HPV子宮頸がんワクチン関連
英米ではみんなが受けていると言わんばかりに日本で盛んに宣伝されている子宮がんワクチンだけど、米国CDCの発表で去年推奨どおりに3回受けたのは女児のたった27%。しかも前年より増加して、それ。以下にこのワクチンに対する不信感が大きいかの表れ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198564.php
そのHPVワクチンを男児にも、という話が出てきていて、米国で論争になっている。:いいかげんにしろ、製薬会社。この問題、詳細は以下の5月13日のエントリー(最後のヤツ)にも。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198551.php
【関連エントリー・日本】
「HPVワクチン」検索結果の怪(2008/9/2)
朝日のワクチン記事にも「米国では」の印籠(2009/8/8)
【HPVワクチン関連エントリー・海外】
CDCが11,12歳に髄膜炎、百日咳、子宮がんのワクチン接種を呼びかけ(2008/9/2)
英国でHPVワクチン義務化、親の反発必至(2008/9/5)
今度は乳がん予防のワクチンだと(2008/9/15)
ノーベル賞選考過程にHPVワクチン特許持つアストラゼネカ関与の疑惑(2008/12/18)
CA州で女児4人に1人がHPVワクチンを接種(2009/2/21)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
3医学会がHPVワクチン製造元の資金で学会員にワクチンを推奨(2009/8/19)
2009年8月21日の補遺(Washington DCの学校で事実上義務化との情報あり)
HPVワクチン接種後に13歳女児が死亡(英)(2009/9/29)
2009年12月24日の補遺(CDC前センター長がMerck社のワクチン部門責任者として天下り)
CDC前センター長はHPVワクチン売ってるMerck社のワクチン部門トップに天下り(2010/3/9)
HPVワクチン、今度は男の子狙いときて親の警戒アップ(米)(2010/5/13)
その他の話題
全然まだ開いてもいないけど、厚労省の「仕事と介護との両立に関する実態把握のための調査結果について」。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/shigoto_kaigo/index.html
カナダ、ケベック州で自殺幇助合法化に7割が賛成という世論調査。:インターネットで反対キャンペーンを始めた人のコメントがとても興味深い。そんなこんな、いろいろ盛り込んで大きなエントリーを書いていたのに、うっかりワン・クリックで原稿をおシャカにしてしまった。何故かゴミ箱にもない。泣いた……。立ち直れないので、書きなおすのは止めて、補遺に。
http://www.montrealgazette.com/news/cent+Quebecers+support+euthanasia/3430093/story.html
上記と同じGazette紙で、同社の記者が、末期がんを患いながら死の寸前まで自殺幇助合法化に反対するコラムを書いたHugh Anderson氏の担当編集者だった経験から、尊厳dignityを問題にして議論するのではなく、肉体的精神的スピリチュアルな安楽 comfort を問題にすることで、より話が分かりやすくなり、お金と資源があれば用意できるものだということが見えやすくなるのでは、と、なかなかな提案をしている。
http://www.montrealgazette.com/health/seeking+dignity+dying+might+find+comfort/3431064/story.html
Boston Globe紙に、MA州の88歳の健康なカトリック信者の女性がなぜ自殺幇助合法化を支持するか、を描いた長文の記事がある。ちょっとAlison Thorpeのような剥きつけの語り口に不快感がぬぐえないのだけど、この人が言うことをたどっていると、いかに紙の自己決定権論者が言う「尊厳のある死」の尊厳が、死そのものの問題ではなく、高齢者や死にゆく人への医療のあり方や社会の処遇の問題であるか、ということが良く分かる。
http://www.boston.com/yourtown/quincy/articles/2010/08/22/arguing_for_control_of_her_death/
海外へ生殖補助医療を求めていくカップルを国外にとどめるため、英国で生殖子ドナーへの高額な支払いが認められる方向?
