カナダの自殺幇助合法化議論の中で、
米国ワシントン州の尊厳死法の欠陥が
地元ワシントン州の弁護士から指摘されています。
当初、住民投票が行われた際には
患者本人がいつ死ぬかの「選択」を手にすることができると約束されたが、
実際には、同法では、その「選択」は保障されていない。
なんとなれば、
医師に処方された致死薬を飲んで死ぬ場に、証人が必要とされていないからである。
利害関係のない証人がいなければ、
誰かが本人の同意なしに患者に致死薬を飲ませる機会は作れるし、
その時に患者が苦しんだかどうかなんて、
誰にも分かりはしない。
書類さえ揃って
一応そこに患者が同意したとか、いつ死んだとか記入されていれば
あとはDon’t Ask, Don’t Tell (問わず語らず)というのは
Washington州に限らずお役所仕事の常だし、
もともと尊厳死法も、死ぬ時の同意まで求めてはいない。
つまり、合法化マーケッティングのレトリックが如何に「選択」を売り込んだところで、
患者の「選択」は保障されてなどいないのだ、と。
Lawyer disagrees with Schukov
The Gazette, September 16, 2010
密室での「自殺」や「自殺幇助」の事実検証の危うさについては、
当ブログも何度か指摘していて、最近では
英国の夫による妻の自殺幇助事件に関連して
以下のエントリーでも触れています。
英国で、介護者による自殺幇助を事実法合法化する不起訴判断(2010/5/25)
妻の顔にヘリウム自殺の袋をかぶせたのは夫である自分だが、
最後に袋のひもを締めたのは妻だというのは、
密室での出来事である以上、死人に口無し、
夫の証言でしかないのに、
それでも英国の公訴局長の判断は不起訴――。
【WA州尊厳死法関連の最近のエントリー】
WA州の尊厳死法で初の自殺者をC&Cが報告(2009/5/23)
WA尊厳死法に反対したALS患者、第1例女性と同日死去(2009/5/28)
WA自殺幇助第2例:またもC&Cが報告、詳細は明かさず(2009/6/4)
WA州とOR州における尊厳死法の実態(2009/7/6)
米国ワシントン州の尊厳死法の欠陥が
地元ワシントン州の弁護士から指摘されています。
当初、住民投票が行われた際には
患者本人がいつ死ぬかの「選択」を手にすることができると約束されたが、
実際には、同法では、その「選択」は保障されていない。
なんとなれば、
医師に処方された致死薬を飲んで死ぬ場に、証人が必要とされていないからである。
利害関係のない証人がいなければ、
誰かが本人の同意なしに患者に致死薬を飲ませる機会は作れるし、
その時に患者が苦しんだかどうかなんて、
誰にも分かりはしない。
書類さえ揃って
一応そこに患者が同意したとか、いつ死んだとか記入されていれば
あとはDon’t Ask, Don’t Tell (問わず語らず)というのは
Washington州に限らずお役所仕事の常だし、
もともと尊厳死法も、死ぬ時の同意まで求めてはいない。
つまり、合法化マーケッティングのレトリックが如何に「選択」を売り込んだところで、
患者の「選択」は保障されてなどいないのだ、と。
Lawyer disagrees with Schukov
The Gazette, September 16, 2010
密室での「自殺」や「自殺幇助」の事実検証の危うさについては、
当ブログも何度か指摘していて、最近では
英国の夫による妻の自殺幇助事件に関連して
以下のエントリーでも触れています。
英国で、介護者による自殺幇助を事実法合法化する不起訴判断(2010/5/25)
妻の顔にヘリウム自殺の袋をかぶせたのは夫である自分だが、
最後に袋のひもを締めたのは妻だというのは、
密室での出来事である以上、死人に口無し、
夫の証言でしかないのに、
それでも英国の公訴局長の判断は不起訴――。
【WA州尊厳死法関連の最近のエントリー】
WA州の尊厳死法で初の自殺者をC&Cが報告(2009/5/23)
WA尊厳死法に反対したALS患者、第1例女性と同日死去(2009/5/28)
WA自殺幇助第2例:またもC&Cが報告、詳細は明かさず(2009/6/4)
WA州とOR州における尊厳死法の実態(2009/7/6)
2010.09.16 / Top↑
骨髄ドナーになり、後遺症に苦しんでいる方のブログを発見。医師もバンクの関係者も、ドナーの健康状態には全く興味を示さず、モルモット扱いだったと怒っておられます。もっともな怒りだと思う。こういう声はなぜか表に出てこないことになっている。
http://blogs.yahoo.co.jp/donor_kotsu/3486779.html
厚労省と経産省の介護・福祉ロボット開発・普及支援プロジェクト検討会 資料:ちょうど沖藤典子氏の「介護保険は老いを守るか」(岩波新書)を読んだところ。介護保険の「財源が足りない」といっては給付が抑制されて年寄りが人間らしく暮らしてくことも事業所の運営も介護労働者の生活も危うくされている一方で、こういうところに膨大な予算が組まれていくことに、ものすごく矛盾を感じる。最近何でもかんでもに引っ張り出される費用対効果、つまり、この先何年も開発に資金を投入することによって、どれだけの介護・福祉のコストカット効果が見込まれているのか、といったエビデンスは、どこかで説明されているのだろうか。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qx1i.html
