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BioEdgeにベルギーの安楽死関連が3タイトルあって、うち2つは安楽死が例外的なことではなくなり社会に定着していくと起こる問題だと思うのだけど、安楽死を引き受ける少数の医師に負担が集中する問題と、それらの医師が十分な報酬を得られていないと不満に感じ始めている問題。もう一つは、共に終末期ではない夫婦が揃って安楽死、とのニュース。いずれまとめてエントリーに、と思いつつ、果たせるかどうか。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10576#comments

日本。肥満薬の治験でデータ改ざんか 身長偽り肥満度上げる:このニュースでびっくりしたのは、「治験施設支援機関」なるものが日本でもすでに出現していること。Avandiaスキャンダルに関連してWPの記事では「治験を請け負う民間企業まで登場しており、大学や研究機関から、こうした営利企業へと治験が流れているという。既に製薬会社の治験資金はすでに半分以上がこうした企業に流れており、そうした仕組みの中では研究者は製薬会社に使われる手足と化してしまう」と書いている。
http://www.asahi.com/national/update/0630/OSK201306290129.html

【関連エントリー】
NHS新たにヤセ薬を解禁(2008/7/9)
6月解禁のヤセ薬、精神障害起こすと早くも販売中止(英)(2008/10/25)
EUがヤセ薬を解禁、「誰の最善の利益?」(2009/1/31)


日本。脳死肺、患者移植前に体外で機能回復…装置導入。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130630-00000919-yom-sci

日本語。日本大使館も「標的」に=米当局が盗聴・傍受―スノーデン容疑者、文書暴露・英紙。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130701-00000010-jij-n_ame

米最高裁の黒人投票権保障法の違憲判決に、最高裁は人種差別は終わったと思っているが、終わってなどいない、とGuardianのコメント欄。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/jun/30/us-supreme-court-thinks-racism-dead

米最高裁が同性婚を認めたけれど、インドと米国政府は同性婚を進めて、それによって代理母産業の振興に期待?? という読みをBioEdgeは2012年にしていたらしい。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10135

CNNで途上国の妊婦を保護する施設の活動を紹介するCMが流れて、その中で途上国の女性に携帯を持たせ、それらを通じて母子保健に必要な啓発や情報提供を、という流れになっていたので、あれ……なんだこのEvery Woman Every Childって……と検索してみたら、やっぱり国連事務総長、ゲイツ夫人、英国キャメロン首相、クリントン前国務長官。それからビッグ・ファーマ、J&JのCEO。WHOの長官、と。なんだか、なぁ……。
http://www.everywomaneverychild.org/about/world-leaders-speak-out

【関連しているかもしれない、していないかもしれないエントリー】
米・英政府とゲイツ財団とUNFPAにより優生施策、7月には国際会議も(2012/6/7)
「衛生マッピングとGPSで、途上国の子ども一人漏らさずワクチンを」とビル・ゲイツ(2013/4/26)


日本語。反大統領デモ、100万人規模に=全土で退陣要求―衝突で死傷者・エジプト。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130701-00000012-jij-m_est

日本語。ギリシャで授業中、気失う子続々…緊縮財政で「飢え」深刻。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130630-00000353-yom-int

日本<生活保護>集団提訴へ…1000人規模「減額不当」。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130701-00000007-mai-soci

日本。「どうしてワタミを候補者にするんだ?」過労死した社員の両親、自民党に抗議。
http://tanakaryusaku.jp/2013/06/0007454

日本。自民・平沢議員「公認やめさせたい」 ワタミ渡邊氏の参院選出馬に大逆風。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130630-00000003-jct-soci

シルク・ド・ソレイユのパフォーマーがショーの途中で転落死。:シルクの財政難がだいぶ前に報道されていたことがあったけど、それ以前から、こんなに世界中からパフォーマ―希望者が憧れて集まってきて「入れてもらえるだけで名誉」な狭き門になれば、労働条件などはいくらでも劣悪にできるんじゃないかって、思ったことがあった。それとも一流のパフォーマーとして、それなりの処遇なんだろうか。
http://www.guardian.co.uk/stage/2013/jul/01/cirque-soleil-performer-dies-fall
2013.07.01 / Top↑
(前のエントリーからの続きです)

Dr. Jeffersonは問題のカイザー研究に関わった研究者の追跡を試みるが、
もともと当初の実験データは見ておらずロッシュの分析に基づいた研究だったとか、
研究ファイルをなくしたという話しか出てこなかった。

JeffersonとDoshiは、
医学研究は信頼に基づいて行われている、その信頼はヒエラルキーになっており、
自分で検証するすべを持たない患者は監視してくれる機関があるものだと信じているが、
林医師の指摘は、その信頼を揺らがせ、監視してくれる機関がないことを明らかにした、と。

そこでロッシュ社に直接、データを求めたJeffersonは
同社から守秘の同意文書に署名を求められた。
署名しない限り、協力はできない、と。

2009年12月にチームは
タミフルの合併症・入院予防効果は確認できないとBritish Medical Journalに発表。

その際、BMJも独自の調査結果を発表し、
ロッシュ社がタミフルに関する論文でゴースト・ライターを使っていたこと、
そのライター達が効果を強調するようプレッシャーを受けたと証言していることを
暴いた。

ロッシュ社はロッシュ社で2010年にハーバードの研究者らに
臨床実験データの再検証を依頼し、その検証からは
カイザー研究の結果を追認する結果が出されているのだけれど、

BMJの動きを受け、
ロッシュ社はデータの一部として、3000ページを超える資料を提供。

2011年にはEuropean Medicines Agencyも19の臨床実験報告、
22000ページ以上のコピーをチームに提供した。

BMJは昨年秋、
今後は製薬会社と研究者らが求めに応じてデータを提供することに合意した場合にのみ
臨床実験の結果報告を掲載する、との方針を発表。

ロッシュ社は今年2月に、
コントは求めに応じて外部研究者らにも治験データを公開する、と発表。

今年4月には
同社がスポンサーとなったタミフルの治験の全レポートを
コクラン・チームに公開すると約束。

Yale大の心臓科医 Krumholz医師は
「こんなに年数が経って、それでもまだタミフルが効くかどうかわかっていない。
何10億も売れているという薬の効果と安全性について
分かっていることを全部公開したくないというのは、理解に苦しむ」と。

こうした動きの中、
グラクソ・スミス・クライン(GSK)はロッシュ社に先駆けて、
今後、2007年以降のグローバルな臨床実験の詳細データをすべて公開する、
その後は2000年にまでさかのぼって公開する、と約束した。

背景には、同社が去年、
糖尿病薬Avandiaの治験で心臓病リスクがあるとのデータを隠ぺいした件と、
抗うつ薬パキシルの自殺企図の副作用データの隠ぺいの件とで
合衆国法務法に訴追されて、有罪を認め、
同種の罰金としては史上最大の罰金30億ドルの支払いで合意したばかりで、

イメージ回復の必要という事情もある。

Avandiaスキャンダルについては ↓
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)

Paxilスキャンダルについては ↓
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)

その他の製薬会社のスキャンダルと罰金額の一覧は ↓
ビッグ・ファーマのビッグな罰金(2012/7/4)


the European Medicine Agencyは先週月曜日に
薬の認可の際に治験データの公開を義務付ける来年からの新方針の草案を発表。

ロッシュとGSKはこれを支持しているものの、その他の製薬会社も
The Pharmaceutical Reseach and Manufactures of America も
そんなことをさせられたら競争相手に手の内を明かすようなもの、
それならヨーロッパ市場から引き上げざるを得ない、と反発。

米国FDAも
ヨーロッパの動きを注視しつつも、
個人情報や企業の機密情報との関連で連邦法は
公開すべき情報を制限している、と。

Dr. Doshiらは、製薬会社が公開しないなら、自分たちで、と。


なお、タミフルとコクラン・グループに関しては
日本でも薬害オンブズパーソン会議が追いかけてくださっていました ↓

タミフルのインフルエンザ合併症予防効果は証明されていない - コクランレビューとその背景
(薬害オンブズパーソン会議 2009/12/16)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=272

コクラングループはあくまでタミフルに関する全臨床試験データの公表を求める -ロシュの「諮問委員会」設置の申し入れを拒否 
(薬害オンブズパーソン会議 2013/4/2)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=376


【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)

【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)

【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)

最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側(2013/1/4)

この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)

こんな話も ↓
Vytorinスキャンダルで被害被ったと株主に訴えられたメルク、6億8800万ドルで和解(2013/2/17)
2013.07.01 / Top↑
一番最近では6月28日の
NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみたなど、
製薬会社の資金と影響力によって医療のエビデンスがゆがめられている問題については、
いくつもエントリーにしてきましたが、

29日のNYTに
標題のような内容の大変興味深い記事がありました。

薬の治験データは
都合のよいものだけが発表されるなど製薬会社に操作されているというのは
1990年代から2000年代にかけて、指摘されてきた、
薬の効果と安全性のエビデンスそのものを揺るがす大きな問題で、

