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直前エントリーで紹介した記事を読んだ時に、
一緒に目についた5月の記事。


スタンフォード大学とバイオテク企業 Auxogynが
IVFに使用されているヒト胚の細胞周期の最初の3段階にかかる時間のデータに
特許を申請し、米国特許局がこれを認めたことから、
新たな国際的な論争が起きている。

ヒト胚の細胞分裂の最初の3段階にかかる時間を調べて、
そのデータによって子宮に入れる最適な胚を選別すれば、
体外受精の成功率が3倍にも上げられる可能性があることが、
最近の英国の研究で明らかになった。

しかし、米国の特許が認められてしまえば、
この新技術が広く使われにくくなる。

批判の中心人物である世界的胚培養士のJacques Cohen 医師は
Reproductive BioMedicine Onlineで、

「胚で起こる自然のプロセスの一部を所有するのは
すでに高価な医療技術のステップをいちいち過剰に商業化しようとする
許しがたい行いである」と書いている。

Auxogyn社では、
特許の対象は自然のプロセスそれ自体ではなく、
胚の発達を測る方法を対象にしたもの、と主張。

しかしCohenは、

There will be no end to what corporations may claim to own. A few years ago it was the gene sequence, now it is embryonic growth. Next year it may be one’s heartbeat or the synapse.

企業が所有権を主張する対象は際限なく拡がっていくでしょう。
数年前までは遺伝子配列だったが、今では胚の発達に所有権が主張される。
来年あたりは、人の心拍数やシナプスが対象になるかも。

Leading scientists attacks university over ‘outrageous’ IVF treatment patent
The Guardian, May 26, 2013


それにしても、こういう「やったもん勝ち」をやるのって、
やっぱり米国なんですね……。


記事が5月25日のものなので、
乳がん遺伝子変異 BRCA1とBRCA2の特許を巡って
Myriad Genetics社の特許を最高裁が認めるかどうか、
注目されていた訴訟について言及されています。

これについては、その後の6月14日に
ヒト遺伝子の特許は認められないとの判決が出ています。

関連エントリーはこちら ↓
「遺伝子に特許やるな」という米国の訴訟(2010/2/8)
欧州司法裁判所、「ヒト胚を使った研究成果に特許認めず」を堅持(2011/10/25)


で、結局のところ、
やっぱりこういうことなんではないか……と頭はここへ戻る ↓
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること(2009/12/12)

で、希望がないなぁ……と、やっぱり考えてしまうのも、
09年12月12日に書いた、これ ↓

今後も長い年月に渡って加速度的に進むはずの
科学とテクノ研究競争に「勝ち続ける」ために必要な予算規模なんて、
きっと誰にも試算できないんじゃないかとも思うし。

私が知りたい「どれほどの資金が必要か」というのは金額ではなく、
今でも、地方の産業は成り立たなくなり、まともに働いても食えない人が沢山出てきて、
医療も福祉も教育も、どんどん崩壊している状況で、
今後、勝ち続けるために必要な予算を確保するとしたら、
日本国民の生活が例えば具体的にどういうものになれば賄えるのか、ということ。

まずは足手まといの障害者と高齢者には死んでもらって、
さらに働いているのに食い詰めてしまう人にも死んでもらって、
それで医療費と社会保障費がいくらかは浮くにしても、それで勝ち続けられるのか、
その程度で高度化する一方の国際研究競争に追いつけるとも思えず、
本当はもっと必要になってくるんじゃないのか、ということ。

仮に国際競争に勝ち伸びて隷属国になることを避け続けることが可能なのだとしても、
いま世界規模でアフリカと一部アジアの国で起こっているようなことの縮図として、
日本国内での都会と地方の格差や、また国民間の財力・能力による格差、さまざまな差別が
もっと酷薄な形をとって現実になっていくのではないのか、ということ。


でもって、それって結局のところ、
「誰も幸福になれない世界」ではないのか、ということ――。
2013.07.11 / Top↑
フィラデルフィア在住の夫妻の元に5月18日に生まれたのは Connor Levy君。

夫妻(妻Marybeth Scheidts, 36歳、夫David Levy,  41歳)は
米国のクリニックの医師らが染色体に異常のない胚を選べるよう、
IVFで作って5日間培養した13個の胚のそれぞれから細胞を数個ずつ取って
英国オックスフォード大学の専門家Dagan Wellsに送り、
遺伝子の異常をチェックしてもらった。

13個のうち、染色体の数に異常がないのは3個だけだった。

米国のクリニックの医師らはそのうちの1個をMarybeth Scheidtsさんの子宮に入れ、
残りの2つを冷蔵保存した。

Connor君の誕生は、
全ゲノムを素早くかつ安価に読解できる次世代シークエンシング(NGS)技術が
IVFクリニックでの肺の選別を様変わりさせることを物語っている。

全ゲノム情報が得られれば、
癌や心臓病、アルツハイマー病などの病気の発症率が分かる。

Array CGHという技術でも染色体異常のスクリーニングはできるが、
NGSならそれよりもコストは約3分の1下がる。

同じ遺伝子スクリーニングを経た2人目は来月誕生する。

Connor君のケースを担当した医師は
「どれほど革命的なことかはどんなにオーバーに言っても足りない。
妊娠率を50%あげるし、流産の可能性も同じくらい減ります。
費用も大変安い。5年後には最先端技術として
IVFをやる人みんなが受けることになるでしょう」

英国では非常に重篤な病気予防以外の目的で胚を選別することは禁じられているが、
遺伝子と病気の因果関係が分かってくるにつれ、
癌その他の病気を予防するために胚を選別しようとする声は高まっている。

髪の色や背の高さなどまで選んだデザイナー・ベビーの懸念もあるが、
Wellsは「IVFは未だ高価な技術で、必ず子どもが生まれる保障もない。
(髪の色や背の高さなどの)瑣末なことを選ぶために、
わざわざ手間をかけてIVFをやろうという人が
沢山いるとは思えない」。

WellsらのチームはNGSで妊娠率がどれだけ上がるか、
またどの年齢層で最も利益が大きいか、大規模な実験を計画中。

Connor君の両親は
今のところ冷凍保存した2つの胚を使う予定はないが、
1年様子を見てから考える、と。

IVF baby born using revolutionary genetic-screening process
The Guardian, July 7, 2013


