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ここ数年、男児の包皮切除の是非を巡って米国で論争が続いている。

この問題でよく発言しているDiekema医師は、今年2月には、
Diekema医師は 「医学的な利益もリスクも曖昧である」とコメントしていた。

しかし、その後、7月のエイズ会議で
Bill Gates氏が安価なエイズ対策として包皮切除を推進しようと発言したのを知り、
これはDiekemaも近く2月の発言を撤回するだろうなと踏んでいたところ、

案の定……。

なんでもアフリカで3つも臨床実験をやって
包皮切除にはエイズ予防だけでなくHPV感染やヘルペス予防効果があるとの
科学的なエビデンスが出てきたのだとか。

2005年に改定された米国小児科学会(AAP)のガイドラインも
CDCのガイドラインも医学的な必要性が認められないとして
ルーティーンとしての包皮切除は勧めないとの立場をとっているものの、
今回のアフリカでの調査結果を踏まえて、
両者とも見直しを検討中なのだとか。

DiekemaはもちろんAAPの包皮切除検討班のメンバーで

「過去10年間の文献を調べると、効果は明らかで、
医学的な利益があると認められてきました。

どの子どもにもルーティーンとしてやるだけのエビデンスがあるかどうかは
分かりませんが、AAPからは今までよりも少し強く推奨する勧告が出るかもしれません」

もちろん、こうなってくると包皮切除の実施率が、
米国の平均56%であるのに対してWA州では23%と、
ゲイツ財団のおひざ元のWA州での実施率の低さは、
やはり大問題なのでしょう。

このSeattle Timesの記事のタイトルは
WA州がエビデンスを受けて包皮切除を進めそうだ、というもので、

一応、義務付けではなくあくまでも親の選択だとはしながらも、
ワシントン大学グローバル・ヘルス(これまた、いかにも)の教授が
「親は子どもに最善の利益を望むものですが、
それでも生まれたばかりと言う時に、子どもが17歳から19歳になった頃の
エイズや性病予防のことまで考えられる人はそうそういません」と発言。

そのココロは、やっぱり、
親は息子が生まれたばかりの時にそこまで先を見通せないのだから
生まれた直後にやっておいたほうがいいですよ、と専門家がちゃんと勧めましょうね、
という含みとしか思えず……。

State may see push for circumcision after evidence shows health benefits
The Seattle Times, August 15, 2010


Bill Gatesが「安上がりなエイズ対策として包皮切除を」と考え付いたら、
それを施策として世界中で推し進めるために、
まずエビデンスが用意され、

それを待ってAAPもCDCもWHOも足並みをそろえて動き出す。

米国内で率先するのは、もちろんWA州で――。
もちろんシアトルこども病院、WA大学医学部が旗振り役で――。
2010.08.16 / Top↑
ゲイツ財団が最近、途上国の母子保健に力を入れている。

去年の5月に
早産・死産撲滅に、シアトルこども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出すというニュースから
予防のための研究を進めると言いながら、それと並行して実際には、
こういうことに向かっていくのでは……という予感がしたのだけれど、

その後のニュースをたどると、以下のように

知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23):G8での避妊・家族計画論争
ゲイツ財団資金で超音波による男性の避妊法を開発、途上国向け?(2010/5/12)
ゲイツ財団がインドのビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書(2010/5/17)
2010年5月29日の補遺:G8での途上国の母子保健関連記事。ここでも「家族計画」に言及。
ゲイツ財団が途上国の「家族計画、母子保健、栄養プログラム」に更に150億ドルを約束(2010/6/8)


「途上国の早産・死産・妊産婦の死亡数を減らすために」という大義名分で、
「そうでなければ命を落とす可能性の高い女性や子ども」にとって“最善の利益”だとして
貧困国の貧困女性には、先進国の女性とは別の基準が適用され、手が打たれていくのでは……という
懸念が私の中で、どんどん色濃くなってきていたところ、

