遅ればせながら、10月のBBCニュースからKatieケースに関する情報の追加を。
ゴーカート・レースを見ている一家の様子と、
母親Alisonが生理の不快が娘には耐えられないと訴えている映像があります。
母親Alisonが生理の不快が娘には耐えられないと訴えている映像があります。
前日のメディア各社の第一報に
即座に批判の声を上げた障害者団体Scopeの副会長Sandy Collington(61歳)が、
現在35歳になる重症障害を持つ娘の思春期を振り返って、
以下のように述べています。
即座に批判の声を上げた障害者団体Scopeの副会長Sandy Collington(61歳)が、
現在35歳になる重症障害を持つ娘の思春期を振り返って、
以下のように述べています。
子どものためになら何でもしてやりたいとのAlisonの気持ちには共感するが、
自分は同じことをできなかったし、同意はしない。
他にも不快や苦痛を回避する方法はあるし、
必要なのは社会福祉のサービスの方。
子どもの人権が何より大事。
15歳児から子宮摘出なんて、どんな悪影響があるか誰にも分からない。
自分は同じことをできなかったし、同意はしない。
他にも不快や苦痛を回避する方法はあるし、
必要なのは社会福祉のサービスの方。
子どもの人権が何より大事。
15歳児から子宮摘出なんて、どんな悪影響があるか誰にも分からない。
その主張の力点はもちろん後半にあるのですが、
なぜか記事のタイトルは「悲痛な決断に共感」……?
なぜか記事のタイトルは「悲痛な決断に共感」……?
やはり Katieケースを巡る英国メディアの報道姿勢は、大いに疑問。
2007.12.08 / Top↑
シアトル子ども病院で11月28日、
14歳のエホバの証人信者の男の子Dennis Lindbergが
白血病治療の輸血を拒否して亡くなっています。
14歳のエホバの証人信者の男の子Dennis Lindbergが
白血病治療の輸血を拒否して亡くなっています。
Mount Vernon leukemia patient, 14、dies after rejecting transfusions
The Seattle Times, November 29, 2007
The Seattle Times, November 29, 2007
診断されたのは11月初め。
その後化学療法を受けていましたが、
輸血は本人が拒否、
同じくエホバの証人の信者である法廷代理人の叔母は本人の意思を支持する一方、
アイダホ州に住む両親は反対するなど
輸血を巡って意見の対立があり、
病院は問題を州へ届け、
州が輸血の強制を求めて裁判所へ持ち込んだという経緯。
その後化学療法を受けていましたが、
輸血は本人が拒否、
同じくエホバの証人の信者である法廷代理人の叔母は本人の意思を支持する一方、
アイダホ州に住む両親は反対するなど
輸血を巡って意見の対立があり、
病院は問題を州へ届け、
州が輸血の強制を求めて裁判所へ持ち込んだという経緯。
上級裁判所の裁判官は
「輸血拒否が死刑に匹敵することは理解できる年齢。
彼には自分でその決定を行う権利がある」
との裁定を下しますが、彼はその数時間後に亡くなったとのこと。
「輸血拒否が死刑に匹敵することは理解できる年齢。
彼には自分でその決定を行う権利がある」
との裁定を下しますが、彼はその数時間後に亡くなったとのこと。
裁判では子ども病院の医師らは本人の決定を支持したそうですが、
この問題について例のDeikema医師が長々と語っています。
この問題について例のDeikema医師が長々と語っています。
輸血の問題が起こるのは大体は外科の症例であり、
現在の子ども病院の方針としては、
輸血を避けるためにできる限りのことはするが、
子どもが血液不足で死にそうになった時に病院が死なせることはしない、
と両親に知らせておくというもの。
何年か前までは、裁判所が親の希望に逆らって子どもへの輸血を認めるのが通例だった。
大人には治療を拒否する権利があるが、それが彼らの子どもにまで及ぶわけではない、という判断。
つまり、大人が殉教者になるのは自分の勝手だが、子どもまで殉教者にすることはできない、と。
ただ、青年期は問題が複雑になる。
14歳で考えることは変わる。
大人になったら14歳の時とは全く違った信条を持っていることもある。
