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「患者にとって死を受け入れることは難しいが、やらなければならないこと」というタイトルのWPの記事が、自殺幇助を受ける自己決定権と、終末期に無益でありながら苦痛を強いる治療を家族が差し控えることとを一緒に論じている。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/accepting-death-is-difficult-for-patients-and-doctors-but-it-needs-to-be-done/2011/07/13/gIQARq4AsL_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

中国のFoshanという町で、市場通りの大勢の人の前で車が前輪・後輪の両方で2歳の女の子を轢き、そのまま逃走。倒れて血だらけになっているのに、通行人は誰も助けに行かずみんながそのまま通り過ぎて行ったという。やっと56歳のぼろ布回収業者が助けに行き、道路際まで運んだところで2台目のトラックに轢かれ、少女は脳死状態。道徳心を巡って議論に。
http://www.cbsnews.com/8301-503543_162-20121691-503543.html?tag=pop;stories

低体重児は自閉症スペクトラムの確率が5倍。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236087.php

早いところ卵子を凍結保存しておいた方が、後後のIVFでの着床率が上がりますよ、と科学者ら。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/oct/18/eggs-frozen-young-women?CMP=EMCGT_181011&

長生きの秘訣探るべく、115歳女性のゲノムを解読。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236073.php

小児緩和ケアの課題。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/236058.php

もともと多かった十代の女性に加えて、精神障害があるというのではなく、人生のストレスからの高齢者、少数民族、男性の自傷行為が思いがけないほど増えている。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/17/self-harm?CMP=EMCGT_181011&

NHSの予算200億ポンド・カットで、老若患者みんなに悪影響。
http://www.nytimes.com/slideshow/2011/10/18/us/politics/1018PROTEST.html

頭に怪我をして救急で受診した場合に、黒人、ヒスパニックなどマイノリティの子どもがCTスキャンを受けられる割合は白人の子どもよりも低い。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/236008.php

NYT。アマゾンが出版社を飛ばして著者と直接契約。
Amazon Signs Up Authors, Writing Publishers Out of Deal: Amazon.com, the online retailer, has long competed with bookstore; now it is starting to make deal with authors, bypassing the traditional publisher.

NYTの「ホニャララを占拠せよ」デモ参加者のスライド7枚。:なんか、のどかな写真ばっかり。
http://www.nytimes.com/slideshow/2011/10/18/us/politics/1018PROTEST.html
2011.10.18 / Top↑
英国では病院が患者を蘇生無用(DNR/DNAR)指定する際に、
必ずしも家族への通知をすることが義務付けられていないことについて、
以下のエントリーなどで追いかけてきましたが、

肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”」はやめて一律のガイドライン作れ、と英国で訴訟(2011/9/15)


いつも読んでいる「無益な治療ブログ」の16日のエントリーによれば、

ケアの質コミッション(CQC)が出した高齢者の尊厳と栄養に関する報告内容について
高齢者アドボケイト Action on Elder Abuseが詳細を調べて出した意見書が

DNAR指定に関する部分について「特に懸念される」「危険な状況」がある、と指摘。

高齢者の入院時にカルテに
DNAR指定がルーティーンとして加えられているケースがあったり、

患者とも家族とも相談しないで
研修医がDNAR指定を決めているケースも。

Action on Elder Abuseでは
「病院の届け出から監査官がこういう問題に気づいていながら
監督官が何の行動も起こしていない」とCQCを批判。

New Report on Unilateral DNAR in England
MEDICAL FUTILITY BLOG, October 16, 2011



【その他関連エントリー】
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「ポスト・ヒポクラテス医療」の「無益な治療」論ではDNR指定権まで病院に?(2010/6/19)
2011.10.18 / Top↑
生後11カ月の無脳症の乳児に親の希望で外科手術が行われたケースを、去年のTruog論文で正当化する論文が出たらしい。Aの利益でBへの介入が正当化されるというのは、臨床の論理よりも、社会の利益のため科学の発展のために研究対象への介入が正当化される研究の論理の方に近い、と無益な治療ブログのPope.
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/10/surgery-for-anencephalic-infant.html

