「呑み込むまで待って」という合図で手を上げてスプーンを制したとこ ろ、もう要らないのだと誤解されて食事を下げられてしまった。「あの食事介助は見ていられないほど酷かった。もっと丁寧な介助だったら、あの人はもう少し 食べていたはずなのに」と記録者は書いた。食堂でトイレに行きたいと訴えたのに許されず、30分近くも放置されて泣きそうになる女性の姿も目撃された。
今回の調査結果はケアの質コミッション(CQC)に報告され、1つの施設は新たな入所者の受け入れ差し止め処分となった。またWhich?はCQCに監査・指導の実効性を高めるよう求めた。
この報告に、高齢者チャリティの間で衝撃が広がっている。英国年金生活者会議(the National Pensioners Convention)は「ケアホームは週800ポンド(約10万円)もかかるというのに、これでは介護とも呼べない。我々は自分で声を上げられない人の 代弁をしなければ。結局、監査システムが機能していないし、職員の専門性も欠けているということだ。ケアホームは安全な場所でなければ」。またAgeUK も「介護の質を上げるのはロケット科学のようにはいかない。歳をとって弱った人たちをどのように遇するかという、つまりは姿勢の問題。温かい言葉をかける とか、余分の時間をとって他愛のないおしゃべりをする、ちょっと手を貸すことなどによって全然違ってくる」。Which? では今後もAgeUKと連携し て、高齢者施設の介護の質向上に向け、活動していくとのこと。
英国では2009年に、潜入ルポをウリにしているBBCの「パノラマ」という番組が、レポーターをヘルパーとして事業所に就職させ、在宅介護サービスの お粗末を暴いたことがあった。来るはずのヘルパーが来ず24時間も放置される高齢者や、6か月も入浴はおろかシャワーすら浴びていない高齢者、ケイタイで 喋りながら清拭を行うヘルパー……。この時には、番組の隠し撮りに協力した看護師が看護師・助産師協会から資格登録を抹消されるや、看護学会がケアの質を 懸念した彼女の行動を支持し署名活動を展開するというオマケの論争もあった。
AgeUKや年金生活者会議が言うように、数値化できない面が大きいこと、サービスを受ける人たちが声を上げにくいこと、施設であれ在宅であれ密室空間 で行われることなどによって、いわば“普段着”の介護の質を評価することは難しい。それならば、こうした覆面潜入の“ミシュラン”方式も、一つの選択肢な のかもしれない。
連載「世界の介護と医療の情報を読む」
『介護保険情報』2011年6月号
2009年のパノラマについては
BBCの潜入ルポが在宅介護の実態を暴いてスキャンダルに(2009/4/11)
在宅介護のお粗末を暴いたBBC潜入ルポに反響2つ(2009/4/19)
病院ケアの怠慢を隠し撮りしたナースの登録抹消を労働組合が批判(2009/4/20)
2013.04.30 / Top↑
PASが合法化されたオレゴン州で
癌患者にメディケアから「抗がん剤治療はダメだけどPASはOK」という
通知が届く事態となっているという情報は以下のエントリーで拾っています。
抗がん剤はダメだけど幇助自殺はOKとメディケア(2008/10/4)
「抗がん剤も放射線もダメだけど自殺幇助はOK」というOR州メディケアのガイドライン(2011/1/17)
ただ、2008年の問題については
11年の論文を含め、その後も特定の人のケースしか言及されていないので、
一般的な状況がどうなのか、ちょっと気にかかっていたところ、
医師による自殺幇助(PAS)合法化法案と違法化法案とが
相次いで州議会に提出されては否決される事態となっている
モンタナ州の州民に対して、
既に合法化されているオレゴン州の癌専門医Kenneth Stevensから、
合法化せず医療を守れ、と呼びかける新聞投書があり、
関連情報が含まれているので、以下にその個所を。
In Oregon, the combination of assisted suicide legalization and prioritized medical care based on prognosis has created a danger for my patients on the Oregon Health Plan (Medicaid). First, there is a financial incentive for patients to commit suicide: the plan will cover the cost. Second, the plan will not necessarily cover the cost of treatment due to statistical criteria. For example, patients with cancer are denied treatment if they are determined to have “less than 24 months median survival with treatment” and fit other criteria. Some of these patients, if treated, would however have many years to live, as much as five, 10 or 20 years depending on the type of cancer. This is because there are always some people who beat the odds. The plan will cover the cost of their suicides.
In Oregon, the mere presence of legal assisted-suicide steers patients to suicide even when there is no coverage issue. One of my patients was adamant she would use the law. I convinced her to be treated instead. Twelve years later she is thrilled to be alive.
Don’t make Oregon’s mistake.