これもまた、新型出生前診断と同じく、
数年後には日本にも到達する時代の波なのでしょう。
2013.07.11 / Top↑
これまで重症意識障害からの“回復事例”についてはいろいろ拾ってきたし、
その中には“回復”というよりも“誤診”じゃないかと思われるような事例もあり、
また恐ろしいことに臓器提供が決まった後で“回復”したケースまであって
考えさせられてきたのですが、

いよいよ決定的な“誤診”事例が出てきました。

米国NY州、シラキュースのSr. Joseph病院で
2009年に「死んだ」と診断して家族の同意の元に臓器摘出の準備に取り掛かったところ、
手術室に運ばれた患者が目を開けて「死んでいない」ことが判明した事例について
この度、そのケアの不適切に対して罰金6000ドル、

病院が事後にまともに調査しなかったことに対して罰金16000ドル、
合計22000ドルが課せられた、というニュース。

問題となった患者はColleen S. Burnsさん。
41歳(いつの時点での年齢かは不明)。

Xanax、Benadrylその他のオーバードースで救急搬送され、
カルテには「心臓死」と記載されているとのこと。
家族から臓器提供の同意が取り付けられた。

奇妙なのは、臓器摘出予定の前日、
看護師が反射テストをやって、足の裏を指でなぞったところ、
足をギュッと縮めた、という記録があること。

人工呼吸器を装着しつつ、鼻が膨らんで自発呼吸の兆候が見られたり
唇や舌も動いていたというのだけれど、

たいそう不思議なことに、これらの観察が行われた20分後に
看護師はBurnsさんに鎮静剤のアチバンを投与したという記録が残っている。
(が、医師の記録には鎮静剤も症状の改善も出てこない)

しかし、これらの兆候は臓器摘出の準備が進められる間も消失することはなく、
2009年10月20日、手術室に運び込まれたBurnsさんが目を開けたので、
摘出は中止された。

何が起こったのか、
本人にも家族にも説明はなかった。

これほどの事態が起こっていながら
病院側は検証も原因究明も行わなかった。

州保健局は
Post –Standard紙からの質問を受けて、2010年3月に調査を開始。

保健局の抜き打ち監査を受けて、病院はようやく調査に着手したが、
それでも、その調査はおざなりのものでしかなかった、と州の報告書は指摘する。

Burnsさんは心肺停止になってもいなければ不可逆的な脳損傷を負ってもおらず、
生命維持の中止を決定する基準を満たしていなかったにもかかわらず、
病院はBurnsさんの身体から薬の影響が抜けるまで待って十分な検査をすることなく
生命維持の中止を決定した、とも。

こうした事実関係を報告書で読んだ専門家は
患者が生きている兆候を確認していながら、
どうしてナースは鎮静剤を打ったのか、といぶかる。

「それでは患者は沈静によって無反応になってしまう。
鎮静したり鎮痛剤を与えなければならないなら、
その患者は脳死ではなく、臓器を摘出すべきではない」

すごいのはこの記事の最後の1文で、

The hospital also was ordered to hire a consulting neurologist to teach staff how to accurately diagnose brain death.

同病院にはさらに、スタッフに脳死の正しい診断方法を指導するための相談役として脳神経科医を雇うことが命じられた。


ちなみにBurnsさんは無事に退院したが、
その後2011年1月に自殺。

St. Joe’s “dead” patient awoke as docs prepared to remove organs
The Post-Standard, July 7, 2013


思い出すのは、以下の英国のスティーブン・ソープ事件。

英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)

重鎮静の状態で脳死と判定して家族に生命維持停止と臓器提供への同意が要請された。
家族が拒否し、外部の脳外科医に診断を依頼したところ、
脳死ではないと判断。重鎮静を解いてみたら意識が回復した、という事件。

このエントリーには脳死臓器移植の問題に詳しいMoritaさんから
貴重なコメントも寄せられています。

また、その他この段階までに拾った
“回復事例”エントリーへのリンクも。
2013.07.11 / Top↑
今日のエントリーを書いた際にYahoo!ブログが拾って来てくれた、非産婦人科の医師の方のブログの一連の関連エントリーが非常に興味深かった。6月7日にHPVワクチンについての疑問を整理、その後の厚労省の動きにつれて適宜あれこれと調べれば調べるほど、疑問が深まっていった……みたいなところ。どのエントリーにも大変興味深い指摘がてんこ盛り。個人的には6月23日のエントリーで「(アジュバントが有害というデータが出ていたら)いくらなんでも、即、ワクチン接種中止されるでしょう」の個所に下線が引かれているのが面白かった。今日の拙ブログエントリーにもリンクしたけど、Avandiaスキャンダルなどで表面化しているのは、臨床研究データそのものが製薬会社に操作されている、そうと分かっていて平気でみんなで癒着する、利益至上・生命軽視の「ファーマゲドン」。ファーマゲドンが「原発村」ならぬ「薬・ワクチン村」なのだとしたら、そこでは「いくらなんでも」すらないのかも??
http://blogs.yahoo.co.jp/janeway_tlr2/66180200.html (6月7日)
http://blogs.yahoo.co.jp/janeway_tlr2/66200396.html (6月15日)
http://blogs.yahoo.co.jp/janeway_tlr2/66219737.html (6月23日)
http://blogs.yahoo.co.jp/janeway_tlr2/66238961.html (7月1日)

米国のスーパーマン俳優、クリストファー・リーヴが治療法の発見にのみ希望を求めた姿勢について、96年のリーヴの民主党大会でのスピーチと、障害者運動側からの声いくつか。(ウ―レット関連でのメモ)
http://www.jscf.org/jscf/REEVE/supichi.htm
http://www.ragged-edge-mag.com/archive/p16story.htm
http://www.ragged-edge-mag.com/extra/reevepeace.html
http://www.raggededgemagazine.com/mediacircus/creevedeath.html

英国で、白血病の夫の首を絞めて殺したとして妻を殺人の疑いで逮捕。:まだ読めていないけれど、メディアの論調は「慈悲殺」とか「自殺幇助」に流れるんでは、と予測。……と思ってたら、やっぱり下の方の記事ではタイトルに「”自殺幇助”で事情聴取」と書いてある。最初の記事のタイトルはそういえば「献身的な妻」だもんなぁ。英国ではもう介護実績さえあれば首絞めて殺害しても自殺幇助? 
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2358249/Devoted-wife-Sheila-Sampford-strangled-husband-John-save-painful-death-cancer.html
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2357663/Wife-quizzed-assisted-suicide-terminally-ill-husband-82-strangled-home.html

