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13日の補遺で拾った話題、Pathway Genomics社が売り出し予定だった「ネットでオーダー、唾液採集キットでカンタン遺伝子診断」に、FDAから「認可していない」とストップがかかった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/188830.php

植物状態の人と脳スキャンでコミュニケーションが可能となったとの研究報告に対して、研究の実施手法や内容については評価しつつも、解釈には注意が必要、希望を持つにはまだ早い、と警戒する態の論文。HCR。
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4659

そうかと思うと、同じ研究報告に対して、「この技術を使って、植物状態や最少意識状態の患者から安楽死への同意を取り付ける方向に向かうのでは」と、また別方向からの警戒の声。同じくHCR。:その懸念は、当初のニュースを読んだ時に上記リンクで私も書いた。研究者の意図はその反対なんだけど、そういう利用が目論まれるんだろうな、と私はあの時は思ったのだけど。
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4660

アルツハイマー病に関連した遺伝子の変異は2つ見つかっているが、だからといって、予防には役立たない。:4 月30日の補遺でも拾ったけど、アルツハイマー病は何を持ってしても現在の段階では進行を遅らせることも予防もできない、と。それでもテレビや新聞雑誌には「アルツハイマーをこうして予防!」という情報が躍る。
http://www.medicalnhttp://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60251508.html

尿路感染に抗生物質が効かなくなっている。:尿路感染も今後5年間にワクチンができる病気に含まれていなかったっけ。あんまり多すぎて、はっきり思い出せないや。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8687512.stm

天然痘のワクチンが実はHIVにも効いていたのに、天然痘が撲滅されてワクチンを使わなくなったから、HIVが広がっているんだ、という説。:新しく開発されるワクチンだけでなく、既存のワクチンを復活させたり接種回数を増やそうという動きも最近、目に付いてきた。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8686750.stm
2010.05.18 / Top↑
ついに日本にも、介護者の権利アドボケイトが誕生します。

私は非力で、このブログで思いを書くくらいのことしかできなかったけど、
ずっとこういう日が来るのを夢に見ていました。

本当に、嬉しい――。
ありがとうございます。

日本の社会は、少子高齢化、人口構造の変化等により、安定的なセーフティネットとしての社会保障制度の基盤がゆるぎ、再構築が急がれています。とりわけ介護問題の中でも、今なお「介護する側」が抱える長期間にわたる身体的・精神的・経済的な過酷な負担という課題については、国による正確な実態把握も遅れ、有効な支援施策も欠いたまま、長い間放置されてきました。
人はみな「人として尊厳を保ちながら、健康で文化的な生活をおくることができる」権利や、幸せを追求する権利をもっています。しかし、介護者自身のそうした権利は、「(介護は)家族がやってあたりまえ」という無言の圧力のもとに覆い隠されてきました。
さらに私たちは、この社会が介護者という当事者たちの「声なき声」と真摯に向き合うことなく、社会問題として顕在化させてこなかったという事実にも目を向けなければなりません。
今ここに、病気や障害、そして地域を超え、「介護者」をキーワードとして横につなぐ運動を展開するためのケアラーズ連盟を立ち上げる運びとなりました。この運動は、介護者の権利擁護をめざし、具体的な支援施策や、根拠となる「支援法」の確立をも盛り込んだ幅広い国民的な運動です。
現在、正式な発足に向けて準備をすすめていますが、志を同じくするみなさまの積極的な参画をいただき、社会に向け大きくアピールをしていきたいと考えます。この趣旨に賛同し、ぜひよびかけ人に名を連ねていただきますよう切にお願いいたします。
2010 年(平成22 年)4 月吉日
ケアラーズ連盟を実現する市民の会



「ケアラーズ連盟を実現する市民の会」では、よびかけ人を募っています。詳細はこちら。


これを機に、これまで書いてきた介護者支援関連のエントリーを以下にまとめてみました。

【英国の介護者支援について書いたエントリー】
フレックス勤務を求める権利という子育て支援(2008/6/12)
英国の介護者週間から介護についてあれこれ(2008/6/12)
英国の新しい介護者戦略(2008/6/12)
「介護者としての私を支えて」キャンペーン(2008/7/4)
英国の介護者支援について思うこと(2008/7/4)
英国の介護者支援について(2009/3/10)