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2010/aug/22/fertility-eggs-sperm-donors
この時期、新入生を迎える米国の大学で、子離れできていない親たちがいつまでも居座るので、「お別れセレモニー」を企画したり追い出しに苦労している。:なんか、これ、ものすごく象徴的な感じがする。未成熟で、子どもにからみつくことによって自分をなんとか維持している大人が増えているんじゃないだろうか。絡みつくということは、子どもの人格を自分の中に飲み込んでしまって、思うようにコントロールすることでもある。だから、社会全体としても、子どもの権利の侵害に無頓着で、親の欲望ばかりが許容され肥大化されていく方向に向かっているんじゃないだろうか。恐ろしいことだ。
http://www.nytimes.com/2010/08/23/education/23college.html?_r=1&th&emc=th
米国では通常思われている以上に、親が子供を叩いている。3歳児で65%。:これも、上記の子離れできない親の問題と実は繋がっているのだ、と思う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198578.php
Wikileaksの創設者Assange氏のレイプ容疑が取り下げられた件で、容疑は警察がメディアにリークしたものだったことが判明。:どうしても思い出すのは植草氏とか高橋氏とか。恐ろしいことだ。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/aug/22/wikileaks-julian-assange-sweden
上記の件で、陰謀説が出ている。:当たり前だよね。本当に恐ろしいことだ。
http://www.nytimes.com/2010/08/24/world/europe/24wikileaks.html?th&emc=th
遺伝子スキャンで、これまで別種の脳障害と考えられてきた発達障害が1つの遺伝子変異で起こっていることが明らかになった、と。:ふ~ん。こういうの、すぐに飛びついて信じてもいいのかなぁ。あくまでも多くの可能性の1つで、複合的な要因で起こることに変わりはないという姿勢が大事なような気がするんだけど。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198578.php
連邦裁判所が、ヒト胚を壊す研究への政府の助成は法律違反、と判断。どうする、Obama政権?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/23/AR2010082303448.html?wpisrc=nl_cuzhead
http://www.nytimes.com/2010/08/24/health/policy/24stem.html?_r=1&th&emc=th
慢性疲労症候群にロタウィルスが関与?:じゃぁ、これもまた「ワクチンで予防」の対象ね。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/23/AR2010082304486.html?wpisrc=nl_cuzhead
英国で延命エビデンスのある大腸がんの抗がん剤が高価すぎるのでNHSでは受けられないことに。最近、抗がん剤でこういう決定が続いている。:こういうニュースを聞くたびに思うのだけど、各種最先端医療のコストだけは何故か言われないような……。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/aug/24/avastin-too-expensive-for-patients
英米ではみんなが受けていると言わんばかりに日本で盛んに宣伝されている子宮がんワクチンだけど、米国CDCの発表で去年推奨どおりに3回受けたのは女児のたった27%。しかも前年より増加して、それ。以下にこのワクチンに対する不信感が大きいかの表れ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198564.php
そのHPVワクチンを男児にも、という話が出てきていて、米国で論争になっている。:いいかげんにしろ、製薬会社。この問題、詳細は以下の5月13日のエントリー(最後のヤツ)にも。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198551.php
【関連エントリー・日本】
「HPVワクチン」検索結果の怪(2008/9/2)
朝日のワクチン記事にも「米国では」の印籠(2009/8/8)
【HPVワクチン関連エントリー・海外】
CDCが11,12歳に髄膜炎、百日咳、子宮がんのワクチン接種を呼びかけ(2008/9/2)
英国でHPVワクチン義務化、親の反発必至(2008/9/5)
今度は乳がん予防のワクチンだと(2008/9/15)
ノーベル賞選考過程にHPVワクチン特許持つアストラゼネカ関与の疑惑(2008/12/18)
CA州で女児4人に1人がHPVワクチンを接種(2009/2/21)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
3医学会がHPVワクチン製造元の資金で学会員にワクチンを推奨(2009/8/19)