米国医師会が肥満は今後、病気として扱う、と新方針。バリアトリック医学界と臨床分泌学会はこの決定を歓迎。:これもどこかで科学とテクノで簡単解決バンザイ文化のマッチ・ポンプ構造のような気がしてならないんだけど、ま、素人のオバサンの思うことで何のエビデンスがあるわけではありません。ワクチンが糖尿病、肥満、メタボを引き起こしている、とする調査結果、2012年11月に Current Diabetes Reviewsにという話もあったにはあったけど。あと、ヤセ薬とかバリアトリック手術とか、絶賛急成長中のマーケットではある。そういう薬の例にもれず、ひと通り売れた頃になってリスクが判明してrimonabant は2008年に、最近ではJaDeraとXiyouji Qingzhiとか市場から回収されたりもしているんだけど。でも、日本でも肥満薬の臨床実験での不正が判明したことだし、それって、この動きが日本にやってくる前触れなのかも? 日本人の肥満は程度で見れば米国人の足元にも及ばないにせよ、薬や手術など医療介入の必要なれっきとした病気です……。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10594#comments

英国ウェールズが臓器移植にみなし同意制度を導入。2015年から。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10592#comments

認知症の人の自立生活支援はロボットで
http://www.homecare.co.uk/news/article.cfm/id/1560420/robots-to-be-introduced-into-homes-to-help-older-people-live-independently

バフェット氏、またもゲイツ財団他に26億ドル分の自社株を提供。
http://www.forbes.com/sites/alexmorrell/2013/07/08/buffett-donates-2-6-billion-in-berkshire-hathaway-shares-to-gates-foundation-other-charities/

で、そのバフェット氏、人工透析の会社Davitaの株に1560万ドル。
http://www.democratandchronicle.com/usatoday/article/2497133

国際ライオンズ・クラブとGAVIが麻疹ワクチン推進で提携:この前国際ロータリーがゲイツ財団とポリオ撲滅で提携を新たにしていたっけな。
http://online.wsj.com/article/PR-CO-20130708-906624.html

ナイジェリアのAnabra州知事がポリオ撲滅でのベスト・パフォーマンス・ビル&メリンダ・ゲイツ賞を受賞。保健相から授与。賞金は1億2000万ナイラ。5年間ポリオが1例も出ていないことに対して。:ゲイツ財団って、こんな巨額の賞金つきの賞を設けて途上国のワクチン推進をあおってたのか……あ、途上国だけじゃないか、ビル&メリンダ賞じゃなくて「研究グラント」という名前になってるだけで。
http://sunnewsonline.com/new/trending/obi-bags-best-gov-award-empowers-5000-youths/
http://www.ngrguardiannews.com/index.php?option=com_content&view=article&id=126356:obi-gets-n120m-bill-gates-award-on-polio-eradication-&catid=1:national&Itemid=559

武装集団が学校襲撃、42人殺害…ナイジェリア:上のニュースもこのニュースも同じナイジェリア。こういう国でもゲイツ財団にとって最重要課題はワクチン推進。パキスタンでも、ソマリアでも。いつだったかビル・ゲイツは「ソマリアなんか無政府状態でもワクチン接種率は高いんだぞ」と、まるで模範国のような言いようをしていた。その発言をよくよく考えてみたら、ものすごく怖いことが起こっているじゃないかってと思わせられるんだけれど。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130706-00000858-yom-int

英国の小学校の新カリキュラムで1年生からコンピューター・プログラミングを教えるんだとか。
http://www.guardian.co.uk/politics/2013/jul/08/michael-gove-education-curriculum-fractions

ブログ「本日の『生活保護リアル』」:読みたい本ばかり。
http://pubassistance.blogspot.jp/

生活保護減額で就学援助減少か 対象外の子増える恐れ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130707-00000018-asahi-soci

安藤美姫先週に対する常軌を逸した集団マタニティ・ハラスメントについて 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子
http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20130707-00026249/

こんな面白い活動をしている人がいるって、教えてもらって知った。枚方バンダムさんの「お話、聞きます」。図書館にあったので早速にリクエスト。
http://iinen.com/prof.html
2013.07.11 / Top↑
前のエントリーの続きです。


④ 今年2013年には既に41論文が出ており、
そのうち17論文がHPVワクチンの効果と安全性を謳うもので、
効果を疑問視しているものは2論文(打出先生がアブストラクトから推測)。

HPVワクチンへの不安は根拠のない作り話(myth)だと結論付けた以下の論文でも、
http://www.unboundmedicine.com/medline/citation/23732252/Beliefs_Behaviors_and_HPV_Vaccine:_Correcting_the_Myths_and_the_Misinformation_

「利益相反」には以下のように書かれており、

Two of the authors (GDZ and NWS) are investigators on investigator-initiated grants funded by Merck and Co. GDZ is a recipient of an unrestricted program development grant from GlaxoSmithKline. WAF has received speaker fees, educational, and unrestricted research grants from Merck Canada. ZR has received a fee for consulting with Merck on behavioural science issues. Author SP has no conflicts of interest to report.

5人の著者のうち、メルクともGSKとも金銭関係がないのは1人。


⑤また、アフリカのサブサハラ地域の若い女性への
HPVワクチンの有効性を結論付けた以下の論文でも
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23242542

金銭的支援と利益相反の可能性についての事情は
上記2007年の事情と同じ。

(というか、資料のそこの部分を読んでみると、
ここにもGSKの社員とGSK社の株を保有している研究者が含まれている他に
英国の途上国支援機関からカネが出ていて、
英国はゲイツ財団の途上国でのワクチン推進では一番のパートナーだということを考えてしまう。
政府資金だからヒモも色もついていないという時代ではないかも??)