【その他の国の介護者支援について】
「介護者の権利章典」訳を改定しました(2008/12/12/)
今日から豪介護者週間……because I care(2008/10/19)
You are only human: 介護者だって生身の人間なのだから(2008/10/30)
介護者も自分を大切にしましょう(2008/10/31)
自分の気持ちを理解して受け入れる(介護者のために)(2008/10/31)
自己主張をしましょう(介護者のために)(2008/11/1)

【障害のある子どもの子育てや介護一般について考えたこと】
重症児ケアの負担と親の意識について(2008/1/6)
重症児ケアの負担と親の意識について 2(2008/1/6)
「障害児の母親」というステレオタイプも(2008/3/4)
「総体として人間を信頼できるか」という問い(2008/8/29)
子どものケア、何歳から「子育て」ではなく「介護」?(2008/10/18)
障害のある子の子育ては潜在的な家族の問題を顕在化させる(2008/10/20)
介護を巡るダブルスタンダード・美意識(2008/10/27)

【こうあってほしい支援の在り方について考えてみたこと】
“溜め”から家族介護を考えてみる(2008/6/5)
支援サイドから「迎えに行く支援」(2008/9/5)
上手に「小さなギブアップ」ができる支援 1(2008/10/1)
上手に「小さなギブアップ」ができる支援 2(2008/10/1)
子育て支援=母親支援・・・という国?(2008/6/12)
「大人なら誰でも基本的な家事・育児・介護ができる社会」というコスト削減策(2009/5/25)
「介護療養病床と新型老健で一人当たりの医療費の差が8万円」からボヤいてみる(2009/6/17)

【障害のある子どもの親のナラティブ(語り)として書いたこと】
親の知らない娘の知り合い(2008/8/6)
天保山のマジックアワーに(2008/8/29)
「私だけが鬼みたいな母なのだとばかり……」(2008/12/12)
ポニョ(2009/7/23)

【私が考えさせられた他の親・介護者のナラティブについて書いたこと】
介護を語るのは難しい(2008/4/14)
「自閉症の息子ケア、もうこれ以上耐えられないと思った日」(2008/4/30)
Cameron党首「これ以上話したくない……」(2009/2/26)
「どうぞ安心して先に行ってください(2009/3/17)

【Ashley事件との関連で介護について考えたこと】
Caplanの「希望」について 1(2007/7/21)
Caplanの「希望」について 2(2007/7/21)
Katie事件に見る「障害児の母親」のステレオタイプ(2008/3/4)
「介護者であるより母でありたい」と言い続けていたAlison Thorpe(2008/4/30)
もしもAshley父が「親の負担軽減」を言ってたら?(2008/3/9)
“A療法”には「親が抱え込め」とのメッセージ(2008/10/3)
親にはしてやれないこと(2008/4/28)
成長抑制を巡って障害学や障害者運動の人たちに問うてみたいこと(2009/1/28)
親の立場から、障害学や障害者運の人たちにお願いしてみたいこと(2010/3/12)
2010.05.18 / Top↑
知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではないのエントリーの
②のところで、ちょっとだけ紹介した映画「忘れてほしゅうない - 隠されてきた強制不妊手術」の続編
「ここにおるんじゃけぇ」の上映会に行ってきました。

主人公の佐々木千津子さん(62)は広島在住の脳性まひの女性。

20歳の頃にコバルト照射による強制不妊手術を受けさせられた体験を、
実名を明かし、顔を晒して、語り続けておられます。

私は前作を見ていないのだけど、この続編では、
24時間介護を受けながらの佐々木さんの自立生活が主に描かれていて、

金色やらピンクやら緑やらに染め分けたショートカットの頭で
日々、寒かろうが暑かろうが断固、外出するのだ、
自分が生きていここにいることを世の中に知らせるために……と言い、

買い物の際に店員に言葉が通じなくても
介護者に代弁してもらうのではなく、あくまで自分が何度も繰り返し、
「もっと近くに来て聞いてください」と迫る姿には、息をのんだ。