NY TimesコラムニストのNicholas Kristofが書いたOp-Edが目につきました。

Another Pill That Could Cause a Revolution
The NY Times, July 31, 2010


1ドルにも満たない錠剤が
「世界中で、特に途上国で、中絶を革命的に変えつつある」とKristofは言う。

世界中の中絶の5分の4は途上国で行われていて、
消毒の不十分や手技の未熟から年間7万人もが中絶の合併症で命を落としている。

そこで安全で安価で政府が取り締まりにくい選択肢として一躍脚光を浴びているのが
元々は胃潰瘍の薬である misoprostol。

経口中絶薬mifepristone(RU-486)を飲み、その数日後にmisoprostol を飲む堕胎方法は、
欧米で「薬による中絶medical abortion」と呼ばれ、
スコットランドの中絶の7割がこの方法によるとされる。

妊娠初期なら95%の確率で流産する。

前者は中絶目的でしか使われないので手に入りにくい地域が多いが、
後者は胃潰瘍の治療薬なので、禁止されておらず、どこでも手に入る。

最近の研究で
misoprostolだけでも80%から85%の割合で中絶ができることが分かってきて、

その他の選択肢が限られている途上国で、
女性の性と生殖に関する健康(sexual and reproductive health: SRH)にとって大きな光明だ、
というのが、この記事の主旨。

ただし妊娠の後期に入るとどのくらいの効果があるかは未知数。

記事に書かれているリスクとしては
うまく中絶できなかった場合に胎児に障害が発生する可能性があること以外には
「自然発生する流産と同じ」とされているが、

米国では法律によって
mifepristone は、クリニックで(入院して?)飲むことになっているため
中絶の8件に1件しか使われていない。
使用が認められるのは妊娠9週まで。

英国では入院しての使用なら24週まで認められている。

ブラジル他、中絶目的でのmisoprostolを規制しようとする国もあるが、
Kristofは「misoprostolの使用を禁じると、出血多量で死ぬ女性が増えるだけだ」、

「どうせ薬による中絶の禁止なんて実施困難。
だってインドの製薬会社がこの2つの薬を大量に作っては
5ドル以下で世界中のどこにでも発送しているのだから」

更に記事の最後には
「世界中の女性に噂が広がっている以上、
この産科医療改革を政治家が止められるとも思えない」とも。


          -------


この記事で言及されている生殖保健関連のテクノロジー開発NPOで
「すべての人に医学とテクノロジーの発展の果実へのアクセスを」を理念とする
Gynuity Health Projectのサイトを覗いてみると、

やっぱり思った通り、資金提供者リストのトップはMelinda and Gates 財団。

リストにはそのほか、Rockfeller財団の名前もあるし、
最近私が気になっている Planned Parenthood Federationも
Society for Family Planningもあります。

もう1つ、この記事で言及されているのはMarie Stopes Internationalで、
こちらも世界43カ国で家族計画と安全な中絶、母子保健とHIV対策を行う
性と生殖に関する保健(SRH)のNPO。

Aboutを読んで、私が個人的にたいそう興味深いと思ったのは
わざわざ「男児の包皮切除を含むHIV対策」と書かれていること。

先月、ウィーンでのエイズ会議でBill Gatesは
安価なHIV対策として男児の包皮切除でHIV感染率を60%削減できると説きました。

こちらも上記Gynuityと同系列の活動団体と考えていいのではないでしょうか。

ゲイツ財団の周辺では、母子保健と並行して、世界の人口抑制策も動いています。

ビル・ゲイツの音頭で米国の長者たちが各国政府の頭越しに世界人口抑制に取り組もうと合意(2010/6/9)
“優生主義者”ビル・ゲイツ、世界エリートの“陰のサミット”ビルダーバーグ会議に(2010/6/9)


この2つの動きが、実は1つである……ということは本当にあり得ないのか???