当ブログでも、以下のエントリーなどで
この問題についての指摘や警告の話題を拾ってきました ↓
「製薬会社は倫理観をもって」と英当局(2008/3/31)
製薬会社の舞台裏についてArt Caplan(2008/4/18)

その後の数々のデータ隠ぺいや改ざんのスキャンダルについても、
あれこれと拾ってきていますが(次のエントリーの文末にリンク)、

09年にはハーバードの医学生たちが
講義で薬について云々する教授陣に対して
製薬会社との金銭関係のディスクロージャーを求めている、というニュースも ↓
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)


今回は
ジョンズ・ホプキンスのポス・ドクの Dr. Peter Doshiなど、研究者らの中から、
製薬会社に対して治験の全データの公開を求める運動が始まっている、というニュース。

Dr. Doshiがこうした運動に加わることになった、
インフルエンザ治療薬タミフルの効果と安全性検証を巡る経緯が大変興味深い。

なにしろタミフルと言えば、
私たち一般人でも「インフルエンザだったら48時間以内にタミフル」くらいは
普通に頭に入っていたりするほど有名な薬だし、

突発的な行動のリスクが一時ずいぶん騒がれたものの、
どうやら「しっかり観察しましょう」で収まったみたいだから
それなりに効果も安全性も確認されているのだとばかり……。

まさか、実はまだ十分に検証されていないなんて……。

そのタミフルの効果と安全性の検証をめぐるDr. Doshiたちの物語が始まるのは、
豚インフルエンザの大流行に世界が震撼した2009年の夏。

ローマ在住の英国人内分泌医、Dr. Tom Jeffersonは英・豪両政府から
Roche社のタミフルについて文献の検証を依頼され、
コクラン共同計画と協働でその作業を行った。
そこにDoshiも求められて参加した。

しかし、「そもそもタミフルは効くのか?」の検証は考えた以上に困難で、
4年後の現在も、NYTには「まだ決定的な答えは出ていない」と書かれているのだけれど、

2009年には世界中の企業や政府がタミフルを備蓄し、
それだけで2009年の売り上げ30億ドルのうちの約6割を占めたのだから、
タミフルの効果は保健問題としてのみならず経済問題としても重要な問題だった。

チームが検証を始めて間もなく、
コクランのウェブ・サイトに衝撃的な投稿がある。

日本の小児科医、林敬次氏がコメントで、
合併症予防効果を肯定した「カイザー研究」では行われた10の臨床実験のうち、
2つの実験データしか公表されていないことを指摘し、
8実験でのデータが公表されていないのに、どうして効果があると結論できるのか、と
疑問を投げかけ、残りのデータの公表を求めたのだった。

原文はこちら ↓
http://www.bmj.com/highwire/filestream/440784/field_highwire_adjunct_files/1

(次のエントリーに続きます)
2013.07.01 / Top↑
南アの元大統領マンデラ氏の終末期医療を巡って、家族は差し控えを望まないことを強調。どうも「無益な治療」論がちらついている気配。このニュース、拾ったのもThaddeue Popeだし。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/06/mandela-v-mediclinic-heart-hospital.html

米NIHが実験に使われてきたチンパンジーを引退させる、と表明。:記事に2頭のチンパンジーが歩いている写真が使われているのだけど、ぱっと見、下半身がつながった双頭の動物に見えて、一瞬「実験で、こんないきものをわざわざ作ったのか」と愕然とした。ただ一頭の下半身がもう一頭の陰に隠れているだけなんだけど。でも、本当はもっと惨いことが行われてきたんだとも思う。そういえばこういうのもあった ⇒ 人間の欲望のオモチャにされたチンパンジーの物語・映画「プロジェクト・ニム」(2011/7/11)
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/nih-to-retire-most-research-chimpanzees/2013/06/26/a878a4ae-de78-11e2-b197-f248b21f94c4_story.html

英国政府、遺伝的には3人の親を持つ子どもが生まれることになるIVF技術を認可。: 去年、パブコメやってた あれですね。 ⇒ 「3人の親を持つ子ども」IVF技術で遺伝病回避……パブコメ(英)(2012/9/18)
http://www.guardian.co.uk/science/2013/jun/28/uk-government-ivf-dna-three-people

米国USPSTFから、ブーマーズ全員にC型肝炎のスクリーニングを、との提言。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/262411.php

母乳育児は子どもの認知発達を促し、成長した暁に社会的階層の階段を上っていく確率を上げる。:この頃、研究デザイン以前に、前提となる仮説の立て方そのものに首をかしげる科学研究が多くなった気がするんだけど。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/262483.php

ワクチンでギランー・バレ―症候群が増加することはありませんって。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/262410.php

1型糖尿病のワクチン、治験で有望。:この前、ワクチンのせいで糖尿病が増えているという調査結果もあったけれど。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/262559.php

米国教育改革にビル・ゲイツがカネの力で不当な介入をしていると批判を続けているWPのValerie Strauss記者、「今月ゲイツ財団からカネが渡ったところ」情報を財団HPから拾ってきている。毎月出すのかしら。だとしたら、いい企画だと思う。こういうのをワクチン関連でもやってくれるジャーナリストがいたら面白いのに。あと途上国への「家族計画」とGM農業支援関連でも。
http://www.washingtonpost.com/blogs/answer-sheet/wp/2013/06/28/who-bill-gates-is-giving-money-to-now-in-education/

そのゲイツ氏主導の教育改革で、生徒の成績に応じて学校がAからFの段階評価をされることについて、VA州の教育長らから「貧しい子どもたちが沢山通っている学校が低い評価を受けることにしかならないのでは」との懸念。
http://www.washingtonpost.com/local/education/va-superintendents-worry-new-grading-scale-will-measures-poverty-not-instruction/2013/06/26/d7ad7566-de68-11e2-948c-d644453cf169_story.html

ゲイツ財団、アフリカのジャーナリズムを支援するため、80万ドルのグラントを創設。:これは、とても、とても恐ろしいことでは? 今でも、現地からゲイツ財団のワクチン支援に疑問を呈する声を細々と拾っているのは、フリーのジャーナリストだったりするのに、これからは現地のメジャーなメディアで一斉にワクチン礼讃、GM農業礼讃、家族計画や貧しい女性の不妊手術礼讃が始まる……。
http://www.ippmedia.com/frontend/index.php?l=56404

【関連エントリー】
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)
ゲイツ財団肝いり“HIV感染予防ゼリー”は「新たなタスキギ実験」?(2011/6/24)
「ゲイツ財団(の連携機関)が途上国の子どもに銃を突きつけワクチン接種」(2011/7/29)
公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)


国際ロータリーとゲイツ財団がポリオ撲滅で提携。: もともとポリオ撲滅はロータリークラブが力を入れてきた活動だったのだから、今まで手を組まなかったこと自体が不思議なくらい。ただ、ロータリーは30年前からワクチンでのポリオ撲滅に力を入れてきて、なし得ていないんだけど。方法論についての反省というのは、ないのかな。
http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2013-06-27/mumbai/40232292_1_gpei-global-polio-eradication-initiative-chairman-rotary

EU、病気研究でゲイツ財団と提携。:これなんかも、昨日のエントリーで描いてみた「大きな絵」の一部として起こっていること、と思うんだけれど。
http://brussels.cta.int/index.php?option=com_k2&id=7780:eu-and-gates-foundation-commit-to-disease-research-&view=item&Itemid=54

英国の介護施設で夜勤のときに入所者のアラームを止めてまでして寝たスタッフが、ネグレクトを問われた裁判で無罪に。:この前オーストラリアで自閉症の子どもの事故で責任を問われていた介護職もそうだけど、この頃こういう話が出てくると介護職が移民であることが多い。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2350397/Carer-accused-sleeping-duty-responsible-19-vulnerable-patients-cleared-neglecting-them.html

ProPublicaの米国の人材派遣・奴隷労働の闇シリーズ。米国で、大企業の工場のラインなどの人員を人材派遣会社の下請けとして、手配し・集め・選別し・送迎し・チェックを(送迎費用を天引きした上で)配布するraitero (「車に乗せてくれる人」という意味のスペイン語)たち。送迎費用やチェックの換金手数料を払わされて結局は最低賃金以下なのに、それでもモンクを言えばraiteroに嫌われて仕事がもらえない、その多くが不法移民である貧困層の実態をProPublicaがシリーズで。ミニバンに10人以上詰め込んで、送迎費用1日8ドルを天引き。座った人の膝の上に乗れ、と。
http://www.propublica.org/article/taken-for-a-ride-temp-agencies-and-raiteros-in-immigrant-chicago
http://www.propublica.org/article/the-expendables-how-the-temps-who-power-corporate-giants-are-getting-crushe

米最高裁がDefense of Marriage Act を違憲とし、同性愛者の結婚に道が開かれた。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jun/26/supreme-court-doma-prop-8-rulings

