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ホルムアルデヒドといえば、
まずは真っ先に宮部みゆきの「名もなき毒」を思い出すけれど、

よく考えてみたら、2010年に以下のエントリーを書いているんだった ↓
大統領がんパネルが「化学物質はやっぱりヤバい」(米)(2010/5/10)


今回のNYTの記事も上記と同じくNicholas Kristofが書いたものなのだけれど、
なにしろタイトルが「がんロビー」。

最初のセンテンスが
「発がん物質にワシントンで活動するロビー要員がいることを
誰が知っていただろうか」であるように、

単に化学物質の発がん性を指摘する記事ではなく、
こうした政府の科学者らによって発がん物質が公表される動きに対して
化学業界がロビー活動によって制約を加えようと画策していることへの批判。

特に化学業界の危機感をあおったのは、

米国国立衛生研究所NIHが2年ごとに出している発がん物質に関する報告書で
それまで発がん性の可能性ありとしてきたホルムアルデヒドについて
2011年に発がん物質であると断定したことと、

その他にも、
スチレンにも発がん性の可能性が高いと指摘したこと。

そこで Exxon Mobil, Dow, BASF, DuPontなどのBig Chem企業が
発がん物質に関する報告書の予算を削減させようと
下院議会に対してロビー活動を行っている、という。

これに対して、先月76人の科学者らが会員議会に手紙を書いて
WHOでもホルムアルデヒドは発がん物質のリストに加えているし、
スチレンも発がん性の可能性がある物質とされているので、
この度の報告書は国際的な科学的コンセンサスに沿ったものだと説いた。

ジョージ・ワシントン大学の公衆衛生学部の学部長は
「自由市場は消費者が情報を手に入れることで機能するというのに
彼らはその情報をつぶそうとしている」

Kristofは

より大きな問題は、連邦政府が国民の健康の番犬となるべきか、それとも企業のポチとなるべきか、だ。

はっきりさせておこう。毒性のある化学物質については不透明なところはあるから、発がん物質に関する報告書を批判することになんら問題はない。しかし、報告書の予算をなきものとしようとするこの試みは、科学と民主主義の双方への侮蔑である。


the Cancer Lobby
Nicholas D. Kristof
NYT, October 6, 2012
2012.10.08 / Top↑
とても評価の高い本で、
確かに感動も味わいもないわけではないのだけれど、
ずっと、喉に引っかかった小骨のような違和感があった。

それは、著者が介護現場でどういう働き方をしているのかが
最後まできっちり掴めないことと関係しているような気がする。

たとえば著者は、本書の後半部分で、
一時的にショートステイの遅番勤務になった期間があって、
その間には介護職員としての業務をこなすので精いっぱいになり、
驚くことができなくなった、といった体験について書いた後で、

以下のように書いている。

 その後、職員の人数も充実してきて、私は再び介護の仕事の一方で、利用者へ聞き書きをする時間をつくれるようになった。
(p.217)

他の個所には、
「補助をしながら」という表現や「フリーの相談員として」という表現もある。

あとがきには以下のようにも書かれている。

 本書を閉じるにあたって、何よりもそうして私を育ててくれている利用者たちに感謝したい。また、私のわがままをあたたかく見守ってくれ、応援してくれる職場の上司や同僚たちにも、心から感謝している。
(p.232)


著者は介護現場に
いったい単に「わがままな介護職員として」いるのか、
「介護現場をフィールドに選んだ民族研究者として」いるのか、
「民族研究者ゆえに一定の特権を認められた(わがままな?)介護職員として」いるのか、
その辺りのことがよくわからない。

著者はいったい、
どのようないきさつから、どのような手順を踏み、
どのような職場での取り決めによって働いているのか。

こうした聞き書きの実践について本を書いて報告するのであれば、
やはりその辺りは明確にすべきだったのではないかなぁ。

この「喉に引っかかった魚の骨」的な違和感は、
この本に描かれた聞き書きの体験から著者が提唱している「介護民俗学」とは、
具体的に以下のいずれのことなのか、という疑問にも通じていく。

・民俗学を学び、民俗学の聞き書きの素養のある若い人たちが
正規の介護職員として働くことが、高齢者の良いケアに繋がる。

・民俗学を学んだ若い人たちが
著者自身と同じ「わがままな介護職員」として働けるような介護現場のアレンジがあれば
高齢者にとっても民俗学者にとっても利益のあるウイン・ウインの関係になる。

・高齢者介護のアプローチの一つとして
民族学者または民俗学の素養のある人による聞き書きを導入することが高齢者の良いケアに繋がる。
(でも、この場合かならずしも「介護職員になる」必要はないのでは?)