内情・実態が国際社会から見えにくい途上国で、
最も弱い立場にある貧困層の女性たちに
一体どういうやり方で経口中絶薬が届けられ、飲まされていくのか……。

そもそもKristofの文章の趣旨そのものが、
2剤併用で「薬による中絶」が行われているけど、
どこでも手に入って政府が規制しにくい片方だけでも
95%の成功率が80%程度まで落ちるるにしても、中絶できないわけじゃないと分かってきたから、
途上国の場合は、単剤で成功率80%でも、いいんじゃない? という話。

統計の問題としてだけ考えれば、
元々死亡率が高い女性のグループが対象だから
リスクが大きくなっても、その増大幅も、死亡率の高さに吸収されるかのように錯覚するけど、

特定の薬のリスクはあくまでもその薬のリスクとして検討されるべきものであり、
Kristofの論理に潜んでいる上記のような錯覚が共有されるとしたら、それは
途上国の女性の命を値引きしているからに他ならないのでは?


ちなみに、日本では経口中絶薬は未承認ですが、
個人輸入する人があることから、2004年に厚労省から警告が出されており、

以下のような記述があります。

欧米では、医師のみが処方できる医薬品とされています。腟からの出血や重大な感染症等の可能性が知られており、医師による投与後の経過観察や、緊急時には医療機関を受診できることが必要とされています。欧米でも医師の処方せんなしで薬局で購入することはできません。




ろくに医療が受けられないために妊産婦の死亡率が高い途上国で、

この「革命的な」経口中絶薬が
医師が診断しインフォームとコンセントを取った上で
妊娠初期の妊婦さんにのみ慎重に処方され、
医師による経過観察がちゃんと行われ、
緊急時の受診体制も整えられた環境下で
女性たちが飲むことになる……とは、

私にはどうしても思えない。
2010.08.03 / Top↑
ダニエル・エルチューリンの「ビルダーバーグ倶楽部」から、
Ashley事件関連の部分について。


・ビル・ゲイツは99年のポルトガルのシントラでのビルダーバーグ会議に招待された。
メリンダ・ゲイツは2004年にビルダーバーグ会議に招待された。
その他マイクロソフトの関係者は、何度も招待されている。


・ビルダーバーグ会議には、NY TimesやWP、LA Times、WSJ、米国3大ネットワーク、
英国のタイムズ、オブザーバー、フランスのフィガロ、ルモンドなど、
主要メディアが招待されている。それでいて、そこで知ったことはどこも報道しない。
2002年から03年にかけて、米国の対イラク開戦時期を彼らは知っていたのに、
どこも報道しなかったほど、秘密が守られている。

2007年1月3日に火を噴いた“A療法”論争の際、NY Timesは事件そのものは報道していないのだけど、
1月26日になって、いきなりPeter Singerの挑発的な記事をOp-Edで掲載した。

その時、どこかで(記事のコメント欄?)誰かが「Singerが自ら書きたくて書いたというよりも、
引っ張り出されて求めに応じて書いた、という感じがする文章だ」と言っていたのが
ものすごく頭に引っかかりを残している。


・ビルダーバーグに招待されているメディア関係者一覧(p.66-69)の中に、
思わず「あっ」と声が上がる名前があった。

出版社サイエンティフィック・アメリカンの
会長でCFR(外交問題評議会)メンバーのジェラルド・ピール。

2007年1月3日に火が付いた“Ashley療法”論争の時、1月5日に、いち早く、
Fost, Wilfond, Fraderという、いずれも子ども病院の“身内”を寄せ集めて、
全員に“利害関係のない専門家”のフリをさせ、世論誘導のメール討論
The Pillow Angel Case―Three Bioethicists Weigh In をセッティングしたのが、
このScientific Americanだった。

2007年の科学記事トップ25にも“A療法”擁護の記事を加えた。)

メール討論の仕組み方のあざとさには、
科学とテクノ系のサイトというだけではない何かがあるとは感じたし、
内容も、Fostが他の2人に強引にやらせている感じがありありだったから、
私はFostかAshley父のどちらかが SciAm にやらせたことだろうと考えていたのだけど
ここで、こういう名前を見ると、妙にすとんと腑に落ちてしまう感じも……。

