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フレックス勤務を要求する権利を通じた英国の子育て支援について書いたばかりの今日、
日本のニュースにこんなのがあった。



働く女性の子育て時間を確保するために、
労働者が短時間勤務か残業免除を選択できる制度を企業に義務付ける法整備
となっているのですが、

新聞がこんな曖昧なニュースの書き方をして、いいんかな。

短時間勤務か残業免除かを選択できるのは母親だけに限定されるのか、
それとも
「労働者」というからには親の性別は問わないのだけど、
この記事を書いた記者の個人的な“常識”によって
あたかも、この制度が働く「女性」だけの子育て時間を確保するものであるかのような
表現が使われてしまっただけなのか。

もしも、この制度が記事タイトルどおりに母親に限って適用になるものだとしたら、
子育ては母親の仕事であり、父親は子育てについては補佐役に過ぎないと
国が公式に認定したってことでしょうか?

そうだとしたら、さすが「女性は子どもを産む機械」だと厚労相が平気で言ってのける国。

「子育て支援とは、すなわち母親支援であり働く女性の支援である」という
その考え方そのものが子育てしにくい社会を作っている元凶なのだけど、
わっからないかなぁ……。

この記事だけでは
国がお粗末なのか、読売新聞がお粗末なのか、まだ分かりませんが。
2008.06.12 / Top↑
6月10日に、英国の新しい介護者戦略が発表されました。


フル・テキスト、サマリー、保健省と労働・年金省それぞれの影響予測が
上記からダウンロードできます。

長文なので、まだちゃんと読んでいませんが、
中長期の介護者戦略に2億5500万ポンドの予算を組み、
主な柱としては

・介護者の短期のレスパイト
・介護者の就労支援
・若年介護者支援
・介護者の健康チェック推進
・家庭医に対する介護者認識・支援の研修
・介護者支援を担う専門職の養成
・NHSにおける介護者支援見直しを推進する職員の養成

      ――――――

英国では1995年にのCarers Act(介護者法)が制定され
その後2004年の改正まで、何度かに渡って同法が改正されて
介護者自身に介護者支援の必要性に関するアセスメントを受ける権利、
健康に自分の生活を送るための支援を受ける権利を認めてきました。

また97年に誕生した現在の労働党政権は
99年に「全国介護者戦略」を策定して介護者への支援強化を打ち出しています。

ここ数年は公的な介護サービスが財政的に逼迫しつつあるという事情からも
介護者支援には政府も特に力を入れる必要に迫られており、
去年2月には「介護者のためのニューディール」政策として
今後の方針の骨格を発表。

その一貫として「全国介護者戦略」の見直しが行われることとなり、
去年は介護者らが直接アイディアや意見を書き込める「アイディアの木」を保健省のHPに設けたり、
全国各地で介護者や関係者から直接意見を聴取する会を開くなどして
準備が行われていたものです。



New Deal for Carersの詳細は保健省の当該サイトに。
去年介護者から汲み上げた意見に関する暫定報告(2007年11月)も
New Dear for Carers – your voice counted のコーナーでダウンロードできます。
2008.06.12 / Top↑
6月と言えば英国では介護者週間(Cares Week)の季節。

14回目を迎える今年も
9日から15日までCares Week 2008が開催されています。
Carers UK, Counsel and Care, Crossroads Caring for Carers など10のチャリティが共催。

Cares Week 2008
GM YV, June 10, 2008


期間中には、
こうしたチャリティが介護者向けの企画や、介護者支援を訴えるイベントを企画するほか、
地域でグループや個人がイベントを独自に企画して参加することができます。
メディアでもこの時期には介護者支援に焦点を合わせた報道が増えます。

また、介護者週間では、毎年介護者に大規模なアンケート調査を行い、
この時期にその結果が公表されるのが恒例なのですが、
今年の調査で浮き彫りになった介護者の実態としては、

・ほとんどの介護者が介護負担のために体調を崩したり、不安を感じたり、疲れ果てたりしているのに、回答者の実に95%がその事実を常に隠している。

・自分の体調が悪いことから“常時”目を逸らせている介護者は19%。

・4人に1人の介護者が日々の介護をこなしていくことが自分には無理だと感じている。

・時々こなしていけないと感じることがある介護者は64%、ほぼ3人に2人。

・71%の介護者がこの1年間に最低1週間の“休み”も介護から解放される自由時間も持てなかったと回答。

・仕事を持って働きつつ介護を担っている人の5人に3人が、介護者役割に時間を使うだけのために年休をとった。

Cares Week に参加しているチャリティのサイトでこの調査報告のタイトルは
「病気なんかしていられない」。

こうした実態は、おそらく日本の介護者でも変わらないのではないでしょうか。

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英米の介護関連のニュースを眺めていると、いつも目を引かれるのが
介護労働が賃金換算されていること。