オレゴンでは、
合法化された自殺幇助と予後によって優先順位を付けた医療制度が併存していることによって、
私のメディケイド患者には危険な事態となっています。
まず、OR州のメディケイド、オレゴン・ヘルス・プランは自殺幇助の費用を支給するので、
患者にとっては自殺に向かう財政的なインセンティブがあります。
次に、オレゴン・ヘルス・プランは統計データを基準に必ずしも治療のコストを給付しません。
例えば私の癌患者は、治療しても延命の中間値が24カ月を超えないとみなされたり、
その他の基準が当てはめられたりすると、治療を拒否されます。
そういう患者の中には、治療すれば何年も、
癌の種類によっては5年、10年あるいは20年だって生きられる患者もいます。
確率を超える人というのは常にいるわけです。それでも、
オレゴン・ヘルス・プランはそういう患者の自殺のコストを給付するのです。
オレゴンでは、PASを合法とする法律があるというだけで、
メディケアの給付問題がない時でも患者は自殺へと促されます。
私の患者の一人は尊厳死法を利用すると頑固に言い張っていましたが、
私は治療を受けるよう説得しました。12年経って、いま
彼女は生きていることを喜んでいます。
オレゴンの過ちを繰り返さないでください。
この人の投稿には、
癌で亡くなった妻が最後の受診の際に、
帰りがけに医師から薬のオーバードースという方法がありますよ、と言われて
ショックを受けて「ケン、この人、私に自殺しろって言ってる」と言ったという
エピソードが紹介されており、それがPAS問題に触れた最初だった、と。
Protect health care; keep assisted suicide out of Montana
Ravalli Republic, April 22, 2013
癌患者にメディケアから「抗がん剤治療はダメだけどPASはOK」という
通知が届く事態となっているという情報は以下のエントリーで拾っています。
抗がん剤はダメだけど幇助自殺はOKとメディケア(2008/10/4)
「抗がん剤も放射線もダメだけど自殺幇助はOK」というOR州メディケアのガイドライン(2011/1/17)
ただ、2008年の問題については
11年の論文を含め、その後も特定の人のケースしか言及されていないので、
一般的な状況がどうなのか、ちょっと気にかかっていたところ、
医師による自殺幇助(PAS)合法化法案と違法化法案とが
相次いで州議会に提出されては否決される事態となっている
モンタナ州の州民に対して、
既に合法化されているオレゴン州の癌専門医Kenneth Stevensから、
合法化せず医療を守れ、と呼びかける新聞投書があり、
関連情報が含まれているので、以下にその個所を。
In Oregon, the combination of assisted suicide legalization and prioritized medical care based on prognosis has created a danger for my patients on the Oregon Health Plan (Medicaid). First, there is a financial incentive for patients to commit suicide: the plan will cover the cost. Second, the plan will not necessarily cover the cost of treatment due to statistical criteria. For example, patients with cancer are denied treatment if they are determined to have “less than 24 months median survival with treatment” and fit other criteria. Some of these patients, if treated, would however have many years to live, as much as five, 10 or 20 years depending on the type of cancer. This is because there are always some people who beat the odds. The plan will cover the cost of their suicides.
In Oregon, the mere presence of legal assisted-suicide steers patients to suicide even when there is no coverage issue. One of my patients was adamant she would use the law. I convinced her to be treated instead. Twelve years later she is thrilled to be alive.
Don’t make Oregon’s mistake.
オレゴンでは、
合法化された自殺幇助と予後によって優先順位を付けた医療制度が併存していることによって、
私のメディケイド患者には危険な事態となっています。
まず、OR州のメディケイド、オレゴン・ヘルス・プランは自殺幇助の費用を支給するので、
患者にとっては自殺に向かう財政的なインセンティブがあります。
次に、オレゴン・ヘルス・プランは統計データを基準に必ずしも治療のコストを給付しません。
例えば私の癌患者は、治療しても延命の中間値が24カ月を超えないとみなされたり、
その他の基準が当てはめられたりすると、治療を拒否されます。
そういう患者の中には、治療すれば何年も、
癌の種類によっては5年、10年あるいは20年だって生きられる患者もいます。
確率を超える人というのは常にいるわけです。それでも、
オレゴン・ヘルス・プランはそういう患者の自殺のコストを給付するのです。
オレゴンでは、PASを合法とする法律があるというだけで、
メディケアの給付問題がない時でも患者は自殺へと促されます。
私の患者の一人は尊厳死法を利用すると頑固に言い張っていましたが、
私は治療を受けるよう説得しました。12年経って、いま
彼女は生きていることを喜んでいます。
オレゴンの過ちを繰り返さないでください。
この人の投稿には、
癌で亡くなった妻が最後の受診の際に、
帰りがけに医師から薬のオーバードースという方法がありますよ、と言われて
ショックを受けて「ケン、この人、私に自殺しろって言ってる」と言ったという
エピソードが紹介されており、それがPAS問題に触れた最初だった、と。
Protect health care; keep assisted suicide out of Montana
Ravalli Republic, April 22, 2013
2013.04.30 / Top↑
3月28日、知事が法案に署名し、
ユタ州は死刑囚を含め、収監中に死亡した場合に囚人に臓器提供を認める
米国で最初の州となった。
既に同州では247人の囚人がドナー登録。
法案の提出者、下院議員(共和党)のSteve Eliasonは
2010年に臓器提供を望んだ殺人犯 Ronnie Leeの望みが却下されたことが
この法案提出のきっかけになった、と。
また記事には、
オレゴン州で死刑囚からの臓器提供合法化に向けてネットで啓発活動を続けている
死刑囚、Christian Longoの訴えについても言及されている。
Longoの訴えを巡る11年の論争については、こちらに ↓
「執行後に全身の臓器すべて提供させて」と、OR州の死刑囚(2011/3/6)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
New Utah law allows organ donations from prisoners; nearly 250 sigh up