         ---         ---

実は、ずうっと記憶に引っかかっていながら、
その後、どうしても探し出せないのだけど、

2007年に初めて米国政府のNBICレポート(詳細は書庫に)を読んだ時に、
障害者へのテクノロジーの適用について書かれた部分のどこかに、
「障害者への適用はQOLの向上に資するとのステートメントをもってスタートする」という
記述がありました。

その個所を読んだ時に、
Ashley事件とは、もしかして、この「ステートメント」ではないのか、
テクノロジーによって障害者の身体に手を加えることでQOLを向上させるという「声明」として
仕組まれた事件であり、

それによって世論の反応をみるための、いわば社会実験なのでは……? と、
ふと、そんなことが、その時に頭をよぎったのだけれど、

当時は、その後知ることになる諸々の一切を、まだ知らなかったので、
まさかね……と読み飛ばしてしまった。

なにしろ大部のレポートなので、その後その個所が見つけられないままでいるのだけど、
またぞろ気になってきた……。



もう1つ思い出したのは、
08年3月にCNNがAshley父にメールでインタビューした際に、妙な質問をしていること。

「あなたは、自分がなんらかの団体を代表しているとお考えですか」

私は当時、まだ
Ashely父は背後にいるGatesの“虎の威を借りた”だけだと思おうとしていたし、
その他、世の中のことについてもロクに分かっちゃいなかったので、
この「団体」については、とりあえずトランスヒューマニスト協会とか、
そういう方向違いのところを想像したものだったけれど、

今ふりかえって思えば、あの質問、もっと意味深なものだったのかもしれない。

で、その「団体」って、どこのレベルまで、さかのぼるんだろう……?


なにしろ
「ビルダーバーグ倶楽部」という、イマイチ得体のしれない本で、
私としては、ぞお~っと怖気が背中を這い上がってくるほど、最もリアルに怖かったのは、
A事件で最も大きなマヤカシを仕組んでみせたメディア、SciAm がビルダーバーグだということだった。
2010.06.29 / Top↑
「ビルダーバーグ倶楽部」を読了。

正直、受け止め方に悩む。
私はこの本に出てくる人や組織の大半を知らないし、
私にもわかる情報は、今度は詳細過ぎて、その情報の海の中でおぼれそうになるため、
それがどういう意味をもつのかが逆に見えにくかったりする。

ビルダーバーグ会議の存在そのものは既に確認されていることだし、
彼らがどういう存在で、何を狙っているのかというあたりについて
著者のダニエル・エスチューリンが言っていることの大まかな内容は掴めたと思うけれど、

彼の言っていることにも、辻褄が合わないところが多々あるし、
その中の一部は執筆時の2005年以後の状況の変化が説明するにしても、
正直、どこまで真に受けたらいいのか戸惑いつつ最後まで読んだ感じ。

とりあえず、当ブログが関心を持って眺めてきた事柄2つ、
VeriChipとAshley事件に関連した部分だけは大きな関心をもって読んだので、
そのあたりのことを、2つのエントリーに分けて。

まずはVeriChip関連。

ビルダーバーグが世界政府として世界中の人々を管理するための方法として、
将来的にマイクロチップを全員に埋め込ませるべくキャンペーンが進行している、として、
当ブログでも取り上げたVeriChipについて、かなりのページ数が割かれている。

当ブログで行き当たったのは認知症患者の徘徊時の追跡用に
チップを人体に埋め込む実験が企まれて、その反対運動が起きていた2007年だった。

徘徊追跡でアルツ患者にマイクロチップ?(2007/7/28)
VeriChipはジリジリと広がっていく?(2007/10/22)

当時でも既に動物のトラッキングには一般的に使われていたけど、
その後、VeriChipは世論の批判を浴びて、とりあえず人体埋め込み型から
腕時計や靴に仕込んで身につけるタイプへと転向した。

(たしか、埋め込み型マイクロチップには発がん性があるとの指摘もあったはず)