米国の介護者週間10月16日から22日。
http://www.thesatellite.com.au/story/2011/10/17/carers-week-gives-much-needed-credit/

オーストラリアの介護者週間も10月16日から22日。
http://carersaustralia.com.au/?/carersweek/

前にも補遺で拾ったけど、故Kevorkian医師の自殺幇助装置が10月末にオークションに。
http://www.dailypioneer.com/sunday-edition/agenda/foreign/13460-till-death-did-us-part.html

自閉症は生後12カ月で診断できる、とミシガン大学の研究者。早期診断、早期介入を、と。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/236003.php

米国小児科学会の年次大会で、ADHDの診断は6歳以上からというこれまでのガイドラインを4歳以上からに引き下げよう、との提言。学齢前の子どもへの介入は薬物療法ではなく行動療法で、でも効果がなかったら薬物療法で。:上の記事とまるで対のような……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236069.php

NHSの予算カットで、NICUのスタッフの質が低下。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/17/nhs-cuts-putting-babies-at-risk?CMP=EMCGT_171011&
2011.10.18 / Top↑
詳細は知らないのだけど、医療制度改革に盛り込まれていた介護保険プラン(たぶん民間の介護保険加入を義務付けて、加入が困難な人には助成金を出すという話では、と)について、オバマ大統領がついに諦めて削除。共和党は「勝利」と。:反格差社会デモの間にも、こういうことが起こっている米国。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/white-house-kills-long-term-care-program/2011/10/14/gIQAVZLYkL_story.html
http://www.ktuu.com/sns-bc-long-termcareprogramupdate,0,3413914.story

9・11の直後に、あまりに不謹慎さが衝撃的だとして米国のメディアが伏せ、2006年になって公開された1枚の写真。倒壊して姿を消し、もうもうと粉じんを舞い上げている世界貿易センタービルでの惨劇を対岸に、ニューヨークの若者たち5人がのんべんとくつろいで談笑している姿。2006年にこれを見たFrank RichというコラムニストはNYTに「別にこの5人が無情だというわけじゃない。ただの(他人に何が起ころうと知ったこっちゃない、という)米国人なだけだ」と。上の記事の、Obamaの医療制度改革から介護保険プランを削除させ勝利を唄う共和党の人たちを考えた。自業自得の貧乏人の介護まで面倒みられるか――。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/sep/02/911-photo-thomas-hoepker-meaning?CMP=EMCGT_141011&

オキュパイ・トウキョウのサイトに今日のデモのビデオがある。夕方のフジテレビのニュースは「100人が参加」と報じていたんだけど、その人数、一体どこが発表したの?
http://occupytokyo.org/ja/

「ウォール街を占拠せよ」デモの本拠地となっている公園の土地所有者の意向を受けて、デモ関係者を強制排除しようとした警察が、衝突での混乱回避するため、強制排除を中止。デモ隊は凱歌。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/14/occupy-wall-street-protest-live#block-21
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/13/occupy-wall-street-zuccotti-park-cleanup?CMP=EMCGT_141011&

NYのデモの仕掛け人のツイッター
http://twitter.com/#!/AdamGabbatt

日本語のツイッターでは、この話題で騒然。立命館大学大学院先端総合学術研究科 特別招聘教授に上野千鶴子氏が就任。:最近、介護の研究をされており、家族介護前提ではなく個人にサービスをつける「おひとりさま」仕様の介護保険制度を提唱してくださるのはありがたいのだけど、ちょっと抵抗を感じるのは、この人って結局は日本の社会の中で男と同じように生きてくることができた“名誉男”なんだよなぁ……って。日本の社会で女だというだけで、育児や介護や家事といったお世話仕事は「オマエがやって当たり前」にされてきた女たちよりも、この人の感覚は団塊の世代のおっさんに近いんじゃないか、と感じる時がある。障害児の母親をフェミニズムは置き去りにし裏切ってきたじゃないか、という恨みつらみが尾を引いているだけかもしれないけど。
http://www.ritsumei.jp/news/detail_j/topics/9388/year/2011/publish/1

