医師による自殺幇助(PAS)を合法化している米国オレゴン州で
抗がん剤はダメだけど幇助自殺はOKとメディケアというケースが出てきていることを
08年10月に取り上げましたが、
この件に関してオレゴンのがん専門医が09年に書いた論文が
15日、インターネット上にアップされています。
ただ、誰でも論文をアップできるサイトのようで
いずれかのジャーナルに掲載されたものというわけではなさそうです。
(私が情報を見落としているだけかもしれませんが)
Oregon Rationing Cancer Treatment but Offering Assisted Suicide to Cancer Patients Paying to Die but not to Live
Kenneth R. Stevens, Jr., M.D., March 26, 2009
08年に話題になった当時メディアが取り上げた2つのケースについて
この論文が当時のメディアの報道からまとめているところでは
Barbara Wagnerさん(64)
2年前に肺がんと診断され、化学療法と放射線治療で寛解したが
08年5月のCT検査で再発が確認され、Tarcevaという抗がん剤が処方された。
1日1錠の服用で肺がん患者に30%の延命効果があるとされる薬で
治験でも疑似薬を飲んだグループよりも救命率が45%上がった。
しかしメディケイドの患者であるBarbaraさんのもとに届いた通知は
Tarcevaはメディケアで給付にならないとするもので、ただし
「もしも本人が望むならば医師による自殺幇助(PAS)も含め、
緩和ケアまたは安楽、ケアは給付対象とする」と。
(原文で安楽とケアの間にカンマがあるのですが、
これは何らかのミスで、「安楽ケア」なのでは?)
で、この論文が指摘しているのは、
オレゴンの尊厳死法によるPASはターミナルな患者にのみ認められているはずなのに、
ターミナルではないBarbaraさんにメディケアが提案していること。
Barbaraさんの主治医は州には期待できないと踏んで、
Tarcevaの製造元Genentech社と直接交渉し、
とりあえず1年間だけは出してもらえることになった。
(製薬会社が費用をもつcoverということで?)
もう一つのケースは
Randy Stroupさん(53)。
がん専門医10年選手の主治医が「大きいわけではないが目に見える程度の効果」はあり、
延命効果はせいぜい数カ月程度であるにせよ最後の数カ月の苦痛を取り除く効果はある、と考えて
前立腺がんの化学療法の第一選択薬としているmitoxantroneが
メディケイドで給付されないことを知り、
たとえ、わずか6カ月の延命だとしても
自分にとってはその6カ月とその間のQOLが大事なのだと怒っていることが報じられた。
これらのケースの背景にあるのは
オレゴン州保健省のメディケアの優先順リスト。
94年に同州のメディケア・プラン Oregon Health Planができた時から
5年生存率が5%未満の患者には手術、放射線治療、抗がん剤治療は給付しない
とのガイドラインが存在している。
こうした患者に給付が認められているのが安楽・緩和ケアで、そこには
「医師による往診、確認、メンタル・ヘルスア評価、カウンセリング、処方薬までを含み、」
しかし、それらだけに限定されない」「尊厳死法のもとでのサービス」が含まれる。
ガイドライン本文へのリンクが上記論文内にあるのですが、
試みたところ開けませんでした。
私は読む余裕がないのでそれ以上試みていませんが
タイトルで検索すればヒットするんじゃないでしょうか。
つまり、尊厳死法を作って医師による自殺幇助が合法化されることと
メディケアやメディケイドなど公的医療保険制度における医療の配給制度が併存する限り
PASは合法的な医療とみなされるので、どこであれ事実上
「無益とみなされる病気治療はダメだけど
PASは給付OKですよ~]ということになる、ということでは?
そして、そういう文脈ではPASは緩和ケアの一環と分類されるわけですね……。
ここのところ、でも理念とか原理の飛躍って、ないのかなぁ……ちょっと引っかかる。
ところで、
NY州の生命と法に関する作業チームが自殺幇助を研究した際の結論で
この論文は締めくくられており、その結論とは、
成長抑制でも、移植医療でも、生殖補助医療でも
これと同じことが言えるような気がする。
抗がん剤はダメだけど幇助自殺はOKとメディケアというケースが出てきていることを
08年10月に取り上げましたが、
この件に関してオレゴンのがん専門医が09年に書いた論文が
15日、インターネット上にアップされています。
ただ、誰でも論文をアップできるサイトのようで
いずれかのジャーナルに掲載されたものというわけではなさそうです。
(私が情報を見落としているだけかもしれませんが)
Oregon Rationing Cancer Treatment but Offering Assisted Suicide to Cancer Patients Paying to Die but not to Live
Kenneth R. Stevens, Jr., M.D., March 26, 2009
08年に話題になった当時メディアが取り上げた2つのケースについて
この論文が当時のメディアの報道からまとめているところでは
Barbara Wagnerさん(64)
2年前に肺がんと診断され、化学療法と放射線治療で寛解したが
08年5月のCT検査で再発が確認され、Tarcevaという抗がん剤が処方された。
1日1錠の服用で肺がん患者に30%の延命効果があるとされる薬で
治験でも疑似薬を飲んだグループよりも救命率が45%上がった。
しかしメディケイドの患者であるBarbaraさんのもとに届いた通知は
Tarcevaはメディケアで給付にならないとするもので、ただし
「もしも本人が望むならば医師による自殺幇助(PAS)も含め、
緩和ケアまたは安楽、ケアは給付対象とする」と。
(原文で安楽とケアの間にカンマがあるのですが、
これは何らかのミスで、「安楽ケア」なのでは?)