ほとんど読んでいないし、背景知識がないので良く分からないのでもあるけど、米国の大学のアファーマティブ・アクションに、どうやら逆行の気配ただよう判決が最高裁から出たらしい。テキサス?
http://www.washingtonpost.com/blogs/answer-sheet/wp/2013/06/26/a-setback-for-racial-justice/

オーストラリアでギラードを失脚させて前首相のラッド氏が労働党党首に返り咲き。:全然状況は分からないけど、ちらっとCNNで聞いたのでは、ギラードへのネガティブ・キャンペーンがあまりにも酷い女性蔑視であることに唖然とし、腹が煮えた。一国の首相が、どうしてラジオ番組のキャスターから「あなたの夫はゲイではないのか」という質問を投げかけられなければならない? 胸や太もものサイズが首相としての資質や能力にどう関係するというんだ??
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-23061391#%22

日本。「二重検定おかしい」都立高校教師ら反発 実教出版日本史
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013062802000112.html

日本。ソーシャルメディアの投稿監視サービス、ガイアックスが自民党に納入。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130619/486303/

日本。「混合診療」の拡大方針、ってどういうこと?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130627-00010002-wordleaf-soci
2013.07.01 / Top↑
優れた終末期ケアの手順書として日本でも採用されているリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が
高齢者を機会的に消極的安楽死へと導くツールと化しているとして
英国でここ数年問題となり、ついには保健省が調査に乗り出した流れについては
以下のエントリーで追いかけてきましたが、

“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)


以下の報道によると、
エジンバラで開催された英国医師会(BMS)会議で
LCPの理念の意義は再確認されたものの、
適用方法には問題がある、と。

指摘された問題点としては、

・一旦LCPの対象となると、
 再評価もないまま何週間もLCPが続行されている。

・患者がLCP適用となったことを
 家族が知らされていない。

・患者がLCPになったことを
 時には医師も知らされていない。

・チェックリスト文化が、機会的な思考につながっている。

・LCP対応になった患者のパーセントに応じて病院に報酬が支払われる
 金銭的なインセンティブが設けられている。

・その結果、患者と家族の間に、
 LCPを死への一方的なパスウェイ(細道)だという恐れが生じ、
 終末期医療そのものへの不信を招いている。

英国医師会は
医療職に向けてLCPの適切な用い方の研修が必要であること、
NHSの数値目標とインセンティブの廃止を求めることを決議。

自殺幇助合法化に一貫して反対してきた議員で、
緩和ケア医、次期BMA会長でもあるIlora Finlay氏は、

LCP対応となった患者の中にも
3%程度、症状が改善するケースがあるのに、
パスウェイという単語を含むLCPという呼称の
一方通行というイメージに患者も家族も怯えてしまっているので、
この呼称はやめた方が良い、と。

Doctors warn Livepool Care Pathway seen as ‘one-way ticket to death’
The Telegraph, June 28,2013

‘Don’t call it the Liverpool Care Pthway’: Doctors admit it sounds like a one-way ticket to the grave
The Daily Mail, June 28, 2013


【Finlay議員関連エントリー】
英国医師会、自殺幇助に関する法改正支持動議を否決(2009/7/2)
BMJの副編が「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」(2009/9/6)
Campbellさん率いる障害者団体連合が自殺幇助ガイドラインを批判(2009/12/22)
Warnock, Finlay, Purdy他が自殺幇助で円卓討論(2010/1/31)
「PAS合法化なら年1000人が死ぬことに」と、英シンクタンクが報告書(2010/10/26)
英国上院に自殺幇助に関する検討委員会(2010/11/30)
Dignitasで英国人がまた自殺、今度は「老いて衰えるのが怖いから」(2011/4/3)
2013.07.01 / Top↑
最近、気になっている本の一つがこれ。

『ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実』
マーシャ・エンジェル著 栗原千絵子、斉尾武郎訳 篠原出版新社 2005

著者は、New England Journal of Medicineの前編集長。

アマゾンのこの本のページに
京都大学医学部付属病院探索医療センター検証部教授の
福島雅典氏の「翻訳刊行によせて」という文章が掲載されており、

その一部に以下の下りがある。

科学はもはやかつてのそれではない。科学はビジネスと結びつき、その水面下では熾烈な特許戦争が繰り広げられている。今や販売戦争を勝ち抜くため研究結果を権威づける手段として世界中から競って論文が投稿されるトップ・ジャーナルは、ビジネスの僕と化しつつあるのではないか? モンスターのごとく肥大化した科学を奉じる共同体は、すでに善意によって制御しうる域を超えている。哲学のない科学は狂気(凶器)である。科学を妄信しトップ・ジャーナルを崇める状況は、何か、歪んだ宗教とでもいうべき様相を呈している。


これは正に当ブログが
日々のニュースの断片を拾い集ながら、
その断片の集合体として描かれていく「大きな絵」として指摘してきた
「グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義」の
「科学とテクノで簡単解決」利権構図そのもの。

例えば、
医学雑誌にも製薬会社がらみのバイアス、「ディスクロージャーを」と監視団体(2009/2/17)
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
事業仕分の科学研究予算問題から考えること(2010/12/12)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)

そして、去年、
同じくNEJMの現編集長もまた、Avandiaスキャンダルに際して、

そうしたバイアスの排除に向けて努力してきたが、
最近ではNEJMに発表された論文であっても、
製薬会社資金の治験であれば医師らが信頼しなくなりつつあり、
医学研究そのものが崩壊の危機の様相を呈してきた、と発言している。

製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)

先週この本のことを知り、読もうかなぁ、と思っていたところ、
26日の毎日新聞の本田宏氏の連載「暮らしの明日 私の社会保障論」に、
『ビッグ・ファーマ』から以下の引用があった。

エビデンス(科学的証拠)に基づく医療が普及して久しいが、そのエビデンス自体が、世界をリードする米国製薬業界のマーケティング戦略によってゆがめられている。自社の薬に会う病気を宣伝し、病気と思いこませ、医師への薬の教育に大きな影響を与え、臨床試験も実質的に支配している。そして、資金提供した臨床試験の多くは結果的にゆがめられている根拠がある。


本田氏の連載記事の趣旨は、
バルサルタンのスキャンダルを巡って、
日本の医療費亡国論が医学研究分野の資金不足を招いていること、
その状況のままアベノミクスで医療研究での産学連携が進めば、
「新薬や新技術の開発時に同様の問題が繰り返される危険性」を指摘して、
低医療費政策の転換を訴えるもの。

で、私がすごく興味深いな、と思ったのは、
この本田氏の論考が掲載された翌27日のトップニュースが「iPS臨床承認」だったこと。

関連記事が他にも盛り沢山で、
それらから目についた情報を拾うと、

安倍政権は
iPS細胞をはじめとする再生医療研究に今後10年間で計1100憶円を拠出するという。

今年4月に京大のiPS細胞研究所に新らしくできた部署に
山中教授が「医療応用推進室」とネーミングしたのも、
そうした資金を獲得しやすくするための作戦だったのだろうし、

記事では山中教授と世耕弘成・内閣官房副長官の繋がりも指摘されているけれど、

そこにはもちろん
12年の260億円から30年に約1.6兆円、50年には約3.8兆円という国内市場規模予測と、
その予測に基づいて「再生医療を経済再生の目玉に」という政府の思惑がある。

つまり、このブログで何度も何度も書いてきたように、
先端医療の問題は薬やワクチンと同じく、
すでに保健医療の問題というよりも
政治経済の問題なんだということであり、

そこに本田氏の連載の内容を重ねて考えてみたら、
見えてくるのは、とても皮肉なことに、

グローバル強欲ひとでなしネオリベ経済の中で日本が生き残るためには、資金は、
国際競争に勝ち目があって国内的にもマーケット創出可能性が大きいところに重点配分……
という「政治経済」施策の方向性であって、

それ以外のところでは、
本田氏の主張の逆方向に向かうだろう、ということでは??

一方には、iPS細胞の臨床研究は「緒に就いたばかり」で
癌化や本来の細胞に戻ったりウイルス混入のリスクなど未解明な部分が多く、

研究者の間からですら、過剰な期待を抑えようとする声が上がっていて、
(でももちろん政府もメディアもマーケット創出のためには、
その「過剰な期待」をこそ煽るに決まっているのだけれど)

そんな中で「なぜこうも急ぐのか」という問いの答えとして、毎日の記事は、
「海外と日本が「一番乗り」を争ってしのぎを削る現状がある」ことを指摘し、
ある審査委員会委員の「海外でのiPS細胞を使った臨床試験の動きがあり、
事務局が結論を急いだのかもしれない」との発言を紹介する。

臨床応用で最も有望とされている
(毎日の記事には、あとは「ホープレス」だと言った研究者の発言も)
加齢黄斑変性の研究プロジェクト・リーダーですら微妙な発言をしている。

「世界初」でないと、今受けている支援が全部なくなるのではないかという危機感はある。米国でも二つの臨床試験計画が動いており、常に意識している。米国は企業主導なのに対し日本はアカデミア主導。ビジネスで突っ走るのではなく(新しい)治療を作ろうと頑張る日本の姿勢は(spitzibara注:「姿勢を」ではなく「姿勢は」)大事にしたい。

その一方で、

応用を目指す以上は戦略が必要。研究の最初の段階から企業も参画すべきだ。


で、冒頭に述べたように
本田氏は前日の連載で次のように書いている。

安倍晋三の経済政策「アベノミクス」は、医療による経済活性化を目指すが、産学連携が進めば、新薬や新技術の開発時に(spitzibara注:バルサルタンと)同様の問題が繰り返される危険性が高い。


結局、これらから透けて見えてくるのは、
グローバルな医学研究競争にかろうじて勝ち残ろうとするならば、
「ビジネスで突っ走る」グローバル強欲ひとでなしネオリベ世界に
なりふり構わず(国民の生命を守る責任すら放棄して)乗っかっていく以外にない事情……?