2009年8月21日の補遺(Washington DCの学校で事実上義務化との情報あり)
HPVワクチン接種後に13歳女児が死亡(英)(2009/9/29)
2009年12月24日の補遺(CDC前センター長がMerck社のワクチン部門責任者として天下り)
CDC前センター長はHPVワクチン売ってるMerck社のワクチン部門トップに天下り(2010/3/9)
HPVワクチン、今度は男の子狙いときて親の警戒アップ(米)(2010/5/13)
その他の話題
全然まだ開いてもいないけど、厚労省の「仕事と介護との両立に関する実態把握のための調査結果について」。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/shigoto_kaigo/index.html
カナダ、ケベック州で自殺幇助合法化に7割が賛成という世論調査。:インターネットで反対キャンペーンを始めた人のコメントがとても興味深い。そんなこんな、いろいろ盛り込んで大きなエントリーを書いていたのに、うっかりワン・クリックで原稿をおシャカにしてしまった。何故かゴミ箱にもない。泣いた……。立ち直れないので、書きなおすのは止めて、補遺に。
http://www.montrealgazette.com/news/cent+Quebecers+support+euthanasia/3430093/story.html
上記と同じGazette紙で、同社の記者が、末期がんを患いながら死の寸前まで自殺幇助合法化に反対するコラムを書いたHugh Anderson氏の担当編集者だった経験から、尊厳dignityを問題にして議論するのではなく、肉体的精神的スピリチュアルな安楽 comfort を問題にすることで、より話が分かりやすくなり、お金と資源があれば用意できるものだということが見えやすくなるのでは、と、なかなかな提案をしている。
http://www.montrealgazette.com/health/seeking+dignity+dying+might+find+comfort/3431064/story.html
Boston Globe紙に、MA州の88歳の健康なカトリック信者の女性がなぜ自殺幇助合法化を支持するか、を描いた長文の記事がある。ちょっとAlison Thorpeのような剥きつけの語り口に不快感がぬぐえないのだけど、この人が言うことをたどっていると、いかに紙の自己決定権論者が言う「尊厳のある死」の尊厳が、死そのものの問題ではなく、高齢者や死にゆく人への医療のあり方や社会の処遇の問題であるか、ということが良く分かる。
http://www.boston.com/yourtown/quincy/articles/2010/08/22/arguing_for_control_of_her_death/
海外へ生殖補助医療を求めていくカップルを国外にとどめるため、英国で生殖子ドナーへの高額な支払いが認められる方向?
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2010/aug/22/fertility-eggs-sperm-donors
この時期、新入生を迎える米国の大学で、子離れできていない親たちがいつまでも居座るので、「お別れセレモニー」を企画したり追い出しに苦労している。:なんか、これ、ものすごく象徴的な感じがする。未成熟で、子どもにからみつくことによって自分をなんとか維持している大人が増えているんじゃないだろうか。絡みつくということは、子どもの人格を自分の中に飲み込んでしまって、思うようにコントロールすることでもある。だから、社会全体としても、子どもの権利の侵害に無頓着で、親の欲望ばかりが許容され肥大化されていく方向に向かっているんじゃないだろうか。恐ろしいことだ。
http://www.nytimes.com/2010/08/23/education/23college.html?_r=1&th&emc=th
米国では通常思われている以上に、親が子供を叩いている。3歳児で65%。:これも、上記の子離れできない親の問題と実は繋がっているのだ、と思う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198578.php
Wikileaksの創設者Assange氏のレイプ容疑が取り下げられた件で、容疑は警察がメディアにリークしたものだったことが判明。:どうしても思い出すのは植草氏とか高橋氏とか。恐ろしいことだ。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/aug/22/wikileaks-julian-assange-sweden
上記の件で、陰謀説が出ている。:当たり前だよね。本当に恐ろしいことだ。
http://www.nytimes.com/2010/08/24/world/europe/24wikileaks.html?th&emc=th
遺伝子スキャンで、これまで別種の脳障害と考えられてきた発達障害が1つの遺伝子変異で起こっていることが明らかになった、と。:ふ~ん。こういうの、すぐに飛びついて信じてもいいのかなぁ。あくまでも多くの可能性の1つで、複合的な要因で起こることに変わりはないという姿勢が大事なような気がするんだけど。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/198578.php
