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この論文は

シアトルこども病院は裁判所の命令を取らないかぎり成長抑制はやらないとWPASと合意したが
その他の病院はこの合意に縛られるわけではなく、そのような医師や倫理委が
「親たちの成長抑制の要望を受けガイダンスを熱心(eager)に求めている」と述べて、

それを根拠に、「成長抑制の倫理を議論し、
医療職のための実務的なガイダンスを作るために」
このWGを組織したのだと説明する。


そう――。WGを組織した目的には
最初から「実務的ガイダンス」を作ることが含まれていたのだ――。

でも、ここで疑問が湧いて出てこないだろうか。


① 治療としての効果をまったく持たない成長抑制療法のガイドラインを
なぜ、それほど急いで作る必要があるのか。

これは、命を救うために、病気を治すために、
できたらなるべく早く医療現場に……といった類の療法ではない。

しかも、第1例では人権侵害が確認されており、
その第一例の決定がいまだに十分に説明されてもいなければ
議論が尽くされたわけでもない、したがって十分に正当化されたわけでもない段階で、
なぜ急いでガイダンスを作る必要があるのか。


② ガイダンスを望んでいるという医師や倫理委は、いったい、どこにいるのか。

私の目についた限りでは
慎重論を説く医師の方が圧倒的に多数。
論争の中で擁護論の論文を書いた医師も確かにいるけれど
親の要望があるからやりたいとか実際にやったと名乗り出た医師も病院も存在しない。

未だ多くの批判が出て論争が続いている成長抑制に
早急にガイダンスを作らなければならないほど多くの医師や病院が熱心だというなら、
論文著者らには、そのエビデンスをデータで示す責任があるはずだ。

しかし、仮に彼らが言うように、やりたい医師が沢山いるとしても、
一体、それが成長抑制を正当化するのだろうか?

そういう医師が何人いれば、
成長抑制の倫理的妥当性が証明されたことになるというのだろう?

患者の自殺を幇助したいと明言する医師なら、そこらじゅうにいる。
そういう医師が一定の人数いれば、PASの倫理性、道徳性が証明されたことになる
とでもいうのだろうか。

誠実なリーズニングに基づいてものを考えるならば、
ガイダンスが必要とされる前に、成長抑制の一般化が
倫理的に妥当であると広く認められる必要があるはずだ。

それが認められるためには、
成長抑制療法の倫理性について誠実、公平かつ徹底的な議論が必要なはずだ。

成長抑制療法一般化の倫理性が公平かつ徹底的に議論されるためには、
アシュリーの個別ケースで行われた成長抑制だけでなく子宮摘出や乳房摘出を
なぜシアトルこども病院の倫理委が了承したのか、その議論の詳細が
きちんと説明され、誠実、公平かつ徹底的な議論において
しかるべく正当化される必要があるはずだ。

そのためには、アシュリー事件で起こったことについて、
あの中途半端なWPASの調査ではなく、もっと徹底した調査が改めて行われ
事実関係が明らかにされる必要があるはずだ。


③ そして、万が一にも、
それらが順次(今のWGの論理と逆の順番に)十分に行われた上で、
なおかつガイダンスが必要だという段階に、仮に至ったとしても、
このWGは、その任ではないはずだ。

半数がAshley事件を起こしたシアトルこども病院かワシントン大学の職員。
メンバーのうち3人は2009年に小児科学会誌に書いた論文で
自分たちの勝手なガイダンスをすでに提示し、3歳で親に提案すべきだと主張している。

Diekemaは第一例の担当医だし、
Fostも既に世界中に名の知れた成長抑制アドボケイトではないか。

仮にガイダンスが必要とされる段階がやってきたとしても、
その時には、関係者を排除し、まったくAshley事件と利害関係のない、
公平で徹底的な議論が担保される検討メカニズムが
第三者によって用意される必要があるはずだ。


