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Minnesota大学の小児科や看護科、薬学科などの研究者が
子どもの遺伝子と発達・健康の関連を調査すべく
多くの親子のDNAサンプルを集めようと
編みだした方法が物議をかもしている。

3年計画の調査、その名も“Gopher Kids”(ミネソタ・キッズ)。
Gopher Kidsの公式サイトはこちら。

テレビや新聞で広く宣伝した上で、
ウェブサイトから同意書をダウンロードできるようにし、
毎年180万人の家族連れが集うミネソタ州フェアで
1歳から11歳の子ども500人を募った。

親からの遺伝を調べるために、DNAサンプルは親子とも
容器にツバを吐くか口の中をブラシでなでる。
オプションで爪や血液の提供も。

同時に子どもの身長、体重、血圧を測り、
親には予め家族全員についての概要調査と
さらに45分程度のアンケート調査に応えてもらう。

ご褒美はフェアのお土産と5ドル相当の乗り物券で、
来年、再来年もフェアに来て追跡調査に協力してもらうために
今後2年間は無料チケットが送られてくるお約束。

今年はフェアも終わり、もう閉め切られたものの、
フェアの最中にNature誌に倫理性を問う論文が掲載された。

フェア会場というような場所では
親もその場の気分で同意してしまうのではないか。

金額的には通常の研究の協力謝礼と変らないにせよ、
フェアのライドで子供を釣るようなやり方はどうなのか。

だいたいフェアの会場に研究のブースが出来ること自体どうなのか。

はたまた、親のIC用の説明(4ページ)の情報が不十分かつ曖昧で
今後のサンプルの扱いに疑問が残る。
研究自体の位置づけは今後どうなるのか。

研究目的にのみ限った利用に同意させているが、
万一ドナーの子どもに病気に関与した遺伝子を見つけた場合に
知らせないというのは倫理的にどうなのか。

現在は分からない病気との関連が将来的に特定の遺伝子で見つかった場合に
個々の子どもの情報をどのように扱うのか。

などなど、あちこちの倫理学者から指摘が相次いでいる。

(通常なら「何でもアリ」のNorman Fostまでが嵩にかかって
非難しまくっているのが日ごろの彼の持論とそぐわない。
Fost自身、Wisconsin大学の小児科で遺伝子研究に関わっているので、
これは多分、MN大に先を越されたくないためなんじゃないのか……。
それを思えば、いろんな倫理学者が非難しているのも動機は同じだったりして?)

MN大学の当該研究の担当者らは
遺伝子研究はものすごいスピードで進歩しているので
先のことがどうなるなんて分からないもん、と言い訳しつつ、

なにしろ米国内のコンセンサスというのがまだないのだから、
我々研究者にはDNAドナーにどういう情報を提供しなければならんという
法的義務もないわけだけど、そりゃ、もちろん
道徳的な義務というものはあるわけだけだから
自分たちもこの議論は進めてもらえればうれしい、と。

U of M’s DNA on a stick’ study becomes platform for debate on genetic-research ethics
MinnPost.com, September 21, 2010


その全国的コンセンサスを敢えて作らず科学とテクノを無規制の野放し状態に放置し
倫理問題にも「議論が必要」とお約束のように言い続けるだけでお茶を濁し、
他国に抜け駆けて最先端の技術と利権にいち早くツバつける……という
なりふり構わぬ汚い手口で国際競争を創り出し、そこで勝ち続け
それによって世界中が科学とテクノの倫理問題も国民の命も構っていられないほど
えげつない科学とテクノの弱肉強食ネオリベ・グローバリズムを先導してきたのが
ほかならぬ米国の研究者なのでは?
2010.09.27 / Top↑
Ashleyケースを一貫して批判し、
成長抑制反対ブログまで立ち上げたカナダの重症児の母親Claire Royさんが
3月にオーストラリアのAngela事件を批判して
以下のエントリーを書いた。

On Hormones and Hysterectomies
LIFE WITH A SEVERELY DISABLED CHILD, March 13, 2010

このエントリーに9月24日になって、
以下のようなヒステリックなトーンのコメントが入った。

YOU HAVE NO IDEA WHAT YOU'RE TALKING ABOUT! I have a profoundly mentally and physically handicapped daughter who, because of her growth which is causing her scoliosis to worsen, MUST have two titanium rods attached to her spine to straighten it, which will put her in pain and on pain meds for the rest of her life not to mention the numerous surgeries that follow to replace the rods as she grows. THE ALTERNATE WOULD BE TO HALT HER GROWTH. A MUCH SIMPLER AND LESS PAINFUL SURGERY!!! BUT I CAN'T GET A DOCTOR TO DO IT BECAUSE OF PEOPLE LIKE YOU!!!!DON'T YOU THINK PARENT'S WANT WHAT IS BEST FOR THEIR PRECIOUS BABY!!! HOW DARE YOU INSERT YOUR AGENDA ONTO THESE INNOCENT, HELPLESS CHILDREN AND THEIR PARENTS!!!