連邦裁判所が、ヒト胚を壊す研究への政府の助成は法律違反、と判断。どうする、Obama政権?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/23/AR2010082303448.html?wpisrc=nl_cuzhead
http://www.nytimes.com/2010/08/24/health/policy/24stem.html?_r=1&th&emc=th
慢性疲労症候群にロタウィルスが関与?:じゃぁ、これもまた「ワクチンで予防」の対象ね。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/23/AR2010082304486.html?wpisrc=nl_cuzhead
英国で延命エビデンスのある大腸がんの抗がん剤が高価すぎるのでNHSでは受けられないことに。最近、抗がん剤でこういう決定が続いている。:こういうニュースを聞くたびに思うのだけど、各種最先端医療のコストだけは何故か言われないような……。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/aug/24/avastin-too-expensive-for-patients
2010.08.24 / Top↑
8月12日付でbigthink.comというサイトにアップされた
Peter Singerのインタビュー・ビデオを
お馴染みBad Crippleさんが見つけてブログに取り上げてくれています。
Bad Crippleさんが特に批判しているのは
二分脊椎を例に挙げて、
救命しても、何度も手術を受けることになるし、
いろいろな重症障害を負うだけだから、
親が救命を望まないことを当然だとしてシンガーは語っているが
二分脊椎の子どもは実際にはそれほど重症化する子ばかりじゃない、
その障害像をSingerは本当に分かっているのか、という点。
(Singerもトランスヒューマニストも、障害について無知すぎる、と私もいつも思う)
自分は障害像として二分脊椎に近いが、
誰も「この子は死ぬべきだ」とも言わなかったし、
自分を「重症障害者」だと思ったこともない、と。
それから、シンガーが障害者運動をmilitant (戦闘的)と形容していることについて、
(これ、militantなのはアンタだよ、と、たいていの人は思うと思うよ)
1999年にプリンストン大学がSingerを雇った際に
Not Dead Yetの人たちが自分の身体や車いすを大学のドアに縛り付けてまでピケを張り
警察によって排除される騒ぎがあったエピソードを語っていて、
あの時のことが頭にあるからmilitantなんて言うんだろう、と。
で、結論として、
シンガーは単なる危険人物ではないか、と。
Peter Singer: Moral Iconoclast or Just Dangerous
BAD CRIPPLE, August 18, 2010
問題のビデオはこちら。
(トランスクリプト全文がついています。)
で、私自身も聞いてみて、読んでみて、大声で笑い出してしまいそうだった。
だって、これ、ほとんどセコイ言い訳レベルなんだもの。
質問は「なぜ、あなたは、
病気の赤ん坊は安楽死させても許されると考えるのですか」
それに対してSingerの論理展開は、概ね、こんな感じ。
まず、とても単純な問題として、バカな……と思うのは、
ここでシンガーが、いかにも存在するがごとくに見せかけているジレンマは、
実は存在していない、ということ。
医師らから相談を受けた時点で、
「では、緩和ケアをしっかり」と答えれば済むことなのだから。
これは、つい先頃、
彼の弟子のSavulescuが臓器提供案楽死の正当化に使っていた
「延命治療の停止で安楽死を選ぶ人は脱水死の苦しみを味わうことになるけど、
臓器提供という方法で安楽死するなら麻酔をかけてもらえるから苦しくない」という
子どもだましみたいなバカバカしい屁理屈と全く同じ。
しかし、本当のマヤカシは、
そのジレンマのもう一段前の、もう少し見えにくいところにあって、
大統領生命倫理評議会の報告書でSchulmanがやっていたのと同じく、
答えを先取りして、既に前提に織り込んだ問いが立てられている、ということ。
問いの中で、既に答えが是認されてしまっている、というか。
インタビューで問われたのは
「病気の乳児の安楽死がなぜ許されると考えるのか」であるにもかかわらず、
Singerは
「親が救命しないと決定した子どもを
死ぬまでの長い間苦しむままに放置しておくことは倫理的であるか否か」
という問いが立てられているかのように装い、
その実、「親が救命しないと決定した子ども」の部分には
ちゃっかりと「一定の状態の子どもは死なせても構わない」という答えが織り込み済み。
つまりSingerはここで、
「安楽死の是非」ではなく、「望ましい安楽死の方法」の議論にすり替え、
「安楽死させる際に苦しめることは倫理的かどうか」という後者の問いに答えることによって、
安楽死そのものが倫理的だという前者の問いの結論を導いてみせるという
盗人猛々しい大マヤカシを演じている。
そんなバカな話があるか、と思う。
そんなの「人の財布を盗ることは許されるか」と問われて、
「目的は中の金なのに財布まで盗ることは許されるか」という問いにすり替えて、
「どうせ盗ると意思決定した以上、財布ごともって行っても同じだから、
他人の財布を盗ってもよい」と答えるようなものでは?
