①冒頭、彼が「油っぽい尿」のような液体が入った注射器をかざして逡巡する場面で、
この液体が2種類のステロイドであることが書かれているのですが、
その1つの Equipoiseという薬物は
「通常は肉牛に注射される獣医科の薬物」と書かれています。
1頭当たりから取れる肉の量を増やすためにステロイドが使われている、
ということですね。
この液体が2種類のステロイドであることが書かれているのですが、
その1つの Equipoiseという薬物は
「通常は肉牛に注射される獣医科の薬物」と書かれています。
1頭当たりから取れる肉の量を増やすためにステロイドが使われている、
ということですね。
ということは、アメリカ産の牛肉を食べると、
必然的にステロイドを体内に取り込んでいるということになるのでは?
必然的にステロイドを体内に取り込んでいるということになるのでは?
②そろそろ肉体的にも精神的にもステロイド生活に疲れてきたある晩、
Davidsonがたまたま目にするテレビ番組があります。
ニュースになった事件を元にドラマを作る、という番組で、
病的な肥満に陥った男性が自分の肥満はあるスナックが原因だとして
スナックの会社を訴える物語をその晩はやっていました。
そのスナックの主原料である果糖濃度の高いコーンシロップには
脳に満腹感を伝えるホルモン、レプチンを抑える働きがある、というのです。
Davidsonがたまたま目にするテレビ番組があります。
ニュースになった事件を元にドラマを作る、という番組で、
病的な肥満に陥った男性が自分の肥満はあるスナックが原因だとして
スナックの会社を訴える物語をその晩はやっていました。
そのスナックの主原料である果糖濃度の高いコーンシロップには
脳に満腹感を伝えるホルモン、レプチンを抑える働きがある、というのです。
食べても食べても満腹感がなくて、いくらでも食べられる菓子が売られていた、と。
食品を製造する会社が営利のためにこんなことをするのだとしたら……。
背筋が冷えます。
背筋が冷えます。
③ステロイドを使う場合にどうしても避けがたい副作用として
胸が乳房のように膨らんでくる、と書かれています。
長期に使うボディ・ビルダーの中には
あまりに大きくなりすぎて外科手術で切除するしかなくなる場合もある、と。
胸が乳房のように膨らんでくる、と書かれています。
長期に使うボディ・ビルダーの中には
あまりに大きくなりすぎて外科手術で切除するしかなくなる場合もある、と。
Ashley事件でも、父親のブログに乳房芽の切除の正当化として
同じようなケースが引き合いに出されていました。
背の低い男の子に成長ホルモン療法をする時にやはり胸が膨らんで
外科手術で切除する場合がある、と。
同じようなケースが引き合いに出されていました。
背の低い男の子に成長ホルモン療法をする時にやはり胸が膨らんで
外科手術で切除する場合がある、と。
Davidsonの体験談のこの部分を読んで、
改めてAshleyの父親の正当化は前提がおかしいと思うのは、
ボディ・ビルダーにせよ男児の成長ホルモン療法にせよ、
「起こるべきでないこと」が起こってしまっているのを外科的に切除するという話であって、
胸が膨らむのが女性の自然であり、もともと「起こるべきこと」であるAshleyと重ねてしまうのは
筋が違う、全然正当化になっていない。
改めてAshleyの父親の正当化は前提がおかしいと思うのは、
ボディ・ビルダーにせよ男児の成長ホルモン療法にせよ、
「起こるべきでないこと」が起こってしまっているのを外科的に切除するという話であって、
胸が膨らむのが女性の自然であり、もともと「起こるべきこと」であるAshleyと重ねてしまうのは
筋が違う、全然正当化になっていない。
いわゆる”Ashley療法”は technical fix だという批判を浴びましたが、
「強くなりたければステロイドを使えばいいし、胸が膨らめば手術すればいい」とばかりに
薬物とテクノロジーで何でもお手軽に解決してしまう時代だからこその
また、恐らくは父親がそうした動きの最先端に関与する人物だからこその思い付き。
Ashley事件については、こうした社会の動向の中に据えて考えるべきでしょう。
「強くなりたければステロイドを使えばいいし、胸が膨らめば手術すればいい」とばかりに
薬物とテクノロジーで何でもお手軽に解決してしまう時代だからこその
また、恐らくは父親がそうした動きの最先端に関与する人物だからこその思い付き。
Ashley事件については、こうした社会の動向の中に据えて考えるべきでしょう。
2008.06.10 / Top↑
これから書く小説のために
違法ステロイドの1サイクル16週間で肉体改造を試みたカナダの作家が
Guardianの日曜版Observerに体験談を書いているのだけど、
これがまるで一遍の短編小説のような抜群の面白さだった。
違法ステロイドの1サイクル16週間で肉体改造を試みたカナダの作家が
Guardianの日曜版Observerに体験談を書いているのだけど、
これがまるで一遍の短編小説のような抜群の面白さだった。
具体的な事実を何も知らないまま「ステロイドで肉体改造」というと
ただ薬を飲んだり注射を打ってトレーニングするだけのようにイメージしてしまうけれど、
実態はぜんぜん、そんな単純なものではなかったようです。
ただ薬を飲んだり注射を打ってトレーニングするだけのようにイメージしてしまうけれど、
実態はぜんぜん、そんな単純なものではなかったようです。
全編を翻訳してみたいくらいなのだけど、そうもいかないので、
ざっとかいつまんで、以下に。
ざっとかいつまんで、以下に。
“物語”はDavidsonが針の太い注射器を手に、
いよいよ第一回目を打つべく覚悟を決めようと逡巡している場面から。
いよいよ第一回目を打つべく覚悟を決めようと逡巡している場面から。
注射器の中身は「脂っぽい尿みたい」に見えるが、
通常は肉牛に注射されているEquipose, 1ccと
彼くらいの男性が普通なら1週間かけて生成する10倍量に当たるTestosteron Cypionate 2cc。
これを腰の後ろの辺りに打つことになっているのだが、
腰の辺りは神経が集まっているのに加えて、
間違って静脈に打ってしまうと一発で心臓マヒだと思えば決心にも時間がかかる。
通常は肉牛に注射されているEquipose, 1ccと
彼くらいの男性が普通なら1週間かけて生成する10倍量に当たるTestosteron Cypionate 2cc。
これを腰の後ろの辺りに打つことになっているのだが、
腰の辺りは神経が集まっているのに加えて、
間違って静脈に打ってしまうと一発で心臓マヒだと思えば決心にも時間がかかる。
これは紆余曲折を経てやっと入手した違法ステロイドだ。
最初はインターネットでそれらしいサイトを探して偽薬をつかまされた。
その後いろんな人からの情報を経て、闇ルートで手に入れたもの。
ルートについては「暗号アドレスのEメールとテルアビブへの送金」しか明かせない。
最初はインターネットでそれらしいサイトを探して偽薬をつかまされた。
その後いろんな人からの情報を経て、闇ルートで手に入れたもの。
ルートについては「暗号アドレスのEメールとテルアビブへの送金」しか明かせない。
「ステロイドで肉体改造」といえば
薬物を一種類だけ摂取するのだと思い込んでいたが、
それはとんでもない思い違いで、
筋肉量を増やす、筋肉を硬くする、筋肉の保水量を下げる、と
目的別にそれぞれ薬剤が違って3種類。
それに加えて副作用を抑えるための薬物も必要となるため、
結局、Davidsonのステロイド・サイクルは6種類の薬物を使用することに。
これでもまだ穏やかな方で、プロのボディ・ビルダーなら15、6種類は軽く使うとのこと。
薬物を一種類だけ摂取するのだと思い込んでいたが、
それはとんでもない思い違いで、
筋肉量を増やす、筋肉を硬くする、筋肉の保水量を下げる、と
目的別にそれぞれ薬剤が違って3種類。
それに加えて副作用を抑えるための薬物も必要となるため、
結局、Davidsonのステロイド・サイクルは6種類の薬物を使用することに。
これでもまだ穏やかな方で、プロのボディ・ビルダーなら15、6種類は軽く使うとのこと。
注射を始めて3、4日で。
乳首がかゆくなり、鏡で“ぎょっ”となるほど胸が膨らんでくる。
これは避けがたいテストステロンの副作用の1つ。
長期にやると女性の乳房のようになるので外科手術で取り除くことになる。
乳首がかゆくなり、鏡で“ぎょっ”となるほど胸が膨らんでくる。
これは避けがたいテストステロンの副作用の1つ。
長期にやると女性の乳房のようになるので外科手術で取り除くことになる。
抜け毛もひどい。家中が抜け毛だらけだ。
不眠にも苦しむ。
不眠にも苦しむ。
そんなある晩、彼はステロイドの最もよく知られた副作用、睾丸萎縮に襲われる。
くる、と知ってはいたが、まさか、こんなふうに“きゅうっ”と一度に縮むとは。
まるで「これにて閉店」と宣言されかのような衝撃。
数日間でサイズは半分になり、まるで熟れてぱんぱんのブドウみたいな情けない姿。
男らしい体を作ろうとして男性性の象徴が衰えるということの「皮肉」。
まさか、この先、生殖能力まで失っちゃったのでは……?