あんた、自分の言ってること、分かってんの? 私には重症重複障害のある娘がいて、成長するにつれて側わんがひどくなるために、背骨をまっすぐにするためにチタン棒を2本背中に入れないといけないのよ。痛いし、死ぬまで薬を飲まないといけないし、成長につれて入れ替える手術を何度も受けることになるし。それ以外の選択肢があるとしたら、それは成長を止めることなのよ。棒を入れるよりもはるかに簡単で痛みの少ない手術でしょ!!! でもアンタみたいな人たちがいるおかげで、やってくれる医者がいないの!!!! 親は大事な子どもに最善を望むもんでしょうが!!! なんだって余計な批判をして、罪もない無力な子どもたちと親の邪魔をしないといけないのよ!!!



このコメントに対して、Claireさんは即座にエントリーを立てて応えた。

主な反論は3点で、

・私はAshley事件についても子宮摘出や成長抑制についても
時間をかけて調べては、じっくり考えてきた。その上で、
障害のある女性の子宮摘出には法的保護が必要だとの意見に至っているのであり、
自分の言っていることは分かっている。 
一方、あなたの方は私のブログの主張の大筋も、このエントリーの内容も
その続編の内容も知らずに一方的に批判している。

・あなたが重症児の親として難しい決断を迫られているのは気の毒に思う。
 私の娘にもひどい側わん症があり、知人にもそういう人がいるが
必ずしも背骨にチタン棒を入れなければならないというものではなく、
またチタン棒治療の効果が科学的に立証されているわけでもない。
もっと穏やかな選択肢はいくつもあるし、
全く治療しないことを選択している人もいて、
選択肢はそれぞれである。
 
・私が自分の意見を表明するのは、言論の自由が保障されている国で
 いかなる議論においてもあらゆる立場が示されることが大事だと考えるからである。
もちろん、あなたがそれに反対するのは自由だし私の考えを押し付けるつもりはない。
あなたが自分の意見を持つのも自由である。

Response to comment
LIFE WITH A SEVERELY DISABLED CHILD, September 24, 2010


ウチの娘の側わんも相当に酷いし、
周りの重症児・者にも側わんのひどい人は多いけれど、
幼児期にコルセットをしていた人は見たことがあるものの
重症児で背中にチタン棒というのは聞いたことがなく、

確かにひどくなれば内臓に影響が出るのは事実でしょうが、
寝たきりで過ごす重症児の場合には、ある意味、
背骨がまっすぐでなければならない必要性も健常児より低いとも言えるわけで、
もちろん、リハビリテーションやポジショニングで予防する努力は必要だとしても、
(これが今の日本の医療で保障されていないのは大きな問題ですが)
重症児の側わんにチタン棒が唯一の治療だとのコメントの主張には、
私もClaireさん同様、かなり違和感があります。

またAshley父らが一般化しようとしている成長抑制療法は手術ではなく
エストロゲンの大量投与によるものですが、その点でもコメント主は
正しい情報を知った上でものを言っているとは思えません。

が、それはともかく、
Claireさんの反論の中で最も印象的だったのは
議論においては、あらゆる立場が明らかにされるべきだ、との最後の点で、

先日の立花隆のiPS細胞研究に関する「倫理的懸念は過剰な想像力」発言や
遺伝子組み換え技術の専門家の発言を思い出して、
科学とテクノの立場から懸念の声や批判そのものを封じようとする発言が
最近そういえば目につくなぁ……と。

言っている人が専門的な知識を笠に着ていたり権威にふんぞり返っているから、
「私がやりたいことが出来ないのはアンタみたいな批判者のせい。
 私の邪魔をするんじゃないわよっ」という重症児の親のヒステリックな言いがかりとは
一見すると次元が違うように聞こえるかもけれど、

科学とテクノは法の束縛からさえ自由になろうとしている気配も漂っていることだし、

その内実は、このヒステリックな言いがかりコメントと同じく、
「やりたいように研究を進められないのは安全だ倫理だとアホ抜かす批判者のせい。
そんなの問題にならないほどの可能性があるんだし
こっちは熾烈な国際競争やってんだから、
ごちゃごちゃいって邪魔立てすんな」なのでは……?




なお、今年3月オーストラリアで11歳の重症児に
家庭裁判所が子宮摘出を認めたAngela事件については
以下のエントリー内に一覧でリンクを張ってあります。
(タイトルの通り、Angela事件はAshley事件と繋がっている可能性も)

Ashley事件とAngela事件との接点はここに……?(2010/4/27)
2010.09.27 / Top↑