毎日新聞の記事によると、
日本政府は、再生医療の早期承認を可能にする薬事法改正案まで用意している。
合わせて不適切な再生医療を規制する再生医療安全確保法案も用意されているとはいえ、

これで海外企業が参入しやすくなるんだそうな。

再生医療に詳しい研究者の中からは
「海外企業が日本を治験の場に選び、
日本人がモルモットになる可能性がある」との指摘も。

これは今、途上国で起こっていることが日本で起こる、ということだろうけれど、
実は日本でも精神科薬の領域では既に起こっているようにも思われ、↓

GSKが日本で7~17歳を対象にパキシルの臨床実験、現在“参加者をリクルート”中(2010/6/12)

それだけに、
この「日本人がモルモット」という指摘はリアルに怖いなぁ、と思うけれど、

改めて考えてみれば、
緒に就いたばかりで、まだ分からないことだらけの再生医療を
「なぜこうも急ぐのか」というほどの見切り発車で国民に大盤振る舞いして
マーケット創出を狙おうという「成長戦略」って、

「世界初」を達成するために、日本政府が、
国民をモルモットとして研究に供するに等しい……ことない????
2013.07.01 / Top↑
医療の中にある、いかんともしがたい「届かなさ」について
先週、あるところにちょっと書いてから、ずっとそのことについて
というか、その「届かなさ」を超えるすべについて
考えるともなく考えていた。

そのことが、今朝のコメントを機に直前エントリーを書いた
背景にあるのだろうと思うのだけれど、

そのエントリーの原稿を午前中に書いて、
午後、数日前からちょっとずつ読み進んでいる本を手に取ったら、

そこにも、その「届かなさ」の典型のような、
痛切な体験が描かれていた。

その本は、まだほとんど読めていないけれど、
『患者追放 - 行き場を失う老人たち』
向井承子 筑摩書房 2003

著者の母親が入院中に急変した時の医師との会話。

 主治医ではない見知らぬ四○歳くらいの外科医が反論も質問も許さないような緊迫した口調で説明を始めた。

「いま、この人の体内になにか大変な異常が発生しているようです。腹膜に穴があいて糞便がもれた可能性もあります。即刻、手術をします。署名捺印していただけますか?」

……(中略)……

「九○歳の大手術ですが、その後、どうなるのですか?」

出端をくじかれたような表情が医師に見てとれた。とたんに、

「この人、歩いて帰れると思っているんですか? ぴんぴんしていたんですか? 生死は五分五分です。手術適応ですよ」

「でも、生きてても、今よりもっと悪くなるんでしょう?」

 たったいまこの時でさえ三界に家なくさすらう日々である。これ以上重くなったらだれがどう責任をとれるのか。いったい母は幸せになれるのか。疲れきってコントロールを失った私の口から反射的に言葉が飛び出す。医師は苦々しげな口調で言い切った。

「手術拒否ですか。でも、尊厳死の対象ではありませんよ。僕は安楽死は手伝いません。三分以内に判をついて下さい」
(p. 28-29)


手術後に出てきた別の、若い誠実そうな医師は
「ぼく自身は、この人への手術は正しかったとは思えないのですが」と言い、

著者の母親は結局、術後に目覚めないまま、
誰の目にも明らかな生から死への転換の表情が現われて、
家族みんなの納得を待って著者が「もういいです」といって、
生命維持装置が切られた。

過剰医療や尊厳死や安楽死を云々して
患者や家族に向かって「死に方くらい決めておけ」と恫喝する前に、

患者や家族が
真に「自己決定」や「自己選択」と呼べる意思決定ができるためには、

本当はどうにかしなければならないのは、
医療の中にある、この、いかんともしがたい「届かなさ」の方なんじゃないんだろうか……、

……という思いが、頭の中を最近グルグルし続けている。
2013.07.01 / Top↑
今朝、こちらのエントリーのコメント欄で、
患者が医療の「届かなさ」に挑むことに要する多大な勇気とエネルギーについて
ちょっと触れたら、

25年もの時の向こうから、ある情景と
そこにあったヒリヒリするような痛みの記憶が
思いがけない鮮烈さで蘇ってきたので、

いつか書きたいと思いながら、ずっと書けずにきた
その体験のことを書いてみたい。

        ――――――――

ミュウは生まれるなりNICUの保育器に入って、
生後3日目には胃穿孔の手術を受け、
人工呼吸器と連日の交換輸血とで肺炎と敗血症と闘う日が長く続いた。

NICUは産婦人科病棟の入り口にあり、
親の面会があると廊下側の大きな窓のブラインドが上がって
中が見える仕組みになっていた。

私たち夫婦も、ミュウがNICUに入って数日後からはブラインドを上げて
廊下側に移動してもらった保育器の中のミュウと「面会」させてもらったけれど、

出産後の私はまだ産婦人科病棟に入院中なものだから、
つい何度もNICUに足が向いた。

とはいえ、夫婦そろってもいないのに、
そう何度も「面会」を求める勇気もなくて、
昼間は受付の小さな小窓から中を覗いてみたり、
なんとなく立ち去りがたく、その辺りをホバリングしていたりするのが
産後の入院中の私の日課となった。

もう一つ、出産後に私に課された日課があった。

それは搾乳。

ミュウの状態が安定して飲めるようになる日に備えて
母乳を絞って冷凍しておくために、最初は出ないかもしれないけれど、
毎日決まった時間ごとに授乳室にいって搾乳しなさい、と
出産の翌日だったかに師長さんから指示された。

それで、指示された時間に授乳室に行くと、
今思えば私が「だいたい5分から10分前行動の人」だからだったのだけれど、
授乳室は無人だった。

隣の新生児室にいた看護師さんに声をかけると、
まだ時間には少し早かったからか、ちょっと迷惑そうな顔をしながらも出てきて
部屋の真ん中にある応接セットのソファーで搾乳の仕方を教えてくれた。

当然、すぐにうまく搾れるはずもないのだけれど、
練習しているうちに出るようになるから頑張れと言いおいて看護師さんが去った後で、
出もしない搾乳の努力をしていると、

いきなり廊下に賑やかなさんざめきが生じたと思うや、
ドアを開けて、ネグリジェ姿の若い女性たちが入ってきた。

考えてみれば、指定されたのは「授乳の時間」なのであり、
ここは「授乳室」なのだから当たり前のことなのだけれど、
私が入院していた6人部屋の他の5人はみんな婦人科の患者さんたちだったし
(私はその時まで気付かなかったのだけど、それは病院側の配慮だったのだろうと思う)
すぐそこで死にかけている我が子のことで頭がいっぱいだったので、

この病院でここ数日の間にそれほど多くの子どもが産まれていることも
子どもというのは普通はそんなふうに正常に生まれてくるものなのだということも
頭の片隅にちらりと浮かんだこともなかった。

わらわらと入ってきた新米ママたちは
みんな顔なじみの気安さで笑いさんざめきながら
新生児室から我が子を受け取っては、勝手知った授乳室で
赤ん坊の体重を量っては、増えたの減ったのとはしゃいだ声で賑やかにしゃべり、
てんでに応接セットや周辺の思い思いの場所に陣取り、
既に堂々の無造作さで胸をはだけて赤ん坊に吸いつかせる。
飲ませながら、また互いにそれぞれの子どもの様子を話題に騒々しくさんざめく。

私はあっという間に、
出産後の幸福と誇りではち切れそうなママたちに、ぐるりと取り囲まれてしまった。

本当はどうだったのか分からないけれど、
その女性たちはみんな、とても若く見えた。
彼女たちの真ん中で、一人だけほとんど空っぽの搾乳器を手に座っている自分が
ものすごい年寄りであるみたいに感じられた。

一人の時にはそんなには思わなかったのに、
急に自分だけがみすぼらしく薄汚い行為をしているように思えて、

無意識のうちにうつむき、肩をすぼめて胸を隠そうとしている自分を意識すると、
みじめさで胸がぎゅうっと締め付けられた。

「搾乳の練習」を続ける気力なんか、もうカケラも残っていないのだけれど、
中止して出ていくには、立ちあがり、このヒバリのような集団の中を横断して
新生児室へ行き、また看護師さんに声をかけなければならない。