・民俗学者または民俗学を学ぶ学生が、介護現場を聞き書きのフィールドに加える。
(この場合も、彼らが介護職員として働く必要はないのでは?)


私には、著者が提唱する「介護民俗学」というのは、
本書の場面によって、上の4つが都合よく使い分けられているような印象があった。
それが、読んでいてどこか腰の定まらない落ち着きのなさに繋がっていたようでもある。

例えば、著者は以下のように書くなどして、
介護現場での聞き書きは、民俗学者の調査する者としての権力性を逆転させると主張する。

だから聞き書きの場では、アカデミックな知識はあっても、実際の経験やそれに基づく民族的知識を持っていない調査者と、それらを豊富に身に付けていて、それについての記憶を語ってくれる高齢の話者(かつて、民族学者の多くが話者のことを「古老」と呼んでいたことにも関係するか)との関係は、話者が調査者に対して圧倒的に優位な立場にあると言えるだろう。第三章で引用した野本寛一の言葉通り(九八頁)、調査者は、まさに話者に「教えを受ける」。それが聞き書きなのである。
(p.155)


その考えに基づいて、「介護民俗学」は
上野千鶴子さんがいうような介護する者と介護される者の力関係の非対称性も
逆転させるダイナミズムと捉えることができる、とも書いている。

もちろん、そこには「それがケアの現場で行われるという意味では、
内包される暴力性から完全に免れることは不可能である」との気付きも
ないわけではないのだけれど、それはすぐさま、

「ケアの場での実践は、常にそうしたジレンマを抱えていくことなのである。」(p.223)と、
介護の場につきもののジレンマとして片付けられてしまう。

でも、ここで生じているジレンマとは、
介護の場そのものに必然的に内包されるジレンマではなく、
介護民俗学が介護現場に持ち込まれるゆえの別のジレンマであるはずなのだけれど。

なにか、著者のモノの言い方には、こうした、
介護民俗学にとって都合のよいことだけに焦点を当てて書きつつ、
介護民俗学にとって都合の悪いことは介護の問題に落としこんで終わるような、
どこかご都合主義的なところがあるんじゃなかろうか。


 しかし、介護民俗学での聞き書きは、利用者のこころや状態の変化を目的とはしない(というより変化を指標にしたらおそらく「聞き書きは効果なし」という結果しか得られないだろう)。聞き書きでは、社会や時代、そしてそこに生きてきた人間の暮らしを知りたいという絶え間ない学問的好奇心と探求心により利用者の語りにストレートに向き合うのである。
(p.168)

と、民俗学者の「学問的好奇心と探求心」について正直に書く著者は、

「手がかかる」と思われていた認知症の利用者が
いきなり歌を歌ったことに驚いた場面に続いて、同じ正直さで以下のようにも書く。

 夕食の時間が始まっても私の好奇心はもう抑えることができなかった。私は食事介助をしながら、のぶゑさんにしつこいくらい質問をした。
(p.216)


でも、他の場所で、
夕食の食事介助は一人の職員が複数の人の介助をする、と書かれているし、
娘の施設でもそうだから、介護現場の夕食の食事介助場面が、
決して1対1で介助できるほどの余裕がないことは容易に想像がつく。

そうすると、著者は
夕食の時間が始まって、複数の利用者の「食事介助をしながら」
「のぶゑさん(一人に)しつこいくらいに質問をした」ということなのだろうか……?