くる、と知ってはいたが、まさか、こんなふうに“きゅうっ”と一度に縮むとは。
まるで「これにて閉店」と宣言されかのような衝撃。
数日間でサイズは半分になり、まるで熟れてぱんぱんのブドウみたいな情けない姿。
男らしい体を作ろうとして男性性の象徴が衰えるということの「皮肉」。
まさか、この先、生殖能力まで失っちゃったのでは……?
さらに、よほどの場合にだけ起こる副作用だと聞いていたのに、
信じられないことに額まで突出してくる。
ひどくなると、これも手術で取り除くしかなくなるが、
ほんのわずかの間に、まさか骨まで取り返しのつかない変形を遂げたのでは……?
信じられないことに額まで突出してくる。
ひどくなると、これも手術で取り除くしかなくなるが、
ほんのわずかの間に、まさか骨まで取り返しのつかない変形を遂げたのでは……?
そのうち注射の失敗も起こる。
神経に当たると飛び上がるほど痛いし、
間違って血管を刺すと大量の出血を見るし、
なぜか薬剤が皮下で大きなグリグリになり、痛くて横向きにも寝られない。
神経に当たると飛び上がるほど痛いし、
間違って血管を刺すと大量の出血を見るし、
なぜか薬剤が皮下で大きなグリグリになり、痛くて横向きにも寝られない。
副作用以外に苦痛なのは細かく決められた食事制限で、
1日ツナを6缶(本来は25缶食べろという指示)とバナナ、卵の白身、茹でた鶏の胸肉、
それにサプリメントとしてプロテイン・シェイク5~6杯に大量のプロテイン粉。
それを毎日ただ機械的に口に詰め込む。まるで儀式のように。
ステロイドのサイクルをこなしていこうとすると、
注射も食事もすべてがひたすら続ける儀式のようになるのだ。
1日ツナを6缶(本来は25缶食べろという指示)とバナナ、卵の白身、茹でた鶏の胸肉、
それにサプリメントとしてプロテイン・シェイク5~6杯に大量のプロテイン粉。
それを毎日ただ機械的に口に詰め込む。まるで儀式のように。
ステロイドのサイクルをこなしていこうとすると、
注射も食事もすべてがひたすら続ける儀式のようになるのだ。
そのうち、前立腺まで肥大して、排尿困難が辛くてならない。
この苦痛を和らげるには、1日4回のマスタベーションしか手がない。
幸いテストステロンのおかげで何にでもすぐムラムラだからいいのだが、
半分サイズの睾丸から出てくるものは、
いかにも無理やり搾り出された少量が申し訳なさそうな風情だ。
この苦痛を和らげるには、1日4回のマスタベーションしか手がない。
幸いテストステロンのおかげで何にでもすぐムラムラだからいいのだが、
半分サイズの睾丸から出てくるものは、
いかにも無理やり搾り出された少量が申し訳なさそうな風情だ。
起きて、食べて、出して、ジム、食べて、出して、食べて、ジム、食べて、出して、食べて、寝る。
その合間に、まるでジャンキーのように儀式めいた動作を重ねて注射を打つ
それは辛く苦しい毎日──。
それは辛く苦しい毎日──。
そんなに辛いのに、なぜ止めなかったかと問われれば、
その訳は恐らくステロイドにハマる誰しもと同じで
ただ1つ、“効果”があるからだ。
その訳は恐らくステロイドにハマる誰しもと同じで
ただ1つ、“効果”があるからだ。
30歳にして少々鍛えてもどうしようもない衰えを感じていた彼の体は
突然、限界知らずの肉体に生まれ変わった。
最初にびっくりしたのはベンチ・プレス。
それまで限界だった片方85ポンドのダンベルが、まるでウォーミング・アップだし、
今まで考えたこともない重さを軽々と上げられる。
体も爆発的にぐんぐんと大きくがっしりと変貌を遂げていく。
突然、限界知らずの肉体に生まれ変わった。
最初にびっくりしたのはベンチ・プレス。
それまで限界だった片方85ポンドのダンベルが、まるでウォーミング・アップだし、
今まで考えたこともない重さを軽々と上げられる。
体も爆発的にぐんぐんと大きくがっしりと変貌を遂げていく。
それまでジムでわざとらしく、はぁ、ふう、と声を上げる連中を
なんて子どもじみた奴らだと軽蔑していたのに、
いつのまにやら自分が
「はっ。ふっ。ふがあああああああ! ぇぃぃぃぃやあああああっ!」
見て、見て! ほら、オレ!この体、見てぇぇぇ!
なんて子どもじみた奴らだと軽蔑していたのに、
いつのまにやら自分が
「はっ。ふっ。ふがあああああああ! ぇぃぃぃぃやあああああっ!」
見て、見て! ほら、オレ!この体、見てぇぇぇ!