NBC News, April 13, 2013
実はカプランは上記の11年10月の論争と並行して、
以下のように、学者らに向けて中国の研究報告のボイコットを呼びかけた。
世界中の学者が、平然とスル―したのだけれど。
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
ユタ州は死刑囚を含め、収監中に死亡した場合に囚人に臓器提供を認める
米国で最初の州となった。
既に同州では247人の囚人がドナー登録。
法案の提出者、下院議員(共和党)のSteve Eliasonは
2010年に臓器提供を望んだ殺人犯 Ronnie Leeの望みが却下されたことが
この法案提出のきっかけになった、と。
また記事には、
オレゴン州で死刑囚からの臓器提供合法化に向けてネットで啓発活動を続けている
死刑囚、Christian Longoの訴えについても言及されている。
Longoの訴えを巡る11年の論争については、こちらに ↓
「執行後に全身の臓器すべて提供させて」と、OR州の死刑囚(2011/3/6)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
New Utah law allows organ donations from prisoners; nearly 250 sigh up
NBC News, April 13, 2013
実はカプランは上記の11年10月の論争と並行して、
以下のように、学者らに向けて中国の研究報告のボイコットを呼びかけた。
世界中の学者が、平然とスル―したのだけれど。
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
2013.04.30 / Top↑
プライバシーの点から名前や児童福祉管轄の自治体は明らかにされていないのだけれど、
海外から3人の赤ちゃんを養子にして育ててきた女性が、
4人目の赤ん坊を養子にしようとしてかなわなかった時に、
自身は健康上の理由から不妊術を受けていて産むことができないからといって、
インターネットを使って手に入れたドナー精子を使って
養子にした子どもの一人に妊娠するよう強要、
少女は14歳の時に流産したが、その後も何度も自己受精を強要し
16歳の時に子どもを産ませた、という
胸が悪くなるような英国の事件。
この女性は養子にした子どもたちを学校にやらず、
ホーム・スクリーニングと称して自宅に閉じこもりきりにさせており、
そのため、この少女には友人がいないばかりか、処女だったという。
その少女に母親は
自分が購入したドナー精子を自己受精するよう何度も強要。
女児が欲しいとして、酸性の液体で膣内を洗浄することまで強要していた。
「最初の精子ドナーは家までやってきた」と書かれているのがちょっと気になる。
それ以後の精子は、デンマークの精子バンク Cryos Internationalで購入されたもの。
少女は養子にしてもらった感謝の念からも拒むことができず、
また望み通りに子どもを産んであげれば、今以上に母親から愛されると思った、と。
事件の発覚は、
子どもが生まれた後、訪問した保健師らが
少女への母親の対応が常軌を逸していることに気付いたのがきっかけ。
この女性の子どもたちへの扱いに関しては児童福祉に通報されたことが数回あるものの、
判事はその介入が「基本的に通り一遍でしかなかったために」
重大な懸念があるとされることはなかった、と。
裁判は非公開で行われ、
現在、この母親は児童虐待の罪で5年の刑に服役中。
国際的な養子縁組の制度と、同様に国際的な生殖子の売買、
双方でのチェックの甘さという問題が改めて浮き彫りに。
Girl, 14, forced to become pregnant with donor sperm bought by mother
The Guardian, April 28, 2013
海外から3人の赤ちゃんを養子にして育ててきた女性が、
4人目の赤ん坊を養子にしようとしてかなわなかった時に、
自身は健康上の理由から不妊術を受けていて産むことができないからといって、
インターネットを使って手に入れたドナー精子を使って
養子にした子どもの一人に妊娠するよう強要、
少女は14歳の時に流産したが、その後も何度も自己受精を強要し
16歳の時に子どもを産ませた、という
胸が悪くなるような英国の事件。
この女性は養子にした子どもたちを学校にやらず、
ホーム・スクリーニングと称して自宅に閉じこもりきりにさせており、
そのため、この少女には友人がいないばかりか、処女だったという。
その少女に母親は
自分が購入したドナー精子を自己受精するよう何度も強要。
女児が欲しいとして、酸性の液体で膣内を洗浄することまで強要していた。
「最初の精子ドナーは家までやってきた」と書かれているのがちょっと気になる。
それ以後の精子は、デンマークの精子バンク Cryos Internationalで購入されたもの。
少女は養子にしてもらった感謝の念からも拒むことができず、
また望み通りに子どもを産んであげれば、今以上に母親から愛されると思った、と。
事件の発覚は、
子どもが生まれた後、訪問した保健師らが
少女への母親の対応が常軌を逸していることに気付いたのがきっかけ。
この女性の子どもたちへの扱いに関しては児童福祉に通報されたことが数回あるものの、
判事はその介入が「基本的に通り一遍でしかなかったために」
重大な懸念があるとされることはなかった、と。
裁判は非公開で行われ、
現在、この母親は児童虐待の罪で5年の刑に服役中。
国際的な養子縁組の制度と、同様に国際的な生殖子の売買、
双方でのチェックの甘さという問題が改めて浮き彫りに。
Girl, 14, forced to become pregnant with donor sperm bought by mother
The Guardian, April 28, 2013
2013.04.30 / Top↑
26日金曜日、オクラホマ州に
患者サイドが希望する生命維持治療をQOLを根拠に一方的に拒否することを
医療職に禁じる法律が成立。
Thaddeus Popeによると、
これまでに同様の法律ができている州は
アイダホ、ニューヨークなど。
Popeはこうした州を “red light” states と呼んでいる。
こうした法律に反対する側の主張は、
医療の劣化を招き、医師が州外に逃げる、医療費がむやみに膨れる。
賛成する側の主張は、
患者の生の質が低いとか生きるに値しないという
第三者の価値意識に基づいて治療が拒否されることを防ぐことができる。
Oklahomans for Lifeでは
「仮に第三者がその患者のQOLを問題にしたとしても、
治療を受けたいという患者の希望は尊重されるべきである」と。
Oklahoma Prohibits Critical Care clinician from Stopping Requested Life Support
Medical Futility Blog, April 28, 2013
患者サイドが希望する生命維持治療をQOLを根拠に一方的に拒否することを
医療職に禁じる法律が成立。
Thaddeus Popeによると、
これまでに同様の法律ができている州は
アイダホ、ニューヨークなど。
Popeはこうした州を “red light” states と呼んでいる。
こうした法律に反対する側の主張は、
医療の劣化を招き、医師が州外に逃げる、医療費がむやみに膨れる。
賛成する側の主張は、
患者の生の質が低いとか生きるに値しないという
第三者の価値意識に基づいて治療が拒否されることを防ぐことができる。
Oklahomans for Lifeでは
「仮に第三者がその患者のQOLを問題にしたとしても、
治療を受けたいという患者の希望は尊重されるべきである」と。
Oklahoma Prohibits Critical Care clinician from Stopping Requested Life Support
Medical Futility Blog, April 28, 2013