Johnson&Johnsonが途上国の母子保健で国連のミレニアム・ゴール達成のために、と5年間で2億ドルの資金提供を約束。:ゲイツ財団とWHOのワクチンと“革新的家族計画”による母子保健に、製薬会社がゼニを出す。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/200785.php
http://uk.reuters.com/article/idUKTRE6880ER20100909
オーストラリアでDr. Nitschkeが始めた自殺幇助合法化のTVコマーシャルは、自殺をそそのかすものだとして12日に禁止された模様。
http://imaginarydiocese.org/bishopjohn/2010/09/13/pro-euthanasia-tv-ads/
スコットランドの自殺幇助法案を巡る議会のヒアリングで、合法化されると自殺幇助の専門家になる医師が出る、と。:昨日のExooの自殺幇助専門ホスピスや、オランダで提案されている安楽死専門クリニック、米国オレゴン州でわずか20人の医師が大量の処方箋を書いている事実などが、そのエビデンス。
http://imaginarydiocese.org/bishopjohn/2010/09/13/pro-euthanasia-tv-ads/
同じくスコットランドで、ホスピス幹部らが自殺幇助法案に賛成しないよう議員らに呼び掛け。看護師らからも、合法化されるとスコットランドに「死のツーリズム」が始まる、と懸念。:それも実際にスイスにエビデンスがある。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5haUFFdSoj4Gu_Yno_dlWVHbRMtGQ
癌その他の患者の痛みが治療されないまま放置されているのはグローバル・ヘルスの悲劇である、とLancetのコメンタリー。:そう、そう。殺す算段よりも、癒す算段が先。痛みを取ってあげれば生きる希望も出てくる、それができないのは医師の技術と知識不足が問題だと、緩和ケアの専門医は口をそろえて言っているのに。
http://www.lancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960880-X/fulltext
Diekemaの発言が反発を招いたばかりの包皮切除問題で、親が拒否したにもかかわらずMario君に医師が勝手にやってしまったケースがMiamiで来週、訴訟に持ち込まれる。:ひじょーに興味深い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/200913.php
オーストラリアのナーシング・ホーム啓発週間で「今年の介護者」賞を受賞したのは、ホームの入所者にそれぞれ日々の仕事・役割を担ってもらうプログラムを導入したMaruya Villageケアホームの職員Janine Peuckerさん。:ウチの娘は前に、食事の際に皆が使ったタオルを、食事後の後片付けの際にバケツから洗濯機に投げ込んでいく「仕事」の担当だった。他の子どもたちでは、SRCウォーカーで歩ける人が薬局に皆の薬をもらいに行く人(もちろん看護助手と一緒に)、園の入り口の新聞受けから新聞を毎朝取り込む人、などが決まっていた。みんな、ものすごく張り切ってやっていたらしい。もちろん職員さんが自分だけでやる方がはるかに早い。職員削減が続くとそんな牧歌的な「お仕事」「お手伝い」は論外となって久しい。
http://www.abc.net.au/news/stories/2010/09/15/3011906.htm?site=southeastnsw§ion=news
Minnesotaの子ども病院に、小児緩和ケア向けに160万ドルのNIHのグラント。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/200810.php
英国で特別教育ニーズがあると診断されている子どもたちの半数は、実は障害があるのではなく、ただ単に教え方に問題があったり生活への配慮が不足していたりするだけだ、とOfsted(教育水準局)が報告書を出し、診断技術が向上したのだと専門家の反発を招いている。:ケースによっては、どちらもあるような気がするけど、英国の「薬で何でも簡単解決」文化の背後にある利権構造も頭に浮かぶし、一方で、連立政権の昨今の社会保障の強引な切り詰め方を考えると……。いろいろな方向に深読みしてしまう。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/sep/14/half-special-needs-children-misdiagnosed?CMP=EMCGT_140910&