そんな勇気もなく、ヒバリたちに取り囲まれた真ん中で、
じっとうつむいて身体を固くすくめたまま、
搾乳に熱中しているフリをして耐えた。

ママたちは授乳後にもう一度我が子の体重を測って記録すると、
子どもを新生児室に戻してから、部屋を出ていく。
一人出ていくたびに、ちょっとずつ呼吸がラクになった。

再び無人に戻っても、授乳室には薄桃色のざわめきの気配がまだ充満していて、
その中に一人で座ったまま、これを1日に何度も繰り返すのか……と呆然とした。

次の指定時間には20分ほど早く行った。

新生児室にいた看護師にはとても露骨に迷惑そうな顔をされたけれど、
ヒバリの集団が入ってくるのとちょうど入れ違いの形で部屋を出ることができた。

3度目は30分前に行った。

そして、「またか」という顔で出てきた看護師に、
「あの、ちょっと、お願いがあるんですけど」と切り出してみた。

それは、口にするには沢山の勇気が必要な言葉だった。

その勇気は、露骨に迷惑顔の看護師さんに切りだすことにも必要だったけれど、
一番たくさん必要だったのは、自分の弱さ、情けなさを自分で認めて、
それを他人の前に正直に晒すこと、その痛みを乗り越えるための勇気だったと思う。

私の子どもは生まれてきたけれど、
私の手元に来ることはできません。
今NICUで死にそうになっています。
この子のために搾乳はもちろんしてやりたいけれど、
無事に子どもを産んで、我が子を胸に抱いて授乳できるお母さんたちと同じ空間で、
その作業をすることは私には今ちょっと辛いです。
だから、忙しい看護師さんに迷惑をかけるのは申し訳ないんだけれども
今度から決められた時間の30分前に来させてもらえないでしょうか。

それを口にすることは私にとって
ものすごく屈辱的で、難しく、痛いことだった。

ただ、あの状況を繰り返すことにはもう耐えられなかったから、それなら、
涙ぐんだり感情的になったりせず、それを事実として淡々と伝えることで胸を張ろうと思った。

看護師さんは、一瞬、
それまで考えたこともなかったことに初めて気が付いたという顔をしたけれど、
余計なことは言わずに「いいですよ」と認めてくれた。

それまで暗くふさいでいた気持ちがそれで解放されて、
全身からふうっと力が抜け、ラクになった。
勇気を出してよかった、と思った。

20年以上経った今、勇気を出してよかった、と
あの時のことを振り返ると、やっぱり思う。

産まれたばかりの我が子が目の前で死に瀕しているという事態を
受け止めるだけで精いっぱいだった当時の私自身の精神衛生のためにも
それはもちろん良かったのだけれど、

その後の年月の間にいろんなことを考えながら今に至った私には、

医療の中にどうしても付きまとう、ある種の冷淡とか無関心を
変えていけるものが、もしもあるとしたら、その1つは、
これ以上は耐えられない、というギリギリのところから患者が
なけなしの勇気を振り絞って発する率直な声なんじゃないか、という気がするから。

そして、そんな患者の声には、
医療の中にある、いかんともしがたい「届かなさ」を超えてどこかに「届く」、
案外に大きな力があるんじゃないか、

それなら、その勇気こそが
医療の中にある冷淡や無関心を変えていける
希望でもあるんじゃないか、と思いたいから――。

だから、今この時にも日本中のあちこちの病院の片隅で、
目の前にある医療の冷淡や無関心や「届かなさ」に今にもくじけてしまいそうになりながら、
いや、それでもこれ以上は耐えられない、と必死の思いで口を開こうとして、

患者さんや家族一人一人が必死に振り絞っている勇気に、
心からのエールを――。
2013.07.01 / Top↑
高齢者の痛みとうつ病に認知行動療法で効果。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/new-ways-to-help-seniors-deal-with-pain-and-depression/2013/06/24/9d7a7e10-c6ea-11e2-9245-773c0123c027_story.html

プライマリー・ケアの開業医の診察時間を延長すると、子どものER利用件数が減る、という調査結果。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/262264.php

Malawiで地域での母子保健プログラムと医療サービス改善によって、母子死亡率が改善。マラウィって、麻疹のワクチンを子どもに無料で打ってくれる代わりに全員接種が義務付けられていて、こんなことが起こっていたりもする ⇒ 「ゲイツ財団(の連携機関)が途上国の子どもに銃を突きつけワクチン接種」(2011/7/29)
http://www.medicalnewstoday.com/releases/262404.php

G8はアフリカ諸国に対して、もっと農業への投資を、と呼びかけ。:グリーン・レボリューションのモンサントGM版……。
www.farminguk.com/WorldNews/G8-urges-Africa-to-invest-more-in-farming-nutrition_7321.html

日本語サイト。フランス映画『世界が食べられなくなる日』のサイト。「人が自分の子どもたちに毒を盛るなど、史上初めてのことです」「原発と遺伝子組み換え。いのちの根幹を脅かす、2つのテクノロジー」
http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

スコットランドヤードも、ロンドン警察の腐敗を問題視する活動を監視していた、とか。
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/jun/24/metropolitan-police-spying-undercover-officers

テキサスで、全米で最も厳しい中絶規制が実現か。妊娠20週以降の中絶の全面禁止。
http://www.usatoday.com/story/news/nation/2013/06/24/texas-abortion-restrictions/2451189/

日本。大阪。給料最低・小規模校…民間人校長、謝罪なき退職:おそるべき生徒の不在と「ボクの力をどれだけ発揮できるか、ボクの力がどれだけ認められるか、ボクの力にどれだけの報酬が出るか……」。教育は市場原理とは無縁なところにあるものだと思うのだけれど、大阪の教育改革は米国のゲイツ教育改革と感覚が近い?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130626-00000239-yom-soci

そのゲイツ財団が推進するCommon Coreカリキュラムが、現場教師らの戸惑いに。Cf. ビル・ゲイツの公教育改革に、米国の教師が突きつけ始めた“NO”
http://www.washingtonpost.com/local/education/montgomery-teachers-getting-ready-to-teach-tougher-math-curriculum-under-common-core/2013/06/19/ea9fe596-ca13-11e2-8da7-d274bc611a47_story.html

そのCommon Core カリキュラムについて、モンタナの共和党の党員から「IT導入で儲かる企業がカネで教育のスタンダードを買いにきている」との批判。
http://www.lewistownnews.com/articles/2013/06/24/opinion/letters/doc51c87dbddfe36566579675.txt

「数百万人の生死を左右するFTA」(ジャーナリスト堤未果のブログ)「たとえば、製薬会社から特許権や商標権侵害が指摘された場合、インド国内で生産されたジェネリック薬品を輸出するインド政府、そして医師など薬品を提供する人々も訴訟対象になる可能性がある。裁判はインド国内でなく世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターで非公開に行われ、上訴もできない。企業が知的財産保護を掲げ、国際条約の相手国政府を訴えるケースは、年々増える一方だ。11年にはスイスと二国間条約を結ぶウルグアイ政府が「公衆衛生政策は企業利益を脅かす」とし、フィリップモリス社に損害賠償と政策廃止を申し立てられている」 :たぶんここで取り上げた記事だと思うのだけれど、ゲイツ財団に集められていく富裕層の資金が問題である一つに「知的財産権をスーパーリッチが独占していく」ことが挙げられていて、イマイチちゃんと理解できなかったんだけれど、なるほど、こういうことなんだ。つまり1%の力を背景に、モンサント流のショーバイが主流になっていく、ということ……。

「本当に怖いのは【暴言】より「法改正」」(ジャーナリスト堤未果のブログ)「ほとんどまともに報道されていませんが、環境省が、放射性物質の管理・規制する権限を自治体から環境省に一本化する「環境法改正案」が衆議院を通過しました」。「国民には知る権利があります。本当はこういう重要な法案は国会審議中に国民にもきちんと知らせ、ちゃんと国民も自分の事としてその是非を考えたい。でも「知らせる役」「権力の監視役」が機能していないなら、こうやってネットや口コミで広げるしかありません」
http://blogs.yahoo.co.jp/bunbaba530/67969151.html

「障害のある人の生活を脅かす生活保護章改正に反対する声明」きょうされん常任理事会
http://www.kyosaren.com/aboutKyosaren/2013/06/post-42.html

東京のどこかで東大の先生が作ったロボットのロックバンドが生身の歌手と一緒にライブ演奏した、というニュースがガーディアンに。:これって、人間に似せて精巧に作ったコンピューター制御の演奏マシーン、ハイテク人間型CDプレーヤーみたいなもんではないの? 私はこのエントリーで「だ~れがロボットの落語を聞いて愉快なものか。ロボットが弾くピアノやバイオリンに、だ~れが感動するものか」って書いたんだけど。
http://www.guardian.co.uk/technology/video/2013/jun/24/robot-rock-band-z-machines-stage-tokyo-video