愚かしく哀れなオレ――。でも止められなかった。
本当はジムで鏡に映る自分の体の陰影が日ごとに濃くなるのを見ても、
豊胸手術で膨らませた女の胸を同じだと、どこかで分かっていたのに。
本当はジムで鏡に映る自分の体の陰影が日ごとに濃くなるのを見ても、
豊胸手術で膨らませた女の胸を同じだと、どこかで分かっていたのに。
そのうち、太もものぐりぐりが化膿する。
注射器で吸い出してみたら、出てきたのは真っ黒な血。
注射器で吸い出してみたら、出てきたのは真っ黒な血。
12週で16キロほども体重が増え、究極の筋肉マンが誕生していたが
同時に体のあちこちにガタも出始めていた。
無理して伸ばしすぎた関節はワークアウトの後で音を立てる。
全身が燃え尽きてゴワゴワ、怖いほど老いぼれ果ててしまった感じ。
同時に体のあちこちにガタも出始めていた。
無理して伸ばしすぎた関節はワークアウトの後で音を立てる。
全身が燃え尽きてゴワゴワ、怖いほど老いぼれ果ててしまった感じ。
やっと16週のサイクルが終わった。
ある朝、目覚めると、何もかもがまるで違っていた。
モンクなしに体が快適なのだ。こんな爽快な気分は4ヶ月ぶり。
睾丸もやっと戻ってきた(おかえり!)。
しかし体重は1晩で6キロも落ちた。
あれだけ立派だった筋肉も消えて、脚なんか、まるで長患いをした人みたいだ。
鏡に映る自分の姿がガイコツに見える。
ジムに行っても、ダンベルを持ち上げることすらやっとの有様で、
この数ヶ月熱い視線を送っていた皆がせせら笑っているのを感じる。
ほうれん草をなくしたポパイ。所詮はニセモノなのだ、俺は。
ある朝、目覚めると、何もかもがまるで違っていた。
モンクなしに体が快適なのだ。こんな爽快な気分は4ヶ月ぶり。
睾丸もやっと戻ってきた(おかえり!)。
しかし体重は1晩で6キロも落ちた。
あれだけ立派だった筋肉も消えて、脚なんか、まるで長患いをした人みたいだ。
鏡に映る自分の姿がガイコツに見える。
ジムに行っても、ダンベルを持ち上げることすらやっとの有様で、
この数ヶ月熱い視線を送っていた皆がせせら笑っているのを感じる。
ほうれん草をなくしたポパイ。所詮はニセモノなのだ、俺は。
体の痛みが取れないので医者へ行くと、椎間板ヘルニアになっていた。
前立腺肥大も要治療。ヒザには水が。
肝臓の検査値がとんでもないことになっている。
前立腺肥大も要治療。ヒザには水が。
肝臓の検査値がとんでもないことになっている。
いったい、あの16週間はなんだったのだろう。
残ったのは1キロちょっと体重が増えたけれど、どこかぶよぶよした体と
そして妙な自己嫌悪感だけ。
残ったのは1キロちょっと体重が増えたけれど、どこかぶよぶよした体と
そして妙な自己嫌悪感だけ。
最悪なのは、睾丸は元の大きさに戻っても、
この先結婚して本当に子どもが持てるのかという不安に付きまとわれていること。
この先結婚して本当に子どもが持てるのかという不安に付きまとわれていること。
祖父は、父は、叔父ら、家族の男たちは
貧しく、手にマメを作って、工場で働き、固い土を耕して、耐え続けた。
自分は何を耐え続けただろう?
かつての男たちがそうしてあがなった体を自分は受け継いでいる。
でも、自分は彼らからもらった体にふさわしくないという気がする。
貧しく、手にマメを作って、工場で働き、固い土を耕して、耐え続けた。
自分は何を耐え続けただろう?
かつての男たちがそうしてあがなった体を自分は受け継いでいる。
でも、自分は彼らからもらった体にふさわしくないという気がする。
医者から電話がかかってくる。その後に出た血液検査の結果について。
「Davidsonさん……もしかして漢方薬とか、飲まれてます?
……ボディ・ビルディングのサプリとか?」
……ボディ・ビルディングのサプリとか?」
覚悟を決めて合法なステロイドの名前を挙げ、「使った」と告白する。
「Davidsonさん」 沈黙。大きく息を吸う音。「2度と、絶対にそんなことはしないように」
こちらに何も言わせず、医者は電話を切った。
2008.06.10 / Top↑
子どもを被験者にした医学研究では
安全性の問題と臨床実験の不足という問題の間でバランスを取るのが難しいわけですが、
安全性の問題と臨床実験の不足という問題の間でバランスを取るのが難しいわけですが、
米国FDAはこのほど2日間の委員会を開き、
喘息などの病気の治療薬、AIDSワクチンの開発、万能細胞の医学利用について
小児科研究の実施方法を見直す、とのこと。
IRB(施設内審査委員会)での検討ガイドラインが示される可能性も。
喘息などの病気の治療薬、AIDSワクチンの開発、万能細胞の医学利用について
小児科研究の実施方法を見直す、とのこと。
IRB(施設内審査委員会)での検討ガイドラインが示される可能性も。
Children’s Medical Research Draws Scrutiny on Safety, Need
By John Lauerman
Bloomberg.com, June 9, 2008
By John Lauerman
Bloomberg.com, June 9, 2008
とはいえ、AIDSワクチンの臨床実験では、去年、
ワクチンを受けた被験者49人がAIDSウィルスに感染したために
実験の中止が命じられたというケースがあったばかり。
ワクチンを受けた被験者49人がAIDSウィルスに感染したために
実験の中止が命じられたというケースがあったばかり。
(臨床実験でAIDSに感染するなんて、
そんな可能性のある実験が許可されたこと自体、言語道断では?)
そんな可能性のある実験が許可されたこと自体、言語道断では?)
もともとFostはFDAの小児科研究倫理問題検討委員会の委員長なのだから、
こうした委員会の委員長になっても不思議はないし、
案外ここで2日間開催されるのが、この同じ委員会なのかもしれませんが、
(記事からはいずれとも分かりません)
こうした委員会の委員長になっても不思議はないし、
案外ここで2日間開催されるのが、この同じ委員会なのかもしれませんが、
(記事からはいずれとも分かりません)
しかし、Norman Fostが小児科の臨床実験を巡っては、
「リスクには報酬で報いればすむこと」と発言していることなどや、
これまでの言動からすれば
どういう方向で小児科の医学研究の方法が見直されるか
既に結論が見えているようなものでしょう。
「リスクには報酬で報いればすむこと」と発言していることなどや、
これまでの言動からすれば
どういう方向で小児科の医学研究の方法が見直されるか
既に結論が見えているようなものでしょう。
案の定、FostはBloombergの電話取材に対して
「大人の臨床研究で充分という考え方だってあるが、」
大人になってからでは遅い喘息のような病気もあり、
子どもでの臨床研究がもっと行われる必要がある」
と、語っています。
「大人の臨床研究で充分という考え方だってあるが、」
大人になってからでは遅い喘息のような病気もあり、
子どもでの臨床研究がもっと行われる必要がある」
と、語っています。
また、記事の中でCleveland クリニックの生命倫理部門の長 Eric Kodishが取材を受け、
安全への配慮条件を緩和してもっと子どもで臨床実験をするべきだと主張しているのですが、
そのジャスティフィケーションとして
日常生活の中で子どもが自転車に乗ったりスノーボードをしたりすれば
そこにだってリスクはあるのだから、そういうリスクとも比較して
もっと臨床実験のリスクを現実的に捉えなおそう、と
ビックリするような屁理屈を引っ張り出しています。
安全への配慮条件を緩和してもっと子どもで臨床実験をするべきだと主張しているのですが、
そのジャスティフィケーションとして
日常生活の中で子どもが自転車に乗ったりスノーボードをしたりすれば
そこにだってリスクはあるのだから、そういうリスクとも比較して
もっと臨床実験のリスクを現実的に捉えなおそう、と
ビックリするような屁理屈を引っ張り出しています。
この屁理屈、実は
Fostがスポーツでのステロイド使用を認めろと主張する際の屁理屈と全く同じ。
Fostがスポーツでのステロイド使用を認めろと主張する際の屁理屈と全く同じ。
体へのリスクを言うならタバコやアルコールの方がリスクが大きい、
スポーツで怪我をするリスクを考えたらステロイドのリスクなど取るに足りないというのが
「Mr.ステロイド」と異名をとるFostの持論なのですから。
スポーツで怪我をするリスクを考えたらステロイドのリスクなど取るに足りないというのが
「Mr.ステロイド」と異名をとるFostの持論なのですから。
そのFostが委員長を務めている限り、
子どもへの利益が確かめられている場合にのみ多少のリスクがあっても実験を認めることもあるという
FDAの現在の基準は緩和の方向で大幅に見直されることになるでしょう。
子どもへの利益が確かめられている場合にのみ多少のリスクがあっても実験を認めることもあるという
FDAの現在の基準は緩和の方向で大幅に見直されることになるでしょう。
【追記】
その後、この記事はアップデイトされて、
AIDSワクチンの臨床実験については、
罹患率がもっと高いアフリカの国などでは実験も必要だけれども、
アメリカでは実験の利益がリスクを上回らないとして、
当面見送りとなりました。
2008.06.09 / Top↑
オーストラリアの調査で
