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「家族介護の9つの秘訣」に続き、再びAARPのサイトから――

優しくて頑張り過ぎちゃった介護者に訪れる“燃え尽き症候群”。
こんな兆しが見られたら、あなたも“燃え尽き”かけているかも。


① 介護について話す時に「いつだって」「ゼッタイに」と言っている。

「母さんを施設に入れるなんて私はゼッタイにしないから」とか
「友達とランチにも行けない。あの子の食事介助はいつだって私なんだから」とか……。

② 何度も断っているうちに、いつのまにか
友達から遊びに行く誘いの電話がかかってこなくなった。

③ 「あ~、楽しかったなぁ」という思いをしたのはいつのことだったか、思い出せない。

④ 介護に関することはあなたがすべてやるのが当たり前だと、親戚中が考えている。
(ただし夫婦介護の場合はこれは文字どおりにはあてはめられないかも)

⑤ 太ってきた。体調が悪い。

⑥ 最後に旅行に行ったのは、もう思い出せないほど昔のこと。

⑦ 誰と何を話していても、いつのまにか介護の話になってしまう。

⑧ 趣味がなくなってしまった。

⑨ 朝まで通しで眠ることができない。

これには介護している人のニーズに応えるため、と
自分がストレスや心配事で眠れないため、と2つの理由が考えられますが、
後者は燃え尽き症候群の予兆かも。

⑩ 明日、もう目を覚ましたくない、と考える。

介護をしていて、特に苦しい危機的状況のさなかでは、
こういう思いになることは誰にでもありますが
危機が過ぎ去ってもこんなふうに感じる時は
燃え尽きかけているのかも。

10 Signs of Caring Too Much
AARP from Caring.com


それぞれの項目の後に
「そうなるのは、あなたがこうだからです」
「そうならないために、こういうふうにしてみましょう」
という解説やアドバイスが書かれているのですが、

その部分を読んでいると、
かつて「育児相談」とかで「障害児の母親」の悩みを聞くと、
「それはお母さんがこうしないから子どもがこうなるのです」
「お母さんさえああすれば、子どもとはこうなるもの」と、
我が子のオムツさえ替えたこともなさそうなジイサンたちに
元校長だとかいうだけで高いところからエラソーな説教をされ、
「それはお母さんが悪い。もっと努力しなさい」というところに話を落とされて、
結局、相談する前よりもはるかに気分が悪くなって終わる……という
実に不愉快な体験を思い出してしまった。

ここでは介護体験がない人が書いているわけでも
高いところから訓を垂れているわけでもないのだろうけど、
“自己責任”で介護者を「責める」トーンがほんのわずかに感じられるので
この際、はぶきました。

大事なのは
このチェックリストに当てはまったら、
「あ、自分、燃え尽きかけているのかな」と、
まずは立ち止まって考えてみることだと思う。

そこで、
燃え尽きに向かわないために自分はどうすべきだったかを
点検したり反省するんじゃなくて(そんなのはハッピーな状態に戻れてからでいい)

これ以上、燃え尽きに向かって進まないために
ちょっと介護の力と手を抜いてみること、
どこで抜けるか考えてみること。

私の好きな“身勝手な豚”さんは、
自分が介護の中で一番「イヤだ」と感じていることは何かを考えてみろ、と言っています。

そして、その一番イヤな部分で、ほんのちょっと手を抜いてみる。
ほんのちょっと手を抜いたらどうなるか、様子を見てみたらいい、
手を抜いても、大したことは起こらないはず。
そしたら、さらにもうちょっと抜いてみる。

そんなふうに、少しずつ手を抜いていこうね、と言っています。

詳細はこちらに ↓
「“身勝手な豚”の介護ガイド 4: 「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために」(2011/7/23)


それから“身勝手な豚”さんの、燃え尽きないための黄金律は
Break, or you break。

ブレイク・レスパイトして休憩するか、ブレイクしてあなたが壊れるか――。
2011.10.24 / Top↑
2008年12月に「介護保険情報」誌の連載「世界の介護と医療の情報を読む」で仮訳したものを、
以下のエントリーにアップしておりましたが、