スターバックスが5年ぶりに英国で法人税を支払ったそうな。
http://www.guardian.co.uk/business/2013/jun/23/starbucks-pays-corporation-tax

財政出動で経済成長を促すやり方は経済の安定を脅かす、と各国の中央銀行の会議で。
http://www.guardian.co.uk/global/2013/jun/23/kickstarting-growth-threaten-stability-central-bank

労基法違反:首都圏大学非常勤講師組合、早大を刑事告発へ。
http://mainichi.jp/select/news/20130407k0000e040126000c.html
2013.07.01 / Top↑
AARPの公共施策研究所から家族介護者支援に介護休暇の提言。
http://www.aarp.org/content/dam/aarp/research/public_policy_institute/ltc/2013/fmla-insight-keeping-up-with-time-AARP-ppi-ltc.pdf

米国のブーマーズは介護費用をねん出するために生命保険を売却し始めている。
http://seniorhousingnews.com/2013/06/23/boomers-cash-out-life-insurance-to-pay-for-long-term-care/

オーストラリアで、水に過剰な興味を示してすぐにいなくなることが懸念されていた自閉症の少年が介護事業所のスタッフと出かけた先で湖で溺死、母親がスタッフと事業所の過失を問うて提訴。そのスタッフが無資格・無研修の移民だったこともあり、いろいろ考えさせられる複雑な問題をはらんだ事件と思われ、ちょっと追いかけてから、できたらエントリーに。
http://www.abc.net.au/news/2013-06-24/family-gets-apology-over-death-of-disabled-son/4775626
http://www.bordermail.com.au/story/1593516/care-group-admits-deficiencies-over-boys-death/
http://www.bordermail.com.au/story/1596136/carer-wins-protection-at-autistic-boys-inquest/

米カリフォルニア州の研究で、ナーシング・ホームのチームに元々の患者の担当医と薬剤師を加えるとホームでの医療効果が上がる。:これは、ものすごく大事な情報だと思う。終末期医療で患者本人の利益が必ずしも最優先されていなかったり、入所前の本人の医療情報がホームに伝わらなかったり生かされなかったり、という問題が実はとても大きいという気がする。
http://www.upi.com/Health_News/2013/06/23/Nursing-home-patients-own-physician-plus-pharmacist-ups-care/UPI-87681372021711/

JAMA内科雑誌に、検査や投薬など日常的な医療を巡る意思決定にもっと患者本人を含める必要がある、と説く論文。著者は the Informed Medical Decisions Foundationとマサチューセッツ大所属。:へぇ。そういう財団もあるんだ。それはともかく、これは上の連携の問題に並んで大きな問題だし、「死の自己決定権」の前に、こっちが先だろう、といつも思う。日常的な医療があって、さらに大きな病気で受ける医療があって、その先に患者にとっては地続きなものとして終末期医療があるわけだから、大きな「自己決定」をできるためには、それ以前に小さな「自己決定」の経験を積み重ねておく必要があるんだって、これはミュウの施設でずっと言っていることなんだけど。だから説明してくださいって……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/261078.php

オーストラリアのDr. DeathことDr. Philip Nitschkeがまたぞろ自殺ワークショップのツアーに出ている。英国では入管で荷物の一部を没収されたらしいけれど、その後、アイルランドへも。
http://www.lifenews.com/2013/06/24/australias-dr-death-detained-at-british-airport-officials-confiscate-items/
http://www.independent.ie/irish-news/defiant-dr-death-to-give-suicide-tips-at-irish-euthanasia-workshop-29372477.html

そのDr. Nitschkeのワークショップに行こうと、カナダからロンドン空港に降り立ったMarie Flemingさん(死の自己決定権を求めて提訴し5月2日に敗訴)の夫が空港で警察の職質を受け一時足止め。
http://www.independent.ie/irish-news/dying-womans-partner-held-on-way-to-euthanasia-event-29369338.html

【Dr. Nitschke関連エントリー】
オーストラリアのDr. Death、安楽死のワークショップのため英国へ(2009/5/8)
Dr. Death の自殺ワークショップに聴衆100人(2009/5/11)
Dr. Death、今度はUAEの数人に「苦しまずに自殺するコツ」伝授(2009/6/9)
49歳全身麻痺の施設入所者が自殺を希望し栄養を拒否、判断が裁判所に(豪)(2009/8/7)
餓死する権利認められた四肢麻痺男性、Dr. Deathの指南で「やっぱりスイスへ行きたい」と(2009/8/20)
イエスが守ってくれるから死なないと絶食する統合失調患者の栄養補給は「非人間的な治療」(豪)(2009/8/28)
図書館がDr. Death ワークショップへの場所提供を拒否(カナダ)(2009/9/24)
Dr. DeathのExit Internationalに警察の家宅捜査(2009/11/12)
6万ドルの安楽死キャンペーン、オーストラリア全土に看板とTVコマーシャル攻撃(2010/9/7)
豪のDr. DeathがBBCで“自殺装置”による“自殺指南”を正当化(2011/2/25)
中高の授業でDr. Deathが自殺装置を披露する「教育ビデオ」(英)(2011/4/17)


米国160万人の囚人も高齢化で、刑務所内にもホスピス。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/06/hospice-in-prison.html

カナダ、オンタリオの上訴裁判所がDNR指定には患者や家族の同意は不要、と判断。Cefarelli訴訟。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/06/ontario-appeal-court-rules-no-consent.html

メディケアの患者には臓器移植を拒むべきか? :こういう議論を目にするたびに思うのだけれど、日本では生活保護の受給者や重症障害者から臓器移植を希望する声そのものが上がらないんでは? でも、それって生命倫理学の観点からすると、どうなんだろう? 議論そのものがないまま、なんとなく皆で「そんな厚かましいこと、誰も言えないよね」という雰囲気が行き渡っているってことが? これ、最近ちょっとずつ頭に形作られていきつつある、日本では安楽死や自殺幇助議論はさほどでもないように思われているけど、実は暗黙のうちに「患者の無益」論が広められて、実質は大して変わらない事態に向かっているんでは……みたいなところにも繋がっていく? 
http://www.physiciansnews.com/2013/06/21/should-medicaid-patients-be-denied-organ-transplants/

この前から米国でメディケアでの薬の悪質な過剰処方が問題になっているのだけれど、そういう処方が最も多い悪質な医師には製薬会社から講演料が渡っている、とProPublica.
http://www.propublica.org/article/top-medicare-prescribers-rake-in-speaking-fees-from-drugmakers

それ以前に、処方する資格のないセラピストやトレーナーなどが処方箋を書いているのに、それでもメディケアはちゃんと給付している、という問題も。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/66452879.html

経口避妊薬でカナダ人女性23人が死亡か。
http://topics.jp.msn.com/life/lifestyle/article.aspx?articleid=1892123

ワクチンが糖尿病、肥満、メタボを引き起こしている、とする調査結果、2012年11月に Current Diabetes Reviewsに。
http://www.prnewswire.com/news-releases/vaccines-are-causing--the-epidemics-of-type-1-diabetes--obesity-and-type-2-diabetes-metabolic-syndrome-181513501.html
2013.07.01 / Top↑
今年1月の以下のエントリーを書いた時点では
作成中だったNICEのガイドラインが発表となり、
1月に報道された通り、乳がんのリスクが高い女性に
2種類の予防薬を5年間、NHSはオファーするように、と。

乳がん発症リスクの高い女性50万人に予防薬を(英国)(2013/1/16)


記事では、
アンジェリーナ・ジョリーのように予防的乳房切除に踏み切れない女性や
ジョリーほどにリスクが大きくない女性にも、
これで薬物予防治療という新たな選択肢ができる、と書かれている。

タモキシフェン と ラロキシフェンは共に抗エストロゲン剤

前者は既に乳がんになった患者の再発を抑える薬として、
後者は更年期後の女性の骨粗鬆症予防薬として使われているもの。

これらは乳がんリスクを30%から40%下げることが研究により分かっているが
乳がんの予防薬として米国では認可されているが英国では未認可。

NICEのガイドラインは
乳がんの発症率が 3/10 の全女性にオファーすべきであり、
発症率が 1/6 の女性にも検討すべきだ、と。

英国では毎年5万人の女性と400人の男性が乳がんを診断されており、
そのうち5人に1人が家族に乳がん、子宮癌、前立腺がんの病歴がある。

また、これら2剤を予防薬として使うと、
Tamoxifenで年間25ポンド、raloxifeneではもう少し高くつくものの、
乳がん患者の治療にかかる費用を考えれば、コスト・パフォーマンスが良い。

副作用として記事に書かれているのは、
エストロゲンをブロックすることからくる更年期症状で、
のぼせ、寝汗、気分の不安定、吐き気と体重増加。

そう書かれている一方で、
更年期とそれ以降の女性では、特に太ると、
脂肪からエストロゲンが生成されるために乳がんリスクが上昇する、と。

(でも、これらの薬の副作用の中に「太る」がある、という皮肉。
アシュリー療法でもエストロゲンの大量投与で身長を抑制するという発想そのものに
カナダのSobsey氏が「体重増加」の副作用があることの矛盾を指摘していたけど)