問われているのは、
「なぜ、二分脊椎の子どもなら救命しない決断が許されるのか」なんだよッ。
そういうところだけ頭が悪いフリ、するなよ。それとも本当に悪いのかよッ。
いや、悪いのは、頭はともかく、やっぱり人間性なのかもしれない。
だって、よくよく読むと、この人、
救命治療をせず赤ん坊が苦しんで死ぬのを見ている親と医師が消耗するから
さっさと安楽死させるのがいいと言っているのであって、
別に苦しむ赤ん坊がかわいそうだから、と言っているわけでもないみたいな……。
ちなみに日本の厚労省の研究班のサイトはこちら。
二分脊椎って何?
この最後のところに以下のように書かれている。
最後の2行、どうして次のように書けないかな。
【当ブログのSinger関連エントリー】
P.Singerの「知的障害者」、中身は?(2007/9/3)
Singerの“アシュリー療法”論評1(2007/9/4)
Singerの“アシュリー療法”論評2(2007/9/5)
Singerへのある母親の反論(2007/9/13)
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
認知障害カンファレンス巡り論評シリーズがスタート:初回はSinger批判(2008/12/17)
知的障害者における「尊厳」と「最善の利益」の違い議論(2008/12/18)
What Sorts のSinger 批判第2弾(2008/12/22)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
Singerが障害当事者の活動家に追悼エッセイ(2008/12/29)
Sobsey氏、「知的障害者に道徳的地位ない」Singer説を批判(2009/1/3)
Peter SingerがQOL指標に配給医療を導入せよ、と(2009/7/18)
Peter Singerのインタビュー・ビデオを
お馴染みBad Crippleさんが見つけてブログに取り上げてくれています。
Bad Crippleさんが特に批判しているのは
二分脊椎を例に挙げて、
救命しても、何度も手術を受けることになるし、
いろいろな重症障害を負うだけだから、
親が救命を望まないことを当然だとしてシンガーは語っているが
二分脊椎の子どもは実際にはそれほど重症化する子ばかりじゃない、
その障害像をSingerは本当に分かっているのか、という点。
(Singerもトランスヒューマニストも、障害について無知すぎる、と私もいつも思う)
自分は障害像として二分脊椎に近いが、
誰も「この子は死ぬべきだ」とも言わなかったし、
自分を「重症障害者」だと思ったこともない、と。
それから、シンガーが障害者運動をmilitant (戦闘的)と形容していることについて、
(これ、militantなのはアンタだよ、と、たいていの人は思うと思うよ)
1999年にプリンストン大学がSingerを雇った際に
Not Dead Yetの人たちが自分の身体や車いすを大学のドアに縛り付けてまでピケを張り
警察によって排除される騒ぎがあったエピソードを語っていて、
あの時のことが頭にあるからmilitantなんて言うんだろう、と。
で、結論として、
シンガーは単なる危険人物ではないか、と。
Peter Singer: Moral Iconoclast or Just Dangerous
BAD CRIPPLE, August 18, 2010
問題のビデオはこちら。
(トランスクリプト全文がついています。)
で、私自身も聞いてみて、読んでみて、大声で笑い出してしまいそうだった。
だって、これ、ほとんどセコイ言い訳レベルなんだもの。
質問は「なぜ、あなたは、
病気の赤ん坊は安楽死させても許されると考えるのですか」
それに対してSingerの論理展開は、概ね、こんな感じ。
オーストラリアで生命倫理センターのディレクターをやっている時に、
医師からよく相談を受けた。
病気や障害のある子どもたちは、例えば二分脊椎だと、
救命されても何度も手術を受けることになるし、いろんな重い障害を負うことになるから、
それを説明されると、親も生き延びるのがいいことだと思わないわけで、
そこで基本的にこういう子どもたちには治療が行われていなかった。
しかし、その結果、子どもたちは死ぬまで延々と苦しむし、
治療をしないと決めた親にとっても医師や看護師にとっても、
そういう状態で子どもが苦しんでいるのを見ているのはとても消耗的である。
そこで悩む医師の相談を受け、Helga Kuhseと検討して、
こういう状態の子は生きない方が良かろうと医師と親とで決めるのはアリ、
それは親が決定することだろうということになった。
それなら、親がちゃんとしたインフォームドコンセントを受けて死なせると決定した以上、
その子どもは迅速かつ人間的に死なせてやるのが人道的なのではないか、と考え始めた。