子どもたちの多くが自分や周りの子どもたちがイジメや虐待に遭うことを恐れていて
その反面、それを訴えても大人は信じてはくれないと考えている。
子どもたちの多くが自分や周りの子どもたちがイジメや虐待に遭うことを恐れていて
その反面、それを訴えても大人は信じてはくれないと考えている。
お店やカフェで歓迎されていないのを感じるし、
家以外の場所で1人になることに危険を感じている。
家以外の場所で1人になることに危険を感じている。
もっともインターネットを通じての調査なので
一定のグループの子どもたちからの回答でしかない、という限定はあるかもしれませんが。
一定のグループの子どもたちからの回答でしかない、という限定はあるかもしれませんが。
環境ホルモンやらその他安易な薬物摂取やら貧困の放置で
子どもたちをどんどん肥満にしておきながら
まだ遺伝子操作で肥満にならない子どもを作ることを云々する大人たち。
子どもたちをどんどん肥満にしておきながら
まだ遺伝子操作で肥満にならない子どもを作ることを云々する大人たち。
養護施設や難民キャンプで子どもたちを保護する役目を利用して
子どもたちを欲望のままに虐待する大人たち。
子どもたちを欲望のままに虐待する大人たち。
強い者の欲望が肥大し、
それらが生み出す利権だけが社会経済の力動になっていくような今の世の中、
強い者が平気で力任せで弱い者をねじ伏せ自分の欲望を満たす世の中を考えると
こんな時代に子どもたちがハッピーなはずはない、と思う。
それらが生み出す利権だけが社会経済の力動になっていくような今の世の中、
強い者が平気で力任せで弱い者をねじ伏せ自分の欲望を満たす世の中を考えると
こんな時代に子どもたちがハッピーなはずはない、と思う。
――――――
子どもを持ちたいのは大人自身の欲望かもしれないけど、
子どもを持ち親になろうと一旦決める以上は、子どもは
自分のためでなく子どものために産み育てるものだろうと思うのに
子どもを産み育てることそのものが親の欲望を満たす道具になっているような気がするし
子どもを持ち親になろうと一旦決める以上は、子どもは
自分のためでなく子どものために産み育てるものだろうと思うのに
子どもを産み育てることそのものが親の欲望を満たす道具になっているような気がするし
働くのは自分や家族のためかもしれないけど、
いったんある職業についたら、日々のその仕事は
自分以外の誰かのためにやってこそやりがいがあるし、
それでこそ、その職業についている誇りも持てるのだろうと思うのだけど、
いつのまにか仕事が自分の欲望を満たす手段になって、
その仕事への誇りが失われ、誇りと一緒に倫理観も捨て去られていくような気がする。
いったんある職業についたら、日々のその仕事は
自分以外の誰かのためにやってこそやりがいがあるし、
それでこそ、その職業についている誇りも持てるのだろうと思うのだけど、
いつのまにか仕事が自分の欲望を満たす手段になって、
その仕事への誇りが失われ、誇りと一緒に倫理観も捨て去られていくような気がする。
人間の欲望って
あんまり簡単に満たせなくて悩ましいくらいが、
本当はちょうどいいのかもしれませんが、
いろんな欲望が簡単に満たせるようになった今の世の中が
いまさら簡単にUターンできるのでしょうか。
あんまり簡単に満たせなくて悩ましいくらいが、
本当はちょうどいいのかもしれませんが、
いろんな欲望が簡単に満たせるようになった今の世の中が
いまさら簡単にUターンできるのでしょうか。
でも、そろそろUターンできなければ
ハッピーでない子どもたちが作る未来がハッピーなはずもないと思う。
ハッピーでない子どもたちが作る未来がハッピーなはずもないと思う。
2008.06.09 / Top↑
子どもの双極性障害の診断件数が1994年からの10年間で40倍に跳ね上がる現象を起こすなど、
子どもに精神疾患を診断し、まだ認可されていない抗精神病薬を飲ませるという風潮を
作ってきたのはハーバード大学の一連の研究。
子どもに精神疾患を診断し、まだ認可されていない抗精神病薬を飲ませるという風潮を
作ってきたのはハーバード大学の一連の研究。
それらの研究を主導した著名な児童精神科医ら
Dr. Joseph Biederman、Dr. Timothy E. Wilens、Dr.Thomas Spencerが
製薬会社から多額の顧問料を受け取っていながら申告していなかったことが判明。
Dr. Joseph Biederman、Dr. Timothy E. Wilens、Dr.Thomas Spencerが
製薬会社から多額の顧問料を受け取っていながら申告していなかったことが判明。
研究における利益相反を避けるための NIH その他の規定違反であると
Iowa選出の共和党上院議員が指摘。
Iowa選出の共和党上院議員が指摘。
科学研究における利益の相反を避けるため
政府からの助成金を受ける研究に従事する研究者らは
製薬会社などからの金銭の授受について大学に申告することになっていて、
(一定額以上を受け取っている研究者は、その会社の製品の研究に関与してはならないとの規定のため)
政府からの助成金を受ける研究に従事する研究者らは
製薬会社などからの金銭の授受について大学に申告することになっていて、
(一定額以上を受け取っている研究者は、その会社の製品の研究に関与してはならないとの規定のため)
申告された金額の真偽が確かめられることはなく、
申告制度そのものが形骸化しているという別の問題もあるにはあるのだけど、
申告制度そのものが形骸化しているという別の問題もあるにはあるのだけど、
この3人はそもそも申告していなかっただけでなく、
その金額とヤリクチというのが共にハンパではなくて、
例えばBiederman医師は「2001年にJohnson&Johnsonからの収入はない」と申告。
もう一度確認を求められると「そういえば3,500ドルもらっていた」。
例えばBiederman医師は「2001年にJohnson&Johnsonからの収入はない」と申告。
もう一度確認を求められると「そういえば3,500ドルもらっていた」。
ところがJohnson&Johnsonの方では
2001年には同医師に「58,169ドル支払った」と。
2001年には同医師に「58,169ドル支払った」と。
58,000ドルといえば優に普通のサラリーマンの年収ですね。
これ、一社からの収入。
これ、一社からの収入。
2000年のEli Lilly社からの収入は
同医師の申告によると10000ドル以下となっているものの
Eli Lilly 社のほうでは「14000ドル以上支払った」と。
(申告義務が生じるのは10000ドル以上。)
同医師の申告によると10000ドル以下となっているものの
Eli Lilly 社のほうでは「14000ドル以上支払った」と。
(申告義務が生じるのは10000ドル以上。)
こんなに不透明なお金が動いていたのでは
小児精神科医が子どもたちを食い物にしたと言われても
仕方ないんじゃないでしょうか。
小児精神科医が子どもたちを食い物にしたと言われても
仕方ないんじゃないでしょうか。
【追記】
afcpさんのところから寄ってくださる方もあるようなので、
11日夜、細部を多少手直ししました。
afcpさんのところから寄ってくださる方もあるようなので、
11日夜、細部を多少手直ししました。
とはいえ、もともと長文の記事をかいつまんだものですから
なるべく原文を当たってくださいますよう。
なるべく原文を当たってくださいますよう。
【追追記】
以下の記事によると、
Harvardの規定では、ある会社から受け取る金額が年間2万ドルを超えた場合は、
その会社の製品の研究を行ってはならない、とされていますが、
ただし2004年以前は金額の上限が1万ドルだったとのこと。
以下の記事によると、
Harvardの規定では、ある会社から受け取る金額が年間2万ドルを超えた場合は、
その会社の製品の研究を行ってはならない、とされていますが、
ただし2004年以前は金額の上限が1万ドルだったとのこと。
2008.06.08 / Top↑
数日前だったかNHKのニュース。
食料価格高騰と食糧不足に解決策を模索する世界食糧サミットで、
各国それぞれの思惑が錯綜して解決に足並みが揃わない状況を悲観的に伝えた際に、
各国それぞれの思惑が錯綜して解決に足並みが揃わない状況を悲観的に伝えた際に、
しかし今回の会議唯一の希望と思われた点として
「今回の食糧不足を新しい農業のあり方を考える契機に」と訴える科学者たちの声があった、
「今回の食糧不足を新しい農業のあり方を考える契機に」と訴える科学者たちの声があった、
彼らはたとえば石油を使わない農業や、
異常気象に強い作物の開発を提唱している、と。
異常気象に強い作物の開発を提唱している、と。
こういう表現を使われると、
つい「ほぉ~」とうなずいてしまいそうですが、
「異常気象に強い作物の開発」って具体的には遺伝子組み換えやクローン技術のことでしょう。
つい「ほぉ~」とうなずいてしまいそうですが、
「異常気象に強い作物の開発」って具体的には遺伝子組み換えやクローン技術のことでしょう。
それって、
「抗ウツ剤を飲ませたら子どもがやたら自殺するようになったから飲ませるのをやめよう」ではなくて、
「このまま飲ませ続けつつ、さらに抗うつ剤の副作用を抑える薬物を開発して飲ませよう」と
いうのに等しいのでは?