心配なのはそこ。
14歳には“大人のような”意思決定プロセスが認められる場合があるが、
輸血が一回限りの治療ではなく長期に渡る場合には、問題がさらに複雑になる。
その場合、問題になるのは「協力するつもりのない子どもに如何に効果的な治療を行うか」ということ。
現在の子ども病院の方針としては、
輸血を避けるためにできる限りのことはするが、
子どもが血液不足で死にそうになった時に病院が死なせることはしない、
と両親に知らせておくというもの。
何年か前までは、裁判所が親の希望に逆らって子どもへの輸血を認めるのが通例だった。
大人には治療を拒否する権利があるが、それが彼らの子どもにまで及ぶわけではない、という判断。
つまり、大人が殉教者になるのは自分の勝手だが、子どもまで殉教者にすることはできない、と。
ただ、青年期は問題が複雑になる。
14歳で考えることは変わる。
大人になったら14歳の時とは全く違った信条を持っていることもある。
心配なのはそこ。
14歳には“大人のような”意思決定プロセスが認められる場合があるが、
輸血が一回限りの治療ではなく長期に渡る場合には、問題がさらに複雑になる。
その場合、問題になるのは「協力するつもりのない子どもに如何に効果的な治療を行うか」ということ。
Diekema医師の上司で同病院の倫理部門の責任者であるWilfond医師は、
相反するニーズに折り合いをつけるジレンマについて語っています。
相反するニーズに折り合いをつけるジレンマについて語っています。
青年期というのは自分の信念に反するものには激しく抵抗する時期でもあり、
本人の望みと、発達段階にある彼らのオートノミーを尊重しつつ、
その一方で彼らを守りたいとの思いの間でバランスを取る。
その両者をどんな状況下でも成し遂げるというのは難しい。
本人の望みと、発達段階にある彼らのオートノミーを尊重しつつ、
その一方で彼らを守りたいとの思いの間でバランスを取る。
その両者をどんな状況下でも成し遂げるというのは難しい。
―――――――
それにしても……シアトル子ども病院は、
判断の難しい症例は州に届け出るという方策があることを、
ちゃんと知っていたのですね。
ちゃんと知っていたのですね。
そしてDeikema医師も、
判断が難しい症例では
過去の判例を振り返ってみるくらいのことは
ちゃんとする人なのですね。
判断が難しい症例では
過去の判例を振り返ってみるくらいのことは
ちゃんとする人なのですね。
その人が、
Ashleyのケースでは、
Ashleyのケースでは、
知的障害者や未成年の子宮摘出については裁判所の命令が必要だという
ワシントン州の法律を知らず、
ワシントン州の法律を知らず、
州に相談するという方策も検討すらしなかった……というわけ。
2007.12.05 / Top↑
利権が絡んだ政府と製薬会社の研究結果が学術研究の結果と大きく違っていることなど
安全性を巡る政府の判断基準に疑問を投げかけているのですが、
安全性を巡る政府の判断基準に疑問を投げかけているのですが、
その記事
にNorman Fostが登場しています。
直接これらの研究に関与していないFostは一般論を述べているだけなのですが、
スポーツでの薬物利用を積極的に擁護する彼にしては、ちょっと意外な、
しかし、へんに中途半端な発言になっています。
スポーツでの薬物利用を積極的に擁護する彼にしては、ちょっと意外な、
しかし、へんに中途半端な発言になっています。
記事から彼の発言部分のみを抜くと、だいたい以下のような感じ。
企業の研究と大学の研究とで結論が大きく違うというのはいつものことだ。
科学研究の世界というのは利権の絡んだ団体による研究がごろごろしているところである。
そうした研究のどれほどが信じられるかと考えたら、
我々としては猜疑的になったり慎重に、あるいは批判的になったっていいだろう。
科学研究の世界というのは利権の絡んだ団体による研究がごろごろしているところである。
そうした研究のどれほどが信じられるかと考えたら、
我々としては猜疑的になったり慎重に、あるいは批判的になったっていいだろう。
最後のところは It's up to us .... となっているので、
まぁ、「疑いたければ、それも我々の勝手」とでもいう、
ちょっと突き放した感じのニュアンスでしょうか?