⑥ 逆に、HPVワクチンで自己免疫疾患SLEが引き起こされているとする以下の論文では、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23624585

利益相反のディスクロージャーのところに書かれているのは

Disclosure: none.
ディスクロージャー: なし。


⑦ とても興味深いのは
主著者が今野良医師である、2009年のこちらの論文。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20375802

これまで言及した上記論文が全て「HPV ワクチン」と表記しているのに対して
「子宮頸癌ワクチン」と表記していることが際立っているこの論文は、

「子宮頸癌ワクチン」には45年間に渡って
コスト効率よく子宮頸がんの負担を減じる効果が見込まれると結論している。

で、そのディスクロージャーはというと、

This study was supported by a grant from GraxoSmithKline K. K. Japan. R. Konnno received research and travel grants and honoraria for courses and conferences from GlaxoSmithKline Japan, Merck Japan, and Quiagen Japan. He is a member of the Advisory/Expert Board at GraxoSmithKline Biologicals. This study was also supported by GraxoSmithKline Biologicals, where authers Van Kriekinge and Demarteau are currently employed.


今野医師にGSK、メルクその他との濃厚な金銭関係があり、
この研究そのものがGSKによって行われたものと思しいだけでなく、
論文の著者5人のうち、日本人ではない2人はGSKの社員。


ちなみに当ブログが今野良医師の名前に目を止めたのは2009年。
こんな妙な発言があったから ↓

子宮頸がんワクチンでの失神は「ドキドキするから」?(2011/8/5)


製薬会社と研究者の癒着で
医学研究のデータそのものが信頼性を失っている問題については
以下のエントリーなどに(これらに他の関連エントリーへのリンクあります) ↓

製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側(2013/1/4)
NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみた(2013/6/28)


こうした「ファーマゲドン」の実態に、最近では
研究者らの間から全治験データの公開を求める声が上がっています ↓
臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから(前)(2013/7/1)
臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから(後)(2013/7/1)

4日にはNYTの社説も「治験データのフル・ディスクロージャーを」と。
http://www.nytimes.com/2013/07/05/opinion/full-disclosure-needed-for-clinical-drug-data.html?nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20130705&_r=1&
2013.07.11 / Top↑
週末、こちらのシンポジウムへ行ってきました ↓
http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/index.htm

<テーマⅠ 「子宮頸癌ワクチン」導入の裏側>の前半は
金沢大学付属病院講師で産婦人科医の打出喜義先生の講演。

打出先生について書いた当ブログエントリーはこちら。

打出先生の講演は
まさに当ブログで継続的に拾ってきた「医学研究データへの製薬会社の影響力」という
テーマそのものだったので(関連エントリーは文末にリンク)、まずは、その関連の部分を以下に。
(その他の部分については、今後の手元に応じて適宜エントリーに、と考えています。
最近、エントリーにしたいことの半分も書けない状態が続いているのですが……)

「海外の論文等でどのように評価されているのか」をテーマに、
HPVワクチンの効果と安全性の根拠とされる海外論文の詳細を検証するという趣旨で、

PubMedで HPV vaccineをキーワードに検索すると、
論文のヒット数は5844件。

年ごとの論文数でみると、
1996年には44本だったものが、
2005年に181、06年に375 、12年には708と
2006年の接種開始を境に急増している。

次にHPV vaccine safetyをキーワードに検索してみると、
こちらも2007年前後に急増しており、
07年の35論文はほとんどが安全と結論。

しかし、これらの論文の詳細にはたいへん興味深い点がある。

例えば、

①http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19242247

4価ワクチン、ガーダシルの効果を結論付けた
オーストラリアのJenny Mayによる、この論文では、
「利益相反」の個所に以下の記述がある。

Jenny May is a member of CSL Ltd’s GARDASILⓇAdvisory Board.

CSL Ltd とは、
以下のMSDの文書(日本語)によると、
http://www.msd.co.jp/newsroom/pdf/us_release/merck_1202_2.pdf

オーストラリアにおいてGARDASIL®をMerck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.から導入し販売しているCSL Limited……


つまり、この論文を書いたのは
米国のメルク社からガーダシルを「導入し販売」している会社の社員さんで
ガーダシル顧問委員会のメンバーだというわけ。


② 同じく2007年の論文。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17531764

こちらはグラクソ・スミス・クライン(GSK)社のサーバリクスのについて
…generally safe, well tolerated, and highly immunogenic などと書き、
安全性と効果のエビデンスとされる論文。

著者は HPV Vaccine Adolescent Study Investigators Networkと称する総勢11人。
そして、そのうち4人がグラクソの社員。

で、この論文のAcknowledgmentのところで謝意が述べられているのは
ひたすらGSKの関係機関やその関係者。

そこには、以下の記述も含まれている。

This study 580299/012 was funded and coordinated by GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart Belgium.


つまり、研究そのものがGSKの資金とコーディネートによるもの。


③ 同じく2007年にLancetに発表された以下の論文。
 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2807%2960946-5/fulltext

著者は the HPV PATRICIA study group と称する24人で
子宮頸がん予防効果があり、予防に有効と結論。

利益相反の個所に書いてあることは
フルテキストでないと読めないので6日の打出先生の資料に戻ると、
26行の記述に、なんと17回も GlaxoSumithKline が登場している。

ざっと読んでみたら、けっこうなことが書かれている。

・一人はメルクとGSKの両方からHPVワクチンの臨床実験を行うためのグラントをもらっていて、
さらに両者から顧問料と講演報酬を受け取っている。

・著者のうち5人はGSKの社員で、そのうちの一人は同社の株式を保有している。

・一人はメクルとサノフィパスツールMSD(サノフィのワクチン部門)の推進委員会の委員であり、
かつGSK社の外部顧問で、彼の研究チームはこれら3社が実施しているワクチンの臨床実験に関与している。

・著者の一人でブラジルの研究者は、HPV開発臨床実験に関する「GSKの調査官」。


……と、ここまでで、やっと半分くらいで、

「利益相反ステートメント」はまだまだ続き、
「申告すべき利益相反はない」著者は24人のうち8人のみ。

他は、GSKや、メルクやサノフィなどと
HPVワクチン研究での金銭関係がある、というディスクロージャーが続く。


今年の論文についてなど、次のエントリーに。
2013.07.11 / Top↑
NY州にスペシャル・ニーズの人の保護を担うジャスティス・センターがオープン。これはエントリーにしたい。医療を巡る代理決定の問題があるから、そうそう喜んでばかりいられる話題かどうか、ちゃんと読んでみないと分からないけど。来週の目標の一つ。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/07/new-york-state-justice-center-for.html

