2ntブログ
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2歳半の息子を持つ母親は
そんな検査があると知った瞬間に
「どこで受けられるの? それ、いくら?」と聞いたそうな。

Colorado州Boulderで Atlas Sports Geneticsという会社がやっているDNA検査。
149ドル。

ACTN3という遺伝子を調べることで
短距離とかフットボールなどスピードとパワーの競技に向いているか
長距離などの耐久スポーツに向いているか
その子が生まれつき持っている運動能力の傾向が分かる……とのことで。

ACTN3でそんなことは分からないし、
こんな商売は“ガマの油売り”まがいの行為だと
批判する遺伝子治療の専門家もいるのだけれど、

大学の奨学金獲得やプロのスポーツ選手としての成功を夢見る親たちに
たいそう好評なのだとか。

冒頭の母親は
「そんなテストを受けたら
子どもが限られたスポーツしかせず
 経験の種類が狭められてしまうと考える人もいるかもしれないけど、
その子に適したことをやらせるのはいいことだと、やっぱり思いますよ。
その検査のお陰で親のフラストレーションはずいぶん減りますしね」

「子どものため」という言い訳で
実はやっぱり親自身のため……。

New genetic test asks which sport a child was born to play
The International Herald Tribune, November 29, 2008


自分がどんな潜在能力を持ち、何に向いているかなんて、
その子ども自身の体と心が一番よく分かっている。

親が余計な情報を仕入れて
自分の頭と理屈で子どもを思い通りに支配しようとせずに
目の前の子どもが何に興味を持ち、
何をやりがたっているのかを受け止めて
そこに手を添えてやれば
その子がもって生まれた能力は一番生かされるはずだし、

それが昔から、どんな子どもであれ
子どもを育てはぐくむことにおいては
当たり前の常識というものだろうと私は思うのだけれど。
2008.12.05 / Top↑
Lancetが英国小児科学会とのコラボで行う児童虐待シリーズとして
1年かけてまとめられた一連の論文を発表。

それらが指摘するところによると、
高所得国の児童10人に1人が何らかの虐待を受けている、
このところ英国民に衝撃を与えているBaby Pのケースのように
児童福祉にリスクが把握されているものは氷山の一角に過ぎない、と。

4-16%の子どもが身体的虐待を受けており、
5-15%の女児、1-5%の男児が狭義の性的虐待(性器挿入)
広義の性的虐待だと女児の15%、男児の5%に及ぶ。
精神的な虐待を受けているのは10%で
ネグレクトを受けていると思われるものは15%と推測される。

この問題の広範な広がりと複雑さが再認識された形で、
Baby P事件に関する報告書が指摘する児童保護行政の問題点について早急な対応が必要と。

One in 10 children suffer abuse, say experts
The Guardian, December 3, 2008

この記事を見て、そのうち元論文の所在を探してみようと思っていたところ
AFCPさんがブックマークしてくださっていました。
(AFCPさん、ありがとうございます)

Child Maltreatment
The Lancet, December 2, 2008


Lancetに論文を寄せた専門家が
この問題について科学的な検証を行っていく必要を説いていることを思えば、
なんの根拠もない素人の感想で申し訳ないのですが、

「科学とテクノロジーで何でも、命までも思い通りにできる」
「どんな子どもを持ちたいか、親が選ぶことができる」という文化の浸透が
子どもをまるで親の所有物のような存在に変えていきはしないか、

また、その一方で
大人たち自身がゆったりと人生と向かい合って生きていくことが出来にくい世の中へと
世界が急速に変貌していることも無関係ではないんじゃないか、

慎重な議論を待たずに積み重ねられる「やった者勝ち」の既成事実の勢いと
強者に都合のよい科学的な根拠だけが出てくる分かりやすいコスト効率議論とによって
弱肉強食化する世界の力関係が
親と子、大人と子どもの関係にも
そのまま反映されているのではないか、

児童虐待も含めて一つ一つの問題に対処する方法を考えることも必要だろうけれど、
もう一方で、それらの問題をもっと大きな図の中で捉えて、
効率と競争と力が席巻する世の中の動きそのものに対して、
一旦この辺りで踏みとどまって慎重に考えてみることが
実は真の問題解決のためには必要なんじゃないだろうか、と。
2008.12.05 / Top↑