「抗ウツ剤を飲ませたら子どもがやたら自殺するようになったから飲ませるのをやめよう」ではなくて、
「このまま飲ませ続けつつ、さらに抗うつ剤の副作用を抑える薬物を開発して飲ませよう」と
いうのに等しいのでは?
それでは子どもたちの心身の健康が決して改善しないのと同じく、
遺伝子汚染が進めば地球環境はさらに破壊されて
結局は異常気象も加速するんじゃないのかなぁ。
遺伝子汚染が進めば地球環境はさらに破壊されて
結局は異常気象も加速するんじゃないのかなぁ。
―――――
それで思い出したのですが、
5月28日のNew York Times に
ハーバード大の経済学と哲学の教授でノーベル賞受賞者でもあるAmartya Senが
The Rich Get Hungrier(金持ちが貪欲になっていく)というタイトルの論考を寄せていました。
5月28日のNew York Times に
ハーバード大の経済学と哲学の教授でノーベル賞受賞者でもあるAmartya Senが
The Rich Get Hungrier(金持ちが貪欲になっていく)というタイトルの論考を寄せていました。
現在の食糧不足の表層的な現象そのものは一過性のものであるにせよ、
その根底にはあるのは世界的な格差の広がり。
富裕層の肥大する欲望のために貧困層が飢えている。
その根底にはあるのは世界的な格差の広がり。
富裕層の肥大する欲望のために貧困層が飢えている。
食糧問題を解決するためには、
まず、問題の本質を認識しなければならない、と。
まず、問題の本質を認識しなければならない、と。
食糧が不足しているなら
最先端テクノロジーで農業そのものを変革しようとの提案は
実は先端テクノロジーで巨大利権を創出しては、それに群がる人たちのハングリーな声なのでは──?
最先端テクノロジーで農業そのものを変革しようとの提案は
実は先端テクノロジーで巨大利権を創出しては、それに群がる人たちのハングリーな声なのでは──?
2008.06.07 / Top↑
「おいおい……」というのと「これ良い案じゃん」というのと
丸反対のトーンのブログ記事が2つたまたま出てきたので、
介護負担と家族の“溜め”を巡る物思いがAshleyに繋がった。
丸反対のトーンのブログ記事が2つたまたま出てきたので、
介護負担と家族の“溜め”を巡る物思いがAshleyに繋がった。
そこで
父親がマイクロソフトの役員だという家庭の“溜め”って……?
と考えたら、
と考えたら、
Ashleyの父親が介護負担を云々することそのものが笑止千万──。
つい笑ってしまった。
つい笑ってしまった。
みんな、もういいかげんに気づこうよ。
父親のブログの写真をよく見てくださいね。
あれは相当な豪邸ですよ。
父親のブログの写真をよく見てくださいね。
あれは相当な豪邸ですよ。
---
去年の1月の論争当時に日本のブログで
「日本の重症児でこれだけ身ぎれいにしてもらっている子どもはいない」と
誰か感嘆していた人がいたけれど、
「日本の重症児でこれだけ身ぎれいにしてもらっている子どもはいない」と
誰か感嘆していた人がいたけれど、
それは日本の親が介護の手を抜いているからではありません。
重症児の介護には1日中次から次へと細かい用事や仕事・介護が数珠繋ぎになっていて、
それに加えて親はプロの介護者と違って家事もあれば、
障害のない兄弟の子育ても同時にこなしていくわけですから、
それに加えて親はプロの介護者と違って家事もあれば、
障害のない兄弟の子育ても同時にこなしていくわけですから、
涎や食べこぼしでちょっと汚れたくらいでいちいち着替えさせたり、
毎日アイロンがびしっとかかったシーツに交換している暇も体力もないからです。
毎日アイロンがびしっとかかったシーツに交換している暇も体力もないからです。
重症障害のある子どもを懸命にケアしている普通の専業主婦の日本の母親にして
「これだけ身ぎれいにしてもらっている子どもはいない」ということを念頭に
「これだけ身ぎれいにしてもらっている子どもはいない」ということを念頭に
マイクロソフト社の重役がどれほど多忙か、
その妻が社会的なお付き合いにどれほど時間を割かなければならないかを想像したら
その妻が社会的なお付き合いにどれほど時間を割かなければならないかを想像したら
Ashleyのベッド周りがあれほど整然として、
本人がいつも身ぎれいにしてもらっていて、
しかも、あんな細やかでカンペキなポジショニングまで……。
本人がいつも身ぎれいにしてもらっていて、
しかも、あんな細やかでカンペキなポジショニングまで……。
家族だけであんな完璧な介護ができると、みなさん本当に思います──?