例えば英国では
家族や友人などによる無償介護労働は2006年には879億ポンドと換算されていて、
これは同じく2006年のNHS全体の予算820億ポンドを上回っています。
(CaresUKの以来でリーズ大学の研究チームが行った調査)

「自分たちが介護を担っていることによって
政府はこれだけのお金を節約できているのだ」というトーンで
こうした金額が引っ張り出されてくるわけです。

「介護費用が嵩んで困る」と常に言われ続け、脅され続けて
どこかで「じゃぁ、家族で頑張るしかないのか」と内向させられる日本の介護者とは
ずいぶん意識に差があるなぁ……といつも感じ入るのですが、

これだけの金額を政府に節約させてあげているのだから、
逆に介護者が心身の健康を損なって介護を担えなくなれば、
それだけ経済への打撃も大きいんだぞ、と
介護者支援の必要を訴える英国の介護者チャリティの言い分には
とても説得力がある、と思う。


ちなみに米国の介護者労働を賃金換算したものは
去年の6月23日から28日までUSA Todayが組んだ大型介護特集記事での情報によると、
06年では約3500億ドルで、こちらも、ほぼ同年のメディケア支出に相当する額。

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日本にもこういう計算はあるのかな、と思って検索してみたら、
かなり古いですが以下のような文書があって、
「極めて不十分な基礎データに基づく不完全なもの」だそうですが、
日本の家族介護の貨幣評価額は1兆6814億円で、
市場介護サービスの約6割だとのこと。
ただ、これ、介護保険ができたばかりの段階でのデータだし、
また、お上の換算だから、ちょっとタチが違って
そもそもの目的が日本国全体で介護と保育にかかった費用の合算にあるみたい。

介護・保育サテライト勘定の研究結果
経済企画庁経済研究所 平成12年6月27日


こんなのもありました。未完ですが、面白そう。

介護の社会的総費用の試算(仮題)
阪南大学経済学部 下地真樹 2007
2008.06.12 / Top↑
英国では2002年の雇用法によって2003年から
6歳以下の子どもと18歳以下の障害児の親には
フレックスな勤務を求める権利が認められています。

明確な業務上の理由があれば雇用主はその要求を断ることもできますが、
理由を書面で通知しなければならないなど、制約がいくつかあり、
基本的には極力認める方向で努力しましょう、という含みの制度。

この制度の対象を16歳までの子どもがいる人まで拡大する方針を
Brown政権が打ち出しました。

現行の制度では、フレックスな働き方を要求した人の90%以上が
その要求を認められているものの、
それがさらに16歳の子どもの親にまでということになると、
やりくりがつかなくなると中小企業からは反対する声が上がっているとのこと。


保守党は18歳までの子どもを持つすべての人に拡大しろと言っていたらしいし、

最近のニュースを見ていると英国では若者の荒れ方がひどくて社会問題化しており、
そういうことも背景にあるのかなぁ……という気もしますが、

一方、2006年にできたWork and Family Act 2006 という法律によって
2007年4月からはフレックスの勤務を求める権利が
大人の介護をしている人にも認められており、
一連の子育て支援、介護者支援も進められています。

子どもを産み育てにくい社会はそのままにしておいて、
子どもを産んでくれたら、ちょっとばかりのゼニなら出してあげるのに
それでも産まないのは女が悪い、といわんばかりのどこかの国も、
もうちょっと現実的な施策を打ち出して欲しい。


英国の介護者支援チャリティCares UKのFlexible Working関連ページはこちら


【日本語の関連情報】

英国における雇用政策と家庭政策 働き方の見直しと子育て環境整備によるワーク・ライフ・バランス(生活と仕事の両立)の推進
内閣府男女共同参画局 男女共同参画分析官 矢島洋子
2005年4月15日
(フレックス勤務については P.9-15 にあります。)

英国のワークライフバランスから学ぶこと
みずほ情報総研 主席研究員 藤森克彦
『労働調査』2007年5月
2008.06.12 / Top↑