http://www.guardian.co.uk/education/2010/sep/14/ofsted-special-needs-report-criticised
http://blogs.yahoo.co.jp/donor_kotsu/3486779.html
厚労省と経産省の介護・福祉ロボット開発・普及支援プロジェクト検討会 資料:ちょうど沖藤典子氏の「介護保険は老いを守るか」(岩波新書)を読んだところ。介護保険の「財源が足りない」といっては給付が抑制されて年寄りが人間らしく暮らしてくことも事業所の運営も介護労働者の生活も危うくされている一方で、こういうところに膨大な予算が組まれていくことに、ものすごく矛盾を感じる。最近何でもかんでもに引っ張り出される費用対効果、つまり、この先何年も開発に資金を投入することによって、どれだけの介護・福祉のコストカット効果が見込まれているのか、といったエビデンスは、どこかで説明されているのだろうか。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qx1i.html
Johnson&Johnsonが途上国の母子保健で国連のミレニアム・ゴール達成のために、と5年間で2億ドルの資金提供を約束。:ゲイツ財団とWHOのワクチンと“革新的家族計画”による母子保健に、製薬会社がゼニを出す。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/200785.php
http://uk.reuters.com/article/idUKTRE6880ER20100909
オーストラリアでDr. Nitschkeが始めた自殺幇助合法化のTVコマーシャルは、自殺をそそのかすものだとして12日に禁止された模様。
http://imaginarydiocese.org/bishopjohn/2010/09/13/pro-euthanasia-tv-ads/
スコットランドの自殺幇助法案を巡る議会のヒアリングで、合法化されると自殺幇助の専門家になる医師が出る、と。:昨日のExooの自殺幇助専門ホスピスや、オランダで提案されている安楽死専門クリニック、米国オレゴン州でわずか20人の医師が大量の処方箋を書いている事実などが、そのエビデンス。
http://imaginarydiocese.org/bishopjohn/2010/09/13/pro-euthanasia-tv-ads/
同じくスコットランドで、ホスピス幹部らが自殺幇助法案に賛成しないよう議員らに呼び掛け。看護師らからも、合法化されるとスコットランドに「死のツーリズム」が始まる、と懸念。:それも実際にスイスにエビデンスがある。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5haUFFdSoj4Gu_Yno_dlWVHbRMtGQ
癌その他の患者の痛みが治療されないまま放置されているのはグローバル・ヘルスの悲劇である、とLancetのコメンタリー。:そう、そう。殺す算段よりも、癒す算段が先。痛みを取ってあげれば生きる希望も出てくる、それができないのは医師の技術と知識不足が問題だと、緩和ケアの専門医は口をそろえて言っているのに。
http://www.lancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960880-X/fulltext
Diekemaの発言が反発を招いたばかりの包皮切除問題で、親が拒否したにもかかわらずMario君に医師が勝手にやってしまったケースがMiamiで来週、訴訟に持ち込まれる。:ひじょーに興味深い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/200913.php
オーストラリアのナーシング・ホーム啓発週間で「今年の介護者」賞を受賞したのは、ホームの入所者にそれぞれ日々の仕事・役割を担ってもらうプログラムを導入したMaruya Villageケアホームの職員Janine Peuckerさん。:ウチの娘は前に、食事の際に皆が使ったタオルを、食事後の後片付けの際にバケツから洗濯機に投げ込んでいく「仕事」の担当だった。他の子どもたちでは、SRCウォーカーで歩ける人が薬局に皆の薬をもらいに行く人(もちろん看護助手と一緒に)、園の入り口の新聞受けから新聞を毎朝取り込む人、などが決まっていた。みんな、ものすごく張り切ってやっていたらしい。もちろん職員さんが自分だけでやる方がはるかに早い。職員削減が続くとそんな牧歌的な「お仕事」「お手伝い」は論外となって久しい。
http://www.abc.net.au/news/stories/2010/09/15/3011906.htm?site=southeastnsw§ion=news
Minnesotaの子ども病院に、小児緩和ケア向けに160万ドルのNIHのグラント。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/200810.php