著者によるとVeriChipの背後にいるのはIBMで、

2003年には、ベネトンが
商品に追跡調査用の極小発信機を縫い付ける計画をすっぱ抜かれて
中止する騒ぎもあったとのこと。

既にその後、バイオ認証技術が進み、
さらに極小追跡監視装置Digital Angelも登場した。

著者は、ビルダーバーグに招待されるメディアを通じて、キャッシュレスの便利なイメージに乗せつつ、
マイクロチップの人体埋め込みが社会的に望ましい行為として描かれていくと書いている。

私も2007年に、たしかWashington Postで、
銀行口座の情報を入れたチップを腕に埋め込んでおいて腕をかざすだけで居酒屋の支払いをする人や、
情報管理の厳しい会社で社員のIDチェックに使われている例などをとりあげた
長文の記事を読んだ記憶がある。

そういえば小児性愛者の足首にGPSのトランスミッターを装着するのも
米国ではいつのまにか当たり前になっている。

あれは相当な人権侵害ではないのかと私は思うのだけど、

本書を書いている2005年現在、テロや戦争、過激主義、人種差別、不寛容の精神など、文明の衝突によって、多くの人が自由を犠牲にしても構わないという精神状態に陥っている。(p.330)



いつのまにか監視カメラによる監視社会が到来していたり、
英国で国民DNAデータベース作りのために罪もない人まで逮捕されていたり、
全国民の電話やインターネットの使用記録ばかりか中学生の時の成績まで
保存・管理しようという企てがあったりということを考えれば、
テクノロジーによる管理強化が進んでいることは実感しているところでもあるのだけど、
(こうした監視社会の具体については拙ブログでも拾っており、文末に)

しかし、米国で子どもの誘拐事件をビルダーバーグが次々と起こして
親たちに子どもの居場所把握のためチップの必要を感じさせているのだという
エスチューリンの主張には、ちょっと戸惑う。

(ハイチの地震の際に、国外に連れ去られた子どもたちは、たしかDNA検査で
親元に帰されたという記事が出てきている……ということが頭に浮かんだ。
これも同じ匂いがするといえばするけど、じゃぁ、この説を丸ごと“買う”か、と問われても、
ちょっと返答に詰まる)


さらに、著者は
世界経済フォーラム(ダボス会議)の主要な目的の1つを
「全人類に予防接種を施すこと」だとし、

ここで読者に考えてほしい。今、読者の片方の手には、体内への埋め込みが可能なマイクロチップ・テクノロジーがある。そして、これを世界の60億人に『配達』することで大儲けしたいとする。もう一方の手には、世界の60億人を支配したいと願う組織がある。さて、この二つの希望を一つにまとめて共通の目的とするには、一体どうすればいいのか。マイクロチップを世界中の人間に一人残らず移植する方法。もちろん、それが先に述べた接種だ。(p.333)



2000年のダボス会議で組織されたGAVI(ワクチンキャンペーン組織)の
第1弾のキャンペーン「子どもチャレンジ」はゲイツ財団から7億5000万ドルが出ている、と。

GAVIにはもちろんシアトルこども病院も関わっているから
当ブログでも何度も触れてきたけれど、

じゃぁ、途上国の子どもたちの中にはチップを埋め込まれた子どもが
もう沢山いるということなんだろうか……?

この話、私のスタンスは、今のところ受け止め方を保留しつつ、
でも、ちゃんと覚えてはおこう……というところか……。

ちなみに、今年のダボス会議でBill Gatesが
人口抑制とワクチンに触れたことで、現在、ネットにしきりに流れている陰謀説は
「ワクチンに不妊成分を混入させて世界中の女性に」というヴァージョン――。


ともあれ、この本を機に、
世の中がこれまでとは、ずいぶん違って見えてきたのは事実。

現に何をやっていたり、この先やろうとしているかはともかく、
ビルダーバーグ会議は現実に存在し、ダボス会議は公然と存在していて、
その周辺をなんだかんだと衛星的に取り巻いている各種組織があって、
……てことは、世界のあり方を世界中の権力者と金持ちが集まって決めているわけで、
それがグローバル政府でなくて、なんだ……? とは思う。