英国保健相ジェレミー・ハントが、要介護や虚弱高齢者には病院外でのケアを含めて追跡担当する医師または看護師を一人に一人つける、と。また、Genomics England なる新組織の立ち上げも。読んでないけど、後者は、こういう路線かしら? ⇒ 国民DNAデータベースめぐり論争再燃(2008/2/27)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2356515/Vulnerable-elderly-patients-single-doctor-nurse-track-NHS-care.html?ito=feeds-newsxml

日本語。特定の体外受精法、知的障害のリスク微増 研究:ここで言われている「特定の体外受精法」とは、ICSI(卵細胞質内精子注入法)で、ICSIに先天異常のリスクがあることは、2009年に既に報じられていた ⇒ 「試験管ベビーは先天異常の時限爆弾か?」とDaily Mail)2009/5/6)
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2954059/10999825

高齢者への向精神薬投与(ブログ「精神科医の犯罪を問う」2013/7/4): この問題については私も去年、「介護保険情報」の連載で「認知症高齢者への抗精神病薬を巡る動き」を書いた他、ずいぶんいろいろと書いてきましたので、いくつか以下にリンク。
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/54124815.html?vitality

【関連エントリー】
佐野洋子「シズコさん」(2008/7/12)
認知症患者への不適切な抗精神病薬投与、教育・意識改革が必要(2009/4/17)
英国のアルツ患者ケアは過剰投与で「まるでビクトリア時代」(2009/6/5)
ナーシング・ホーム入所者に症状もICもなく精神病薬投与(2009/10/31)
不適切な抗精神病薬の投与、15万人の認知症患者に(英)(2009/11/15)
1人でTX州の総量をはるかに越える統合失調治療薬を処方する精神科医が野放し・・・・・・の不思議(2009/11/30)


NYTの社説が「製薬会社には臨床実験のデータの完全なディスクロージャーが必要」と。先月29日にNYTはこういう記事を掲載したばかり ⇒ 臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから(前)(2013/7/1)
http://www.nytimes.com/2013/07/05/opinion/full-disclosure-needed-for-clinical-drug-data.html?nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20130705&_r=0

NYT. 処方鎮痛剤の中毒は男性の問題と思われてきたけれど、実際は女性で増加中。
Sharp Rise in Women’s Deaths From Overdose of Painkillers: Prescription painkiller addiction, long seen as mainly a man’s problem, is rising at a far faster rate among women, a federal analysis of data found.

【関連エントリー】
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側(2013/1/4)


日本。大腸がん、血液検査で9割以上判明…三重大など
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130704-00000731-yom-sci

日本。「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」アンケートに批判殺到……「週刊文春」が謝罪:なんだこれ? ツイッターで誰かが「メディアによる特定の個人に対する公開リンチ」と書いていたけど、その通り。あと、本人が公開しないと言っているのに、勝手に父親を詮索するメディアも。どんどんゲスな世の中になっていく……。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130705-00000013-rbb-ent

3年育休は女ののぞみか? ちづこのブログNo.51 「子どものいない夫婦だけの時代に夫と培った暮らしの協力体制が、1年間の「専業主婦」生活のなかですっかり役割分担体制に変わってしまうことだ。妻が家にいれば、夫はとめどなく妻の負担の上にあぐらをかく。」
http://wan.or.jp/ueno/?p=3188

3歳女児餓死、中2だった姉を書類送検へ:どうして、こうなるの? どうして? どうして? これ、介護している人に何かあった時には、日本中のヤングケアラーにも同じ保護責任が問われるってことなんだろうか。それから、これが兄だったら、もしかして何かが違っていたりするの、もしかして……?
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130702-OYT1T00226.htm

日本語。中国:親孝行を義務化、定期的な帰省など 「年老いた親と別居して暮らす子どもに定期的な帰省を義務づけるなど親を心身ともにいたわることを求めた改正「高齢者権益保障法」が施行」:まさか憲法改正草案の見直しに、「これ、よいでは」とか言わないでよね。なんだか、「安藤美姫の出産を支持しますか」とか「中2の姉を妹の保護責任問うて書類送検」とかにも、どこか通じていくものを感じるんだけれど。
http://mainichi.jp/select/news/20130704k0000m030046000c.html

ちょっと良いアイディアでもあるようで、ちょっと悲しいような米国の介護者支援策、StayCation。バケーションの季節ですが出かけることができないケアラーに、自宅でできるリゾート気分を工夫して楽しみ、それをビデオにとって応募。抽選でお一人様に50ドルと私のコーチング3回をプレゼント……なんだ、コーチングのプロモだった。ちょっと無理がある話だとは思ったんだ。
http://www.caregiving.com/2013/07/take-caregiving-coms-staycation-challenge/

障害のある子どもを養子にした親のため、レスパイト・ケアラーのボランティア募集。「介護保険情報」の5月号の連載で書いたのは一般の障害児の親のためのレスパイト・ケアラーだったけど、レスパイトもこういう形に向かうのかなぁ。
http://www.isleofman.com/News/details/56362/short-breaks-scheme-needs-foster-carers-to-help-disabled-children

在英エクアドル大使館で盗聴器が見つかる。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jul/03/ecuador-microphone-bug-london-embassy

ヨーロッパの若者たち、高学歴で資格もあり、失業中。:数日前に外資系の保険屋さんと話したところ、「仕事がないという人は贅沢な選り好みをしているだけ。仕事なら選ばなければアルバイトでも何でもいくらでもある。働かずに生活保護をもらえばいいと思っているから」というのに絶句した。なんで同じ社会にいて、見えているものがこんなに違うんだろう? 
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jul/01/jobless-europe-young-qualified
2013.07.11 / Top↑
先月、世界の400都市、50カ国で
モンサントへの抗議行動が行われ、
米国シアトルでも2000人が集まった。

それらの人々は
モンサントを支持するゲイツ財団にも批判を向けたことになる。

ゲイツ財団はモンサントの遺伝子組み換え(GM)作物によって
途上国の飢餓問題を解決しようと提唱しているが、

歴史的にも
GM種子は農業の持続性を損ない、
食の安全保障を脅かすことがすでに明らか。

GM種子は
貧困国の農夫に巨額の投資を強いるだけでなく
作物が次々に農薬への耐性を身につけて、
さらに強い種子と農薬を必要とするようになり、

結果的に飢餓を撲滅するどころか、
むしろ食料の不安定を永続化している。

さらに北米の農夫は
モンサントの特許侵害で次々に訴えられているほか、
5月にはオレゴン州で許可されていないGM種子の作物が発見され、
遺伝子汚染がすでに起こっていることも判明した。