英国で特別教育ニーズがあると診断されている子どもたちの半数は、実は障害があるのではなく、ただ単に教え方に問題があったり生活への配慮が不足していたりするだけだ、とOfsted(教育水準局)が報告書を出し、診断技術が向上したのだと専門家の反発を招いている。:ケースによっては、どちらもあるような気がするけど、英国の「薬で何でも簡単解決」文化の背後にある利権構造も頭に浮かぶし、一方で、連立政権の昨今の社会保障の強引な切り詰め方を考えると……。いろいろな方向に深読みしてしまう。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/sep/14/half-special-needs-children-misdiagnosed?CMP=EMCGT_140910&
http://www.guardian.co.uk/education/2010/sep/14/ofsted-special-needs-report-criticised
2010.09.16 / Top↑
今年2月、英国BBCのTVキャスターが自分の番組の中で
かつてエイズで苦しんでいた恋人の男性を病院で窒息させて殺したと
“慈悲殺”を告白、大きな騒ぎになった事件で、
BBCの司会者が番組で“慈悲殺”を告白(2010/2/16)
番組で恋人の“慈悲殺”を告白したBBCのキャスター、逮捕される(2010/2/17)
TVで“慈悲殺”告白のGosling氏、続報(2010/2/18)
その告白の直後にGosling氏は逮捕されたが、警察が捜査したところ、
あの告白は偽りで、そんな事実はあり得ない、とのエビデンスが揃ったとのこと。
ウソの告白で警察に1800時間もの無駄な仕事をさせ、
45000ドルも無駄に支出させたことに対して
90日間の執行猶予のついた有罪判決を受けた。
どうも、近く本を出版することになっていて、
その売り込みのために話題つくりをしたかったのではないかとか、
TVキャスターとして切れかけた賞味期限の延期を狙ったのではないか、
などの憶測も流れていたらしい。
本人は、そういう噂を否定しつつも、
「多くの人から、いろいろと打ち明け話を聞いているうちに、
つい言ってしまった、申し訳ない」と。
特に、死んだかつての恋人だった男性の家族を傷つけたことと
警察を無駄に働かせてしまったことについてお詫び。
弁護士も、自分が枕で顔を覆って殺してやったというのは
恋人の死についてGosling氏が長年抱き続けてきた「幻想」に過ぎない、と。
Ray Gosling admits wasting police time over TV murder confession
The Guardian, September 14, 2010
いやはや。
これだけ自殺幇助合法化議論の嵐が吹きすさぶと、
“芸能界”では、こういう人も出てくるわけで。
でも、
あんなに苦しんで死ぬのだったら、
あの時に、いっそ医師にちょっと出て行ってもらって、
この手に枕を握って……と、
この人がかつての恋人の死に対する悔いを
心にずっと抱えて生きてきたのだということには、
どこか、こちらの心がしん、となるようなものがある。
私自身も、かつて同じように「こんなに苦しむくらいなら、いっそ」と
障害があるというだけで基本的な医療もしてもらえず苦しむ娘を前に
Gosling氏と同じ夢想に駆り立てられたことがあるから、なのかもしれない。
あの時、娘があのまま死んでしまっていたら、
私もGosling氏と同じ深い悔いと「幻想」を抱えて今を生きていたかもしれない。
でも、たぶん、
あの時、自分には恋人を苦しみから助けてやることが出来たのに、と
死んだ恋人への深い悔いを抱えたまま生きていることと
実際に恋人の顔に枕を押し付けて殺した感触を
ずっと手に記憶して生きていることとは、
何かが決定的に違うんじゃないか、と思う。
例え、そのことが誰にも知られず、罰せられることがなかったとしても、
そういう表面的なこととは別に、何か、もっと深いところで
何かが決定的に違うんじゃないかという気がする。
何が違うのだろう……。
うまく言えないのだけれど、
たぶん、そのことが、その人の魂とか品性とか人間性とかヒューマニティとか
その人がその人であってその人以外の何ものでもないところにある
なにか「善きもの」が、失われたり損なわれたり傷ついたりしないために、
人には、おのずと後者であるよりも前者であろうとする本能みたいなものが
備わっているんじゃないだろうか。
それが、人を殺すことには理屈を超えた抵抗感となっているからこそ、
その日、Gosling氏も何度も頭では考えたのだろうけれども結局は実行できず、
頭に思い描いた「その場面」を、その後、ずっと「幻想」として
恋人の苦痛をどうしてやることもできなかった悔いと共に
抱え続けてきたんじゃないのだろうか。
誰かに対する深い悔いや負い目をもって生きるということだって、
案外に大切な、尊いことだったりもするんじゃないだろうか。
少なくとも、“慈悲殺”などという言葉で、後者の人に対して、
あなたは殺すことで苦しみから解放してあげたのだから、
美しい善い行いをしたのであり、悔いも負い目も忘れなさい、と
皆で寄ってたかって免罪するような人間社会であってはいけないのでは――?