それは果たして「わがまま」で済むことなのだろうか。


民族研究者としての抑えがたい「学問的好奇心と探求心」を持った人が
介護職として介護現場で働くということの中にもあるはずの暴力性と、
著者は本当にきちんと誠実に向き合っているだろうか。

ずっと引きずった違和感は、
以下の個所に一番象徴的に表れているように私には思えた。

 もちろん、何人かの利用者からは、「なんでそんなに一生懸命メモをとっているの?」と尋ねられることもあった。が、それに対して「せっかく面白い話を聞いていても、私、メモをとらなかったらすぐに忘れてしまうんですよ」と正直に答えると、その方々も、「そうだよね、私もどこかに書いとかなきゃすぐに忘れちゃうもんね」と同調してくださったし、なかには、「そんなに一生懸命聞いてくれる人はこれまでいなかったよ。私の人生、ちゃんと書きとめて小説にでもしたら、すごく面白いよ」といって、毎回実に楽しそうにご自身の人生を振り返ってお話をしてくれている方もいる。
(p.144)


「すぐに忘れるからメモをとっている」という答えは
本当に「正直な答え」なのだろうか。

ここまで書いてきて、
「喉に引っかかった小骨」の正体がやっとはっきりした。

「利用者」さんたちは
「忘れるから」とメモをとりつつ自分の話を熱心に聞いてくれる介護職員が、
実は「学問的好奇心と探求心」から自分の語りに「ストレートに向き合って」いる
民族研究者であることについて、説明され知らされていたんだろうか?


言わんとしていることは分からないでもないのだけれど、
なにか一番大切な根っこのところ辺りで釈然としないものが残る本だった。


『驚きの介護民俗学』
六車由美 医学書院 2012
2012.10.08 / Top↑

家族や親友の幇助自殺につきそった人には
PTSDが高率で見られたり、喪の悲しみが困難なもの(complicated)になっている、との
興味深い調査結果が報告されている。

Death by request in Switzerland: Posttraumatic stress disorder and complicated grief after witnessing assisted suicide
Wagner B, Muller J. Maerchker A.
Eur Psychiatry 2012 Oct;27(7):542-6.


以下、アブストラクトから。

自殺幇助が容認されている国はいくつかあるものの
自殺幇助を目撃した家族や近しい友人のメンタルヘルスへの影響を調べた研究はほとんどないことから

2007年12月に行われた自殺幇助の場に居合わせた家族や親友85人に調査を行ったところ、

13%が完全なPTSDの基準を満たし、
6.5%が境界PTSDの基準を満たし、
4.9%が困難な喪の悲しみの基準を満たした。

うつ病は16%に
不安は6%に見られた。

結論は以下で、

A higher prevalence of PTSD and depression was found in the present sample than has been reported for the Swiss population in general. However, the prevalence of complicated grief in the sample was comparable to that reported for the general Swiss population. Therefore, although there seemed to be no complications in the grief process, about 20% of respondents experienced full or subthreshold PTSD related to the loss of a close person through assisted suicide.


困難な喪の悲しみはスイス国民一般と同率だが、
PTSDとうつ病は自殺幇助で身近な人を失った経験のある人の方が一般よりも多い。
2012.10.08 / Top↑
以下のエントリーの続報。

カナダBC州最高裁からPAS禁止に違憲判決(2012/6/18)



医師による自殺幇助の合法化を求めて集団訴訟を起こし、
6月にカナダのBC州最高裁から特例的に医師による自殺幇助を受ける権利を認められていた
ALS患者のGloria Taylorさん(64)が、腸に穴があいたことによる感染症で急死。

医師による自殺幇助を求める間もない、突然の死だったという。

支援者は
「グロリアはずっと望んでいた死を迎えました。
穏やかな死でした。苦しむことなく、友人と家族に囲まれて死ぬことができました」

6月の最高裁判決はBC州政府に対して1年以内の法改正を求めたが、
政府が上訴している。

Taylorさんと一緒に訴訟を起こした BC Civil Liberties Associationは
遺志をついで裁判を続けていく、と。


http://www.theglobeandmail.com/news/british-columbia/assisted-suicide-activist-gloria-taylor-dies-from-infection-in-bc/article4593512/
http://www.news1130.com/news/local/article/409201--gloria-taylor-okanagan-woman-with-als-dies-of-infection
http://www2.macleans.ca/2012/10/05/b-c-woman-behind-challenge-of-canadas-ban-on-assisted-suicide-dies/
2012.10.08 / Top↑
ベルギーで2005年から2009年にかけて「安楽死後臓器提供」が4例行われたことについては
これまでに以下のエントリーで取り上げてきました ↓

ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
ベルギーの医師らが「安楽死後臓器提供」を学会発表、既にプロトコルまで(2011/1/26)
ベルギーの「安楽死後臓器提供」、やっぱり「無益な治療」論がチラついている?(2011/2/7)