オレゴンの農場に「あってはならないはずの遺伝子組み換え小麦」(2013/6/1)

真に貧困国の貧しい小規模農家を助けようとするなら、
作物の多様性を重視した従来型のアグロエコロジーが解決策。

記事の結論部分は以下。

Industrial agriculture continues to fall short of feeding the world but provides tremendous financial gains to Monsanto’s shareholders. It’s a shame the Gates Foundation, which many consider a local leading light, can’t see this. Until Monsanto and the Gates Foundation realize that sustainable agriculture, not GE seeds, is the solution to feed the world, many people around the globe will remain hungry.

工業型農業では世界人口を養うことができていないまま、一方でモンサントの株主には莫大な利益をもたらしている。ゲイツ財団のように地元の多くの人が尊敬するリーダーが、それを理解していないのは残念なことだ。GM種子ではなく持続可能な農業こそが世界人口を養うための解決策だとモンサントとゲイツ財団とが理解するまで、世界中の多くの人が飢え続けることだろう。

Gates Foundation’s support of Monsanto reveals it has put ending hunger on the back burner
Real Change, July 3, 2013


ふむ……。

モンサントは、
GM種子とラウンドアップでは持続可能な農業にならないということを理解できていないから、
それでやり続けていることなのかなぁ。

ゲイツ財団も、それが理解できていないから
モンサントのGM種子で途上国の飢餓救済を、と言っているのかなぁ。

以下のエントリーなどで見るように、モンサントの株主さんなんだけど、
そこのところ、この記事では「モンサントに資金を提供している」ゲイツ財団……て。

まぁ、記事の著者が
Seattle’s Community Alliance for Global Justiceに所属ということだから、
地元では露骨に批判するのがはばかられるのかもしれないけれど。


モンサントのあくどいショーバイで何が起こっているかについても、
以下のエントリーなどに ↓

ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)
TPP進める経済界のトップ、やっぱりぐるっと廻って“ゲイツつながり”(2011/10/27)
2012年9月17日の補遺(the African Green Revolution Forumでアナン、ゲイツ夫妻が基調講演)
2013年2月18日の補遺(ゲイツとスリム、GM種子開発に2500万ドル)


ところで、
アグロエコロジーを検索してみると、
いつもお世話になっているtu_ta9さんが
2年も前にブログに詳細な情報を書いておられました ↓

アグロエコロジーが面白そうだ
ブログ「今日考えたこと」(2010/7/29)

で、tu_ta9さんのエントリーから定義を拝借してくると、

アグロエコロジーについて、「フードシステムの生態学」と定義される新しい学際的な学問領域であり、農場から農村景観、地域コミュニティまで視野に入れ、持続可能な食料生産・流通・消費を目指し、社会学、文化人類学、環境学、倫理学、経済学も含むものであると説明

農場から食卓まで(Farm to Table)農産物が流れていくことによって、里山の生態系も、かかわる人びとの暮らしも豊かになることを目指す学問領域


なお、以下のコメント欄でtu_ta9さんに教えてもらった
6月25日の日本の官邸前での抗議行動の模様はこちら ↓
http://tpp.jimdo.com/%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/2013-5-25-march-against-monsanto/
2013.07.11 / Top↑
「スーパーリッチの勃興により新たなグローバル・ルールが必要になるか?」
と題した、富裕層による支配(plutocracy)に関するAtlantic誌の記事。

1月に始まった米国の第113回下院議会では、
535名の議員のうち、48%に当たる257人がミリオネア。

グローバル・エリートの急速な勃興によって、
富と政治的権力との境目が曖昧になってゆく。

1970年代には、
米国の最も富裕なトップ10%が
米国の富の10%を所有していたものだが、

現在では
最も富裕な1%のうちのトップ10%が
米国の富のほぼ8%を所有している。

しかも、こうした現象は、
自分1代で富を築いた、たたき上げの人々(self-made wealth)の増加と重なってきた。

1982年にはForbesの金持ちトップ400人のうち40%だけがself-madeだったのに対して、
2011年までには69%を占めるようになった。

しかし叩き上げだから実力主義だとは言え、
富裕層にのし上がれば、そこに富裕層同士の身内優先資本主義が生まれるのは避けがたく、

その問題点として指摘されているのは、

① アップルなど、成功していて様々な資源も豊富な企業は
税制や懲罰制度を自社に有利なように操作することができるし、

影響力の大きな個人や企業によって政治的影響力を行使して、
特定の問題で自分たちに有利なようにルールを変更することもできる。

例えば、最近ザッカ―バーグらがやろうとしている移民に関する規制緩和のように。

② こうした特定の個人や企業の強い政治的影響力には
社会におけるスーパーリッチの正当な役割は何かという認識を
ゆがめてしまうリスクもある。

例えば、大統領選でリック・サントラムの応援演説をした企業家は
インタビューで以下のように語っている。

スティーブ・ジョブズが我々のためにしてくれたこと、ビル・ゲイツが社会のためにしてくれたことを考えると、政府は彼らに謝礼を支払うべきだ。どちらが世の中をより良い場所にするために貢献しているかといえば、それは恐らく99%ではなくトップ1%だろう。私は貧しい人がビル・ゲイツのような仕事をなしたところを見たことがない。貧しい人々が多くの人を雇うのも見たことがない。だから私は最も富裕な1%に感謝し称賛すべきだと思う。価値を生み出してきたのは彼らなのだから。

また、別のある金持ちは以下のような発言をしている。

他の人よりも高い給料をもらいたいというけれど、
人より10倍多い給料をもらいたいなら人の10倍の価値をもたらさなければならない。

厳しい言い方になるが、
中流階級の人々にはむしろ給与引き下げを飲むかどうか、という話ではないか。

(そういえば、これって、日本でも Y とか W とかの
ブラック企業のトップが似たようなことを言っていますね)