身体の拘縮に加齢もあって(コバルトの後遺症もあるのかもしれない)身体はもうボロボロだとのこと。
あちこちに痛みが出ていて、売るんかい? というほど大量の薬を飲みながら、
それでも自分らしい暮らしを守り、強制的不妊手術の被害者としての体験を語り続ける。

そんな日常が描かれる中に、
前作の一部や現在の佐々木さんへのインタビューが挿入されて
強制不妊手術を受けさせられた体験が語られていく。

映画の記憶と、上映会でもらった資料から、その概要を以下に。

初潮は15歳の時。
生理の手当ては母親がしてくれたが、そのたびに
「こんなものはなければいいのに」「手術をしなければ」と言われて憂鬱になった。
その手術がどういうものか分からないまま「痛いことは嫌だ」とだけ思っていた。

その後、姉の婚約が自分の障害を理由に解消されたことを知る。
姉は気にしなくていいと言ってくれたが家に居づらくなり
施設に入ることを決意。

今度は施設側が生理の手当てが自分でできなければ受け入れないと言っていると聞かされ、
当惑しているところに母親から「痛くも痒くもない手術がある」と勧められて承諾する。

それでも、最後の日は「さみしかった」。

一週間に渡って卵巣へのコバルト照射。

施設に入所後、体が動かなくなるなどの後遺症に見舞われる。
青い芝の会との出会いを機に、施設を出て自立生活を始める。

はじめは介護者が思うように見つからず、
食事もできず空腹のあまり冷蔵庫に頭を突っ込んでリンゴにかじりついたことも。

自立生活を送り、障害者運動と関わることを通じて、
自分が受けさせられた不妊手術が当時の優生保護法にすら違反するものであったことを知り
声を上げ始める。

佐々木さんは、結婚したいと考えるようになった男性に
子宮摘出のことを打ち明けて、子どもがほしいからそれなら結婚できないと拒否され、
声が出なくなるほど、打ちのめされた体験を持つ。

何も知らされず、承諾させられてしまったが、
子どもが産めなくなるのなら承諾などしなかった、と語る。

2003年から、当時の手術を行った広島市民病院に対して、支援者らと事実解明を求める。

佐々木さんの訴えについては、謝罪はあったものの、
調査しても記録が見つからない、当時の職員にも記憶がないというのみで、
それ以上の進展は今に至るまで、ない。



会場で配布された資料の中に、
99年5月に「世界」に発表された市野川容孝氏の
「福祉国家の優生学 - スウェーデンの強制不妊手術と日本」という文章があって、

それによると、
日本の優生保護法が1949年に制定され、96年に母体保護法に改訂されるまでの間に
実施された優生手術は公式記録にカウントされているだけでも16520件。
しかも、極めて露骨な強制によって実施された疑いが強いとのこと。

1998年には国連の人権委員会から日本政府に対して
被害者の補償を法的措置によって保障するよう勧告が行われているにもかかわらず、
未だになされていない。

          ―――――――

佐々木さんのお母さんの言葉

「こんなものはなければいいのに」

「あんたには生理があってもしょうがないんだから
手術をして止めないといけない」

Ashley事件からKatie Thorpe事件、そしてAngela事件と、
ここ数年、英語圏で続く重症児への子宮摘出(成長抑制)関連事件の中で繰り返されているのも
これと全く同じ言葉だ――。

「どうせ自分から望んで妊娠することなど生涯ないんだから」
「介護者の負担軽減は、本人の利益にも重なる」

そして、さらに

「生理のケアを人にしてもらわなければならないことには尊厳がない」
「知的障害児・者は生理を理解できなくて非常に苦しむから、ない方が本人のため」
「生理痛の不快や苦痛を取り除き、万が一レイプされた時の最悪の事態も避けられる」
「子宮がんなど病気予防にもなる」

こうして、かつては露骨に言われていた「介護負担」が
「本人のQOL」と「本人の最善の利益」という一見もっともらしいゴタクで覆い隠され、
「そこまですることもいとわない美しい親の愛」の甘ったるいコーティングで仕上げされた、

「重症児のQOL向上のための子宮摘出と成長抑制」が
今、ゴリ押しに広げられようとしている――。
2010.05.18 / Top↑