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英国で45歳の多発性硬化症の女性 Debbie Purdyさんが
自殺幇助を禁じる法律の明確化を求めています。

Purdyさん自身は車椅子生活ながら
パラシュートで飛んでみたいなど前向きに生きていて
今のところ死ぬことを考えているわけではありませんが、

今後もう自殺したいと考える時が来たらスイスのthe Dignitas Clinicへ行き、
医師の幇助を受けて自殺すると決めています。

彼女の気がかりは、いざその時がきたら
自分でそれを実行するだけの体力と機能が残っていないのではないだろうということ。

その際に夫が彼女の行為を援助することが許されるのか、
例えば夫が彼女のためにDignitasに予約の電話をかけるのはどうなのか、
車椅子を押してスイスへの飛行機に乗せることは?

英国では1961年の自殺法によって
他者の自殺を助けたり、そそのかす、相談に乗る、斡旋するなどの行為は
懲役14年の違法行為とされています。

検察局長に明白なガイドラインを出すよう求めるPurdyさんの訴えを
このほど高等裁判所は認め、10月に審理が行われるとのこと。

これまでのところDignitasで自殺した英国人は92人で
それを援助した身内が罪に問われたことはないそうです。



同紙コラムニストの書いた論説は以下。
Why we must not make the ‘right to die’ legal
By Alasdair Palmer
The Telegraph, June 8, 2008

Palmer氏はPurdyさんの苦境に同情しつつも、
積極的安楽死の法制化を説く人々は法律が非力な弱者を守っていないと訴えるが、
現実に法的に認められれば彼らは自ら死を選ぶ圧力を受けることになるのであり、
現在の法は弱者を守っているのだ、と主張。


Wesley Smith もブログでこの問題を取り上げており、

Debby Purdy: The Next Assisted Suicide Round in the UK
Secondhand Smoke( Wesley Smith Blog), June 9, 2008

法の明確化を求めるPurdyさんの訴えが高等裁判所で認められるということそのものが
英国社会で尊厳死を容認しようとの世論が高まっていることの現われだと危惧。

上記Alasdair Palmerの論説を引用して、
Purdyさんのような個々の事例のもつ情緒的な影響力にもめげずに
反対の声を上げ続けることの大切さを訴えています。

Wesley Smith は”Ashley療法”論争でも、非常に初期に
「議論は情緒を廃して。独立機関が事実関係の調査を」と的確に訴えました。


なお当ブログのthe Dignitas Clinic 関連エントリーは以下
精神障害者への自殺幇助可能に(スイス)
尊厳死協会の世界連盟
2008.06.27 / Top↑
かんしゃくを起こして騒いだ自閉症児(2才半)と母親が
すでに滑走路に向かっていた国内便の飛行機から降ろされ、
American Eagle社の対応を巡って、賛否両論がおきています。

Autistic toddler removed from plane
The Chicago Tribune, June 25, 2008

母親のインタビュー・ビデオがこちらABCニュースに。

記事内容とお母さんのインタビューからすると、
たまたま席が最前列だったために
オモチャなど沈静グッズの入ったバッグを持っていかれてしまったこと、
シートベルトをきつく締めたり、何度も引っ張って確かめたり、締めなおしにきたり、
感覚処理の問題へのスチュワーデスの無理解や
パニックし始めてからも怒鳴りつけて黙らせようとする態度が
事態をさらに悪化させ、母親の焦りを招き、それがまた本人の不安を助長したことなど、

どこかで何かがちょっと違っていたら起こらなかったかもしれないのだけれど
一つ一つが悪い連環として作用しあってしまい、
最後には席からずり落ちた子どもが通路に寝転んで暴れるに至った模様。

パイロットが
「機内に対処不能な(uncontrollable)親子がいるのでターミナルに引き返す」と
アナウンスをしたというのも、もう少し配慮のある表現はなかったのかなぁ。

その事態が続いている間の母親の気持ちを想像すると本当に気の毒で、
なんだかトラウマになりそうだ。

インタビューで母親が
「もうちょっと理解がある対応をしてもらえれば、起こらなかったこと」
と言っているのが状況を言い当てているような気もする一方、

バッグを渡す時に沈静グッズだけは取り出しておくとか、
予め子どもの障害について説明しておくなど、
母親の方ももう少し丁寧な対処ができていたような気がしないでもない。


一番気になるのは、こういう問題が起こると、すぐに
発達障害のある子どもを飛行機に乗せることそのものが是か非かみたいな
白か黒かのバッシングコメントが寄せられてくること。

「こういう子は飛行機に乗るな、車で移動しろ」とか
「大人しく座っていられない子どもは降ろされて当然」という声が起こってくるのだけど、
ある事態が出来するには、その過程というものがあるのだということが
そういうやり取りからは、いつもすっぽり抜け落ちてしまう。

ある日ある時ある特定の状況下で、ある特定の親子と
その時たまたま関ってしまった、ある特定の人物との相互作用の中で起きたことであり、
しかも一時に最悪の事態に至ったのではなく、
1つが起こって、それへの対応が次の事態を招き、というふうに、
連関と段階を経て起こっていったことだということを
もっと丁寧に考えたほうがいいんじゃないでしょうか。

接遇が職務の一部に含まれる職種の人たちには
発達障害のある人たちの特性や対処の仕方について
もっと知識を持ってもらうことも必要だろうし、

(アメリカのスチュワーデスさんって、大人でも怖い感じを受ける時がありません?)

親の方も予め子どもに障害があることを航空会社に伝えて、
起こりうる状況や対応における注意点など理解を求める努力が必要なのかもしれないし。


自閉症に関する問題をテーマにしているブログ
Autism Vox が、この問題を取り上げています。

The Very Unfriendly Skies
By Kristina Chew, PhD
June 25, 2008

ここはAshley事件の際にも素早く反応したブログの1つでしたが、
昨日当ブログで取り上げた障害児人形についても以下のエントリーがありました。
ただ、今のところ開きにくくなっているようです。



【追記】
6月14日にも中国でも有名女優の子どもが飛行機に搭乗を拒否され、
航空会社を告発するという事件が起こっていました。



2008.06.27 / Top↑