それから記事の最後に、ほんの2行、こう書かれている。

「しかしながら、乳がんリスクを下げる他の選択肢もある。」
それは薬に頼らない方法。体重を落とし、運動すること」

あ、それから
ガイドラインは50歳以下の女性に毎年MRIを受けるように推奨も。

Breast cancer: women at risk should be given daily pill, say NHS guidelines
Guardian, June 25, 2013



コスト・パフォーマンスがよいと言われても、
そこでは副作用が出た人への治療コストって、計算外にされていると思うし、

冒頭の1月のエントリーに縁さんから頂いたコメントによると、
実際にタモキシフェンを飲まれた体験から「副作用はきつい」とのこと。

上記にリンクしたウィキぺデイアによると
タモキシフェンの副作用は
無月経、月経異常、悪心・嘔吐、食欲不振等、ほてりや発汗、肺塞栓。

ラロキシフェンの副作用は、
乳房の張り、ほてり、吐き気(2~3ヶ月で身体が慣れると軽快)。
滅多にないが重いものとして、血栓症塞栓症のほか、
膣の分泌物、多汗、足のけいれん、体重増加、吐き気、食欲不振、皮膚のかゆみ。

そんな薬を5年間も飲むことの、女性の体への負担について
十分に慎重に検討されたんだろうか。

女性の身体に多少の負担があったとしても
ガンになってからの治療コストに比べれば
予防効果のコスト削減効率の方が良いから、というのでは、
それはちょっと違う話なんでは……と考えてしまう。

この記事が書いているように
まずアンジェリーナ・ジョリーのような予防的乳房切除という選択肢がありますよ、
でも、そこまでできないという人にだって、こちらの薬物予防法がありますよ、
というふうに話を持っていかれると、

予防できる方法があるなら予防するのが当たり前という前提がそこにはあって、

その上で、Aの予防法をとるかBの予防法をとるか、
あなたに最適な予防法はどちらから遺伝診断とカウンセリングで、
という話にいずれなっていきそうな気がする。

(そしてそこにはもちろん
マーケット創出のポテンシャルが沢山ある)

でも、そうすると
それは他の選択肢が予め排除された2者択一の話となり、
その排除が女性の側からはとても見えにくくなってしまって、
どちらかを選ばなければと感じさせられるだろうし、

「どちらも選ばない」とか、
「AでもBでもない予防法を検討する」とか
「予防そのものを考えない」という選択肢だってあることに
気付けなくなってしまう……なんてことはないのかなぁ。

そして、そういう「できる予防はするのが当たり前」文化が拡がってしまった時には
予防できる方法があるのに、どちらもせずに乳がんになってしまった人は
「自己責任を果たさず、社会に対して不当な医療コストを背負わせる厚かましい人」と
みなされ始める……いうことにならないのかな。


……そこで、なんとなく、いっそ懐かしいほどの気分で思い出すのは、
この論文の著者の一人、名郷直樹医師の9日の以下の2つのツイート。

一番健康なのは、健康に気を付ける暇がないことかな。あるいは暇でも健康に関心がないとか。

体にいいことだけで生きられる人はいないと思う。そんなことができるのは死んでる人だけ。


そういえば09年に、こんなオモロイ記事もあった ↓
「やれ何が癌の原因だ、やれ予防にはどうしろ、こうしろって、ウザい」と英国人(2009/5/26)
2013.07.01 / Top↑
『現代思想』5月号の特集「自殺論 対策の立場から」の一編、
大谷いづみ『「理性的自殺」がとりこぼすもの
続・「死を掛け金に求められる承認」という隘路』。

1970年代からの安楽死を巡る大きな事件での
一見すれば「理性的自殺 rational suicide」を求めていると見える人物たちの語りが
その実、聴く者に自分の声が届かないことからくるアイデンティティの揺らぎの中で、
「死を要請することで聞く耳を得られた体験」である可能性に着目しつつ、

理性的に首尾一貫できるためには
人は自分や他者の何かを切り捨てるしかないのでは、と問う。

エリザベス・ボービア、ラリー・マカフィ―、ケン・ハリソンのケースに
注目して書かれているのだけれど、

最初の実在の2人については
ウ―レットが事例研究で取り上げているので当ブログでも紹介しており、
大谷氏の解説からは、ウ―レットの解説では見えなかった事件の側面が見えてきて、
とても興味深い。

例えば、
Bouvia事件については ⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63783421.html

ウ―レットはこの事件を
ターミナルでなくとも生命維持を拒否することができた自己決定権の画期的な勝利であり、
またそこに一定のスタンダードを敷いた事件としても
生命倫理の界隈で称揚された事件だと位置づけて紹介している。

ところが大谷氏の論考によると、
エリザベスはその後翻意し、2008年時点で生存が確認されているという。

彼女が死を要請するに至った過程とは、大谷氏によれば

 重度の脳性麻痺でほぼ全身が麻痺しているエリザベス・ボービアはわずかに動く右手で電動式の車いすを操作し、たばこを吸うこともできた。食物の咀嚼も可能で話もできた(が、重度の脳性麻痺患者との意思疎通は双方に相応の訓練と慣れと忍耐力を必要とする)。彼女の人生の苦痛を倍加したものは、彼女の障害と深い関わりを持ってはいるが、しかし障害そのものではない、彼女をとりまくさまざまな条件である。両親が離婚し5歳から5年間は母親に養育されたが、その後は養護施設で育った。18歳になった彼女に、父親は彼女の障害ゆえに世話はできないと告げた。彼女は障害者向けの州の支援制度を受けて住み込みの看護婦と共に自立生活を始め、中退していた高校課程の勉学を再開し、大学を経て社会福祉系大学院に進んだが、実地研修をめぐるトラブルで退学した。文通相手の元受刑者リチャード・ボービアと結婚、妊娠するも流産。結婚したことで障害者への給付金は減額され、リチャードがやっとのことで得たパートタイムの収入では生活はたちゆかなくなる。極まって援助を頼み込んだエリザベスの父から拒絶され、疲れ果てたリチャードがエリザベスの元を立ち去ったその数日後、エリザベスは餓死による自殺を訴え出たのである。
(p. 167)


次にMcAfee事件については ⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64925979.html

こちらはウ―レットも、
本人が置かれていた状況の詳細を知らずに生命倫理学者らが
「自己決定権」の問題として論じていることについて
障害者サイドからの批判に沿って事件を紹介している。
例えばLongmoreの以下のような主張を引用。

こんな自由はフィクションに過ぎない。偽物の自己決定。
選択というレトリックが強制の現実を隠ぺいしている。


大谷氏によれば、ラリーもまた
裁判で認められた人口呼吸器の停止によって自殺することはなく、
1993年、採尿カテーテルがねじれていたために尿が逆流し高血圧症となって
何ヶ月もの昏睡状態を経て1995年に死亡。

ケン・ハリソンとは
1981年のアメリカ映画『この生命誰のもの』の主人公の彫刻家。
交通事故のために四肢マヒと腎臓障害となり、
理性的・合理的な判断として「尊厳のある死」を自ら選ぶべく、
「死ぬ権利」を求めて提訴する。

こうした映画が安楽死運動史上、大きな影響力を持ったこと、
ボービアやマカフィーにも影響を与えたことを指摘しつつ、

大谷氏はさらに、ケンの語りが当初、
「死への要請」を認めようとはしない医療スタッフによって黙殺されたことに注目する。
そこには聴く側のアイデンティティの問題が関わっていて、
自分のアイデンティティを中断しないためには聴く側は
自分が聴こうとするものだけを聞くからだ。

そこでケンの物語は
聴き手が聞きたいことしか聞こうとしないのならば
死にたいと語り続けた人の物語と見ることもできる。

エリザベス・ボービアもまた、
「死の要請で名を知られてはじめて、その物語が多くの聴き手を得、
マスコミをにぎわせ、彼女のための基金も作られて安定した生活が保障されたのである」(p.169)

この下り、私の頭には
英国で08年に自殺幇助に関する法の明確化を求めて提訴し、
その攻撃的な能弁で一躍メディアの寵児となったDebbie Purdyさんの姿が浮かんだ。

【Debbie Purdy訴訟関連エントリー】
MS女性、自殺幇助に法の明確化求める(2008/6/27)
親族の自殺協力に裁判所は法の明確化を拒む(2008/10/29)
自殺幇助希望のMS女性が求めた法の明確化、裁判所が却下(2009/2/20)
Debby PurdyさんのBBCインタビュー(2009/6/2)
Purdyさんの訴え認め、最高裁が自殺幇助で法の明確化を求める(2009/7/31)
Purdy判決受け、医師らも身を守るために法の明確化を求める(2009/8/15)
法曹関係者らの自殺幇助ガイダンス批判にDebbie Purdyさんが反論(2009/11/17)


さらに大谷氏が引いているのは
1993年に「終末期を心安らかに暮らすために」幇助自殺を望みながら、
それがプログラム化された自殺幇助の手順に乗せられてしまうことに
揺らぎ、迷いながらも、幇助を受けて死んだルイーズのケース。