③ 極端な富の偏在は次世代の格差につながる。

教育資金の格差を通じて次世代の格差に通じるだけでなく、
貧困国の安い労働力を企業が利用することによって
米国内での雇用が失われ、次世代の格差を広げる。

その一方で、雇用が創出される、その貧困国の方では
生活水準が上がる可能性がある。
(そうかなぁ。むしろ、その他の形で弱みにつけ込む形の
搾取が広がっていると思うから私はそう単純ではないと思うけれど)

だからといって、
すぐに世界に平等主義的なものの考え方を広げていける方策もないように見える……

という、タイトルの割になんとも尻すぼみの論考。

でも、そこに問題がある、ということは間違いのない真実だというのこそ、
このブログでもずっと書いてきたこと。

ただ、新たなグローバル・ルールが必要だとしても、
それ以前に、もはや国家がまともに機能できない Plutocracy そのものが
まさに、その新たなグローバル・ルールとなり果てているんじゃないか……という気がしてならない。

Does the Rise of the Super-Wealthy Require New Global Rules?
Emma Green,
The Atlantic, June 28, 2013
2013.07.11 / Top↑
認知症介護の質のスタンダードを発表

英国では、2012年3月に制定された医療・社会ケア法(2012年)により、国立医療技術評価機構NICEに社会ケアが達成すべき質のスタンダード(クオリティ・スタンダードQS)を示す責任が新たに課せられた。NICEは今年4月から各種QSを発表していく予定としていたが、その第一弾として4月3日に発表されたのは「QS30:認知症の人々の良い暮らしを支える質のスタンダード」だった。

既に2010年6月に医療と社会ケアの専門職に向けて出された「QS1:認知症」やその標準化のために作られたNICEの「認知症パスウェイ」と併せ、ケアの質を担保する説明責任を各地方の医療委員会に求めると同時に、現場のケア提供者に達成すべき水準を明確に示すもの。中心的なメッセージは、以下の10のステートメントで表わされている。

1. 自分や知っている人が認知症なのではと不安を感じている人々が、その不安について、また認知 症と確定診断されたらどういうことが起こるのかについて、専門的な知識と経験のある人と話し合うこ とができる。

2. 認知症の人々が、自分が受けるケアと支援についての選択と意思決定に加えられる。

3. 認知症の人々の環境が変わる際には、自分のニーズと選好についての検討に本人が参加する。

4. 認知症の人々が日中、自分の興味に合った余暇活動に参加することを選択できる。

5. 認知症の人々が友人や家族と会い続けることができると同時に、新たな人間関係を作ることがで きる。

6. 認知症の人々が心身の健康チェックを定期的に受けることができ、気にかかることがある時には医療専門職の診察を受けることができる。

7. 認知症の人々が自立生活を維持しやすく改造された家に住む。

8. 認知症の人々が自分の受けるサービスのデザイン、プラン、評価と実施に参加する機会を与えられ、それらの決定に関わる。

9. 認知症の人々が、自分たちの立場を代理する独立したアドボカシー(権利擁護・代弁)サービスの支援を受けることができる。

10. 認知症の人々が自分の住む地域に関わり、貢献し続けることができる。

NICE公式サイトの当該ページには、その他のガイダンスと併せて医療・社会ケアが2013―14年に達成すべきアウトカムの枠組みの例が挙げられている。目を通してみると、介護者への言及が非常に多いことが印象的だ。

例えば、成人社会ケアの領域では、「サービス利用者が各自のニーズに応じてどんなサービスをどのようにいつ利用するかを自分で決められる」ことが目標の1つとして挙げられているが、それを測る指標として「サービス利用者が日々の生活を自分でコントロールできる割合」、具体的には「介護者が自分の介護役割と自分が希望する生活の質とのバランスを取ることができる」。また「介護者の報告による生活の質」という指標は、具体的には「希望すれば仕事を見つけることができ、家族生活と社会生活を維持しつつ地域生活を継続することができて、孤独や孤立を避けることができる」こと。さらに「介護者がケアのプロセスを通じて対等なパートナーとして尊重されていると感じる」という目標設定もある。その指標としては「自分が介護している人についての議論に含められ、相談を受けたと報告する介護者の割合」、「支援に関する情報が簡単に見つかったと報告するサービス利用者と介護者の割合」など。

この辺り、さすがに介護者支援の先端を行く英国だと感じ入るのだけれど、一方、各種報道によると、連立政権は思い切った社会保障の削減策に踏み切っており、各地方自治体は介護者支援サービスを縮小し始めている。こうした目標設定と予算削減の板挟みになって結局は現場が疲弊するばかり……という顛末にならなければよいのだが。

医療と介護の消費者団体Healthwatchが誕生

英国では去年10月に、医療と社会ケアに関する消費者の権利擁護団体としてHealthwatchという全国組織が誕生している。全国152のHealthwatchネットワークを統括するのは、長年Which?で消費者運動に携わってきたAnna Bradley氏。Which?といえば、11年に役者を雇って高齢者施設に送りこみ、劣悪ケアの実態を暴いた、あっぱれな潜入消費者調査が記憶に新しい(11年6月号で紹介)。NICEのSQもHealthwatchを「消費者チャンピオン」として支持するという。今後の活躍が楽しみだ。

連載「世界の介護と医療の情報を読む」
『介護保険情報』2013年6月号
2013.07.11 / Top↑
フランスのオランド大統領が、1日、
今年中に議会に自発的安楽死合法化法案を提出する、と明言。

もともとオランド氏は
自殺幇助合法化を大統領選でも公約にしていた。

(これまでの経緯について関連エントリーは文末に)

2005年にできた現行法では
終末期の患者が求めた場合には
通常を超える治療を停止することを医師に認めつつ、
緩和ケアを推奨しているが、

世論調査の結果は終末期には安楽死合法化への支持が高く、
それを反映して患者の死に手を貸した病院職員への判決では
近年、執行猶予がつくようになってきている。

一方、フランスでは
国の(? National)倫理委員会から
弱者に対して、まだ生きられるのに死ななければならないような
圧力がかかるとの懸念から、合法化は「社会にとって危険」との報告書が出されている。

