2ntブログ
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1月3日付けのLAタイムズの記事と
翌4日にシアトル・タイムズに再掲された記事とを注意深く突き合わせてみると、
既に触れた2行の他にも手を入れた形跡はあちこちに見られます。

細かく言葉を置き換えたり、小さな削除や追加がある以外に、
丸ごとのセンテンスの脱落が3箇所あります。

シアトル・タイムズで削除されていたセンテンスをLAタイムズから抜粋すると、
以下の3つになります。


①療法の主なリスクは手術から来るものだが、子宮がんと乳房癌のリスクをなくすという利点の可能性もあると医師は言っている。

②「もちろん成長抑制という選択肢が成長抑制の義務化につながるなどということは、決して望みません」とガンサー医師は言った。

③ガンサー医師の小児科ジャーナルでの症例報告によると、両親が医師らに相談した時に「家で娘の世話をし続けたいと望んでいるのに、成長が続くと、それがいずれは無理になってしまうということを両親は特に恐れているのだということがはっきりした」。


この時点で既に「だれに、何が、なぜ行われたのか」の基本的事実を確立するべく、
両親のブログと医師の論文を何度も読み込んで突き合わせていましたから、
上記3センテンスの共通項はすぐにピンときました。

これらは3点とも医師の発言に関する部分ですが、以下のように、
それぞれ発言の内容が両親の主張からは微妙にズレているのです。

①医師らは、子宮摘出はホルモン療法の副作用軽減の為であるかのように論文では書いていましたが、
ここでは子宮がん予防が目的と言い、また言を左右しています。

しかし両親の考えでは、「子宮摘出は生理と生理痛を除くため」、
「乳房芽の切除は大きな胸になるのを防ぐのが主な目的」で一貫しています。
がん予防はあくまで副次的なメリットに過ぎない、というのが両親の主張。
ここで医師の言っていることもまた、論文で書いていたこと同様に、
両親の主張に沿ったものではありません

②既に述べたように、両親のブログの副題は「(世の中の)Pillow Angelたちのために」です。

両親の考えでは、
この療法は他の障害児家族を助けるために広く受け入れられて実施されるべきものなのです。

③この部分については、「親と医師は言うことが違う ③論文の挙げる”なぜ”」のエントリーで紹介したように、
両親の考えはブログに明確に書かれています。

「私たちはアシュリーを家で世話できる期間を延ばすためにこの療法を求めたのではありません。
彼女の背が高くなり重くなっていったとしても、
私たちは決して赤の他人にケアを託すようなことはしませんでした」。

ケアが無理になって他人に託すなどということは元々彼らにとってありえないことなのだから、
恐れる必要もないのです。
彼らの目的は、何度も強調されているように、本人のQOLの向上。
それだけなのです。

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両親がブログで医師らの論文の内容をいともあっさりと 否定してみせていたことが、
改めて思い返されないでしょうか。

シアトル・タイムズに再掲された際に
元のLAタイムズの記事から消えてしまった上記3箇所の共通項とは、

医師らの発言が両親の主張とずれている、
つまり両親の気に入らなかったであろうと想像される内容だという点です。
2007.07.10 / Top↑
この事件について調べ始めてまもなくから、私がずっと不思議に感じていたことがありました。

調べ始めた当初、どこかの記事で父親の仕事はソフトウエア会社の重役だと読んだ覚えはあるのに、
その後の報道にはそれがまったく出てこないのです。

倫理委の席上、パワーポイントを使ってプレゼンテーションを行ったという情報も同様でした。

あれは自分のカン違いだったのかな、と一時は思い込みそうになったくらいです。
それくらい、最初の数社を除き、どこのメディアもこの2つの事実に触れていないのです。

「ラリー・キング・ライブ」では予め文書で両親に質問を送り、
届いた回答を番組中で紹介しています。
父親の個人情報をCNNは明らかに掴んでいるはずです。
それは多くのメディアで同じことでしょう。

既に報じられた事実なのだから、他のメディアが書いたところで、
とりたてて問題はないと思われるのに、なぜ申し合わせたように触れないのか? 

それは、ずっと、この事件を巡って私の頭に沢山あった小さな疑問の一つでした。

LAタイムズの記事から消えた2行を見ていると、その疑問がだんだん大きく膨らみました。

最初に父親に直接取材できたメディアがどれくらいあったのか、
私も全てを把握していない可能性はあるのですが、あまり多くはなかったと思います。

私の手元の資料では、まず3日のLAタイムズ。4日のガーディアン。それから5日のデイリー・メール。

このうち、
「父親はソフトウエア会社の重役である」、「倫理委でパワーポイントを使ってプレゼンを行った」
という2つの情報を含んでいるのはLAタイムズとデイリー・メール。
後者では、プレゼンで乳房芽の切除は比較的小さな手術だと主張したとの父親の言葉も紹介されています。
この前後に、この2つの情報を流したメディアが他にもあった可能性ももちろんありますが、
大事なのはどこが出したかということよりもむしろ、
その後でこの2つの情報がぱったり消えてしまったことではないでしょうか。

私の手元の資料では、この2つの情報が再び出てくるのは2月9日の例のSalon.comの記事。

しかし、
いったん表に出た情報がそれまでの1ヶ月間まったく消えてしまったというのも、
不思議な現象ではないでしょうか。

地元紙なのに、わざわざLAタイムズの前日の記事を再掲するシアトル・タイムズ。

その記事から消えた2行。

しかもその2行には、その後のメディア報道からぷっつりと消えてしまう情報が含まれていた……。

そして、

シアトル・タイムズがこの記事の2週間後に書いたのが、
あのヒステリックとも思える全面擁護の社説なのです。
2007.07.10 / Top↑