で、この論文が指摘しているのは、
オレゴンの尊厳死法によるPASはターミナルな患者にのみ認められているはずなのに、
ターミナルではないBarbaraさんにメディケアが提案していること。
Barbaraさんの主治医は州には期待できないと踏んで、
Tarcevaの製造元Genentech社と直接交渉し、
とりあえず1年間だけは出してもらえることになった。
(製薬会社が費用をもつcoverということで?)
もう一つのケースは
Randy Stroupさん(53)。
がん専門医10年選手の主治医が「大きいわけではないが目に見える程度の効果」はあり、
延命効果はせいぜい数カ月程度であるにせよ最後の数カ月の苦痛を取り除く効果はある、と考えて
前立腺がんの化学療法の第一選択薬としているmitoxantroneが
メディケイドで給付されないことを知り、
たとえ、わずか6カ月の延命だとしても
自分にとってはその6カ月とその間のQOLが大事なのだと怒っていることが報じられた。
これらのケースの背景にあるのは
オレゴン州保健省のメディケアの優先順リスト。
94年に同州のメディケア・プラン Oregon Health Planができた時から
5年生存率が5%未満の患者には手術、放射線治療、抗がん剤治療は給付しない
とのガイドラインが存在している。
こうした患者に給付が認められているのが安楽・緩和ケアで、そこには
「医師による往診、確認、メンタル・ヘルスア評価、カウンセリング、処方薬までを含み、」
しかし、それらだけに限定されない」「尊厳死法のもとでのサービス」が含まれる。
ガイドライン本文へのリンクが上記論文内にあるのですが、
試みたところ開けませんでした。
私は読む余裕がないのでそれ以上試みていませんが
タイトルで検索すればヒットするんじゃないでしょうか。
つまり、尊厳死法を作って医師による自殺幇助が合法化されることと
メディケアやメディケイドなど公的医療保険制度における医療の配給制度が併存する限り
PASは合法的な医療とみなされるので、どこであれ事実上
「無益とみなされる病気治療はダメだけど
PASは給付OKですよ~]ということになる、ということでは?
そして、そういう文脈ではPASは緩和ケアの一環と分類されるわけですね……。
ここのところ、でも理念とか原理の飛躍って、ないのかなぁ……ちょっと引っかかる。
ところで、
NY州の生命と法に関する作業チームが自殺幇助を研究した際の結論で
この論文は締めくくられており、その結論とは、
どんなに慎重にガイドラインの枠組みを作ったとしても、自殺幇助は
医療を含む、我々の社会のあらゆるサービスの分配を特徴づける
社会的不平等と偏見を通して実施されるものとなろう。
成長抑制でも、移植医療でも、生殖補助医療でも
これと同じことが言えるような気がする。
2011.01.17 / Top↑
映画、パチーノ共に去年既にエミー賞を受賞していますが、
(詳細は文末のリンクに)
Dr. DeathことJack Kevorkian医師の半生を描いたHBO映画
“You Don’t Know Jack”でKevorkian 医師役を演じたAl Pacinoが
第68回ゴールデン・グローブ賞のミニシリーズまたはテレビ映画部門で最優秀男優賞を受賞。
Al Pacino Wins Golden Globe for ‘You Don’t Know Jack’
Politically Illustrated, January 16, 2011
【関連エントリー】
アル・パチーノ主演でKevorkian医師の伝記映画作成か(2009/5/27)
Dr. Deathをヒーローに祭り上げ、シャイボさんをヘイトスピーチで笑い物にするハリウッド(2010/3/25)
FENが「Kevorkian医師の半生記映画見て“死ぬ権利”考えよう」(2010/4/22)
Kevorkian医師「PASは医療の問題。政治も法律も関係ない」(2010/4/26)
CNN、Kevorkian医師にインタビュー(2010/6/16)
Kevorkian医師の半生記映画、主演のパチーノ共、エミー賞を受賞(2010/8/30)
(詳細は文末のリンクに)
Dr. DeathことJack Kevorkian医師の半生を描いたHBO映画
“You Don’t Know Jack”でKevorkian 医師役を演じたAl Pacinoが
第68回ゴールデン・グローブ賞のミニシリーズまたはテレビ映画部門で最優秀男優賞を受賞。
Al Pacino Wins Golden Globe for ‘You Don’t Know Jack’
Politically Illustrated, January 16, 2011
【関連エントリー】
アル・パチーノ主演でKevorkian医師の伝記映画作成か(2009/5/27)
Dr. Deathをヒーローに祭り上げ、シャイボさんをヘイトスピーチで笑い物にするハリウッド(2010/3/25)
FENが「Kevorkian医師の半生記映画見て“死ぬ権利”考えよう」(2010/4/22)
Kevorkian医師「PASは医療の問題。政治も法律も関係ない」(2010/4/26)
CNN、Kevorkian医師にインタビュー(2010/6/16)
Kevorkian医師の半生記映画、主演のパチーノ共、エミー賞を受賞(2010/8/30)
2011.01.17 / Top↑
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