私は、グローバル政府なんかないところで
ゲイツ氏が勝手に世界の厚生相を買って出ているんだとばかり思っていたけど、
なんて、ものを知らなかったことだろう。

こういうことになっているんだから、
グローバリゼーションもネオリベも歯止めがかかるどころか
世の中が持てる者、強い者に一方的に都合のよい場所になって行くのは必然というもので
それなら、どうしたって我々一般人は奴隷化・資源化をまぬがれないのだろうな……。

なんだか、体中からあらゆる気力というものが霧散していくような感じ――。



【監視社会関連エントリー】
従業員をパソコンで監視・管理する世界へ(2008/2/12)
スパイウエアで子どもを監視しようって?(2008/3/17)
教育委員会が生徒にパソコン配り、カメラでこっそり遠隔監視?(2010/2/22)

【国民データベース関連エントリー】
中学の成績が一生データベースに?(2008/2/13)
国民DNAデータベースめぐり論争再燃(2008/2/24)
国民の電話とEメールの全記録を国が管理って?(2008/5/24)
NHSの患者データから研究者が治験参加者を一本釣り?(2008/11/18)
「無実の人のDNAサンプル保管は人権侵害」と欧州人権裁判所(2008/12/6)
情報で国民を監視・管理する社会へ(英)(2009/1/11)
100万人以上の子どものDNA情報が国のデータベースに(英)(2009/2/27)
「英国政府のデータベース4分の1は人権侵害」と報告書(2009/3/24)
国民データベース諦めて、代わりに「ネットと電話利用歴みんな残せ」と英国政府(2009/4/28)
DNAサンプル目的で何でも逮捕、既に黒人の4分の3がデータベースに(2009/11/24)

米国でも逮捕時採取のDNAサンプルを保管してデータベースに(2009/4/20)
米国でも犯罪者のDNAサンプル廃棄進まず(2009/6/10)
2010.06.29 / Top↑
NY Timesに「唯の人間なの? まー、時代遅れだこと」というタイトルの記事。

Merely Human? That’s So Yesterday
The NY Times, June 11, 2010


グーグルの幹部やトランスヒューマニストらが出資して2008年に
the Singularity Universityなるものが立ち上げられている。

大学の公式サイトはこちら。

現在はまだ、
米国政府が官民セクターの出会いの場と位置付けているシリコン・バレーのNASA Ames内に
拠点を置いて短期の講座を開催しているだけだけど、
いずれはキャンパスを構えるのだとか。

その理念は、その名の通りsingularity。すなわち「特異点」。

特異点とは、
各種新興テクノの進歩がある段階に達したところで
それらの総合的な影響力が一気に爆発的な効果をもたらし、
俄かに人間の能力を超人的な次元へと引き上げる……その地点のこと。

実際には、50年代にJohn von Neumannという数学者が語ったり、
93年にもSF作家のVernor Vingeが使った用語で、

この記事の中で、Ashley事件でお馴染みTH二ストのJames Hughesが言っているように
「KurtzweilはSingularityという用語をハイジャックしたのだと言う人は多い」のだけれど、

なにしろ彼の著書“Singularity is Near(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)”が
今後数十年以内に特異点が訪れて、そうしたら人類は生物学的な限界をすべて超え、
不老不死を手に入れて、貧困、飢餓、気候変動、エネルギーなどの諸問題を解決することができ、
みんながハッピーになる……と説いて大ウケしたわけだから、

そのために人材を育成し、研究者や企業のグローバル・ネットワークを……という
建学の(と言うと、なぜかそぐわない気がするのだけど)精神(これもしっくりこないけど)の
この“大学”でも、Ray Kurtzweilが教祖……もとい広告塔……もとい表看板。

シリコン・バレーには、彼と同じようにテクノ・ユートピアを信じる
チョ―頭が良くて、ゼニがじゃぶじゃぶ有り余っている人たちが、わんさといて、
この“大学”に出資している。