まず、とても単純な問題として、バカな……と思うのは、
ここでシンガーが、いかにも存在するがごとくに見せかけているジレンマは、
実は存在していない、ということ。
医師らから相談を受けた時点で、
「では、緩和ケアをしっかり」と答えれば済むことなのだから。
これは、つい先頃、
彼の弟子のSavulescuが臓器提供案楽死の正当化に使っていた
「延命治療の停止で安楽死を選ぶ人は脱水死の苦しみを味わうことになるけど、
臓器提供という方法で安楽死するなら麻酔をかけてもらえるから苦しくない」という
子どもだましみたいなバカバカしい屁理屈と全く同じ。
しかし、本当のマヤカシは、
そのジレンマのもう一段前の、もう少し見えにくいところにあって、
大統領生命倫理評議会の報告書でSchulmanがやっていたのと同じく、
答えを先取りして、既に前提に織り込んだ問いが立てられている、ということ。
問いの中で、既に答えが是認されてしまっている、というか。
インタビューで問われたのは
「病気の乳児の安楽死がなぜ許されると考えるのか」であるにもかかわらず、
Singerは
「親が救命しないと決定した子どもを
死ぬまでの長い間苦しむままに放置しておくことは倫理的であるか否か」
という問いが立てられているかのように装い、
その実、「親が救命しないと決定した子ども」の部分には
ちゃっかりと「一定の状態の子どもは死なせても構わない」という答えが織り込み済み。
つまりSingerはここで、
「安楽死の是非」ではなく、「望ましい安楽死の方法」の議論にすり替え、
「安楽死させる際に苦しめることは倫理的かどうか」という後者の問いに答えることによって、
安楽死そのものが倫理的だという前者の問いの結論を導いてみせるという
盗人猛々しい大マヤカシを演じている。
そんなバカな話があるか、と思う。
そんなの「人の財布を盗ることは許されるか」と問われて、
「目的は中の金なのに財布まで盗ることは許されるか」という問いにすり替えて、
「どうせ盗ると意思決定した以上、財布ごともって行っても同じだから、
他人の財布を盗ってもよい」と答えるようなものでは?
問われているのは、
「なぜ、二分脊椎の子どもなら救命しない決断が許されるのか」なんだよッ。
そういうところだけ頭が悪いフリ、するなよ。それとも本当に悪いのかよッ。
いや、悪いのは、頭はともかく、やっぱり人間性なのかもしれない。
だって、よくよく読むと、この人、
救命治療をせず赤ん坊が苦しんで死ぬのを見ている親と医師が消耗するから
さっさと安楽死させるのがいいと言っているのであって、
別に苦しむ赤ん坊がかわいそうだから、と言っているわけでもないみたいな……。
ちなみに日本の厚労省の研究班のサイトはこちら。
二分脊椎って何?
この最後のところに以下のように書かれている。
従って、二分脊椎症の治療には脳神経外科、小児科、小児外科、泌尿器科、整形外科、リハビシテーション科などを中心に共同チーム医療が必要とされます。さらには適切な医療の他に教育、就職、結婚等の問題まで総合的なケアが必要です。
最後の2行、どうして次のように書けないかな。
適切な医療、教育その他の支援による総合的なケアがあれば、
人により就職も結婚も可能な障害です。
【当ブログのSinger関連エントリー】
P.Singerの「知的障害者」、中身は?(2007/9/3)
Singerの“アシュリー療法”論評1(2007/9/4)
Singerの“アシュリー療法”論評2(2007/9/5)
Singerへのある母親の反論(2007/9/13)
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
認知障害カンファレンス巡り論評シリーズがスタート:初回はSinger批判(2008/12/17)
知的障害者における「尊厳」と「最善の利益」の違い議論(2008/12/18)
What Sorts のSinger 批判第2弾(2008/12/22)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
Singerが障害当事者の活動家に追悼エッセイ(2008/12/29)
Sobsey氏、「知的障害者に道徳的地位ない」Singer説を批判(2009/1/3)
Peter SingerがQOL指標に配給医療を導入せよ、と(2009/7/18)
2010.08.24 / Top↑
米国でこのところ続いている男児の性器の包皮切除の問題で、
またDiekema医師が喋っている。というか、今回は喋りまくっている。
コトの起こりは2006年には新生男児の56%が包皮切除をされていたのに
去年は3分の1を切ったという調査結果。
その結果自体に、保険で支払われなかった症例や
病院以外の宗教施設で行われた症例数が含まれていないとの指摘もあるのだが、