2013.04.30 / Top↑
FEN事件のフロリダ訴訟で、またFEN側Goodwinの勝訴。
http://charlotte.floridaweekly.com/news/2013-04-25/Top_News/A_matter_of_life_and_death_and_the_assistedsuicide.html
補遺で追いかけてきたカナダのSusan Griffithsさん、ついにDignitasで幇助自殺。敢えてスイスへ行く前からメディアに露出し、逐一を報道させつつ、カナダ議会に対して法改正を求めた。「自国で自殺幇助を受けられるんだったら、こんなに早くスイスへ来なくても、もう何年か生きられたし、生きたかったのに」という訴えは、かつて英国のDebby Purdyさんが使った論法と全く同じ。法務大臣は揺るがず。メディアは家族や友人に囲まれてのGriffithsさんの死を情緒的な美談に仕立て上げて流しまくっている。それに対して、人権団体からメディアへの批判や、保守派から論考など。余裕があったら、来週どこかで概要取りまとめたいけど。
http://www.cbc.ca/news/canada/manitoba/story/2013/04/25/mb-carreiro-swiss-assisted-suicide.html
http://www.cbc.ca/news/canada/manitoba/story/2013/04/25/mb-assisted-suicide-debate-reopened-winnipeg.html
http://www.cbc.ca/news/canada/manitoba/story/2013/04/24/mb-susan-griffiths-assisted-suicide-final-blog.html?cmp=rss
http://canadaam.ctvnews.ca/assisted-suicide-debate-reignited-with-death-of-canadian-in-switzerland-1.1254921
http://www.winnipegfreepress.com/local/rethought-my-stance-martin-says-204810241.html
http://www.calgaryherald.com/opinion/columnists/Martinuk+Your+right+impacts+everyone+right+live/8296633/story.html
http://www.lifesitenews.com/news/human-rights-organization-criticizes-media-orgy-over-disabled-womans-suicid/
スイスで大規模な調査研究が予定されており、DignitasやExitなど自殺幇助機関がずらりとそろって、それに反対する記者会見。そんな調査をやったら、自殺幇助の規制強化に繋がるじゃないか、といって。:その論理って、『信頼の条件』の著者がいう「循環論理」。
http://www.swissinfo.ch/eng/swiss_news/Suicide_organisation_criticise_public_research.html?cid=35627762
http://www.necn.com/04/25/13/Swiss-groups-fear-study-undercuts-assist/landing_nation.html?&apID=b8d917c1026741db9f0c95152820aef7
LAタイムズに、病人に向かって言ってはいけないことを言わないために、自分とその人の関係を整理するためのヒントを、という趣旨のOp Edがあるんだけれど、その整理のために書かれた図が、ほぼ『環状島』。『環状島』ほど深い考察ではもちろんないけど。
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-0407-silk-ring-theory-20130407,0,2074046.story
ザッカ―バーグ、IT長者を政治勢力として結集へ?(2013/4/8)の続報。続々とIT長者がザッカ―バーグの下に結集ちう。:これをものすごく恐ろしいことだと感じてしまうのは、私がヘンなの? 私にはモロこういう話に見えるんだけれど ⇒ 「有権者の代表による政府が制する世界」vs「利益志向の企業とスーパーリッチが制する世界」(2013/4/25)。
http://news.cnet.com/8301-1023_3-57581567-93/zuckerbergs-political-action-group-adds-ballmer-gates/
ゲイツ財団のポリオ撲滅運動には、このところ各国政府や要人や大富豪たちが続々連携を表明している。この記事は Carlos Slimとの協力関係について。
http://www.nagalandpost.com/ChannelNews/International/InternationalNews.aspx?news=TkVXUzEwMDAzNjU2Ng%3D%3D-FIEK%2BQyv7Cc%3D
英国の麻疹の流行を受け、Lancet最新号はワクチン関連論文多数。義務化を検討する声も。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960908-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
Lancetの途上国の医療関連で一番気になるのは、これ。途上国で学齢前の子どもにビタミンAのサプリを飲ませたら、死亡率が低下した、という大規模治験 DEVTA。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960600-5/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
インフルエンザワクチンと、ギラン・バレー症候群の関係。Lancetに論文。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960182-8/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
2007年にワクチンの副作用で未熟児に呼吸障害が起こる可能性について論文が出ていた。専門的すぎて、読む気にならないけど。
http://www.vaccine-tlc.org/docs/31198987.pdf
1歳児の汗を調べたら、後で攻撃的な傾向を見せる子どもが判別できるんだとか。:こういう研究がどんどん増えてきた。こういう情報が集められて、一体どこへ向かうのか、不気味。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/259575.php
新生児の胎盤血を調べれば、自閉症になるリスクが分かる、というのも。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/259676.php
英国で競馬の馬のドーピング・スキャンダル。
http://www.guardian.co.uk/sport/2013/apr/23/godolphin-trainer-horse-doping
ちょっと前から言われていたけど、英国で整形外科医療への規制強化が求められている。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2013/apr/24/cosmetic-surgery-crackdown-needed-nhs
英国の社会保障カットがどんどん進む。障害者手当もカット。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/apr/24/disability-ruling-new-depths-dishonesty