「介護者の権利章典」訳を改定しました(2009/12/12)


自分でも、この訳には当時から全然満足できておらず、
いつかやり直したいと思いつつ、そのままになっていました。

昨日tu_ta9さんのブログ「今日考えたこと」で紹介してくださったのを機に
懸案のやり直しにチャレンジしてみました。


介護者の権利章典 (再改定版)

私には……

・自分を大切にする権利があります。自分をいたわり大切にすることは身勝手とは違います。自分を大切にしなければ、家族を介護する力も出ません。

・外に助けを求める権利があります。身内からは反対されるかもしれないけれど、誰にだって耐えられること、頑張れることには限界があります。どこまで耐えて頑張れるか、私自身の限界を知っているのは私です。

・介護者として以外にも様々な役割や立場を持った私自身の生活を、中断することなく続ける権利があります。家族に介護が必要となった時を境に私の生活は変わらざるを得なくなりましたが、できる限りの介護をしているのだから、時に介護者以外の役割や立場を大切にすることがあっても、バチは当たりません。

・腹を立てたり、落ち込んだりする権利があります。たまには、自分で持て余した気持ちをぶちまける権利もあります。

・罪悪感を煽ったり落ち込ませるようなことを言って、こちらを思い通りにさせようとする身内(わざとやる人も無意識にやる人も)がいても、その手には乗らない権利があります。

・気を配り、愛をそそぎ、許し難きを許し受け入れながら介護しているのだから、そういう私にも気を配り、愛をそそぎ、許し受け入れてもらう権利があります。

・こうして介護をやりおおせている自分を誇らしく感じる権利、時としてメゲそうなほど大きい介護ニーズにも踏ん張っている自分を褒めてやる権利があります。

・一人の人としての自分を失うことなく、私自身の人生を生きていく権利があります。私が介護している人には、いつか常時介護が要らなくなる日が来ます。その後にも私は自分の人生を生きていくのですから。

・この国の障害のある人々への支援が進み、そのための方策が新たに見出されていきますように、また介護者を助け支える支援も進んでいきますように、と望み求める権利があります。


原文はこちら ↓
http://www.zarcrom.com/users/yeartorem/rights.html


なお「ぶちまける」は tu_ta9さんの翻訳からのパクりです。
tu_ta9さん、無断借用すみません。

ちょっとはマシになったでしょうか。

自分としては、「”身勝手な豚”の介護ガイド」との出会いで、
介護に関する翻訳への姿勢がちょっと吹っ切れたと感じているところがあるので、
ついでに「”身勝手な豚”の介護ガイド」エントリーシリーズを以下に。

「“身勝手な豚”の介護ガイド」1:セックスもウンコも“殺してやりたい”も
「“身勝手な豚”の介護ガイド」2:あなた自身をもう一人の“子豚”に
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3:“専門家の世界”に心が折れないために
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3のオマケ:だって、Spitibaraも黙っていられない
「“身勝手な豚”の介護ガイド」4:「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために
「“身勝手な豚”の介護ガイド」5:ウンコよりキタナイものがある
「“身勝手な豚”の介護ガイド」6:セックスを語ると“子豚”への愛が見えてくる“ケアラー哲学”
2011.10.24 / Top↑
英国の老舗・介護者支援チャリティ、The Princess Royal Trust for Carers が
60歳から94歳まで639人の介護者に調査を行ったところ、