Diekemaは、いや、絶対に減っている、と大問題であるかのように言い、
ものすごい勢いで、その要因を挙げて、あちこちの責任を問いまくる。
曰く、
10年ほど前に小児科学会が包皮切除に曖昧なスタンスのガイドラインを出したものだから
医師が家族に話を持ちかける姿勢を変えてしまったのだろう、
あの妙に中立的なガイドラインのせいで
メディケイドの給付対象から外す州も出てきたし、
それを受けて保険会社が支払い対象から外す。
それで自腹を切ってまでは、と家族がとりやめているんだろう。
それに米国でヒスパニック系の人口が増加していることもある。
包皮切除の伝統がない人たちだから。
しかし、Diekemaが最も力を入れて批判しているのは
intactivistsと呼ばれる包皮切除反対活動家のこと。
inatctivistたちはパワフルな反対ロビーを続けていて、
その激しさは時にワクチン反対アドボケイトにも喩えられるほどだという。
で、Diekemaは、
なんといっても、こいつらのヤリクチが問題なのだ、と熱くなる。
「あの人たちの議論というのはほとんどが感情論ですよ。
包皮切除のことを“性器切断”だと言いつづけていることそのものが
医学的な利益があるとしても断固それを認めないという姿勢の表れです」
そして、今年2月には「利益もリスクも不透明」と言っていたはずの彼は、
ここへきて、利益は大きいと、主張するのです。
「性行為による感染症の感染リスクが、そこそこ、しっかり有意に下がっていますよ。
(なんとも奇怪な表現。fairly substantial, important reduction)
新生児では尿路感染も下がる可能性があります。
尿路感染は起こしたら新生児にとっては深刻な病気です。
アフリカでの少なくとも3つのしっかりしたランダム治験で
HIV感染がかなり減っています」
もちろん、最終的には家族が決めること。
ただ、医師は家族に利益とリスクをちゃんと知らせる役割がある。
それに「包皮切除のリスクは大きくなってからやるよりも
新生児期の方がずいぶん小さい」
――だから小児科学会の指針のように中立的なことを言わず
利益が大きいぞ、今やった方がリスクが小さいぞ、と誘導して、
家族に「やろう」という決断をさせろ、と彼は言っているわけですね。
Study: Circumcision Rates Falling Fast In U.S.
NPR, August 22, 2010
な~んか、“Ashley療法”を巡るDiekemaの喋り口調にそっくりだ。
障害者の権利アドボケイトは、これを身体切断だの人権侵害だのと主張し続けて、
それだけとってみても、成長抑制に医学的であれ社会的であれ利益があることなんか、
そんなの関係ないと彼らは思っているのは明らかで、お話しにならない、と。
それにしても、ワクチンに関しても
Diekemaはやらないという親は法的処罰の対象にしろとまで言っているし、
彼の牙城であるTruman Kats センターが生命倫理カンファを始めた時
その第一回目のテーマが、こともあろうにワクチン問題だった。
そして今度は包皮切除……。
必死で踊っていますね。
提灯ふりふり、ゲイツ音頭を。
白衣を着たポチが。
【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
またDiekema医師が喋っている。というか、今回は喋りまくっている。
コトの起こりは2006年には新生男児の56%が包皮切除をされていたのに
去年は3分の1を切ったという調査結果。
その結果自体に、保険で支払われなかった症例や
病院以外の宗教施設で行われた症例数が含まれていないとの指摘もあるのだが、
Diekemaは、いや、絶対に減っている、と大問題であるかのように言い、
ものすごい勢いで、その要因を挙げて、あちこちの責任を問いまくる。
曰く、
10年ほど前に小児科学会が包皮切除に曖昧なスタンスのガイドラインを出したものだから
医師が家族に話を持ちかける姿勢を変えてしまったのだろう、
あの妙に中立的なガイドラインのせいで
メディケイドの給付対象から外す州も出てきたし、
それを受けて保険会社が支払い対象から外す。
それで自腹を切ってまでは、と家族がとりやめているんだろう。
それに米国でヒスパニック系の人口が増加していることもある。
包皮切除の伝統がない人たちだから。
しかし、Diekemaが最も力を入れて批判しているのは
intactivistsと呼ばれる包皮切除反対活動家のこと。
inatctivistたちはパワフルな反対ロビーを続けていて、
その激しさは時にワクチン反対アドボケイトにも喩えられるほどだという。
で、Diekemaは、
なんといっても、こいつらのヤリクチが問題なのだ、と熱くなる。
「あの人たちの議論というのはほとんどが感情論ですよ。
包皮切除のことを“性器切断”だと言いつづけていることそのものが