これらの論理的な検証段階をすべて経るまで、
ガイダンスなど必要ない。

こんな段階で、わざわざ手前ミソのWGがガイダンスを作る必要は、さらさら、ない。

WG論文が前提しているガイダンスのニーズは、実際は
この論文がいう「親の要望を受け熱心にガイダンスを求める」医師や倫理委よりも
議論をAshleyの個別ケースから成長抑制一般へと摩り替えていきたいDiekemaらや
自分の考案した療法を早く広めようとジリジリしているAshley父のニーズではないのか。
2011.01.27 / Top↑
シアトルこども病院が組織した成長抑制WGの論文については
去年の11月、12月と既に非常に多くのエントリーを書いています。

その中から、論文そのものに対する疑問や、本文の内容について書いた主なものとしては

まだ論文を読む前のものとして
成長抑制WGの論文がHastings Center Reportに(2010/11/7)

アブストラクトのみを読んだ段階のものとして
成長抑制の対象はIQ25以下の重症重複障害児、とWG(2010/12/1)

論文を読んだ段階のものとして、
成長抑制WGのHCR論文:とりあえず冒頭のウソ3つについて(2010/12/8)
子ども病院成長抑制WGメンバーの正体(2010/12/8)


あまりにも露骨な作為に不快ばかりが募って
1度読んだ後は2度と手に取る気にもならなかったのですが、
もう一度読みこんでみようとチャレンジ。

すると、思った通り、ツッコミどころは、ほぼ数行置きに見つかる。
その腹立たしいことといったら……。

これは当初からDiekemaらの書いたものを読むたびに痛感することですが、

事実関係の把握が中途半端な人が、この事件の関連文書を読む際に、
うっかりDiekemaらの倫理学者としての誠実を信頼して読むと
もわぁ~っとした曖昧模糊の中で鼻づら引き回されて、
何となく納得したような気持ちにさせられてしまう。

逆に、
彼らは1つの作為を持ってこの事件を展開させてきているのだとの仮説に立って読むと、
この事件の膨大な資料にあまた存在する矛盾には、むしろ一貫性が見えてくるし
そこに彼らの作為が、くっきりと浮かび上がってくる――。


これより、いくつかのエントリに分けて、
WG論文の不実を指摘するシリーズを書いてみることにしました。

かなりの期間に渡って、
間に他の記事をはさみながら、断続的に書いていくことになると思います。

以下、前に書いた内容と重複しますが、重要なことなので、その1。


          ――――――

冒頭部分で、著者らはまず06年のGunther & Diekema論文とそれに対する批判について
論争の取りまとめのようなことを行っています。

そこの個所に既に3つの重大なウソがあり、それは
上記12月8日のエントリーで書いたように

① 主治医論文が成長抑制の倫理的正当性をきちんと論じてみせた、とのウソ。
② 主治医論文にアシュリーの最終身長の予測データが示されている、とのウソ。
③ 親のブログに対して批判が出たのは障害当事者とその支援者たちからだった、とのウソ。

この部分に続いて、その後の事件の展開に沿って
このWGがなぜ作られ、なぜこの論文が書かれるのかが説明されている。

その部分が、これまたマヤカシに満ちている。

それについて、「成長抑制WGの論文を読む 2」で。
2011.01.27 / Top↑
以下のエントリーで追いかけてきたフランスの自殺幇助合法化法案は
昨日、否決されたとのこと。

フランス上院、25日に自殺幇助合法化を審議(2011/1/13)
フランスの安楽死法案、上院の委員会を通過(2011/1/19)


賛成 142 vs 反対 170 。

差が小さいのが気になるけど、まずは、よかった。

French Senate’s rejection of assisted suicide and euthanasia is welcome
John Smeaton, SPUC Director, January 26, 2011/01/27


ブログ主はthe Society for the Protection of Unborn Children のディレクター。

1967年に世界で初めてのプロ・ライフの組織として立ち上げられ、
中絶、ヒト胚の実験利用、安楽死に反対している。

このニュースに関しては、
ここで英国が合法化などしたら、国際的な恥さらしになるぞ、と。
2011.01.27 / Top↑