Googleはもともと人類の思考能力を超えた巨大頭脳をつくり出そうと
日々シリコン・バレーで精進していることで知られていて、
Nasa Amesとも、もともと宇宙開発で提携関係にある。

(もともと米国政府がトランスヒューマニストと同じ方向を向いているのは
 2002年のNBICレポートの段階で明らかだったりもする。
 このレポートの内容の概要は「米政府NBICレポート」の書庫に)

で、このNYTimes記事は、
カーツワイルの半生をあらまし追いかけながら
彼の特異点説やテクノ・ユートピアに対する賛否両論を併記しつつ、

でも、実は、一番強く響いてくるメッセージとしては、

GoogleがKurtzweilを表看板に
Singularity大学でやっていることも、やろうとしていることも
結局は「特異点ビジネス」じゃないの……?

なにせ、この大学には目下、2つの講座があるのだけど、
その1つが10週間の「大学院コース」で25000ドルなり。

去年の講座には40人定員に1600人が応募し、
今年も定員80人のところに1200人が応募したそうな。

もう1つが、さらに上を行く 「幹部コース」で
こちらは9日間、夜明けから夜遅くまで、びっちりプログラムが組まれている。
お値段は15000ドルなり。

内容はともかく、
次なるベンチャー・ビジネスの動向を読み、投資判断の材料をゲットすることができるし、
ちょっと他ではありえないクラスメイトとの出会いと、
ネットワーク作りの場として大人気。

(受講生のほぼ全員が男性……と記事がわざわざ断っているのが興味深い。
THニズムてな基本的には白人・男性・知的エリートの価値意識じゃないかと私も前に書いたことがあったけど。)

特異点を信じる彼らは、
自分たちの力だけでそれを成し遂げられると信じていて、
また、そうするつもりなので外部から介入されることを嫌う、
特に政治的な妥協をしたり、路線の違う人たちを説得するなんて彼らには論外なのだ、とも。

(このあたり、いかにも個体の能力と機能しか見ず
人と人との関係性というところが見えないTH二ストらしい、と思う)

つまり徹底したリバタリアンで
だから、2008年の大統領選ではGoogleもMicrosoftも
アメリカ・リバタリアン党のロン・ポールにせっせと献金した、とか。

ここでGoogleと並んでMicrosoftが登場しているのは興味深くて、

そういえば記事の最後のあたりには、
カーツワイルはBill Gatesとも仲良しで、
カーツワイル本にはゲイツ氏が頻繁に言及されていて、
日本の本につけられる帯に当たるものをゲイツが書いていることも書かれている。

ゲイツ財団がIHMEを作り、グローバル・ヘルスでやろうとしていることを
グーグルはこういう形でやろうとしているということだろうし、
その価値観と理想と独善性とを共通項に、
その2つの動きは実はやっぱり1つなのだろうし、

これって、あの「ビルダーバーグ会議」の
科学とテクノ・オタク版なのでは……? 

でも、例えば、このNYTの記事は相当な皮肉をきかせているし、決して賛同してなどいないのだけど、
SUの学長さんは「ボクタチの目的をNYTが紹介してくれて、とっても嬉しい」と喜んじゃってるみたいだし、

ビルダーバーグに比べて、こちらは、
たまたま、お金をたんまり握ってしまった頭のいいオコチャマたちの、
はた迷惑な児戯に思えて仕方がないのは、なぜ――?



それにしても、
この記事やSingularity Univ.のサイトで写真を見てつくづく思ったのは、

カーツワイルさん、しばらく見ない間に、歳とったね~。

1日150錠ものサプリなんてやめて、
ちゃんとしたご飯をしっかり食べた方が良くないっすか?



【カーツワイル関連エントリー】
カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」(2007/9/29)
多数のため少数の犠牲は受け入れよ、とカーツワイル(2007/10/1)
Kurtzweil「今より10億倍もベターな世の中に(2008/4/15)

【James Hughesの“Citizen Cyborg”関連エントリー】
Hughesの「サイボーグ市民」
he とshe の新たな文法?
サイボーグ社会の“市民権”
2010.06.14 / Top↑