10月1日にシノドスに寄稿した
「安楽死や自殺幇助が合法化された国々で起こっていること」でも
このことについて書いたばかりですが、

今日のBioEdgeによれば、

最近になってブリュッセルでのカンファで
移植専門医のDirk Van Raemdonck医師が報告したところでは、
その後の3年間にさらに5例が行われて、全部で9例になったとのこと。

また同医師は、
ベルギーは安楽死後臓器提供では「世界のリーダー」だと語り、
他にはオランダで1度行われたことがあるだけだ、と。

多くの安楽死者はガンの終末期という人であるために
死後に臓器提供できる人は少なく、
安楽死ドナーの大半は筋肉神経障害者。

なお、2011年のベルギーでの安楽死者は1100人。

Belgium pioneers organ donation from euthanased patients
Bio Edge, October 5, 2012



その他、ベルギーの安楽死関連エントリー ↓

ベルギーでは2002年の合法化以来2700人が幇助自殺(2009/4/4)
幇助自殺が急増し全死者数の2%にも(ベルギー)(2009/9/11)
ベルギーにおける安楽死、自殺ほう助の実態調査(2010/5/19)
ベルギーで「知的障害者、子どもと認知症患者にも安楽死を求める権利を」(2012/5/5)
「安楽死後臓器提供」のベルギーで、今度は囚人に安楽死(2012/9/15)
2012.10.08 / Top↑
生活書院のHPに、重い自閉症で知的障害のある37歳男性の母親、福井公子さんによるWeb連載「障害のある子の親である私たち――その解き放ちのために」がスタート。:なかなか言葉にならない微妙なところを、ていねいに語ってくださっていて、ずしりと響きます。障害のある子どもを持つ母親たちが、決してきれいなだけじゃない本当の思いを、少しずつ語り始めようとしている。やっと……。嬉しい。特に「向精神薬」の最後の2行「私は、今日もまた息子に向精神薬を手渡すでしょう。そのことへの痛みと無縁でいないこと。それが息子のためにできることなのかもしれません」に共感。“アシュリー療法”の背景にあるパーソン論と結びついた合理主義や、「科学とテクノで簡単解決バンザイ文化」とその利権構造は、その「痛み」を「手放せ」と親や介護者にささやきかけてくるし、では、どこで線を引けるのかということを考えると、親と子ども、介護する者とされる者の権利の相克は本当にどこまでもヒリヒリと痛く、悩ましいのではあるけれど。
http://seikatsushoin.com/web/fukui01.html

カナダ、ケベック州の新政府、自殺幇助合法化めざす、と。:ケベック州の攻防も長い。その他の国や地域では医師会はたいてい反対のスタンスをとっているのだけど、ケベックの医師会は合法化推進の立場。
http://www.cjad.com/CJADLocalNews/entry.aspx?BlogEntryID=10446337

【ケベックのPAS合法化議論関連エントリー】
カナダ・ケベック州医師会が自殺幇助合法化を提言(2009/7/17)
スコットランド、加・ケベック州で自殺幇助について意見聴取(2010/9/8)
ケベックの意見聴取、自殺幇助合法化支持は3割のみ(2011/12/29)
ケベックの尊厳死委員会から24の提言: メディアは「PAS合法化を提言」と(2012/3/24)

【カナダのPAS合法化議論関連エントリー】
カナダの議会でも自殺幇助合法化法案、9月に審議(2009/7/10)
図書館がDr. Death ワークショップへの場所提供を拒否(カナダ)(2009/9/24)
カナダの議会で自殺幇助合法化法案が審議入り(2009/10/2)
自殺幇助合法化法案が出ているカナダで「終末期の意思決定」検討する専門家委員会(2009/11/7)
カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)
カナダの法学者「自殺幇助合法化は緩和ケアが平等に保障されてから」(2011/2/5)
カナダで自殺幇助合法化を求め市民団体が訴訟(2011/4/27)
カナダ王立協会の終末期医療専門家委員会が「自殺幇助を合法化せよ」(2011/11/16)


英国の映画監督Michael Winnerが余命1年半を宣告され、ディグニタスへ行って自殺するつもり、と。
http://www.standard.co.uk/news/celebritynews/terminally-ill-michael-winner-says-he-is-considering-suicide-at-swiss-clinic-8197233.html