65%が自身も健康に問題があったり、障害があると答えた。
介護している人を抱え上げられる自信があると答えたのは半数のみ。

ほぼ70%が介護者役割によって健康を害した、と答え、
49.2%は過去1年間に健康が悪化した、と答えている。

また34%の人は、介護者役割を果たすために自分の治療や手術を延期したことがある。

68.8%は精神面での健康に問題を感じており、
42.9%は過去1年間にメンタル・ヘルスが悪化したと答えた。

トラストでは、この調査結果をもとに、主として以下の3点を提言している。

① GPは年に1度、介護者の健康診断とうつ病スクリーニングを。
また、介護者役割のために外出しにくい介護者のために、
必要に応じて往診も必要。

② 介護者には介護技術の研修と、
必要に応じて、リフトなどの介護用具の提供を。

③ 介護者のレスパイトは、NHSと地方自治体が資金を出すべき。


同トラストのトップ Liz Fenton氏は

「調査から、他者の介護をすることによって
介護者自身が健康を害する可能性があることが明らかです。

調査では、多くの介護者が背骨を痛めたり関節炎、腰痛、
ガン、腎臓病、うつ病、心臓病などに大変苦しみながら、
それでも苦労して介護を続けていると語ってくれました。

当トラストは、
参加しやすく、比較的費用がかからない地方レベルでの予防サービスを、と呼びかけています。
そういうものがあれば介護者の生活は改善することが出来ますし、
それによって、より長く在宅介護を続けることができる人が増えれば
廻り回って、行政の経費も削減できるというものです」

保健省の広報官は

「政府は医療とソーシャルケアに関する自己決定権を拡大しようと考えており、
そのためには虚弱高齢者と介護者にパーソナル・バジェット(現金支給)を
広げていくことが不可欠。

現金支給によって、個々に自分が望むケアと支援を受けられるようになる。

介護者のレスパイトと、介護者の健康・福祉チェック、
また柔軟な予約制度や、退院時支援とケア・プランの改善などについては、
複数の地域で様々な方法を、予算をつけて模索しており、
その結果を今年の末までに報告することになっている」

Two thirds of older carers have ‘damaged their health’ due to strain of looking after loved ones
The Daily Mail, September 12, 2011

Trust calls for home visits and health checks for older carers
Nursing Times.net, September 13, 2011


Mailの記事に寄せられたコメントの中に、

「正直言って、介護している人って、
介護していることを言い訳に働こうとせず、
介護者手当でのうのうと暮らしているよね」

さすがに、
「あんたね、週たかが55.55ポンド程度で、
フルタイムの介護って生活、やったみたこと、ないでしょーが?」
「フルタイムで介護してて、どーやったら働けるって言うの?」

などとコテンパンにやられているけれど、
このコメントには、唸りながら先頃の暴動を思い出してしまった。

みんなが貧困層に転落していくなかで、
たった週55.55ポンド(約6600円)の手当ですら嫉妬の対象になる……。

             ――――――

The Princess Royal Trust for Carers の3つの提言については、
「ケアラー連盟」の介護者実態調査で同じような結果が出ている(↓)ことでもあり、
日本でも同じ提言が当てはまると思う。

日本のケアラー実態調査(2011/6/14)


① の、うつ病スクリーニングには、
介護役割からくる心身のストレス軽減のための実際的な支援策がなければ
単なる薬物療法への誘導になるリスクもあるような気がするけれど、

往診の必要は、
ケアラー連盟の調査報告書でも強調されている「アウトリーチ型の支援」にも通じていく点。

アウトリーチ型支援は
物理的に介護者が外出しにくいからというだけではなく、
介護者の心理からしても必要なのだという点は、私自身、
6月の「ケアラー連盟」のフォーラムでお話しさせていただいたところ ↓

ケアラー連盟設立1周年記念フォーラムに参加しました(2011/7/1)

日本では介護保険の地域包括支援体制が整備されつつあることを考えると、
そうした体制の中に介護者へのケアを組みこんでいくことも可能じゃないだろうか。

② の研修の必要については
「“身勝手な豚”の介護ガイド」(詳細は文末にリンク)でMarriotさんが
「プロの介護者なら最初にしてもらえる研修なのに」
なぜ家族介護者には誰も必要なトレーニングを提供してくれないのだ?」と
何度も繰り返して書いていたのが、とても印象的だった。

私自身は、子どもの障害を知らされてすぐに母子入園プログラムで
いろんな専門家の講義を聞き、リハビリを母親が学ぶ機会に恵まれたし、
障害児の親の場合には、子どもの成長と共に知識もノウハウも身につけていくだけの
時間的な余裕があるという面もあるのだけれど、