そんなふうにして、
それぞれが自分の中に守ろうと努力すると同時に、
世の中全体としても守っていこうとすべき、
私たちの中に共有されている何か「善いもの」……。
そういうものは、やっぱり、あって、
それと「尊厳」とは関わっているような気がする。
そういうことを前に考えてみたのが、以下のエントリー。
MN州の公式謝罪から「尊厳は無益な概念」を、また考えてみる(2010/6/17)
かつてエイズで苦しんでいた恋人の男性を病院で窒息させて殺したと
“慈悲殺”を告白、大きな騒ぎになった事件で、
BBCの司会者が番組で“慈悲殺”を告白(2010/2/16)
番組で恋人の“慈悲殺”を告白したBBCのキャスター、逮捕される(2010/2/17)
TVで“慈悲殺”告白のGosling氏、続報(2010/2/18)
その告白の直後にGosling氏は逮捕されたが、警察が捜査したところ、
あの告白は偽りで、そんな事実はあり得ない、とのエビデンスが揃ったとのこと。
ウソの告白で警察に1800時間もの無駄な仕事をさせ、
45000ドルも無駄に支出させたことに対して
90日間の執行猶予のついた有罪判決を受けた。
どうも、近く本を出版することになっていて、
その売り込みのために話題つくりをしたかったのではないかとか、
TVキャスターとして切れかけた賞味期限の延期を狙ったのではないか、
などの憶測も流れていたらしい。
本人は、そういう噂を否定しつつも、
「多くの人から、いろいろと打ち明け話を聞いているうちに、
つい言ってしまった、申し訳ない」と。
特に、死んだかつての恋人だった男性の家族を傷つけたことと
警察を無駄に働かせてしまったことについてお詫び。
弁護士も、自分が枕で顔を覆って殺してやったというのは
恋人の死についてGosling氏が長年抱き続けてきた「幻想」に過ぎない、と。
Ray Gosling admits wasting police time over TV murder confession
The Guardian, September 14, 2010
いやはや。
これだけ自殺幇助合法化議論の嵐が吹きすさぶと、
“芸能界”では、こういう人も出てくるわけで。
でも、
あんなに苦しんで死ぬのだったら、
あの時に、いっそ医師にちょっと出て行ってもらって、
この手に枕を握って……と、
この人がかつての恋人の死に対する悔いを
心にずっと抱えて生きてきたのだということには、
どこか、こちらの心がしん、となるようなものがある。
私自身も、かつて同じように「こんなに苦しむくらいなら、いっそ」と
障害があるというだけで基本的な医療もしてもらえず苦しむ娘を前に
Gosling氏と同じ夢想に駆り立てられたことがあるから、なのかもしれない。
あの時、娘があのまま死んでしまっていたら、
私もGosling氏と同じ深い悔いと「幻想」を抱えて今を生きていたかもしれない。
でも、たぶん、
あの時、自分には恋人を苦しみから助けてやることが出来たのに、と
死んだ恋人への深い悔いを抱えたまま生きていることと
実際に恋人の顔に枕を押し付けて殺した感触を
ずっと手に記憶して生きていることとは、
何かが決定的に違うんじゃないか、と思う。
例え、そのことが誰にも知られず、罰せられることがなかったとしても、
そういう表面的なこととは別に、何か、もっと深いところで
何かが決定的に違うんじゃないかという気がする。
何が違うのだろう……。
うまく言えないのだけれど、
たぶん、そのことが、その人の魂とか品性とか人間性とかヒューマニティとか
その人がその人であってその人以外の何ものでもないところにある
なにか「善きもの」が、失われたり損なわれたり傷ついたりしないために、
人には、おのずと後者であるよりも前者であろうとする本能みたいなものが
備わっているんじゃないだろうか。
それが、人を殺すことには理屈を超えた抵抗感となっているからこそ、
その日、Gosling氏も何度も頭では考えたのだろうけれども結局は実行できず、
頭に思い描いた「その場面」を、その後、ずっと「幻想」として
恋人の苦痛をどうしてやることもできなかった悔いと共に
抱え続けてきたんじゃないのだろうか。
誰かに対する深い悔いや負い目をもって生きるということだって、
案外に大切な、尊いことだったりもするんじゃないだろうか。
少なくとも、“慈悲殺”などという言葉で、後者の人に対して、
あなたは殺すことで苦しみから解放してあげたのだから、
美しい善い行いをしたのであり、悔いも負い目も忘れなさい、と
皆で寄ってたかって免罪するような人間社会であってはいけないのでは――?