日本。出来高払いの弊害を考えるー介護報酬の複雑化から見える問題点
http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1134
日本。医療費負担で麻生副総理「暴飲暴食で糖尿病のツケ払うのは不公平だ」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130425/stt13042508440001-n1.htm
日本。再生医療推進法:きょう成立 財源の議論、乏しく 「近年の医療費高騰は医療技術の進歩が要因だ。10年度の国民医療費は対前年度比3・9%増で、うち2・1%分が医療の高度化による」。これをちゃんと書くメディアは少ない。
http://mainichi.jp/select/news/20130426mog00m010003000c.html
NYT社説委員会。安倍総理に向けて、過去の傷口を広げるのではなく、アジアの民主主義のリーダーとしての役割を果たせ、と。
Japan's Unnecessary Nationalism: Instead of exacerbating historical wounds, Prime Minister Shinzo Abe should focus o
http://charlotte.floridaweekly.com/news/2013-04-25/Top_News/A_matter_of_life_and_death_and_the_assistedsuicide.html
補遺で追いかけてきたカナダのSusan Griffithsさん、ついにDignitasで幇助自殺。敢えてスイスへ行く前からメディアに露出し、逐一を報道させつつ、カナダ議会に対して法改正を求めた。「自国で自殺幇助を受けられるんだったら、こんなに早くスイスへ来なくても、もう何年か生きられたし、生きたかったのに」という訴えは、かつて英国のDebby Purdyさんが使った論法と全く同じ。法務大臣は揺るがず。メディアは家族や友人に囲まれてのGriffithsさんの死を情緒的な美談に仕立て上げて流しまくっている。それに対して、人権団体からメディアへの批判や、保守派から論考など。余裕があったら、来週どこかで概要取りまとめたいけど。
http://www.cbc.ca/news/canada/manitoba/story/2013/04/25/mb-carreiro-swiss-assisted-suicide.html
http://www.cbc.ca/news/canada/manitoba/story/2013/04/25/mb-assisted-suicide-debate-reopened-winnipeg.html
http://www.cbc.ca/news/canada/manitoba/story/2013/04/24/mb-susan-griffiths-assisted-suicide-final-blog.html?cmp=rss
http://canadaam.ctvnews.ca/assisted-suicide-debate-reignited-with-death-of-canadian-in-switzerland-1.1254921
http://www.winnipegfreepress.com/local/rethought-my-stance-martin-says-204810241.html
http://www.calgaryherald.com/opinion/columnists/Martinuk+Your+right+impacts+everyone+right+live/8296633/story.html
http://www.lifesitenews.com/news/human-rights-organization-criticizes-media-orgy-over-disabled-womans-suicid/
スイスで大規模な調査研究が予定されており、DignitasやExitなど自殺幇助機関がずらりとそろって、それに反対する記者会見。そんな調査をやったら、自殺幇助の規制強化に繋がるじゃないか、といって。:その論理って、『信頼の条件』の著者がいう「循環論理」。
http://www.swissinfo.ch/eng/swiss_news/Suicide_organisation_criticise_public_research.html?cid=35627762
http://www.necn.com/04/25/13/Swiss-groups-fear-study-undercuts-assist/landing_nation.html?&apID=b8d917c1026741db9f0c95152820aef7
LAタイムズに、病人に向かって言ってはいけないことを言わないために、自分とその人の関係を整理するためのヒントを、という趣旨のOp Edがあるんだけれど、その整理のために書かれた図が、ほぼ『環状島』。『環状島』ほど深い考察ではもちろんないけど。
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-0407-silk-ring-theory-20130407,0,2074046.story
ザッカ―バーグ、IT長者を政治勢力として結集へ?(2013/4/8)の続報。続々とIT長者がザッカ―バーグの下に結集ちう。:これをものすごく恐ろしいことだと感じてしまうのは、私がヘンなの? 私にはモロこういう話に見えるんだけれど ⇒ 「有権者の代表による政府が制する世界」vs「利益志向の企業とスーパーリッチが制する世界」(2013/4/25)。
http://news.cnet.com/8301-1023_3-57581567-93/zuckerbergs-political-action-group-adds-ballmer-gates/
ゲイツ財団のポリオ撲滅運動には、このところ各国政府や要人や大富豪たちが続々連携を表明している。この記事は Carlos Slimとの協力関係について。
http://www.nagalandpost.com/ChannelNews/International/InternationalNews.aspx?news=TkVXUzEwMDAzNjU2Ng%3D%3D-FIEK%2BQyv7Cc%3D
英国の麻疹の流行を受け、Lancet最新号はワクチン関連論文多数。義務化を検討する声も。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960908-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
Lancetの途上国の医療関連で一番気になるのは、これ。途上国で学齢前の子どもにビタミンAのサプリを飲ませたら、死亡率が低下した、という大規模治験 DEVTA。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960600-5/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
インフルエンザワクチンと、ギラン・バレー症候群の関係。Lancetに論文。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960182-8/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
2007年にワクチンの副作用で未熟児に呼吸障害が起こる可能性について論文が出ていた。専門的すぎて、読む気にならないけど。
http://www.vaccine-tlc.org/docs/31198987.pdf