例えば脳卒中などの中途障害の場合だと、
介護者もある日突然に気づいたら「介護者になっていた」という事態なのだから
確かに、大変だろうな、ということにMarriotさんの本で初めて気づいた。

これは、医療サイドでも、
患者教育と支援いう面だけではなくて、
介護者教育や支援にも目を向けてもらう必要がある、ということだろうし
ガン医療では少しずつ始まっているようでもある。

③ は、これは、もう、
Marriotさんが書いていた通り、

Break or you break.
(休むか、介護者の方が壊れるか)

レスパイトをやらない、という選択はないものと心掛けよ、との
Marriotさんのアドバイスは、とても正しい、と思う。

だから、在宅で頑張れ、というなら
十分なレスパイトを保障することが大前提――。



これまで当ブログが介護者支援について書いてきたエントリーは相当数に上ったため、
以下のエントリーに一度リンクを取りまとめています ↓
「クローズアップ現代」が英国の介護者支援を紹介(2010/10/14)

介護者支援について「介護保険情報」の連載で書いたものはこちらに ↓
介護者支援シリーズ 1: 英国の介護者支援
介護者支援シリーズ 2: 英国の介護者週間
介護者支援シリーズ 3: 英国のNHS憲章草案と新・全国介護者戦略
介護者支援シリーズ 4: 米国 家族介護者月間
介護者支援シリーズ 5: 障害のある子どもを殺す母親たち
介護者支援シリーズ 6: NHSの介護者支援サイト Carers Direct

【Marriotさんの著書に関するエントリー】
「“身勝手な豚”の介護ガイド」1: セックスもウンコも“殺してやりたい”も(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」2: あなた自身をもう一人の“子豚”に(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3: “専門家の世界”に心が折れないために(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3のオマケ: だって、Spitibaraも黙っていられない(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」4: 「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために(2011/7/23)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」5: ウンコよりキタナイものがある(2011/7/23)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」6: セックスを語ると“子豚”への愛が見えてくる“ケアラー哲学”(2011/7/24)
2011.09.16 / Top↑
今からちょうど1年前、ケアラー連盟設立を祝して
「介護保険情報」誌7月号の連載で書いた記事を――。



英国NHSの介護者支援サイトCares Direct

先月7日、介護者の権利擁護を進める「ケアラー連盟」が日本で誕生した。これまで介護者が「人権」という文脈に乗せられることは日本では少なかったが、ついに「介護者の人権」を求める声が上がった。英語圏の介護者支援については、これまでも何度か紹介してきたが、これを機に、今回は英国のNHS(国民医療サービス)がウェブ上に開設している介護者支援サービスCarers Directを覗いてみたい。

Carers Directのトップページは「ケアホーム情報」「介護を始めたばかりの人」「お金と法律」「介護ガイド」「若年介護者」「介護者の福祉」「仕事・勉強との両立」「介護者の体験談」「介護者手当て」「介護者アセスメント」の10テーマに分かれている。また地域ごとにサービス情報を検索する機能、関連サイトへのリンクも用意されている。

初めてこのサイトを訪れた人や介護を始めたばかりの人にお勧めなのは、ページ右下にある「誰かの介護をしていますか?」と題したQ&Aコーナーだろう。

以下の6つの質問に順次答えていくと、その人に応じたアドバイスと共に、サイト内のどの情報が参考になるか、どんな支援が使えるかを教えてくれる。6つの質問からはNHSの介護者支援が何を重視しているかが伺えて、たいへん興味深い。

①介護者として必要な情報が手元にあり、必要な情報をどこで手に入れたらよいか知っていますか。
②介護ができにくい身体的不調がありますか。
③介護のために夜眠れなかったり、孤独を感じたり、自分には無理だと感じることがありますか。
④何があれば介護がしやすくなりますか。(経済的サポートや住宅改造、移動支援など6つのチェックリスト)
⑤介護から離れて介護者役割を休む時間はとれていますか。
⑥介護以外のところで生活上の困難を感じていますか。(通学、仕事、健康、自分の時間など6つのチェックリスト)