医学的な利益があるとしても断固それを認めないという姿勢の表れです」
そして、今年2月には「利益もリスクも不透明」と言っていたはずの彼は、
ここへきて、利益は大きいと、主張するのです。
「性行為による感染症の感染リスクが、そこそこ、しっかり有意に下がっていますよ。
(なんとも奇怪な表現。fairly substantial, important reduction)
新生児では尿路感染も下がる可能性があります。
尿路感染は起こしたら新生児にとっては深刻な病気です。
アフリカでの少なくとも3つのしっかりしたランダム治験で
HIV感染がかなり減っています」
もちろん、最終的には家族が決めること。
ただ、医師は家族に利益とリスクをちゃんと知らせる役割がある。
それに「包皮切除のリスクは大きくなってからやるよりも
新生児期の方がずいぶん小さい」
――だから小児科学会の指針のように中立的なことを言わず
利益が大きいぞ、今やった方がリスクが小さいぞ、と誘導して、
家族に「やろう」という決断をさせろ、と彼は言っているわけですね。
Study: Circumcision Rates Falling Fast In U.S.
NPR, August 22, 2010
な~んか、“Ashley療法”を巡るDiekemaの喋り口調にそっくりだ。
障害者の権利アドボケイトは、これを身体切断だの人権侵害だのと主張し続けて、
それだけとってみても、成長抑制に医学的であれ社会的であれ利益があることなんか、
そんなの関係ないと彼らは思っているのは明らかで、お話しにならない、と。
それにしても、ワクチンに関しても
Diekemaはやらないという親は法的処罰の対象にしろとまで言っているし、
彼の牙城であるTruman Kats センターが生命倫理カンファを始めた時
その第一回目のテーマが、こともあろうにワクチン問題だった。
そして今度は包皮切除……。
必死で踊っていますね。
提灯ふりふり、ゲイツ音頭を。
白衣を着たポチが。
【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
2010.08.24 / Top↑
15歳以上の500人の調査で、
47%が自殺幇助に賛成で、反対は44%だったとのこと。
年齢別では、
15歳から34歳では39%だったのに対して、
35歳以上では51%だった。
民族別では、
Maori族とPacific島の住民では37%で
その他のヨーロッパ民族では49%。
この記事によると、先月Aucklandのメラノーマ患者の医師 John Pollock(61)が
住んでいる国や地域によって自殺幇助が受けられるのに
自分が受けられないのは不公平だと医師向けの雑誌に投稿し、
合法化議論が再燃しているらしい。
10月にはNZの死の自己決定権アドボケイト Lesley Martinが創設した団体
the Dignity New Zealand TrustがWellingtonでの会議を開催し、
安楽死合法化法案について議論するとのこと。
Public divided over euthanasia
The Dominion Post, August 23, 2010
NZでは、去年も同じような調査が同じような結果を出していた。
詳細は以下のエントリーに。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/51006391.html
47%が自殺幇助に賛成で、反対は44%だったとのこと。
年齢別では、
15歳から34歳では39%だったのに対して、
35歳以上では51%だった。
民族別では、
Maori族とPacific島の住民では37%で
その他のヨーロッパ民族では49%。
この記事によると、先月Aucklandのメラノーマ患者の医師 John Pollock(61)が
住んでいる国や地域によって自殺幇助が受けられるのに
自分が受けられないのは不公平だと医師向けの雑誌に投稿し、
合法化議論が再燃しているらしい。
10月にはNZの死の自己決定権アドボケイト Lesley Martinが創設した団体
the Dignity New Zealand TrustがWellingtonでの会議を開催し、
安楽死合法化法案について議論するとのこと。
Public divided over euthanasia
The Dominion Post, August 23, 2010
NZでは、去年も同じような調査が同じような結果を出していた。
詳細は以下のエントリーに。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/51006391.html
2010.08.24 / Top↑
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