11日の補遺でつい長々と書いてしまった「介護保険情報」10月号「論壇」での、池田省三氏による結城康博氏の著書批判について、現場の施設長のブログ「masaの介護福祉情報裏板」での反論、「池田省三の無知とデタラメ」。:やんや!! 飛躍かもしれないとは自分でも思うけど、この人の批判を読んでいたら、障害の現実について驚くほど無知なままに、「障害のある生は生きるに値するかしないか」を平然と論じて学問だとか学者だとか称し、現実の生身の人間の処遇に自分の発言が影響力を持つことの重大性について考えてみることもしない傲慢な人たちの無知とデタラメと、池田氏がそっくり重なってしまった。まぁ、日本の厚労省(その背後には財務相)の「御用聞き学者」か、世界の財務・経産・厚労省の「御用聞き学者」かという違いくらいしかないんだし、さほど飛躍でもないかも。介護保険が専門と称する現場経験のない学者には最低3年の現場実習、障害を云々するつもりの生命倫理学者は全員、自分が論じようとする障害像と同じ障害児・者のヘルパー実習最低1年を必須に――。もちろんヘルパー資格とってからね。あ、それとも「介助者」でよしとする? 痰の吸引とかは?
http://blog.livedoor.jp/masahero3/archives/51829883.html#comments

黒人の1歳未満乳児の死亡率は白人の乳児の2倍。米国。NYT。
Tackling High Infant Mortality Rates Among Blacks: Nationally, black babies are twice as likely as white infants to die before age 1. In Pittsburgh, where the racial disparity is even sharper, health officials face many hurdles.

黒人と白人の両親から生まれた双子が、一人は肌が黒くて一人は白い。白い方の子どもが幼稚園で自画像を描く時に、先生に「あなたはミックスだから黒人としての自分を書かないとダメ」と指導されたというヘンなエピソードなど、周囲の異様な接し方や両親の憤りなど、とても興味深い記事。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2011/sep/24/twins-black-white?CMP=EMCGT_141011&

携帯電話の6台に1台は大腸菌に汚染されている。持ち主がちゃんと手を洗わないから。:これ、ケイタイを調査したというだけで、他のものだってこれまでも実はそんなもんだったりして? それでも、そこそこ免疫でなんとかなっていくのが、これまでの人間だったと思うんだけど、これからは違ってくるような気もしないでもない。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/13/mobile-phones-uk-e-coli?CMP=EMCGT_141011&

<モンゴル政府>核処分場建設計画を断念 日本に伝達:国際社会から見えにくいアフリカの途上国を有害ゴミのゴミ捨て場にするような非道をやるのは欧米先進国だけなのかと思っていたけど。反格差社会デモがついに「待った」の声を上げた、グローバル強欲ひとでなし金融ネオリベ慈善資本主義の問題というのは、ただ各国で格差が広がって食えない人が増えていくというだけじゃなくて、国単位でも地域単位でも格差が広げられて、こういうことがどんどんやられてしまう世界なのだと思うので、ホント、この辺りで方向転換が可能なのなら……と祈るような思い。でも、そんなのビル・ゲイツが「善い人」と拍手されている限り、あり得ないんだよね……と、一方では思っている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111015-00000007-mai-pol

【関連エントリー】
象牙海岸の悲惨(2007/12/15)
「象牙海岸で先進国の有害ゴミによる死傷者多数」事件:続報(2008/10/24)
先進国の有害廃棄物でアフリカから3万人超える集団訴訟、最近はマフィアが核廃棄物を海に(2009/9/19)


日本語ニュースで、ウガンダなどに米軍100人派遣=武装勢力掃討を支援―オバマ大統領:ウガンダと言えば、8月25日の補遺で拾ったように、インドの農業ビジネスがエチオピア、タンザニア、ウガンダなんかの土地を買い占めている、という話がある。インドでは米国政府とつるんだゲイツ財団とモンサントがアグリ・GMビジネスを強引に(強欲・非人道的に)展開しているわけだから、この米軍派兵もぐるりと廻りまわって繋がっていく話?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111015-00000023-jij-int