2008.06.06 / Top↑
前のエントリーで「反貧困――『すべり台社会』からの脱出」を取り上げましたが、
数々の排除によって追い詰められていくと、
もともと“溜め”の少ない人がそれを使い果たし、肉体的にも精神的にも疲弊して
ネガティブに自己閉塞していく負のスパイラルに入る(自分自身からの排除)、
もともと“溜め”の少ない人がそれを使い果たし、肉体的にも精神的にも疲弊して
ネガティブに自己閉塞していく負のスパイラルに入る(自分自身からの排除)、
そういう人は自己責任や頑張りが足りないのではなく、
むしろ「自分が頑張るしか」と自己責任を過剰に内在化してしまい、
自分から助けを求めようとも考えなくなってしまうのだ、
むしろ「自分が頑張るしか」と自己責任を過剰に内在化してしまい、
自分から助けを求めようとも考えなくなってしまうのだ、
“溜め”の違いに眼を向けず「自己責任」だといって切り捨てるのではなく、
せめて「がんばれる」ための最低限の条件整備に援助を……
せめて「がんばれる」ための最低限の条件整備に援助を……
……とこの本で著者が繰り返し書くたびに、
ああ、これは介護者支援にそのまま当てはまるな、と私は感じました。
ああ、これは介護者支援にそのまま当てはまるな、と私は感じました。
この本を読んで驚いたことの1つは
こんなにも多くの人たちが「助けてくれる家族」という“溜め”を最初から持たないこと。
こんなにも多くの人たちが「助けてくれる家族」という“溜め”を最初から持たないこと。
確かに、誰もが家族に恵まれているわけではないし、
家族がいるからといって、その家族が必ずしも助けてくれるわけでもなければ、
ことによっては家族がいるからこその不幸という現実だってあるでしょう。
家族がいるからといって、その家族が必ずしも助けてくれるわけでもなければ、
ことによっては家族がいるからこその不幸という現実だってあるでしょう。
それならば当たり前のこととして
「介護してくれる家族」や「終末期を迎えに帰る家」という“溜め”を
最初から持たない人も実は沢山いるはずだし、
「介護してくれる家族」や「終末期を迎えに帰る家」という“溜め”を
最初から持たない人も実は沢山いるはずだし、
家族はいても、さしたる“溜め”にはならない……という人だって
決して少なくないはずだと思う。
決して少なくないはずだと思う。
もともと家族は必ずしも温かく愛し合い支えあうだけの一面的な関係性ではなくて
むしろ複雑な愛憎をはらんで矛盾に満ちた関係なのだし、
家庭が何らかの問題を抱えて家族それぞれにストレスがかかると
平時であれば潜在している家族の中の確執や問題が
そのストレスに炙り出されるように顕在化してくる……というのは
どこの家庭にもありがちなことのはず。
むしろ複雑な愛憎をはらんで矛盾に満ちた関係なのだし、
家庭が何らかの問題を抱えて家族それぞれにストレスがかかると
平時であれば潜在している家族の中の確執や問題が
そのストレスに炙り出されるように顕在化してくる……というのは
どこの家庭にもありがちなことのはず。
介護によって家庭が崩壊するとよく言われるのは、
おそらく介護そのものが崩壊させるのではなく、
それまでにその家庭に潜在していた問題なのではないでしょうか。
介護負担がそれぞれの家族に与えるストレスによって
平時であれば表面に出てこない問題が顕在化してしまうために
それまで夫婦関係に問題を抱えていた家庭では夫婦関係に、
親子関係に問題が潜在していた家庭では親子に
亀裂が入っていくのではないかという気がします。
おそらく介護そのものが崩壊させるのではなく、
それまでにその家庭に潜在していた問題なのではないでしょうか。
介護負担がそれぞれの家族に与えるストレスによって
平時であれば表面に出てこない問題が顕在化してしまうために
それまで夫婦関係に問題を抱えていた家庭では夫婦関係に、
親子関係に問題が潜在していた家庭では親子に
亀裂が入っていくのではないかという気がします。
家族それぞれが“溜め”をたっぷり持った状態であれば解決も可能な問題が、
長く介護を背負った家族では家族の誰もが疲弊して“溜め”が低い状態で
その問題に直面するしかないために
乗り越えにくくなるという面もあるかもしれません。
長く介護を背負った家族では家族の誰もが疲弊して“溜め”が低い状態で
その問題に直面するしかないために
乗り越えにくくなるという面もあるかもしれません。
家族は本当はそんなに温かいばかりでもなければ、そんなに強くもない。
それなのにテレビや雑誌で介護の問題が論じられる時、
取り上げられるのは決まって「頑張ることができている」家族の姿。
つまり大変ではあっても頑張ることができるだけ“溜め”のある家族ばかりです。
取り上げられるのは決まって「頑張ることができている」家族の姿。
つまり大変ではあっても頑張ることができるだけ“溜め”のある家族ばかりです。
もちろん、頑張れる家族の支援も必要ですが、本当に介護の問題が深刻なのは
“溜め”がないから頑張れない家族や介護者のはずです。
“溜め”がないから頑張れない家族や介護者のはずです。
介護の問題が本当にリアルな現実として語られるためには
「誰にも、温かい家族」という神話から一旦完全に離れることが必要なのではないでしょうか。
「誰にも、温かい家族」という神話から一旦完全に離れることが必要なのではないでしょうか。
湯浅氏は社会の“溜め”を大きくして、強い社会を作るためには
人々の支え合いの強化と社会連帯の強化を提唱しますが、
人々の支え合いの強化と社会連帯の強化を提唱しますが、
注目したいのは、そこに次のような但し書きがあること。
ただし人々の支え合い・社会連帯は、公的セーフティネットの不在を補完・免罪するための家族・地域の抱え合いではないし、現役世代の社会保険料負担を重くし、引退世代の社会保障給付費を抑制するといったことでもない。
障害者福祉でも高齢者福祉でも、
ノーマライゼーションとか「地域で暮らす」といった美名によって
社会化されたはずの介護は家庭にゆり戻され、
同時に地域でのボランティアの組織化が言われ始めていることを
この言葉からつくづく考えました。
ノーマライゼーションとか「地域で暮らす」といった美名によって
社会化されたはずの介護は家庭にゆり戻され、
同時に地域でのボランティアの組織化が言われ始めていることを
この言葉からつくづく考えました。
【追記】
その後、こんなニュースがありました。
その後、こんなニュースがありました。
2008.06.05 / Top↑
アパートを借りる際の連帯保証人になったり生活保護申請に同行するなど
ホームレスの自立支援活動をしている
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長の湯浅誠氏の著書
「反貧困 ── 「すべり台」社会からの脱出」。
ホームレスの自立支援活動をしている
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長の湯浅誠氏の著書
「反貧困 ── 「すべり台」社会からの脱出」。
著者は90年代以降の日本の社会でいかに貧困問題が深刻化しているかを
雇用・社会保険・公的扶助という3層のネットワークの喪失と、
それによって個々人が受ける5重の排除によって解説し、
(教育課程・企業福祉・家族福祉・公的福祉・自分自身からの排除)
雇用・社会保険・公的扶助という3層のネットワークの喪失と、
それによって個々人が受ける5重の排除によって解説し、
(教育課程・企業福祉・家族福祉・公的福祉・自分自身からの排除)
スタートから親の貧困を引き継いでいたり、一度何かの弾みで正規雇用のルートから外れると、
本人の努力ではどうにもならないまま一気に底辺まで落ちていく人たちの姿と
彼らを食い物にする企業、貧困問題に見て見ぬフリで目をつぶり続ける政府によって
日本が急速にそうした「すべり台社会」となっている現実を丹念に描き出す。
本人の努力ではどうにもならないまま一気に底辺まで落ちていく人たちの姿と
彼らを食い物にする企業、貧困問題に見て見ぬフリで目をつぶり続ける政府によって
日本が急速にそうした「すべり台社会」となっている現実を丹念に描き出す。
貯金・財産はもちろんその他、資質や能力や家族や人脈や環境や
生きていくうえでその人が利用・活用しうるあらゆる資源と
それが持たせてくれる余裕とか力のことを
著者は“溜め”と呼んでいる。
生きていくうえでその人が利用・活用しうるあらゆる資源と
それが持たせてくれる余裕とか力のことを
著者は“溜め”と呼んでいる。
