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90年代に自殺マシーンを作り130人もの自殺を幇助し、
有罪判決を受けて2008年に出獄したDr. DeathことDr. Kevorkianが
患者の苦しみに共感し「死の自己決定権」を求めて闘う姿を描く映画
You Don’t Know Jack(アル・パチーノ主演)が24日に公開とあって、
英語圏のメディアがしきりにこの映画を取り上げていますが、

幹部4人が闇の自殺幇助で逮捕され現在裁判が進行中のFinal Exit Networkが
リリースを出して「みんなでこの映画を見て死の自己決定権を考えよう」と
呼びかけています。

(FENについては文末にリンク。
FEN事件の概要をまとめた「介護保険情報」の記事はこちら

医学の進歩のおかげで、
死病の診断を受けているにもかかわらずターミナルではないとされる患者が
最も辛い目に遭わなければならない状況になっている、

何が何でも患者を生かそうとする医師によって
引き伸ばされているのは命ではなく、むしろ死が引き伸ばされているのだとして、

「無力感と絶え間のない苦痛、社会的孤立と精神的な荒廃という悪夢のうちに
命が永続させられることは、拷問に等しい」と。



ちょうど、昨日、
第4回宗教と生命倫理シンポジウム
「尊厳死法制化の問題点を考える」の報告書を読んで
(3月2日のエントリーで一部について書いています)

日本尊厳死協会理事長の井形昭弘氏の似たような発言に
赤線を引っ張ったところだった。

我が国は世界一の長寿国になりました。……(略)……健康寿命と寿命が一致すればピンピンコロリになりますが、それは非常にまれです。多くの場合健康寿命と本当の寿命の間には数年のギャップがあって、その間に病気になり、苦しみ、絶望し、そして最後に死が待っています。

無力感と絶え間のない苦痛と社会的孤立と精神的荒廃……。
病気になり、苦しみ、絶望し、そして最後に死……。

ピンピンコロリ以外の死に方は、苦しみと絶望ですよ……。

これ、私たちを、脅している……んでは?

それに、ピンピンコロリを持ち出して
その対極に「病気、苦しみ、絶望、死」を置いてみせるということは
やっぱり尊厳死は 「老いは自己責任で予防しろ」というメッセージとセットになっている……。

   ―――――――

日本尊厳死協会って、こんなふうに国民を脅してかかるんだぁ……とショックを受けて、、
ふと思い出したこと。

数ヶ月前にNHKで、膀胱がんを患う立花隆氏が
世界中の癌治療研究の最先端を次々に取材して歩く番組があった。
取材が進むにつれ、治療法が進めば癌の方がさらに進化していく実態と直面し、
結局、科学がいずれ癌に勝利するという希望を発見できずに帰ってきた立花氏が
最後に訪れたのは、鳥取県の「野の花診療所」。
徳永進医師のホスピスだった。

90年代の脳死・臓器移植議論の後で転向して
すっかり科学とテクノの信奉者になっていた立花氏が
自分が癌患者となり、科学はおそらく癌を制圧しきれないという事実を受け入れて
番組の最後に語った言葉がとても印象的だった。

立花氏は「野の花診療所」へ行って分かったのだという。
「人間には、ちゃんと死んでいく力が備わっている」のだということを。




2010.04.22 / Top↑
去年からカナダ議会に提出されていた
自殺幇助法案(Francine Lalonde議員提出)は20日夜、否決されました。

228 対 59 の大差。

投票後、5人の議員が、
「法案を廃案にして終わるのではなく
この問題について対策を考えなければならない」
「ウツ状態で生きる気力を無くしている人に必要なのは
取り返しのつかない簡単解決を勧めることではない」と語り、
今後、緩和ケアや高齢者ケアについて研究する委員会を立ち上げて
党派を超えて参加を呼び掛けていく、と表明。



【追記】
もうちょっと詳しい記事。
Lalonde議員は癌の闘病生活からターミナルな人への自殺幇助を考えたのだとか。



2010.04.22 / Top↑