人間の寿命が延びて新たな課題となっている、と国連。:それでもTH二ストたちは「フローフシ」を求める。あ、そうか、富裕層はそれで経済を回してくれるから「フローフシ」でよくて、貧困層の長生きの方が「課題」なのか。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/250989.php

抗がん剤が高価になるのは、ビッグ・ファーマの事実上の独占で自由市場になっていないため、との指摘。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250910.php

日本。出生前検査の新指針年内作成へ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121003/k10015472721000.html

英国NHSの民営化が加速している。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/03/private-contracts-signed-nhs-privatisation

グレート・バリア・リーフのサンゴ礁、1985年の半分に。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/great-barrier-reef-has-lost-half-its-corals-since-1985-new-study-says/2012/10/01/c733025c-0bda-11e2-bb5e-492c0d30bff6_story.html
2012.10.08 / Top↑
カンザスのChildren’s Mercy 病院の生命倫理センターが、
小児生命倫理ディベイトをシリーズで。

ここは、私が大好きなJohn Lantos医師がいるところ。

登場人物の顔ぶれも、当ブログでおなじみのLainie Friedman Rossや
Annie Janvier,  Robert D. Truog,  Thadeus Mason Pope など。

テーマは以下で、
いずれも小児科医療の生命倫理の大問題ばかりです。

「周産期安楽死はいったい道徳的に許容されうるのか?」
「広範な新生児スクリーニングは子どもにとって良いのか?」
「一方的なDNR指定よりもスロー・コードの方が望ましい場合もあるのでは?」
「“医学的無益”概念は臨床医の助けになっているのか?」
「成人後に発病する病気の遺伝子診断、親に許されるべきか?」

http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/10/pediatric-bioethics-debate-series.html


Lantos先生、
シアトルこども病院生命倫理カンファの向こうを張って、どうぞ頑張ってください。



【John Lantos関連エントリー】
Lantos医師「倫理委で何があったか誰にも分からない」(2010/1/29)
Lantosコメンタリー、Ashley事件の大デタラメを指摘(2010/2/17)
米小児科学会の女性器切除に関する指針撤回:Diekema医師の大チョンボ(2010/8/4): Lantos講演
米のNICUで治療停止による死亡例が増加(2011/7/11): Lantos論文
NICUでの生命維持差し控えは「違法行為の放置」(2011/7/14)
2012.10.08 / Top↑
8月22日の補遺で取り上げた以下の事件で、
被告のMirela Aionaeiに懲役3年の実刑判決。

英国でナーシング・ホームの介護者がシフトの際に(自分が)安眠できるよう、認知症の人6人に抗不眠薬、抗ウツ薬、向精神薬を飲ませて徘徊を防止していた、という事件。:職員個人がやると犯罪だけど、組織的にやるとまかり通ってしまうことの不思議……?
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9490019/Carer-drugged-elderly-so-she-could-sleep-on-duty-jury-hears.html


Carer jailed for drugging elderly patients
itv NEWS, October 4, 2012


22日の補遺では「介護者」としていますし、
多くの記事が「介護者」と書いていますが、
その後あちこちの記事を覗いてみたところ、
どうやら、この人は看護師。

この事件や周辺情報については
「介護保険情報」10月号(今月号です)の連載で取り上げて書いているので、
1ヶ月後くらいにこちらに全文掲載する予定です。


【関連エントリー】
佐野洋子「シズコさん」(2008/7/12)
認知症患者への不適切な抗精神病薬投与、教育・意識改革が必要(2009/4/17)
英国のアルツ患者ケアは過剰投与で「まるでビクトリア時代」(2009/6/5)
ナーシング・ホーム入所者に症状もICもなく精神病薬投与(2009/10/31)
不適切な抗精神病薬の投与、15万人の認知症患者に(英)(2009/11/15)
1人でTX州の総量をはるかに越える統合失調治療薬を処方する精神科医が野放し・・・・・・の不思議(2009/11/30)
2012.10.08 / Top↑
【お断り】
昨日からご訪問くださる方が増えているので、
初めて来てくださる方に――。