セーフティネットから漏れたり、様々な排除を受けて追い詰められていくと
もともと“溜め”の少ない人はそれを使い果たし、肉体的にも精神的にも疲弊して
ネガティブに自己閉塞していく負のスパイラルに入る。
これが「自分自身からの排除」。
もともと“溜め”の少ない人はそれを使い果たし、肉体的にも精神的にも疲弊して
ネガティブに自己閉塞していく負のスパイラルに入る。
これが「自分自身からの排除」。
いったんそういう状態に陥ってしまった人がそこから抜け出るためには
まず最低限の生活環境を整える支援がなければ、がんばることすらできなくなっているというのに、
貧困問題ではこの「自分自身からの排除」が見落とされて、
まず最低限の生活環境を整える支援がなければ、がんばることすらできなくなっているというのに、
貧困問題ではこの「自分自身からの排除」が見落とされて、
多くの人が問題の実像や本質に無関心なまま
「自己責任」という言葉で彼らを切り捨てて済ませている。
「自己責任」という言葉で彼らを切り捨てて済ませている。
「自己責任」という言葉は、人による“溜め”の違いを全く無視し、
「頑張れるためにも条件(溜め)がある」という事実を認識せず、
自分自身からの排除の恐ろしさを理解しない。
「頑張れるためにも条件(溜め)がある」という事実を認識せず、
自分自身からの排除の恐ろしさを理解しない。
このような過酷で余裕の無い「すべり台社会」は
社会そのものが“溜め”を失い、活力を失って痩せ細っている証拠なのだと著者は警告している。
社会そのものが“溜め”を失い、活力を失って痩せ細っている証拠なのだと著者は警告している。
なぜ貧困が「あってはならない」のか。それは貧困状態にある人たちが「保護に値する」かわいそうで、立派な人たちだからではない。……立派でもなく、かわいくもない人たちは「保護に値しない」のなら、それはもう人権ではない。生を値踏みすべきではない。貧困が「あってはならない」のは、それが社会自身の弱体化の証だからに他ならない。……そのような社会では、人間が人間らしく再生産されていかないからである。
誰かに自己責任を押し付け、それで何かの答えが出たような気分になるのは、もうやめよう。お金がない、財源がないなどという言い訳を真に受けるのは、もうやめよう。そんなことよりも、人間が人間らしく再生産される社会を目指すほうが、はるかに重要である。
読みながら、ずっと感じ続けていたのは、
これはワーキング・プアの問題だけじゃない、
障害児・者の切捨ても、終末期医療や介護の問題も
みんな同じだ、繋がっているのだ……ということ。
これはワーキング・プアの問題だけじゃない、
障害児・者の切捨ても、終末期医療や介護の問題も
みんな同じだ、繋がっているのだ……ということ。
2008.06.05 / Top↑
自宅から歩いて3分のコンビニに行った時のこと。
駐車場に足を踏み入れようとした瞬間、
車道からマイクロバスが入ってきて目の前に止まった。
中には明らかにアジア系の外国人男性が10数人。
車道からマイクロバスが入ってきて目の前に止まった。
中には明らかにアジア系の外国人男性が10数人。
駐車場のどこかから寄ってきた男性が1人、開いたドアから早速に乗り込んでいく。
と、また1人、どこかから現われてドアに手をかける。
と、また1人、どこかから現われてドアに手をかける。
そういえば車で5分くらいのところに菓子メーカーの工場がある。
マイクロバスがラインで働くパート女性を拾っていくのを見たことが何度かあるので、
瞬間的に「ああ、○○食品のバスだ」と思ったのだけれど、
マイクロバスがラインで働くパート女性を拾っていくのを見たことが何度かあるので、
瞬間的に「ああ、○○食品のバスだ」と思ったのだけれど、
バスのお尻を回りこむ格好で駐車場を横切りながら見たら、
バスの横っ腹にあるはずの○○食品のロゴがない。
それどころか何も書いてない無印のバス。
よく見るとオンボロで、なんとも薄汚い──。
バスの横っ腹にあるはずの○○食品のロゴがない。
それどころか何も書いてない無印のバス。
よく見るとオンボロで、なんとも薄汚い──。
そういえば○○食品のバスが拾っているのはパート女性だった。
それに時間も朝だった。今は夕方の6時半──。
それに時間も朝だった。今は夕方の6時半──。
若いのばかり、アジア系の外国人男性を詰め込んで
バスはさっさと出て行った。
バスはさっさと出て行った。
どこへ──?
何の仕事に──?
何の仕事に──?
あのバスが向かっている場所には
無印の薄汚いバスでしか迎えにこれないような
もしかしたら私の想像の範囲を超えた“仕事”が
彼らを待っているのかもしれない……という気がして、
無印の薄汚いバスでしか迎えにこれないような
もしかしたら私の想像の範囲を超えた“仕事”が
彼らを待っているのかもしれない……という気がして、
文化も言葉も異なった国にはるばるとやってきて、
夕方から無印のバスで拾われて仕事に出かけていく人たちの生活が
こんな田舎町の片隅の、自分の日常に隣り合って存在するということに
ちょっと足元をすくわれたような気分になった。
夕方から無印のバスで拾われて仕事に出かけていく人たちの生活が
こんな田舎町の片隅の、自分の日常に隣り合って存在するということに
ちょっと足元をすくわれたような気分になった。
2008.06.04 / Top↑
特定の病気の遺伝子を先祖から受け継いでいるとの遺伝子テストの結果によって
従業員や保険加入者を差別してはならないとする遺伝子情報差別禁止法が
4月に米国議会を通過、5月21日にブッシュ大統領が署名して法律として成立。
従業員や保険加入者を差別してはならないとする遺伝子情報差別禁止法が
4月に米国議会を通過、5月21日にブッシュ大統領が署名して法律として成立。
法案を提出した保健・教育・労働・年金委員会の4月のプレス・リリースによると、
Edward Kennedy委員長は「新世紀初の市民権法だ」と語り、
また委員の一人Enzi上院議員は
「これで遺伝情報が誤用されたり濫用される心配をせずに誰もが遺伝子検査を受けられて、
遺伝子研究が約束している、命を救い健康を増進するという目的が達成される」と。
Edward Kennedy委員長は「新世紀初の市民権法だ」と語り、
また委員の一人Enzi上院議員は
「これで遺伝情報が誤用されたり濫用される心配をせずに誰もが遺伝子検査を受けられて、
遺伝子研究が約束している、命を救い健康を増進するという目的が達成される」と。
しかし、
Enzi議員の言葉に明らかで、
以下の記事にも雰囲気が漂っているように、
この法律の目的は遺伝子検査への懸念を取り除き、
検査を受ける人を増やすことにあるようなので、
Enzi議員の言葉に明らかで、
以下の記事にも雰囲気が漂っているように、
この法律の目的は遺伝子検査への懸念を取り除き、
検査を受ける人を増やすことにあるようなので、
それなら遺伝子検査推進法とか遺伝子診断活用健康増進法でも名づければよく、
遺伝差別法と名づけてはいけないのではないでしょうか。
遺伝差別法と名づけてはいけないのではないでしょうか。
だって、
胚や胎児の遺伝子を調べて、それによって生き死にを決めるというのは
遺伝子情報の最大の濫用であり最悪の遺伝子情報差別なのでは──??????
胚や胎児の遺伝子を調べて、それによって生き死にを決めるというのは
遺伝子情報の最大の濫用であり最悪の遺伝子情報差別なのでは──??????
KENNEDY, ENZI, SNOWE CELEBRATE PASSAGE OF GENETIC INFORMATION NONDISCRIMINATION ACT
Press Release, April 24, 2008
Press Release, April 24, 2008
【追記】
英国ではハンチントン病の遺伝子情報を保険会社が契約可否の判断材料に使うことが認められ、
それ以外の病気についても今後認める方向が打ち出されているようで、
それに関する情報をまとめてくださっているブログがあったので、TBさせていただきました。
英国ではハンチントン病の遺伝子情報を保険会社が契約可否の判断材料に使うことが認められ、
それ以外の病気についても今後認める方向が打ち出されているようで、
それに関する情報をまとめてくださっているブログがあったので、TBさせていただきました。
2008.06.04 / Top↑
「(ボランティアのマニュアルで)障害者の説明で間違いがあった」
some mistakes were made in describing people with disabilities.