1歳児の汗を調べたら、後で攻撃的な傾向を見せる子どもが判別できるんだとか。:こういう研究がどんどん増えてきた。こういう情報が集められて、一体どこへ向かうのか、不気味。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/259575.php
新生児の胎盤血を調べれば、自閉症になるリスクが分かる、というのも。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/259676.php
英国で競馬の馬のドーピング・スキャンダル。
http://www.guardian.co.uk/sport/2013/apr/23/godolphin-trainer-horse-doping
ちょっと前から言われていたけど、英国で整形外科医療への規制強化が求められている。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2013/apr/24/cosmetic-surgery-crackdown-needed-nhs
英国の社会保障カットがどんどん進む。障害者手当もカット。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/apr/24/disability-ruling-new-depths-dishonesty
日本。出来高払いの弊害を考えるー介護報酬の複雑化から見える問題点
http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1134
日本。医療費負担で麻生副総理「暴飲暴食で糖尿病のツケ払うのは不公平だ」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130425/stt13042508440001-n1.htm
日本。再生医療推進法:きょう成立 財源の議論、乏しく 「近年の医療費高騰は医療技術の進歩が要因だ。10年度の国民医療費は対前年度比3・9%増で、うち2・1%分が医療の高度化による」。これをちゃんと書くメディアは少ない。
http://mainichi.jp/select/news/20130426mog00m010003000c.html
NYT社説委員会。安倍総理に向けて、過去の傷口を広げるのではなく、アジアの民主主義のリーダーとしての役割を果たせ、と。
Japan's Unnecessary Nationalism: Instead of exacerbating historical wounds, Prime Minister Shinzo Abe should focus o
2013.04.30 / Top↑
前に、ピーター・シンガーが
ストーニーブルック大学の認知障害カンファで、アシュリー事件に言及したり、
エヴァ・キテイが障害のある娘セーシャが暮らすコミュニティへの見学ツアーに誘ったのを
「そんなのを見て何が学べるのか」と断ったりした際に(詳細は文末にリンク)、
あれこれ検索した中で偶然に拾って、興味を覚えつつ、
そのまま見失ってしまったので、いつか探しておこうと思っていた情報。
当事私が読んだのはまた別のサイトだったのですが、
シンガーのお母さんが認知症で云々、というその話を、
NDYのブログでStephen Drakeが2008年に書いていました。
Peter Singer ―A Slippery Mind
NDY, March 20, 2008
Drakeのエントリー趣旨は、
Golubchuk(無益な治療)事件でシンガーがコストをあげつらって
医療職の決定権を支持する主張をしたことについて、
以前のDavid Glassの無益な治療事件についてのインタビューでは
「本人と家族の意思を無視して医療職が勝手に決めるのは自律の侵害だ」と
繰り返し強調していることと矛盾している、と突っ込み、
ファンはそう言うのに気付かないだけで、
もともとシンガーの発言は矛盾だらけ、
その場その場で最も受けることを読んで発言しているだけの
ご都合主義だと批判するもの。
Golubchuk事件でのシンガーの発言はこちらに ↓
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
David Glass事件については、Drakeは
とてつもなく長いテレビ番組(2003)のトランスクリプトをリンクしている。
そのタイトルがSinger: Dangerous Mind。
で、それを受けてDrakeは
いや「危険なマインド」というより
「言うことがコロコロ変わるすべり坂のマインド」なんだ…と
付けたエントリーのタイトルが、Peter Singer - Slippery Mind.
Drakeが「無益な治療」論での自律の扱いのほかに、
「言うことがコロコロ変わる」例として挙げているのが、
認知症になった母親の医療についてのシンガーの発言というわけ。
1999年のNew Yokerの取材ではシンガーは以下のように発言している。
I think this has made me see how the issues of someone with these kinds of problems are really very difficult.
これ(spitzibara注:母親の病気という体験)によって、
認知・知的障害を抱える人の問題というのが実際いかに難しい問題なのかということが
私にも分かったと思う。
Perhaps it is more difficult than I thought before, because it is different when it’s your mother.
たぶん私が前に思っていたよりも、ずっと難しい問題。
なぜなら、自分の母親となると話が違ってくるから。
ところが、翌年の2000年にReasonという雑誌のインタビューでは
「その意思決定に関わったのが自分だけだったら
母親はいま生きていなかっただろうけど、姉(妹?)がいるから」と答えている。
とても興味深いのは、
Drakeのこのエントリーに対して、Wesley Smithがコメントして
母親に関しては、どっちも真実だったんじゃないか、と言い、
Drakeがそれに対して、いや、Singerは発言の場を考え、
自分の発言が届く層によって一番受けそうなことを言っているだけだ、と返している。
Smithは上記の2003年の番組に出て、
自殺幇助と安楽死を批判する文脈でこのエピソードを紹介し、
いかなシンガーでも母親に対する愛情があったということは
彼がいずれ過ちに気付き訂正する可能性があるということであり、希望だ、と
語っている。
その個所を抜くと、以下。
The ironic thing was that when Peter Singer’s mother got Alzheimer’s disease, and ceased, in his view, to be a person, he couldn’t have her euthanized. He said, well, it’s different when it’s your mother. Well, that just says that Peter Singer was raised well. Sometimes I think you can take the boy out of the sanctity of life, but you can’t take the sanctity of life out of the boy. Peter Singer proved that he had love in his heart by the fact that he wouldn’t kill his mother, and, in fact, that gives me hope that Peter Singer, someday, will see the error of his ways and realize that either all human life is equal, or none of it is equal.
