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その1で紹介したGraceとDr.Hughesのやりとりは以下のように続きます。

H:胸の組織を取り除いたことについては、体をそんなふうに切り取るなんて間違っていると思うかもしれませんが、家族に乳がんが出ているんです。それに乳房があったらうつぶせになるのも、乳房があるのも……大きな胸をして体を支えられるのも本人に苦痛(painful)だったでしょう。

G:ちょっと待ってください。Dr.Hughes、疑問があります。誰の家系をたどっても、どこかに乳がんくらいありますよ。それに、今から20年先に乳がんになってはいけないからといって6歳の子どもから胸の組織をとってしまうなんて、そういう話の繋がり方は私には理解できません。

H:これは6歳とか9歳の体に精神年齢3ヶ月の乳児が宿っているという子どもなんですよ。最終的には26歳の体、46歳の体になっても、そうなんです。そういう子どもが性的に成熟した女性の肉体に宿っている方が、今の小さな体に宿っているよりもグロテスクでないと人が感じるなんてことは、ありえないと思いますよ。両親が言っているのは小さな体の方が生きていくにも介護されるにも本人がラクだという主張であって、私はそれは正しいと思いますね。正当な配慮だと思います。

ここで注目したいのは、Hughesが投げかけられた問いに全く答えていないことです。

「将来の乳癌の可能性が、果たして子どもからの組織の摘出を正当化し得るのか」との問いに、彼が持ち出してくるのは「体と精神のつりあい」。こんな話は乳癌とはまるで無関係です。

なぜこんな無関係な話を持ち出すのか。彼はここで乳房芽摘出の理由を「乳がん予防のため」から「子どもらしい体にするため」へと、何食わぬ顔で摩り替えているのではないでしょうか。さらに「生後3ヶ月の中身には乳房はふさわしくない」→「乳房のない子どもらしい体は小さい」→「小さいほうが本人がラク」→「親の言うのは正しい」と、まるで連想ゲームのように段階的に論点をずらし、話題そのものを乳房芽の切除から遠ざけていきます。このようにして彼はGraceの鋭い指摘に答えることから逃げおおせるのです。

この巧妙な問題の摩り替え方。問いのはぐらかし方。またその際に用いられる長くて回りくどい言い回し(太字)……。どこかで見覚えがありはしないでしょうか。

Diekema医師も同じ1月4日のBBCのインタビューで、正面きって「両親の挙げる理由は、果たして行われた医療の侵襲性を正当化し得るか」と鋭い問いを突きつけられました。本質的には上記のGrace質問と同じ問いです。そしてDiekema医師も全く同じテクニックで逃げているのです。彼もまた、「だってアシュリーは通常の意味での大人には生涯なれないんですよ」と知的レベルを持ち出し、それを煙幕にさらに問題を摩り替えて問いをはぐらかすのです。

このブログで検証してきた仮説に立って考えれば、「両親の挙げる理由が行為の侵襲性を正当化するか」との問いに、Diekema医師は答えることができません。なぜなら彼はその答えが本当はNOであることを最初から知っていたからです。それを承知の上で実際にやってしまった以上、彼は口が裂けても今さらNOだというわけにはいかない。だから問題を摩り替えて問いから逃げるしかなかった。

しかし、Dr.Hughesはこの事件の関係者ではありません。それなのに、なぜこれほど強引な問題のすり替えをしてまで擁護しているのか……? 不思議です。
2007.08.03 / Top↑