そんなふうにして、
それぞれが自分の中に守ろうと努力すると同時に、
世の中全体としても守っていこうとすべき、
私たちの中に共有されている何か「善いもの」……。
そういうものは、やっぱり、あって、
それと「尊厳」とは関わっているような気がする。
そういうことを前に考えてみたのが、以下のエントリー。
MN州の公式謝罪から「尊厳は無益な概念」を、また考えてみる(2010/6/17)
2010.09.16 / Top↑
ウェブサイトを通じた無許可の精子あっせん業でボロ儲けしていたとして
去年4月、40歳と43歳の男2人組が逮捕された。
その裁判が始まり、詳細が明らかに。
1990年のヒト受精・胚法で
生殖子の「入手、検査、分配」にはHFEA(ヒト受精・胚機構)のライセンスが必要。
また07年7月に導入されたルールで
ドナーと妊娠を希望する女性の双方に情報アクセスとカウンセリングが
保障されていなければならない。
HIVを含む感染リスクへの保護も義務付けられた。
2人組は、これらへの違反で訴追される英国初のケース。
彼らのオンライン・サービスに会員登録していた女性は約800人。
80ポンドの入会金を払って会員になって
さらにサービス利用料300ポンドを払うと、
精子ドナーを希望する男性のリストが送られてくる。
人種、身長、髪の色、趣味まで記載されていて、選ぶことができる。
女性の希望を受けて、彼らはドナーの男性に連絡し、
生死が女性の家に届くように手配する。
後は女性がその精子を使って自分で授精を試みるも、
体外受精を受けるも自由。
レシピエントが自分でドナーと支払い交渉をし、
検査も自分で受けるように勧められる。
警察の調べによると、2人は多い時には月₤17000も稼いでいたらしい。
本人たちは、自分たちのビジネスは紹介だけだから
別にライセンスなど要らないはずだと主張しているとのこと。
Pair made ₤25,5000 from illegal sperm donor service, court told
The Guardian, September 14, 2010
【関連エントリー】
59歳がIVFで妊娠希望、医師ら年齢制限には反対(英)(2010/1/19)
生殖補助医療の“卵子不足”解消のため「ドナーに金銭支払いを」と英HFEA(2009/7/27)
去年4月、40歳と43歳の男2人組が逮捕された。
その裁判が始まり、詳細が明らかに。
1990年のヒト受精・胚法で
生殖子の「入手、検査、分配」にはHFEA(ヒト受精・胚機構)のライセンスが必要。
また07年7月に導入されたルールで
ドナーと妊娠を希望する女性の双方に情報アクセスとカウンセリングが
保障されていなければならない。
HIVを含む感染リスクへの保護も義務付けられた。
2人組は、これらへの違反で訴追される英国初のケース。
彼らのオンライン・サービスに会員登録していた女性は約800人。
80ポンドの入会金を払って会員になって
さらにサービス利用料300ポンドを払うと、
精子ドナーを希望する男性のリストが送られてくる。
人種、身長、髪の色、趣味まで記載されていて、選ぶことができる。
女性の希望を受けて、彼らはドナーの男性に連絡し、
生死が女性の家に届くように手配する。
後は女性がその精子を使って自分で授精を試みるも、
体外受精を受けるも自由。
レシピエントが自分でドナーと支払い交渉をし、
検査も自分で受けるように勧められる。
警察の調べによると、2人は多い時には月₤17000も稼いでいたらしい。
本人たちは、自分たちのビジネスは紹介だけだから
別にライセンスなど要らないはずだと主張しているとのこと。
Pair made ₤25,5000 from illegal sperm donor service, court told
The Guardian, September 14, 2010
【関連エントリー】
59歳がIVFで妊娠希望、医師ら年齢制限には反対(英)(2010/1/19)
生殖補助医療の“卵子不足”解消のため「ドナーに金銭支払いを」と英HFEA(2009/7/27)
2010.09.16 / Top↑
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