補遺の記事はタイトルやリード部分だけにざっと目を通して、
気になった記事をあくまでもメモ的に拾っておこうとするものです。

私の取りまとめは必ずしも正確とは限りませんので、
ご承知おきいただきますよう、よろしくお願いいたします。


              --------

ALSの夫Patric NorfolkさんをDignitasへ連れて行って死なせた女性が、医師による自殺幇助を禁じた英国の法律が夫から自宅の庭で死にたいという希望を奪った、と。Patricさんはうつ病の娘が自殺したことで生きる希望を失い、ディグニタスで「妻の腕に抱かれて死んだ」。
http://www.thisishullandeastriding.co.uk/Husband-died-wife-s-arms-assisted-suicide/story-17014401-detail/story.html
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2210668/His-wish-die-home-Fury-mother-watched-husband-die-months-daughters-suicide.html

英国で子どもの貧困が進み、これまで途上国の子どもの支援をもっぱらにしてきたチャリティ Save the Childrenが自国の子どもの貧困問題に取り組みを始めている。その名も、EAT, SLEEP, LEARN, PLAY!
http://www.savethechildren.org.uk/about-us/where-we-work/united-kingdom/eat-sleep-learn-play

そのSave the Childrenが貧困層の親子に向けてやっている学習支援の試み。FAST。ビデオもあります。親への啓発も含め。
http://www.savethechildren.org.uk/about-us/where-we-work/united-kingdom/fast

三井厚労相、生活保護見直しに言及。医療費無料の見直しについての発言。「厚労省の担当課が『医療費に自己負担を導入することは、必要な受診を抑制してしまう恐れがあることから、慎重に検討する必要がある』として、大臣の発言の取り消しをマスコミ各社に求める事態」
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20121002-00000048-jnn-soci

ビル・ゲイツが2018年までにポリオを撲滅する、と。いまだ根絶できていないのはパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアの3国。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/250869.php

東ロンドンの地方自治体が、試行的にアルツハイマー病の患者40人にGPS内臓のリストバンドを装着させ、衛星で追跡。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-19771279

中央アフリカのコンゴでこれまで未発見の致死性ウイルス発見。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/250869.php

英のカウンセリング・精神療法協会から、ゲイの人を「転換治療」するためのセラピーは非倫理的とする新たなガイドライン。socially inclusive, non-judgmental attitudes。これ、いい表現だな、と。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/01/conversion-therapy-gay-patients-unethical?CMP=EMCNEWEML1355

日本。イラク帰還隊員 25人自殺。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012092702000098.html
2012.10.08 / Top↑
拙いですが、
シノドス・ジャーナルに論考を書かせてもらいました。

タイトルは「安楽死や自殺幇助が合法化された国々で起こっていること」。

リンクを張ることができないようなので、よかったら、
シノドス・ジャーナルのサイトで読んでいただけると幸いです。



また、以前にお知らせした
「新版 海のいる風景 重症心身障害のある子どもの親であるということ」も
Amazonその他のサイトで購入可能となりました。

こちらもよろしくお願いいたします。
2012.10.08 / Top↑

元空軍兵士でナース・プラクティショナー、
元UNOSの移植コーディネーターのPatric McMahonさん(50)が

米国の病院職員に対して、まだ救命可能性がある患者について
UNOS(全米臓器配分ネットワーク)から「脳死」判定の圧力がかかっている、

ドナー登録しない患者の家族を説得するための
マーケッティングとセールスの専門家が「コーチ」として雇われている、
人数「割り当て」制まである、などと提訴。

訴状には4つの事例が告発されているという。

① 2011年9月に交通事故でNassau 大学メディカル・センターに搬送された19歳男性。
まだ呼吸をしようとしていたし脳の活動の様子は見られたが
UNOSからの圧力で医師らが脳死を判定。

電話会議(?)ではUNOSのディレクターが
「この人は死んでいるんだ。分かったか?」と発言した、とも。

家族が臓器提供に同意。

② 同じく2011年9月。
ブロンクスのSt. Barnabas 病院に入院した女性。

まだ生きている様子が見られたが、
女性がかつて腎臓移植を受けていた事実をUNOSの職員は
女性の娘に臓器提供への同意に向けて圧力をかける材料に使った。

McMahonさんは抗議し、セカンド・オピニオンを得ようとしたが、
神経科医は無視して脳死を判定した。

③ 2011年10月。
ブルックリンのKings County 病院に入院した男性。
脳の活動の様子は見られたという。

ここでもMcMahonさんの抗議は無視されて、
男性は脳死と判定され臓器が摘出された。

④ 2011年11月。
薬物のオーバードースでStaten 島大学病院に入院した女性。

脳死判定が行われて、臓器が摘出されようとする直前に
McMahonさんは女性の体がまだけいれんしているために
「マヒを起こす麻酔」がされていることに気付いたという。