報告書は
ベルギー、ルクセンブルク、オランダの記録からも
安楽死や自殺幇助の監督は十分に行われていると思えず、

「これらの国々は自己決定の能力がある終末期の患者の安楽死を合法化したが、
実際には対象者はどんどん拡がって、社会の弱い立場にある人々へと広がってきた」とも。

しかし倫理委の17人のメンバーのうち、
合法化に反対が9人で、合法化すべきだとするメンバーが8人と、拮抗している。

Francois Hollande Pledges To Legalize Voluntary Euthanasia In France
Huff Post, July 1, 2013


オランド大統領が選挙公約で言っていたのは
"medical assistance to end one's life in dignity"の合法化。

今年中に議会に提出するというのが、
自殺幇助の合法化法案なのか、安楽死の合法化法案なのかが
記事を読んだだけでは今イチはっきりしない。


【関連エントリー】
フランス上院、25日に自殺幇助合法化を審議(2011/1/13)
フランスの安楽死法案、上院の委員会を通過(2011/1/19)
フランス上院が自殺幇助合法化法案を否決(2011/1/27)
フランスの大統領候補が「当選したら積極的安楽死を合法に」(2012/2/6) ⇒で、この候補が当選して現在のオランド大統領。
カナダとフランスで医師らに安楽死と自殺幇助を巡る意識調査(2013/2/18)
2013.07.11 / Top↑
【3日追記】
昨日このエントリーを書いた時には
「涙活」を使ったプロモが、私が行った映画館単体の作戦だったのか、
それとも全国規模の作戦なのかということが判断できず、
以下のような書き方をしましたが、

その後のツイッターでのコメントなどからすると、
どうやら全国的に「涙活」とつなげたプロモが行われているように思われます。

      ----------


この映画については、何も言うまいと心に決めていたのだけれど、
今日やっとこういう声が出てきてくれたと知ると、

(声)映画「くちづけ」強い違和感 (朝日新聞Dignital, 2013年6月30日)
http://www.asahi.com/opinion/articles/OSK201306290018.html

心の歯止めが効かなくなってしまった……ので。


ひと月ほど前、
映画館のトイレに入ったら、
個室ドアの裏側、ちょうど便器に座った目の高さに、

映画「くちづけ」の
その映画館が独自に作成したと思しきチラシが貼られていた。

そこに書いてあったのは、

女性の皆さま 必見!!

「涙活」をご存知ですか?
涙を流すとストレス解消になるんです。

泣きたくても泣けない
あなたにおススメの映画はこちら。


「くちづけ」については
この時に予告編を見ただけなのだけれど、

公式サイトはこちら ↓
http://www.kuchizuke-movie.com/sp/

これ、癌になった父親が
知的障害のある娘を残してはゆけないと思い詰めた挙句に、
自分の手で殺す、という話ですよね。

障害のある人が親の手で殺されることが、お手軽に「泣ける」娯楽ですか?
人がひとり殺されることが、「可哀そう」と泣いてすっきりするための消費材ですか?

人が人を殺す話を
実話だからこそ切なくて泣けますなどと言って、

「泣きたくても泣けない」人はいらっしゃい、
「ストレス解消」や「涙活」にもってこいですよ、
だから「必見」「おススメ」ですよ、と売り込むことには、

なにか根本的なところに、とてもおかしいものがありはしませんか?


私は障害のある子どもを持つ親として、ずっと、
「障害や介護の問題を語る時に、そこに美意識を持ちこまないで」と訴え続けてきました。

なぜなら、その無責任な美意識は親や介護者から助けを求める声を奪い、
自分と子ども(介護される人)だけの狭く閉塞した「自己責任」の世界へと
親や介護者を追い詰めていくからです。

そして、例えば以下のエントリーで書いたように、

「美意識とは所詮、
相手の苦悩とは無関係な場所にたたずむ傍観者の贅沢に過ぎない」からです。

介護を巡るダブルスタンダード・美意識(2008/10/27)

そうして、さらに、
例えば「くちづけ」の公式サイトのどこかに、
ほんの“付け足し”のように書かれている
「ひたすらにマコを愛し、彼女の幸せを望んだいっぽんが、
なぜ、こんな選択をしなくてはならなかったのか?」という
本当は問われるべき問いが、涙と共に簡単に流し去られて、

「こういうことが起こらないために、社会はどうあるべきか」という問題としては
誰も考えなくなるからです。

子どもに障害があろうとなかろうと、
我が子を我が手で殺したいと望む親などいません。

それなのに
他にどうしようもないと思いこむほどのところに追い詰められた親が
その挙句に子どもを殺すという愚かな決断をしてしまった時に、
世間からそれを賛美され、涙ながらに称賛の手を叩かれてしまうなら、

親は、いったい、どうすればいいのでしょう?


【その他、できたら読んでもらいたいエントリー】
「総体として人間を信頼できるか」という問い(2008/8/29)
「どうぞ安心して先に行ってください」(2009/3/17)
「Gilderdale事件はダブル・スタンダードの1例」とME患者(2010/1/29)
ケアラー連盟設立1周年記念フォーラムに参加しました(2011/7/1)


               ――――――

もう一つ、
以下の公式サイトの内容紹介のページを見て、愕然としたこと。
http://www.kuchizuke-movie.com/sp/about/introduction.html

そこには以下のような、古色蒼然としたステレオタイプな記述が並んでおり、
これは、アシュリー事件の擁護論の世界そのものだ……と。

「カラダは大人、精神は子供のままの人たち」

「30歳のカラダに7歳の心をもった、天使のように無垢な娘マコ」

「そこの住人たちもマコも、天使のように無邪気で陽気」

「そんな彼女の命が、なぜ、この世から消えなくてはならなかったのか?」
そこには、父娘の悲しい愛情の物語がありました」


アシュリーは生後3カ月の赤ちゃんと同じだから。
アシュリーは6歳の身体に赤ちゃんの精神。

そんなアシュリーが、なぜ子宮と乳房を摘出され、
ホルモン大量療法で身長の伸びを抑制されなくてはならなかったのか?

そこには父と母の深い愛情とデジタル思考の物語がありました。

だって、ほら、
このまま成熟した女性の身体に赤ちゃんの精神が宿ったのではグロテスクで、
アシュリーが周りの人たちから愛してもらえなくなるから――。

中身が赤ちゃんのアシュリーには
小さな体の方が似つかわしいから――。

アシュリーは、寝たきりの
無垢な心の「枕の天使」なんだもの――。
2013.07.11 / Top↑