また個々の相談を受ける「ヘルプライン」も用意されている。直通電話相談は月曜日から金曜日は午前8時から午後9時まで、週末は午前11時から午後4時までで、英国内なら設置電話からでも携帯電話からでも無料。電話の他にもメールや手紙での相談も受け付ける。

相談窓口なので直接の支援を行う訳ではないが、相談者のニーズに応じた情報を提供したり、サービス受給に問題が生じている場合には不服申し立ての手続きを手ほどきしたり、自治体やNHSの担当者に繋ぐこともある。また、必要に応じて各種専門家も紹介する。

外国人、障害者向け電話通訳・翻訳サービス

この介護者相談電話、特に目を引かれるのは、外国語にも聴覚・言語障害者にも対応ができていることだ。もっとも、ヘルプラインが独自に用意したものではなく、既に普及・定着した民間サービスが、民間企業はもちろんのことNHSを始めとする官による行政サービスにも導入されているということのようだ。

Language Lineのサービスでは、加入すると通訳を入れ3方向の会話が可能となる。対応言語は170以上。25年も前から各種機関の行政サービスと契約しているというから驚く。

聴覚・言語障害者向け電話通訳・翻訳サービスは、80年代に王立全国聴覚障害者協会が始めた取り組み。その後、同協会と英国の通信大手ブリティッシュ・テレコムがそれぞれ提供していたサービスが去年3月に統合されてTextRelayとなった。通常の電話番号の前に専用番号を入力するとオペレーターが介入し、キーボードのついた文字電話(現在はPCの転用も可)と通常の電話の間で、文字から音声へ、音声から文字へと通訳する。あらかじめの手続きも予約も不要。無料サービスで、通訳により通常よりもかかった時間分の料金も払い戻しを受けられる。

こうしたサービスが介護者相談電話で当たり前に使えるとは……。人の多様性を認め尊重する英国社会の人権意識の歴史の厚みを、改めて見せつけられる気がした。もっとも、これを機に検索してみたところ日本にも電話通訳サービス企業はある。代理電話サービスや、手話による電話通訳も始まっているようだ。

そして、ここにまた、日本の人権意識においても介護者支援においても着実な一歩――。
ケアラー連盟設立、おめでとうございます。



ケアラーズ・ダイレクトのサイトはこちら ↓
http://www.nhs.uk/carersdirect/Pages/CarersDirectHome.aspx


【関連エントリー】
介護者の権利を守るための「ケアラーズ連盟」、6月7日に発足へ(2010/5/18)(その後、名称変更)
「ケアラー連盟結成宣言」(2010/7/6)
日本のケアラー実態調査(2011/6/14)
ケアラー連盟設立1周年記念フォーラムに参加しました(2011/7/1)
2011.07.11 / Top↑
昨日のエントリー
英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモを書いた際に

英国の老舗介護者支援チャリティから出ている「介護者の10の心得」を
エントリーとして紹介したいな、と考えたもので――。


英国でも米国でも介護者向けに様々なアドバイスや「心得」が出ており、
いくつかは「介護保険情報」の連載でこれまでにも紹介し
その中のいくつかはこのブログでもエントリーにしていますが、
今回のものは特にお金に関するアドバイスが中心。

それだけに英国の介護者支援の実情が少しばかり伺えるものとなっています。

私は中でも特に介護で離職する人のための年金受給資格保護は
非常に大事な施策で、これから日本でも考えられるべきではなかろうか、と思います。


介護者の10の心得  by the Princess Royal Trust for Carers

 1. 自分を大切に! 介護は肉体的にも精神的にも介護者の健康に影響しがちです。でも、あなたのことだって大事。安全な介護の方法を学び、適切な食事をとり、よく眠り、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。

 2. レスパイトを。負担とストレスの大きな介護から、時には離れて息をつくことが大切です。自治体やチャリティに相談して、自分に替って介護してくれる人や場所を探しましょう。レスパイトのための資金援助を受けられる可能性もあります。

 3. あなたは一人ではありません。あなたと同じような経験をしている介護者が英国には約600万人います。地元の介護者センターや自治体を通じて支援グループに参加すると、他の介護者と出会うことができます。

