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昨日のエントリーで生命倫理会議のシンポ情報をアップした際に、
以下のエントリーを思い出し、

「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)

遅ればせながら探してみたところ、
安楽死臓器提供を提唱したSavulescuの元論文はこちらに。

SHOULD WE ALLOW ORGAN DONATION EUTHANASIA? ALTERNATIVES FOR MAXIMIZING THE NUMBER AND QUALITY OF ORGAN FOR TRANSPLANTATION
Dominic Wilkinson and Julian Savulescu
Bioethics, May 3, 2010


また、全く同じとは思えませんが、
Oxford 大学のPractical Ethicsというサイトにも同じ趣旨の論文が掲載されていました。
こちらは全文読めます。

Organ Donation Euthanasia
By Dominic Wilkinson and Julian Savulescu
Practical Ethics, May 10, 2010

冒頭で
現在英国で臓器を待っている人が8000人いて
移植を受けられずに亡くなる人が毎年400人いることを挙げ、
人はドナーになるよりレシピエントになる確率の方が高いのだし、
「自分が他者にしてもらいたいことを他者に対して行え」との倫理の黄金律に従っても、
自分の臓器が不要となった時には提供を真剣に考えるべきである、と説いた後で、

その1つの重要な方法は臓器提供を決めて家族に意思を伝えておくことだとして、
以下の部分がゴチックで強調されています。

Donating your organs is one of the most important ways that we can help others. After all there are not many times when you can save the life of up to 9 other people at no personal cost. But most people who would like to donate their organs are not able to.

臓器提供は他者を助ける最も重要な方法の一つである。

どう考えたって、自分は何一つ損をすることなく、
最大9人までの他者の命を救うことができる機会など、そうあるものではないわけだし。

しかし、提供を望む人のほとんどが実はその意思をかなえられずにいる。




それは、多くの人が脳死を経ずに亡くなることと、
CDC(心臓死後提供)であっても心臓死を待つ間に臓器が痛むからだとして、

臓器を痛めずに、提供したいというドナーの意思をかなえるためにも、

本人意思であり、独立の委員会が承認すれば
臓器摘出安楽死を可能とするよう検討するべきだ、と提案。

次にゴチックになっている部分は以下。

Importantly, what we are proposing is to give people a choice about how they die and whether they can donate their organs. Organ donation euthanasia would only be available to patients having life support stopped on grounds of futility. It would only apply to patients who are going to die anyway. It would only apply to patients who have specifically asked for this option during life, when they were competent and understood what was being offered.

重要なのは、
我々が提唱しているのは、死に方と臓器提供の有無についての自己選択だということ。

生命維持サポートはもはや無益だという理由で
中止する患者にだけ、認めようと言っているのである。

どうせ死んでしまう患者にだけ適用しようというのだ。

生きている間に、意思決定能力があって提案されていることを理解できる人が
この選択肢を特に指定して望んだ時にだけ、適用しようというのである。




この人が“道徳”を説くと、ものすごい違和感がある――。



【Savulescuの当該論文関連エントリー】
「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
臓器提供は安楽死の次には“無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)

【Savulescu関連エントリー】
不思議な“アシュリー療法”エッセイと、その著者たち 2
カフェインだって昔は違法薬物、とSavulescu
A療法擁護の2人ドーピング議論に
最相葉月の「いのち」に、あのSavulescu(2008/5/17)

【ベルギー関連エントリー】
ベルギーでは2002年の合法化以来2700人が幇助自殺(2009/4/4)
幇助自殺が急増し全死者数の2%にも(ベルギー)(2009/9/11)
23年間“植物状態”とされた男性が「叫んでいたのに」(2009/11/24)
ベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)
2010.07.05 / Top↑

公開シンポジウム:「改定臓器移植法」施行を問う  主催:生命倫理会議

7月17日、「改定臓器移植法」が施 行されます。私たち生命倫理会議は、生命倫理の教育・研究に携わる大学教員からなる組織で、国会におけるこの法改定をめぐ る意見聴取・審議が行われていた昨年初夏、批判的な立場から3回の声明文発表と記者会見を行いました。また、本年5月、『いのちの選択――今、考えたい脳死・臓器移植』(岩波ブックレット)を出版し、さらに法改定と脳死・臓器移植その ものの問題性を世に問うてきました。しかし、いよいよ施行の時です。そこで、下記のような催事をもち、あらためて多くの皆さんと広く深く考えたいと思います。ご参加を心待ちにいたしております。

 日時:7月11日(日)13時半開場、14時~17時
 場所:専修大学神田校舎7号館731教室
     http://www.senshu-u.ac.jp/univguide/campus_info/kanda_campus/index.html

 第一部:講演「法施行をめぐる現在」

       川見 公子(臓器移植法を問い直す市民ネットワーク)
       永瀬 哲也(バクバクの会・脳死に近い状態と診断された子どもの父親 )

 第二部:シンポジウム「「いのち」はどこへ向かっているのか――改定臓器移植法と日本社会――」

      シンポジスト
       高草木 光一(生命倫理会議・慶応義塾大学)
       堀 一人(大阪府立槻の木高校社会科)
       光石 忠敬(弁護士)
       山口 洋 (医師・順天堂大学〔循環器内科〕)

      司会
       田中 智彦(生命倫理会議・東京医科歯科大学)

     総合司会
       慎 蒼健(生命倫理会議・東京理科大学)



【「いのちの選択 - 今、考えたい脳死・臓器移植」を読んで書いたエントリー】

「いのちの選択」から「どうせ」を考える(2010/5/21)
「科学とテクノ」と「法」と「倫理」そして「問題の偽装」(2010/5/24)
2010.07.05 / Top↑