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オーストラリアのノーザンテリトリーで1996年7月に安楽死法
The Rights of the Terminally Ill Actが施行され、その1年後に
連邦政府によって無効となったことは、良く知られていますが、

その1年間の同法の影響を研究した緩和ケアの専門医 Mark Boughey医師が
現在、合法化の審議が進行中のカナダ、ケベック州の医師らに向け、
やめておいた方がいい、と呼びかけた。

その1年間に、ノーザンテリトリーから緩和ケア医が大量に去り、

また文化的価値観から安楽死を信じないアボリジニーの多くが医療への不信を募らせたことで
子どものワクチン接種率が落ちこんだとのこと。

Oregon州では、患者に対して安楽死を選択するように誘導が行われている、とも。

Doctor warns against legalizing euthanasia – Experiment failed in Australia
The Gazette, October 8, 2010


そのノーザンテリトリーの安楽死法で
世界で初めて致死薬の注射で患者を死なせたのが、あのDr. Nitschke。

最近は世界中で合法化アドボケイトとして活躍していて、
先頃も米国版Dignitasを作ると息巻いた。
批判ごうごう浴びたら、すぐ引っ込めたけれど。


ケベックの議論では、この前もWA州の弁護士さんが
WA州の尊厳死法でセーフガードが機能していないから、やめておけと
呼びかけていました。

このところセーフガードが機能していないとか、合法化で緩和ケアが崩壊するという話が
先行国や地域から、ゆるゆると出はじめていますね。



【ケベック州関連エントリー】
カナダ・ケベック州医師会が自殺幇助合法化を提言(2009/7/17)
カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)
スコットランド、加・ケベック州で自殺幇助について意見聴取(2010/9/8)
2010.10.08 / Top↑
重症障害を持って生まれた娘を養子に出した母親の語り。(英)

子どもが号泣を続けるのに疲れ果て、苦しみ続ける娘にもどうして良いか分からず、夫婦関係も悪化して、ウツ病になった女性が、夜中にこのまま窒息させて殺してしまおうかと何度も考えたと告白。ソーシャル・サービスに訴えても介護支援は受けられず、もう育てていく自信がないとすがりついたら(勇気がある! えらい!)、ソーシャルワーカーがクリスチャンで養母になってくれるという女性を連れてきたという。夫婦で悩んだあげく、その女性の元に養子に出すことに。その後、親としての責任(親権とは書いてないのが?)を回復し、娘は今もその女性に育てられているものの、娘の洋服や日用品を買ったり受診や幼稚園の参観日などには一緒に行くなど、「母親が2人」状態で暮らしている。娘の養育費は養子制度(foster care)つまり行政から。夫婦仲を修復し、荒んでいたもう一人の子どものケアもしているところ。

これを告白したら、子どもを手放したことに非難ごうごうだったらしい。でも、抱え込んだあげくに殺したり一緒に死ぬより、はるかにいいと思う。在宅での支援が受けられないというのがサイテ―だし、できれば中間の解決策があってほしいけど、反面、「もうダメ、育てられない」とすがっていったら、foster careにつなげられるというのも、すごいと言えばすごい(良し悪しはともかく)。それでも親子関係が柔軟に続けられるのも、いい。それでお母さんが立ち直って、そのうちに引き取れるなら、それもまたいいと思うし。「これでないとダメ」というんじゃなしに、ゆるゆると様子を見ながら、でいいじゃない、と思う。どうにも苦しい、もうダメという時って、本当にある。そういう時の緊急避難的なレスパイトが、いろいろ長短形態とも柔軟にあるのが一番いいのだけど。

この人の体験は、ウチの娘の幼児期とそっくりで、身につまされた。けいれんの治療が始まって、やっと人間の生活らしいものが始まるまで、1年かかった。私の人生で最も苦しかった1年間の一つ。あの最中に「自己決定で死んでもいいよ」と言われたら、「殺してください」と即答していたと思う。あの当時、置いていけるとも思えないから、娘の慈悲殺も望んだだろうな。でも、治療が始まったら、家族みんな気持ちが違って、過剰なくらい前向きになれた。状況も人も気持ちも変る。この英国の一家も、時間と共に変る。子どもの幸せな暮らしを守りつつ、ゆっくり待ってあげられるといいですね。

http://www.dailymail.co.uk/femail/article-1318389/I-nearly-smothered-disabled-daughter.html


英国NHSで処方対象となっていなかったアリセプトなどアルツハイマー病の進行を遅らせる薬が3年間のバトルを経て、やっと認められることになった。:以前、「介護保険情報」の連載で、このバトルを取り上げたことがある。よかった。ケアホームの認知症患者には抗精神病薬の過剰投与が問題になっている一方で、こういうことが起こっていることの不思議をつくづく思う。
http://www.guardian.co.uk/politics/2010/oct/06/alzheimers-drugs-nhs-government?CMP=EMCGT_071010&

高齢期ウツはなぜ医師にみのがされやすいのか。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/203606.php

英国の移民制限は、科学の国際競争力を減退させる、と英国のこれまでのノーベル賞受賞者らが警告。:日本の受賞者の先生方が、公費での研究、労働力は学生だったのだし……などとおっしゃって、特許を取っておられなかったこと、それをまた力むことなく語られることで、あることを静かにきちっと訴えておられる姿に、高い倫理観と人間としての品性を感じました。聞いたか、ヴェンター?
http://www.guardian.co.uk/uk/2010/oct/07/nobel-laureates-immigration-cap?CMP=EMCGT_071010&

米国で高額所得の女性が増えている。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/10/06/AR2010100607229.html?wpisrc=nl_cuzhead


どこかで誰かが触れていたのが気になって井上靖の「化石」を読んだ。昭和40年から41年の約1年間朝日新聞で連載されていた古い作品。告知しないのが常識だった時代に、ひょんなことから自分が癌で余命1年だと知ってしまった壮年男性が、そこから約半年間、自分の死と向き合う心のありようを克明に描こうとする力作。なかなか良かった。

「ほお~」と思ったのは、「100年後には癌は完全制圧されて、世界から癌患者は1人もいなくなっている」と、それが確定した未来像として皆に共有されていること。100年後に開けるタイムカプセルみたいなところに、現在の癌に関する統計資料を入れるエピソードが出てくるのだけど、癌の専門医も世の中一般の人も「100年後には癌患者という存在は消え失せているから、癌から解放された未来の幸福な人たちが、昔の日本人は癌という病気にこんなに苦しんでいたのだと知るよすがに」としゃべりあっている。ざっと60年前には、そんなふうに信じられていたんだなぁ……と思うと、THな人たちが今いろいろ描いているハッピーな未来像と重なって、いろいろ考えるところがあった。THな人たちが癌で余命1年の宣告を受けた場合に、「化石」の主人公のような苦悩の仕方をするだろうか、ということとか。
http://www.asahi-net.or.jp/~dr4i-snn/inoue_yasu-kaseki.html
2010.10.08 / Top↑