ので、障害者団体、障害のある選手、や内外から批判が起きたため、
BOCOGはこの冊子を廃止して書き直すこととする……
として、心からのお詫び(sincere apologies)を表明。
some mistakes were made in describing people with disabilities.
ので、障害者団体、障害のある選手、や内外から批判が起きたため、
BOCOGはこの冊子を廃止して書き直すこととする……
として、心からのお詫び(sincere apologies)を表明。
APが指摘していた中国語版も訂正されるのでしょうか。
2008.06.03 / Top↑
イタリアの調査で
羊水穿刺による染色体異常の検査は
実際の染色体異常の半数を見落としていることが判明。
羊水穿刺による染色体異常の検査は
実際の染色体異常の半数を見落としていることが判明。
100人に1人の割合で流産が起きるリスクを伴う侵襲度の高い検査だけに、
妊婦に対して検査の限界とリスクが充分に説明される必要がある、と。
妊婦に対して検査の限界とリスクが充分に説明される必要がある、と。
バルセロナでのthe European Society of Human Genetics 学会で発表されたもので、
調査を行ったBusto Arsizioの the TOMA 研究所の Francesca Grati医師は
「これらの検査では検出できない病気・障害も沢山あります。
それに、よく起こる異常にしても100%検知できるわけではありません」と。
調査を行ったBusto Arsizioの the TOMA 研究所の Francesca Grati医師は
「これらの検査では検出できない病気・障害も沢山あります。
それに、よく起こる異常にしても100%検知できるわけではありません」と。
この調査結果を受けて英国助産師会は、
英国ではごく限られた病気と障害に検査対象を絞っている、
滅多にない病気・障害のことをあれこれ言われても妊婦は混乱するだけだから、
それに英国の助産師は検査についてもリスクについても上手に情報提供している、と。
英国ではごく限られた病気と障害に検査対象を絞っている、
滅多にない病気・障害のことをあれこれ言われても妊婦は混乱するだけだから、
それに英国の助産師は検査についてもリスクについても上手に情報提供している、と。
えらく防御的な発言だなと感じるのは私だけ?
2008.06.03 / Top↑
Dominic Lawsonがダウン症児を産んだことを利己的な行為だと批判したClaire Raynerは2000年に
オーストラリアの科学展に注射器とパソコンを繋いだ自殺装置が出展されて議論になった際に
「あなたに言わせれば殺人、私に言わせれば安楽死」という記事で
「死ぬ権利」議論に解決策を提言していました。
オーストラリアの科学展に注射器とパソコンを繋いだ自殺装置が出展されて議論になった際に
「あなたに言わせれば殺人、私に言わせれば安楽死」という記事で
「死ぬ権利」議論に解決策を提言していました。
彼女の提案は、
積極的な安楽死を求める人はいずれにしても少数なのだから
極限状態にある人には個々に裁判所の判断を仰げる制度を作ったらどうか、というもの。
積極的な安楽死を求める人はいずれにしても少数なのだから
極限状態にある人には個々に裁判所の判断を仰げる制度を作ったらどうか、というもの。
裁判所に法律と医療の専門家と素人のチームを作り、
①緩和ケアが充分に行われてきたかどうか
②精神障害の故の自殺念慮ではないか
③家族や周囲の意を受けたり、周囲に遠慮しての自殺希望ではないか
などを充分に確かめた上で、裁判所が認めてはどうか、と。
①緩和ケアが充分に行われてきたかどうか
②精神障害の故の自殺念慮ではないか
③家族や周囲の意を受けたり、周囲に遠慮しての自殺希望ではないか
などを充分に確かめた上で、裁判所が認めてはどうか、と。
いきなり、この提案だけを目の前に突きつけられると、
なるほど納得してしまいそうなのですが、
なるほど納得してしまいそうなのですが、
これは”Ashley療法”論争でのDiekema医師の「最善の利益」論と同じで、
「これは条件によっては認めてもよいことなのかどうか」という
まず前提段階で丁寧に行われるべき倫理上の議論がすっ飛ばされて、
いきなり「認めてもよい条件」を議論しようとするもの。
まず前提段階で丁寧に行われるべき倫理上の議論がすっ飛ばされて、
いきなり「認めてもよい条件」を議論しようとするもの。
本質的な倫理上の議論よりも前に既成事実を認めてしまうという点で、
やはり1つのマヤカシではないでしょうか。
やはり1つのマヤカシではないでしょうか。
しかも、ダウン症の子どもを生むことについて、
「社会のコスト」を云々した人からの提案であることを思えば、なおのこと。
「社会のコスト」を云々した人からの提案であることを思えば、なおのこと。
2008.06.02 / Top↑
英国のヒト受精・胚法改正議論で、障害胎児の中絶に関して、
障害や病気についての然るべき情報提供を母親に保障しようとの改正案が
否決されていました。
障害や病気についての然るべき情報提供を母親に保障しようとの改正案が
否決されていました。
ダウン症の娘を持つジャーナリストDominic Lawsonが
27日のThe Independent紙オピニオン欄に
「我々は真実から身を隠している:優生思想は生き続けている」という文章を書き、
この改正案の否決を批判しています。
27日のThe Independent紙オピニオン欄に
「我々は真実から身を隠している:優生思想は生き続けている」という文章を書き、
この改正案の否決を批判しています。
改正案は、
胎児に障害または深刻な病気があると分かった場合には母親に対して
その障害または病気に関する詳細な予後や可能な治療、
また親の会や支援サービスなどに関する情報提供を義務付けようとするもので、
胎児に障害または深刻な病気があると分かった場合には母親に対して
その障害または病気に関する詳細な予後や可能な治療、
また親の会や支援サービスなどに関する情報提供を義務付けようとするもので、
現在米国の上院に提出されている法案と同じ趣旨のものだと思われます。
しかし、英国下院は309対173で否決。
それについてLawsonは以下のように批判。
障害胎児は40週の最後まで中絶させてもいいというだけでなく、
一時のパニックや不安によって判断されないよう慎重を期す必要も無いと
議員多数は言ったわけだ、
一時のパニックや不安によって判断されないよう慎重を期す必要も無いと
議員多数は言ったわけだ、
この改正案に反対した議員らは
障害者支援団体の情報などを提供すれば
母親には中絶しない方向へのプレッシャーがかかると考えたのに違いないが
現在はその反対のプレッシャーがかけられているではないか、
羊水穿刺の検査そのものに流産の危険性があることから
ダウン症が判明したら中絶するとの同意を前提に検査を行う医師がほとんどなのだから。
障害者支援団体の情報などを提供すれば
母親には中絶しない方向へのプレッシャーがかかると考えたのに違いないが
現在はその反対のプレッシャーがかけられているではないか、
羊水穿刺の検査そのものに流産の危険性があることから
ダウン症が判明したら中絶するとの同意を前提に検査を行う医師がほとんどなのだから。
この文章には散漫で焦点が曖昧な感じも受けるのですが、
然るべき情報提供を保障しようという改正案が否決されていたという事実は衝撃でした。
然るべき情報提供を保障しようという改正案が否決されていたという事実は衝撃でした。
議会では「障害児は人ではない(non-personである)」という発言もあったし、
この投票結果には
「なにがなんでも障害児・病児はいらない、排除しよう」という強固な意志が感じられるようにも思えて。
「なにがなんでも障害児・病児はいらない、排除しよう」という強固な意志が感じられるようにも思えて。
ちなみに、この記事によると、
英国で胎児に障害の可能性があれば中絶にはタイムリミットはないとされたのは
1990年、Thatcher政権下でのこと。
英国で胎児に障害の可能性があれば中絶にはタイムリミットはないとされたのは
1990年、Thatcher政権下でのこと。
2008.06.01 / Top↑