 4. 家庭医に相談を。介護している人の健康に気を取られ、介護者は自分の健康を顧みる余裕をなくしがちです。介護をしていることをGP(家庭医)にちゃんと話しておきましょう。健康管理に気を配ってもらえるだけでなく、介護に役立つ機関にも紹介してもらえます。

 5. 介護者アセスメントを。あなたには自治体の介護者アセスメントを受ける法的権利があります。政府のウェブ・サイトや最寄りの介護者センターに問い合わせ、手続きをしましょう。

 6. もらえる経済支援をチェック。介護者が受けられる支援には以下のものがあります。該当していないか再確認しましょう。

 ・介護者手当 16歳以上で週35時間以上の介護をしている人が対象。他にも条件はありますが、働いていなかったり学生なら該当する可能性があります。現在、週53.90ポンド。

 ・所得支援 60歳未満で低所得、貯蓄総額が16000ポンド以下の人が対象となります。問い合わせを。

 ・介護者プレミアム 介護者手当の受給資格を満たし、さらに所得支援または年金の受給者であれば、週27.15ポンドを上限に追加支援が受けられます。

 ・減税措置 大半の世帯はなんらかの減税措置の対象となります。調べてみましょう。

 ・障害者手当 障害のある人を対象にした手当があります。チェックしましょう。

 ・住宅手当 福祉手当を受けている人や低所得で家賃や自治体税を払えない人は住宅手当の対象になる可能性があります。調べてみましょう。

 ・年金受給資格保護 週20時間以上の介護をしている人が介護者手当も所得支援も受けていない場合、年金の受給資格を保護する制度から漏れている可能性 があります。介護のために仕事を辞めたり減らした人には、新たな救済制度も出来ました。政府の「介護と年金」ウェブサイトを読むか、介護者手当の担当部署 に電話をしてみましょう。

 7. 助成金をもらいましょう。短期のレスパイトや送迎、器具や機器の購入には自治体や介護者センターから助成金が出る場合があります。

 8. 自分でサービスを選べます。自治体の介護者アセスメントを受け、介護者支援を受けられることになった場合、ダイレクト・ペイメントを選択することができます。現金支給によって、自分で好きなようにサービスをアレンジすることが可能になります。

 9. ジョブセンター・プラス(公共職業安定所)の利用を。介護を担うからといって仕事をやめなければならないというものではありません。もう一度働き たい人が研修や面接を受ける場合には、その間の代替え介護の費用がジョブセンター・プラスから支給される可能性があります。政府の「介護と雇用」ウェブ・ サイトを参照してください。

 10.助けを求めましょう。全国に144の介護者センターを持つThe Princess Royal Trust for Carersをはじめ、多くの組織が介護者に情報提供を行い、支援を提供しています。上記以外に自治体独自のサービスやボランティア組織もあります。若年 介護者も遠慮せず、相談してください。



 ・全文翻訳ではなく、各項目の主旨を取りまとめたものです。
 ・スコットランドに関する情報は省略しました。
 ・多くの項目に当該サイトへのリンクや担当部局の電話番号がありますが、省略しました。

「世界の介護と医療の情報を読む」53
月刊「介護保険情報」2010年11月号 p.74



特に4と5の項目については
英国の介護者支援には介護者法(Carer Act)や全国介護者戦略という法的、政治的な根拠があり
その中で介護者の発見や支援などGPにも一定の役割が課せられていたり、
要介護者とは切り離して介護者自身のニーズのアセスメントが保障されている
という日本とはかなり異なった事情があります。

英国の「介護者アセスメント」についてはこちらのエントリーに。

なお、このリンクを皮切りに「介護者支援シリーズ」として
「介護保険情報」誌に書いてきた介護者支援に関する文章を6本まとめています。


【その他、関連エントリー】
「介護者の権利章典」役を改訂しました(2008/12/12)
「大切な人が脳卒中を起こしたら介護者として心得ておきたい15の知恵」(2009/6/22)
2011.05.12 / Top↑