『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』で紹介された際、
記者は死の要請を聴く側の心理について考察しつつ、
マクベスの有名な一節を引いている。

「やってしまってそれで事が済むのなら、
早くやってしまった方がいい」

ここでは私には、Fins医師が最小意識状態の人の治療停止について言っていた
「早いところさっぱり決着をつけてしまおうと、
分からないことが沢山あるのに無視してしまっている」という発言が
頭に浮かぶ。

それでも、いったん行為が行われれば、

……残された遺族には、「これでよかったのだ」と自分自身を納得させることよりみちはない。その影で「あれで本当によかったのだろうか?」という問いは封じ込められてしまうかもしれない。自らの行為を他者にも理解してもらうために、何より、死を選んだ本人の選択を承認してもらうために。それだけではなく、本人と自分の死への選択を承認されるための問題提起を「世間」にむけて開始するかもしれない――。
(p. 173)


1993年に、生きているのが可哀想だからと言って
脳性まひの13歳の娘を殺し、08年に仮釈放になるや
慈悲殺正当化論の広告塔となって公の発言を続けるロバート・ラティマーのように――。

慢性疲労症候群で寝たきりの娘の血管に砕いたモルヒネと空気を注入して死なせて
愛からの行為だとして無罪判決を受けた後でメディアに連日登場しては
自らの献身と愛と苦悩を語り続けた、あのケイ・ギルダーデールのように――。


しかし、人はそんなふうに、「その時」までも、また「その時」になっても
揺らがず迷わずに「理性的」「合理的」に生きられるものなのか、というのが
大谷氏の論考を貫いている問いなのだと思う。

エリザベス・ボービアやラリー・マカフィーが
裁判所に認められた死の自己決定権を行使して死ぬことを選ばなかったように、
そもそも彼らの死の要請の背景が、実際は
尊厳死議論で描かれる「理性的自殺」の物語とは異なっているように、

(太田典礼もまた、脳梗塞で車いす生活となっても
自殺せず、リビング・ウィルに署名することもなく、手厚い介護を受け、
そうめんをのどに詰まらせて亡くなった、というエピソードが
論考の最後に紹介されている)

「首尾一貫しようとして、人は自分の、他者の、何を切り捨てようとするのか」
と問う大谷氏は、

首尾一貫せず、「ブレることにこそ希望の証を見」ようとしている。

そのためにも
社会にとってあまりにも都合のよい「理性的自殺」のフィクションには警戒し、

「その都合のよさに立脚した死の要請には、慎重でありすぎることはない」と。
2013.07.01 / Top↑
メルマガ 『やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国へ」』
第1704号(2013/6/24)より

報道によれば、政府は来年度の社会保障予算の高齢化による
自然増分を抑制する方針を8月に発表するとのこと。
自然増は年1兆円。
これを抑制するには、医療、年金、介護、子育て支援を
大幅にカットすることになります。
大胆なカットをせねばならない理由は、
1月の補正予算で5兆円の建設国債を発行し、
今後も10年間で200兆円も公共事業を増やすからです。

つまり、アベノミクスは大胆な財政出動で、
公共事業は大幅に増やしますが、
その財源は医療、年金、介護などをカットしてまかなうことになります。

サミットで日本は外国から巨額の財政赤字を批判されましたが、
公共事業は増やしたいので、
政府は増やす公共事業の予算を社会保障をカットしてまかなう形になります。

アベノミクスで金融を緩和し過ぎたので、
外国から今まで以上に財政健全化を求められたことも、
社会保障をカットせねばならない理由です。

つまり、アベノミクスの最大の副作用は、
社会保障の大幅カットを伴うことです。

しかし、8月以降に、医療、年金、介護などを大幅にカットすることは、
参議院選挙前には言わず、
アベノミクスよる公共事業増加や金融緩和だけを訴えるのは
フェアではありません。

アベノミクスは大幅な社会保障のカットがセットです、と、
正直に言うべきです。
2013.07.01 / Top↑
広間の外にひろがる庭園には、広間をかこむように宴席がしつらえられ、真王(ヨジェ)の誕生日を祝うためにおとずれた多くの貴族たちが、その身分に従って着席していた。

 つぎからつぎへと運び込まれるごちそうの香ばしいにおいと、咲き乱れる花々の香りとが入りまじって、宴席を包んでいる。

 中央の草の上には白い毛氈が敷かれ、楽師たちが明るい調子で笛を吹き鳴らし、その音に合わせて、舞姫たちが、薄赤い絹の帯を宙に舞わせながら、くるくると踊っていた。

 最近王都で評判になっている道化師たちの、ひょうきんなやりとりは、人々の笑いを誘い、大いに場がもりあがった。

 やがて、夕暮れが近づき、透明な金色の光があたりを照らす<黄金の刻(とき)>がおとずれた。

 夜明けと黄昏は、ともに<生の刻(とき)>と<死の刻(とき)>の境目であり、もっとも神気が満ちる刻(とき)であるとされている。

「獣の奏者 2」 上橋菜穂子 講談社青い鳥文庫 p. 42-43


ゴチックにした部分、読んだ瞬間に
ああ、これこそマジックアワーのマジック、
そのわずかな時間に漂う神秘を見事に捉えた表現だ……と。

たぶん、刻の境目というものには不思議なマジックがある。

生の刻と死の刻の境目――。
子どもの刻から大人の刻になる境目にも――。

刻の境目は一瞬で通り過ぎて、留まることがないからこそ、
そこにあるマジックにはえもいわれぬ美しさがあるのだろうな、とも。

ミュウが子どもから大人の女性になるあわいにいた時の
あの透明なパステルカラーの美しさについては『新版 海のいる風景』に書かせてもらった。


【関連エントリー】
天保山のマジックアワーに(2008/8/29)
2013.07.01 / Top↑
北アイルランドの保健省から2013年第1四半期の介護者統計が発表になっており、
以下の記事に、ケアラー・アセスメントについての概要が取りまとめられている。

今回が8回目ということなので、
2年前から四半期ごとに発表されていることになる。

私は最初、この記事を読み始めた時、
「ケアラー・アセスメントが断られたケース」というのを
HSCトラスト(英国のNHSトラストに当たると思われ)側が
ケアラーのアセスメント申請を断ったケースとしてイメージしてしまったのだけれど、

そうではなくて、
トラスト側が申し出たアセスメントをケアラーが断った、という話だった。

1.2013年1月1日から3月31日までの四半期に
 完了したケアラー・アセスメントは 1353件で、
 前の四半期よりも25%の増加。

 断られたケースは1342件で、
 こちらは前の四半期よりも5%の減少。

2.ケアラー・アセスメントの申し出の50%が断られた。

3.完了したアセスメントのうち、
 95%(1291件)は成人ケアラーのアセスメントで、
 5%(62件)が18歳未満のヤング・ケアラーのアセスメント。

4.アセスメントが完了したヤング・ケアラーは全員が16歳から17歳で、

 1291人の成人ケアラーのうち、
 71%は18歳から64歳、
 18%は65歳から74歳、
 11%が75歳以上。

5.アセスメントを受けたヤング・ケアラーのうち、
 29%は他の子どもの介護をしており、
 83%は成人の介護をしていた。

6.アセスメントを完了した成人ケアラーのうち、
 子どもを介護しているのは17%、
 成人を介護しているのは83%だった。

7.それらケアラーの介護を受けている人のうち、
 最も人数が多かったのはどのトラストでも高齢者。

8.アセスメントを断ったケアラーは1342人で
 ベルファスト・トラストの9%からサウス・イースタン・トラストの35%まで。

9.高齢の成人ケアラーのほうが若年層の成人ケアラーよりもアセスメントを断りがちで
 65歳以上では62%が断ったのに対して、18歳から64歳では断ったのは44%だった。
 断った65歳以上の619人のうち、40%が75歳以上だった。

10.アセスメントを断った理由について問うと、
 42%は、支援の必要はない、または現在の支援に追加は必要ない、
 17%は、アセスメントの時期が適切でない、
 13%は、自分をケアラーだとはみなしていない、
 9%は、受けてもメリットがない、
 7%は、介護者としての諸々はプライバシーにしておきたい、
 4%は、「その他」の理由、を
 それぞれあげた。

 また、1%は、福祉その他の給付への影響を懸念、
 7%は理由を挙げなかった。


高齢のケアラーがアセスメントを断っていること、
断った理由の中の「支援の必要がない」「自分はケアラーではない」
「(家族の)プライベートだから」など、とても興味深い。

断る人が減っているというのは
アセスメントが少しずつ浸透しているということでしょうか。

この後、Carers’ Review と 再アセスメントについてデータが示されているのですが、
その辺りの制度について分からないので、この後は省略しました。

Publication of ‘Carers’ Statistics for Northern Ireland (quarter ending 31 March 2013)
Debate NI, June 21, 2013
2013.07.01 / Top↑