McMahonさんが抗議すると、他のUNOS職員から病院職員に
「ささいなことを問題視して大騒ぎをする未熟なトラブル・メーカー」だと言われた、とのこと。
もともと異議申し立てをする職員として目立ってはいた。

さらに、去年11月4日にMcMahonさんはUNOSのCEOに
「脳死を宣告される患者の5人に1人は脳死宣告書が発行された時点で
脳活動の徴が見られる」と告げたところ、
「世の中そういうものだよ」との答えだったとのこと。

McMahonさんは抗議した4カ月後にクビになったという。

UNOSのスポークスウーマンは、この件について
訴状を見ていないとしながらも、脳死判定ができるのは医師のみだ、と言い、
割り当て制なんかありません、「バカバカしい」と。


Organ taken from patients that doctors were pressured to declare brain dead: suit
The New York Post, September 26, 2012


そういえばUNOSは、昨年、
以下のような驚くべき提言を行っていた ↓
 
UNOSが「心臓は動いていても“循環死後提供”で」「脊損やALSの人は特定ドナー候補に(2011/9/26)



【2011年の関連エントリー】
「“生きるに値する命”でも“与えるに値する命”なら死なせてもOK」と、Savulescuの相方が(2011/3/2)
WHOが「人為的DCDによる臓器提供を検討しよう」と(2011/7/19)
UNOSが「心臓は動いていても“循環死後提供”で」「脊損やALSの人は特定ドナー候補に」(2011/9/26)
「DCDで生命維持停止直後に脳波が変動」するから「丁寧なドナー・ケアのために麻酔を」という米国医療の“倫理”(2011/11/24)
「丁寧なドナー・ケア」は医療職の抵抗感をなくしてDCDをさらに推進するため?(2011/11/24)

これまでの臓器移植関連エントリーのまとめ(2011/11/1)

【2012年の関連エントリー】
「重症障害者は雑草と同じだから殺しても構わない」と、生命倫理学者らが「死亡提供ルール」撤廃を説く(2012/1/28)
米国の小児科医らが「ドナーは死んでいない。DCDプロトコルは一時中止に」(2012/1/28)
英国医師会が“臓器不足”解消に向け「臓器のためだけの延命を」(2012/2/13)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilkinson(2012/2/22)
臓器マーケットの拡大で、貧困層への搾取が横行(バングラデシュ)(2012/3/15)
闇の腎臓売買、1時間に1個のペースで(2012/5/28)
経済危機で臓器の闇市、アジアからヨーロッパへ拡大(2012/6/10)
脳損傷の昏睡は終末期の意識喪失とは別: 臓器提供の勧誘は自制を(2012/7/20)
2012.10.08 / Top↑
The British Medical Journalに発表された論文で、
ベンゾジアゼピンの高齢者における認知症リスクが報告されている。

65歳以上でベンゾジアゼピンを飲んでいる人は飲んだことがない人に比べて、
その後の15年間に認知症を発症するリスクが50%増加したという。

著者らはこの結果を断定的なものではなく、結論付けるには今後の研究が必要ではあるとしつつも、
これまでも高齢者では転倒やそれによる骨折のリスクが上がる副作用などが指摘されてきており、
今回あらたに認知症リスク懸念が出てきたことで、処方に慎重を呼び掛けている。

ベンゾジアゼピンは不眠や不安に、世界中で広く使われており、

例えば
フランスの65歳以上人口の30%が処方されているし、
カナダとスペインでは20%、
オーストラリアでは15%。

英米の高齢者はではそれほどの高率ではないが、
処方総数は人口の大きさに比べれば多い。

ガイドラインは数週間の使用に留めるよう勧めているとのこと。


Benzodiazepine For Insomnia Or Anxiety Raises Dementia Risk Among Elderly
MNT, September 28
2012.10.08 / Top↑