【関連?エントリー】
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
2011.10.18 / Top↑
臓器移植法を問い直す市民ネットワークから「脳死・臓器移植 Q&A50:ドナーの立場で“いのち”を考える」刊行。:まだ入荷していないみたいだけど、とりあえずアマゾンにオーダー入れた。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4875252846

生命倫理に関する米大統領評議会白書「脳死論争で臓器移植はどうなるか」:これも読んでみたい気がするものの、オーダー入れるにはちょっと踏ん切りが必要。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4884123506?tag=hatena-bu-22

福岡伸一さん訳でキンブレルの「素晴らしい人間部品産業」。:これ、昔「ヒューマン・ボディ・ショップ」というタイトルでどこかから出ていたのを読んだ記憶があるのだけど、4月に講談社から復刊していたみたい。たしか90年代に読んで、すごい衝撃だった。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062162873.html

英国ホスピス週間。
http://www.oxfordmail.co.uk/news/9302156.HOSPICE_WEEK__Carers_who_go_the_extra_mile/

英国ケアの質コミッションから、病院スタッフは高齢患者にきちんと食事をさせていないし、尊厳ある扱いをしていない、との指摘。:これ、私が英語ニュースを読み始めた2006年ごろから言われ続けている。高齢患者と知的障害者。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/13/hospitals-lambasted-old-people?CMP=EMCGT_131011&

American Society for Bioethics and Humanities という学会があるんだそうな。第13回年次大会。10月13-15日。学会サイトに行くと、 medical humanities という用語が目についた。ただ、ものすごく盛り沢山のプログラムをざっと見ただけでも、やっぱり臓器移植で「死亡者提供ルールの撤廃」が提唱されていたりするような?
http://www.asbh.org/uploads/files/meetings/annual/pdfs/asbh11_confbro_final.pdf

摂食障害の入所施設での治療が保険給付の対象とならず、米国で訴訟に。NYT.
Eating Disorders a New Front in Insurance Fight: People with eating disorders like anorexia are fighting insurers to pay for stays in residential treatment centers, an issue that is being considered by an appeals court in California.

緑の野菜を食べることで、遺伝子による心臓病リスクは減らせる。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235806.php

英国でも女性管理職はぜ~んぜん少ない。
http://www.guardian.co.uk/business/2011/oct/13/shocking-lack-women-directors-ftse?CMP=EMCGT_131011&

英国の大半の町で、民間の賃貸住宅の家賃が高騰し、とてもじゃないけど払える金額ではないところまで。
http://www.guardian.co.uk/money/2011/oct/13/families-unable-to-afford-rents?CMP=EMCGT_131011&
2011.10.18 / Top↑
12日のエントリーでとりあげたインタビューで言及されていた、AJOBのCaplan論文を読んでみた。

The Use of Prisoners as Sources of Organs – An Ethically Dubious Practice
Arthur Caplan, University of Pennsylvania
The American Journal of Bioethics, 11 (10):1-5, 2-11

冒頭で、移植臓器を増やすために繰り出されている「斬新なアイデア」が紹介されている。

① NY市を含むいくつかの市で導入されている「ドナー救急車」。

特別仕様のこの「ドナー救急車」、通常の救急車の後をついて走る。
で、病院の外で死ぬような人が出た場合には、前を行く通常の救急車が死亡宣告するや
即座に後続の「ドナー救急車」チームが起動、家族を探し連絡して臓器提供の同意をとり、
遺体に生命維持装置を取り付ける。その措置を行ったうえで摘出が可能な機関に搬送する。

事前指示など予めドナーとなる意思表示が行われている患者の場合に行われるが
NYの臓器ドナーネットワークの計画では、今後は病院外で死亡する患者のすべてに
家族による代理決定で実施していきたいとしている。

NY市の「ドナー救急車」については、こちらのエントリーでも触れられていた ↓
UNOSが「心臓は動いていても“循環死後提供”で」「脊損やALSの人は特定ドナー候補に」(2011/9/26)