ここで(2003年に)Smithが言っていることは、
やっぱりちょっと甘っちょろいんじゃないかと思うけれど、
でも、どちらも真実だったんじゃないかという2008年の彼の発言は
意味深いという気がする。
誰にとっても自分の愛する家族の終末期の医療を巡る判断というのは
他人の医療を巡る判断とはまるきり別の話になるだろうし、
まして一般論としての「終末期の人」の話とは
まるきり別の話であって当たり前だと思う。
それに、
終末期の人の医療を巡る意思決定に関わるのが
自分一人だけというケースもあるだろうけれど、
たいていは関わる家族も関係者も複数いて、それぞれの関係にだって
それなりに年月の間に積み重ねられてきた複雑なものがあれこれ絡みついている。
そういうふうに、人が一人、生まれた時から
いろんな人と関わりながら生きてきて死ぬまでの間には
外からはうかがい知れないほどのややこしい事情やいきさつやしがらみが
魑魅魍魎のように絡みついているんであって、
でも人が関係性の中にあるというのはそういうことだし、
だからこそ「わたし」と「あなた」とか「わたしたち」という関係が
そこにはあれこれと輻輳しながら生じているわけで、
シンガーやサヴレスキュやトランスヒューマニストは
人をまるでバラバラに切り離されて存在する個体でしかないように、
しかも、それぞれが単なる機能や能力の総和としての個体ででしかなくて
能力が高くなればそれだけ、その個体それぞれが
それぞれにバラバラのところでハッピーになる……かのように
描いてみせるけれど、
それは、やっぱり違うんじゃない? と
これはもう何度も何度も何度も、そう思う。
やっぱり人間は人との関わりの中で、
「あなたにとってかけがえのない私」、「私にとってかけがえのないあなた」という
「かけがえのなさ」を生きている存在なのだと思う。いい意味でも悪い意味でも。
「自分の母親ということになったら話が違う」というのは、そういうことだし、
その一人の母親の終末期の医療を巡っても、
そこには自分の「私にとっての母」と兄弟それぞれにとっての「私にとっての母」がいて、
さらに意思決定を巡っては、私と兄弟それぞれの「私にとってのあなた」の関係が絡まってくる。
さらに、母と自分と兄弟がそれぞれに絡まりつかせている人との
複雑な関係性にまつわる歴史や事情やいきさつや思惑や、いろんなものが
金魚のウンチ状態になっている。
人はそんなふうに生きているし、
だからこそ、
単なる「機能と能力の総和としての個体」なんかじゃない。
だからこそ、人が幸福かどうか、
誰かの生が生きるに値するかどうかなんて、
その人の能力で決められるものじゃない。
ストーニーブルック大でエヴァ・キテイが中心になって開催した
2008年の認知症カンファに関連したエントリーはこちら ↓
認知障害カンファレンス巡り論評シリーズがスタート:初回はSinger批判(2008/12/17)
知的障害者における「尊厳」と「最善の利益」の違い議論(2008/12/18)
What Sorts のSinger 批判第2弾(2008/12/22)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
Singerが障害当事者の活動家に追悼エッセイ(2008/12/29)
Sobsey氏、「知的障害者に道徳的地位ない」Singer説を批判(2009/1/3)
ストーニーブルック大学の認知障害カンファで、アシュリー事件に言及したり、
エヴァ・キテイが障害のある娘セーシャが暮らすコミュニティへの見学ツアーに誘ったのを
「そんなのを見て何が学べるのか」と断ったりした際に(詳細は文末にリンク)、
あれこれ検索した中で偶然に拾って、興味を覚えつつ、
そのまま見失ってしまったので、いつか探しておこうと思っていた情報。
当事私が読んだのはまた別のサイトだったのですが、
シンガーのお母さんが認知症で云々、というその話を、
NDYのブログでStephen Drakeが2008年に書いていました。
Peter Singer ―A Slippery Mind
NDY, March 20, 2008
Drakeのエントリー趣旨は、
Golubchuk(無益な治療)事件でシンガーがコストをあげつらって
医療職の決定権を支持する主張をしたことについて、
以前のDavid Glassの無益な治療事件についてのインタビューでは
「本人と家族の意思を無視して医療職が勝手に決めるのは自律の侵害だ」と
繰り返し強調していることと矛盾している、と突っ込み、
ファンはそう言うのに気付かないだけで、
もともとシンガーの発言は矛盾だらけ、
その場その場で最も受けることを読んで発言しているだけの
ご都合主義だと批判するもの。
Golubchuk事件でのシンガーの発言はこちらに ↓
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
David Glass事件については、Drakeは
とてつもなく長いテレビ番組(2003)のトランスクリプトをリンクしている。
そのタイトルがSinger: Dangerous Mind。
で、それを受けてDrakeは
いや「危険なマインド」というより
「言うことがコロコロ変わるすべり坂のマインド」なんだ…と
付けたエントリーのタイトルが、Peter Singer - Slippery Mind.