NYT社説がメディケア拡大を呼び掛け

米国では6月に、オバマ大統領の医療保険制度改革法に連邦最高裁が「合憲」判断を下したばかりだが、「オバマ・ケア」に対する保守層からの反発は相変わらず大きい。そんな中、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は7月17日と28日の2度に渡って、メディケア拡大を呼び掛ける社説を掲載した。メディケアは貧困層と障害者を対象にした公的医療保険制度。医療保険制度改革法に対象拡大が盛り込まれているが、メディケアを拡大しない州には補助金を取り消すとの条項については6月の連邦最高裁の判決で、撤回が求められた。それを受け、貧困層が多い州などでは拡大しないのではと懸念されている。

 テキサス州は、州民の健康データが全米最低ランク、州民の4分の1に当たる630万人(うち子どもが100万人以上)が無保険である。同州のペリー知事(共和党)は「州の主権に対する重大な侵害」「テキサスを財政破綻への脅かす」と公然と反旗を翻し、拡大を拒否。他にも少なくとも5州が既に同様の決定をしているという。「拡大にかかる費用は連邦政府が3年間は全額負担し、その後も9割を負担すると言っているのに」とNYTは批判している。米国議会予算局はこれらの動きから、全州が拡大した場合に給付対象となると見られていた人数のうち、実際に2022年までに対象となるのは3分の2程度と予測。それにより連邦政府の補助金コストは840億ドル浮くが、2022年には無保険者が今より300万人増加すると試算している。

17日の社説で不気味なのは、メディケア拡大どころか現行の社会保障カットを進める州まで出てきていることだ。メイン州は5月に現行のメディケア対象者の内21000人の給付を削減または対象から外すことを決めた。ペンシルベニア州では7月に入っていきなり障害者と貧困層61000人に対して月額200ドルの一般支援給付の打ち切りを通告。それによって年間1億5000万ドルのコスト削減になる一方で、同州知事は3億ドルの企業減税を決めた。
メディケアが拡大されなければ、低所得の無保険者が頼りとする救急医療のコストが、安全網を担う機関や納税者に付け回されていくだけだ、とNYTは28日の社説を締めくくっている。

広がるdevalue文化に対峙する報告書

米国では医療現場での障害者差別も深刻化している。障害者の保護と権利擁護(P&A)全米ネットワークであるNational Disability Rights Network(NDRN)は5月に、障害者への成長抑制療法、不妊手術、一方的な医療の差し控えの実態を報告書 “Devaluing People with Disabilities: Medical Procedures that Violate Civil Rights(障害のある人の軽視:市民権を侵害する医療)”に取りまとめた。

成長抑制を含む“アシュリー療法”が一般化されつつあることは5月号で紹介したが、今回の報告書に多数紹介されている重症障害者への医療拒否の事例では、命の切り捨ての実態が極めて深刻な様相を呈している。末期でも植物状態でもない、意思決定能力のある障害者から、本人意思を無視したり確認しないまま、医療職や代理人が命にかかわる医療の差し控えを決めたりDNR(蘇生不要)指定にしたケースの他、グループホームで暮らす障害者について、次に風邪をひいたら治療せず肺炎にして死なせると、親と主治医が取り決めていたケースも。

NDRNに加盟している州のP&A組織が介入し、法的措置を取るなどして治療に繋げたものがほとんどだが、P&A組織が把握できていない事例がその背後にどれほどあることか……。どうしてもそこに想像が向いてしまう。

NYTが憂慮する政治動向と併せ考え、なんとも気になる医療現場の実態だが、報告書のまえがきによると、オレゴン州では今年3月、出生前診断で見逃したためにダウン症候群の子どもが生まれたと訴えた両親に、陪審員が300万ドルの支払いを認めたとのこと。まさに障害者を価値なきものとみなす(devalue)文化が、米国社会全体に広がりつつあるようだ。

報告書は、病院内倫理委員会では障害者の権利擁護には不十分だとして、デュー・プロセス(しかるべき手続き)による保護の法的な義務付が必要と結論。医療機関、保険会社、州・連邦議会、米国保健省に向けて、そのための法整備や、医療関連団体と障害者の権利擁護団体とが一堂に会して障害者の権利擁護について協議し認識を深める場を設けるなど、それぞれのレベルで取るべき方策を具体的に提言している。

「介護保険情報」2012年8月号 「世界の介護と医療の情報を読む」




【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
NDRNのCurt Decker、"アシュリー療法“、障害者の権利、医療と生命倫理について語る(2012/7/31)
NDRN報告書: 提言(2012/8/2)
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