② 選択的手術(命にかかわらない緊急性の低いもの)を受ける人すべてに
腎臓提供をルーティーンの手続きとして勧める、という案が出ている市も複数ある。

「絶対必要なわけではない手術を受けるなら腎臓1個くらい出しなさい」とのメッセージや
事実上の「条件」になってしまう懸念はないんだろうか。

③ 生命維持治療停止を巡る事前指示書の内容によって
臓器提供の可能性が影響されないようにしよう、との提案も。

「これこれの状態になったら人工呼吸器は外してください」と指示している人でも
それによって臓器が劣化して提供できなくなるなら外さなくてよいことにしよう、と?

④ 処刑後の死刑囚からの臓器提供。

もともと、こういう声はあったが賛同の声を集め活発な議論を起こす口火を切ったのは今年3月のNYT記事 ↓
「執行後に全身の臓器すべて提供させて」とOR州の死刑囚(2011/3/6)

⑤ 囚人からの生体臓器提供。

今年1月にミシシッピー州知事が、人工透析が州財政の負担になるとの理由から
片方が腎臓を提供してもう一方が移植手術を受けることを条件に
終身刑で服役していた黒人の双子の姉妹を釈放する、という事件があった。
これについてはCNNの日本語記事がこちらに → http://www.cnn.co.jp/usa/30001456.html

また、2007年にはサウス・カロライナ州議会に、
腎臓または骨髄提供と引き換えに刑期短縮を認める法案が提出されたことがある。
Ralph Anderson議員提出の法案では、骨髄の場合は60日、腎臓の場合は180日を
「特に利点の大きな、または特に人道的な行い」を認めて短縮するもの。

で、この論文でCaplanは④と⑤を取り上げ、実施上からも道徳上からも認めるべきではないと説く。
まず、④の死刑になった囚人からの死体臓器提供についてCaplanが挙げている問題は、だいたい以下。

・死刑そのものに倫理論争がある。

・最も多い中国で年間5000人。イランでも年間400人。
 米国では倫理論争の影響を受けて減少傾向で2010年は46人と、
 死刑になる人の数が非常に少ない。倫理懸念から米国では減少傾向。

・もともと少ない死刑囚人口は、高齢、感染症を含む病気持ち、肥満である確率が一般よりも高い。

・感染病の確率が高い、非道な犯罪者だなどの理由でレシピエントの方が望まない可能性がある。

・DNA検査で死刑囚の冤罪を確認するThe Innocence Projectにより、
1989年以降、267人が無罪となっており、そのうち17人が死刑囚。
えん罪の可能性を含む死刑の倫理議論は今後も広がっていくと予想される。

・中国での宗教・思想犯を含む死刑囚からの臓器摘出疑惑に国際的な批判が出ているが、
米国でも死刑囚から採るとなると中国の慣行を批判しにくくなる。

・医療職が死刑に関与すること自体への抵抗感があり、
米国医学会、米国医師会、世界医師会も反対のスタンスをとっている。
さらに死刑での臓器摘出に進んで関与するとは思えない。

実施面での最大の問題として指摘されているのが
「死刑囚は生命維持装置をつけて死ぬわけではない」。

もしも死刑囚から臓器をとろうとするなら
囚人をDCDDドナーとして扱う必要が出てくるが、

(これまで当ブログでDCD(心臓死後臓器提供)と呼んできたものと
事実上同じプロトコル差すのではないかと思うのですが、ここでは
donation after cardiac determination of death(心臓死宣告後提供)が使われています。
上記UNOSの記事にあったように“循環死”の宣告が説かれ始めているためでは?)