Drakeが「無益な治療」論での自律の扱いのほかに、
「言うことがコロコロ変わる」例として挙げているのが、
認知症になった母親の医療についてのシンガーの発言というわけ。
1999年のNew Yokerの取材ではシンガーは以下のように発言している。
I think this has made me see how the issues of someone with these kinds of problems are really very difficult.
これ(spitzibara注:母親の病気という体験)によって、
認知・知的障害を抱える人の問題というのが実際いかに難しい問題なのかということが
私にも分かったと思う。
Perhaps it is more difficult than I thought before, because it is different when it’s your mother.
たぶん私が前に思っていたよりも、ずっと難しい問題。
なぜなら、自分の母親となると話が違ってくるから。
ところが、翌年の2000年にReasonという雑誌のインタビューでは
「その意思決定に関わったのが自分だけだったら
母親はいま生きていなかっただろうけど、姉(妹?)がいるから」と答えている。
とても興味深いのは、
Drakeのこのエントリーに対して、Wesley Smithがコメントして
母親に関しては、どっちも真実だったんじゃないか、と言い、
Drakeがそれに対して、いや、Singerは発言の場を考え、
自分の発言が届く層によって一番受けそうなことを言っているだけだ、と返している。
Smithは上記の2003年の番組に出て、
自殺幇助と安楽死を批判する文脈でこのエピソードを紹介し、
いかなシンガーでも母親に対する愛情があったということは
彼がいずれ過ちに気付き訂正する可能性があるということであり、希望だ、と
語っている。
その個所を抜くと、以下。
The ironic thing was that when Peter Singer’s mother got Alzheimer’s disease, and ceased, in his view, to be a person, he couldn’t have her euthanized. He said, well, it’s different when it’s your mother. Well, that just says that Peter Singer was raised well. Sometimes I think you can take the boy out of the sanctity of life, but you can’t take the sanctity of life out of the boy. Peter Singer proved that he had love in his heart by the fact that he wouldn’t kill his mother, and, in fact, that gives me hope that Peter Singer, someday, will see the error of his ways and realize that either all human life is equal, or none of it is equal.
ここで(2003年に)Smithが言っていることは、
やっぱりちょっと甘っちょろいんじゃないかと思うけれど、
でも、どちらも真実だったんじゃないかという2008年の彼の発言は
意味深いという気がする。
誰にとっても自分の愛する家族の終末期の医療を巡る判断というのは
他人の医療を巡る判断とはまるきり別の話になるだろうし、
まして一般論としての「終末期の人」の話とは
まるきり別の話であって当たり前だと思う。
それに、
終末期の人の医療を巡る意思決定に関わるのが
自分一人だけというケースもあるだろうけれど、
たいていは関わる家族も関係者も複数いて、それぞれの関係にだって
それなりに年月の間に積み重ねられてきた複雑なものがあれこれ絡みついている。
そういうふうに、人が一人、生まれた時から
いろんな人と関わりながら生きてきて死ぬまでの間には
外からはうかがい知れないほどのややこしい事情やいきさつやしがらみが
魑魅魍魎のように絡みついているんであって、
でも人が関係性の中にあるというのはそういうことだし、
だからこそ「わたし」と「あなた」とか「わたしたち」という関係が
そこにはあれこれと輻輳しながら生じているわけで、
シンガーやサヴレスキュやトランスヒューマニストは
人をまるでバラバラに切り離されて存在する個体でしかないように、
しかも、それぞれが単なる機能や能力の総和としての個体ででしかなくて
能力が高くなればそれだけ、その個体それぞれが
それぞれにバラバラのところでハッピーになる……かのように
描いてみせるけれど、
それは、やっぱり違うんじゃない? と
これはもう何度も何度も何度も、そう思う。
やっぱり人間は人との関わりの中で、
「あなたにとってかけがえのない私」、「私にとってかけがえのないあなた」という
「かけがえのなさ」を生きている存在なのだと思う。いい意味でも悪い意味でも。
「自分の母親ということになったら話が違う」というのは、そういうことだし、
その一人の母親の終末期の医療を巡っても、
そこには自分の「私にとっての母」と兄弟それぞれにとっての「私にとっての母」がいて、
さらに意思決定を巡っては、私と兄弟それぞれの「私にとってのあなた」の関係が絡まってくる。
さらに、母と自分と兄弟がそれぞれに絡まりつかせている人との
複雑な関係性にまつわる歴史や事情やいきさつや思惑や、いろんなものが
金魚のウンチ状態になっている。
人はそんなふうに生きているし、
だからこそ、
単なる「機能と能力の総和としての個体」なんかじゃない。
だからこそ、人が幸福かどうか、
誰かの生が生きるに値するかどうかなんて、
その人の能力で決められるものじゃない。
ストーニーブルック大でエヴァ・キテイが中心になって開催した
2008年の認知症カンファに関連したエントリーはこちら ↓
認知障害カンファレンス巡り論評シリーズがスタート:初回はSinger批判(2008/12/17)
知的障害者における「尊厳」と「最善の利益」の違い議論(2008/12/18)
What Sorts のSinger 批判第2弾(2008/12/22)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
Singerが障害当事者の活動家に追悼エッセイ(2008/12/29)
Sobsey氏、「知的障害者に道徳的地位ない」Singer説を批判(2009/1/3)
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