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2004年5月5日の倫理委を巡る不思議について検証を続けているところですが、資料を読み返していると現在の病院サイドのウソが非常に気になるので、ここでちょっと閑話休題。

5月8日の記者会見のプレスリリースで、病院サイドはまたも大きなごまかしを行っています。

①成長抑制はアシュリーの幸福を保証する「唯一の方法」だった?

両親は「成長を抑制することが自分たちの娘の長期の健康と幸福を保証する唯一の方法である」と考えたと書かれています。両親は唯一の方法とまでは言っていなかったのではないでしょうか。また「成長を抑制する以外にアシュリーの健康と幸福が保障できない」というのは考えられません。これは医師らが正当化のために作ったウソでしょう。

②計画の具体化に関わった人が増えている

これまで検証してきたように、アシュリーの両親が思いついたアイディアを具体的な計画にする場にいたのは、Gunther医師でした。ところが、プレスリリースでは「両親、医師ら、神経科医、外科医、発達の専門医それに倫理学者(複数)で広範に検討した後に、アシュリーの成長を抑制する計画が出来た」とされています。しかし、それ以前に流出した情報から見る限り、親が持ち込んだアイディアが計画として具体化される過程にそのような多人数・多職種が関わっていた形跡はなかったのではないでしょうか。

③子宮摘出の本当の目的をここでも誤魔化している。

子宮摘出の理由についてプレスリリースは、両親が目的としていた生理と生理痛の除去には全く触れていません。「エストロゲンの副作用として予想された出血予防」と「レイプ被害にあった際の妊娠予防」の2つが理由であったように読めます。特に後者については「両親は大変心配していた」とも書かれていますが、両親のブログでは妊娠予防は、子宮摘出を決めた後で「たまたまくっついてきた利点」に過ぎませんでした。

④裁判所の命令が必要だと実は知っていたことを誤魔化している

この点についての事情は、記者会見・プレスリリースでは以下のように説明されています、

The committee’s opinion ….also noted that a “court review” would be required. The parents consulted an attorney and obtained a legal opinion that concluded the treatment was permissible under Washington state law without the need for a court order. This is where our system broke down --- our medical staff and administration misinterpreted this guidance from the family’s lawyer as adequate “court review”. However, the law is clear that a court order should have been obtained before proceeding with the hysterectomy.

倫理委は両親に対して裁判所の判断を仰ぐように勧告したけれども、両親が相談した弁護士が不要との判断を示したことから、担当医と病院幹部がそれでよいものと判断した。そこに「意思疎通の齟齬」があったが、法律では裁判所の命令が必要であることが明確である、との意。

しかし、WPASの調査報告書にはワシントン大学のインフォームド・コンセント・マニュアル(2001-2004)が添付されており、そこでは知的障害のある人の不妊手術には代理決定は不可、裁判所の命令が必要だと明記されています。また精神科の治療で代理人が同意できないものを挙げた箇所には、「この制限の意図は、その人の身体の尊厳に影響を及ぼす、侵襲性が高く不可逆な治療については、法的代理人が同意する前に裁判所の命令が必要であるということである」と書かれているのです。子宮摘出のみならず、成長抑制も乳房芽の摘出も、「その人の身体の尊厳に影響を及ぼす、侵襲生が高く不可逆な治療」に当たるのではないでしょうか。

担当医として一連の処置を主導したGunther医師はワシントン大学の職員です。このマニュアルの内容を知らなかったはずはなく、「法律を知らなかったから、親の弁護士が不要だと言うなら不要だと考えた」では、通らないのではないでしょうか。
2007.07.02 / Top↑