病院でのDCDDなら心停止から5分以内に手術室に運ばれて摘出にかかるが
死刑では最終的な死亡宣告まで少なくとも10分から15分待つことになっている。
そこに摘出のための施設に移動させるなどの時間が加わる。そのプロセスに関わる医療職も必要。

そうした現実問題を考えると、死刑囚からの臓器提供を可能にするためには
処刑方法そのものを“Mayan プロトコル”変更する必要がある。

Mayanとは、いけにえとして拍動する心臓を取り出して捧げる宗教儀式のこと。

となれば、Caplanがここで“Mayanプロトコル”と称しているのは
生きたままの臓器摘出による処刑、すなわち Savulescu提唱の“臓器提供安楽死”と同じ方法での処刑。

しかし、こうした変更には法的な問題もある他、これまでの黄金律「死亡者提供ルール」に違反する。
そんなことをすれば生死の線引きを変えて死体臓器提供への国民の信頼を揺るがす。
また処刑前から臓器保存処置がとられる事態を招きかねない、とCaplanは問題を指摘。

一方、spitzibaraがこの点で気になることとして、
手段を問わず臓器不足解消を唱える一派はその死亡者提供ルールそのものの撤廃を求めている ↓
臓器移植で「死亡者提供ルール」廃止せよと(2008/3/11)
Robert Truog「心臓死後臓器提供DCDの倫理問題」講演ビデオ(2009)(2010/12/20)

次にCaplanが指摘しているのは
ドナーにすることによって償いとしての死刑の道徳的正当性が失われる、という点。

処刑される死刑囚が最後にドナーとなり有徳な人と称えられることは犠牲者家族にとってどうなのか。

医療目的に司法制度が利用されることの2重の危うさについて
ここでCaplanが書いていることが私にはことの本質を突いているように思えるのだけど、

…the aim of the penal system is not to serve medical needs but to achieve justice for those wronged and their families and friends, as well as to deter future crimes.(中略)
Giving the state a motivation to execute beyond retribution or deterrence may be seen as inconsistent with protecting prisoners’ rights.

権利という点では、先のNYTの記事を書いたLongoは臓器提供も囚人の権利だと主張しているが、
重罪を犯したものは釈放後にも一定の権利を制約されている、と反論。

次に、④の生体ドナーとしての囚人について。

囚人の総人口は多く、特に親族への提供の希望はあるが
まず実際の問題として囚人における感染病の有病率の高さ。

それから非常に複雑な道徳的な問題として
連邦法は臓器提供を何らかの価値と結び付けることを禁じており、
保釈や刑期短縮、特権の拡大などのインセンティブや報酬は
こうした「価値づけ」とみなすのがUNOS倫理委をはじめ国内外での判断。

また囚人は総じて強要や操作を受けやすく、囚人の同意を額面通りにとることは危険。
ミシシッピー州のケースのように医療コストを理由に囚人の臓器提供を認めるのも問題。

以上、死体臓器提供の場合と同じ理由によって、
囚人からの生体臓器提供も慎重な規制とケース・バイ・ケースのアセスが必要。

           ―――――
個人的には、
「ドナー救急車」チームが死亡宣告された“遺体”に「生命維持装置をつける」ことのおかしさ、
また、死刑執行で死亡確認には10から15分待つことになっている一方で、
DCDDでは5分以内でよいことになっているということのギャップの2つが、すごく気になる。
結局、Caplanによる死刑執行後の囚人からの臓器摘出の倫理性議論から
ここではDCDDプロトコルそのもの非倫理性があぶり出されている……のでは――?

もう1つ、上で引用したCaplanの「司法制度は医療目的ではない」ということが
臓器提供に限らず、科学とテクノの原理で席巻されていく最近の世の中の風潮を
象徴的に指摘する言葉のように私には思えた。

医療は、社会とか文化という、もっと広く大きいものの中にその一部として内包されて、
社会から文化や法を通じてシビリアン・コントロールを受けてきたはずなのに、
科学とテクノの発達と、それによって急速に肥大化する利権とによって、
医学を初めとする科学とテクノの価値意識やニーズと、グローバル経済ががっぷり噛み合って、
社会や文化の方が科学と経済の浅く狭い価値意識に染め変えられていくような、

もはや社会からのシビリアン・コントロールが効かず、
逆に社会に向けて医療によるメディカル・コントロールが急速に敷かれているような……。
2011.10.18 / Top↑