まぁ、「疑いたければ、それも我々の勝手」とでもいう、
ちょっと突き放した感じのニュアンスでしょうか?
発言前半には
「結果が違うのも利権が絡んでいるのもいまさら驚くに当たらないことだ」とのニュアンスもあるし、
一応地元の新聞に対して、期待された通りのコメントをしてはいるものの、
ホンネはちょっと違いそうな気がしないでもないですね。
「結果が違うのも利権が絡んでいるのもいまさら驚くに当たらないことだ」とのニュアンスもあるし、
一応地元の新聞に対して、期待された通りのコメントをしてはいるものの、
ホンネはちょっと違いそうな気がしないでもないですね。
しかし、この記事で「え?」と驚いたのは、上記の発言ではなく、
これに続いて書かれていた事実。
これに続いて書かれていた事実。
Norman Fost医師は小児科研究の倫理問題を検討するFDAの委員会の委員長なのだと。
考えるだに恐ろしい気がするのですが。
2007.12.05 / Top↑
2007年も残り一ヶ月を切りましたが、
今年が優生思想の歴史において大きな節目の年だと知ったのは
5月のことでした。
5月のことでした。
ちょうど5月8日にシアトル子ども病院が記者会見を行って
Ashleyに対して行った子宮摘出術について裁判所の判断を仰がなかった点での違法性を認め、
続いて16日にはワシントン大学でその件についてのシンポジウムが開かれたりした直後だったので、
Ashleyに対して行った子宮摘出術について裁判所の判断を仰がなかった点での違法性を認め、
続いて16日にはワシントン大学でその件についてのシンポジウムが開かれたりした直後だったので、
やはりAshley事件はこのような大きな時代のうねりの中で捉えなければならないと
改めて痛感させられた、
改めて痛感させられた、
「今なお聞こえる優生思想のこだま」というタイトルのWPの記事。
その大まかな内容は以下。
「痴愚が3代も続けばもう充分」との悪名高い言葉と共に
知的障害のある女性に不妊手術を命じたヴァージニア判決(バック v ベル)は、
ちょうど80年前の5月。
しかし、
国連障害者権利条約が障害者に固有な尊厳と価値を謳っている一方で、
世界中で障害児を選別・排除する動きが目立ってきている。
「遺伝病の遺伝子を持った子どもを産むことは、まもなく罪となるだろう」とは
embryologist (ヒトの配偶子を扱う研究者)であるBob Edwardsの言。
生殖ビジネスの企業家はHPに書く。
「我々はドナーにスクリーニングを行い、
医学的にクリーンなドナーだけを選んでおります」
また、
「障害児の数を増やして限られた資源をさらに無駄遣いすることは、あまり懸命ではない」
と、Peter Singer。
米国では全妊婦にダウン症候群の出生前診断を受けさせようと産婦人科学会が提言。
(これについては、あのNaamも「超人類へ!」の中で触れていました。)
英国の産婦人科学会は重症障害新生児の安楽死を提唱。
オランダでは2年前に
重症障害新生児の安楽死基準「グローニンゲン・プロトコル」が作られた。
米国では「不毛な治療」方針が
もっと“能力”のある患者のために病院ベッドを明け渡せと
最も自ら身を守る力の弱い患者たちに迫っている。
(「不毛な治療」については、
7月のシアトル子ども病院生命倫理カンファレンスでも主要テーマになっていました。)
知的障害のある女性に不妊手術を命じたヴァージニア判決(バック v ベル)は、
ちょうど80年前の5月。
しかし、
国連障害者権利条約が障害者に固有な尊厳と価値を謳っている一方で、
世界中で障害児を選別・排除する動きが目立ってきている。
「遺伝病の遺伝子を持った子どもを産むことは、まもなく罪となるだろう」とは
embryologist (ヒトの配偶子を扱う研究者)であるBob Edwardsの言。
生殖ビジネスの企業家はHPに書く。
「我々はドナーにスクリーニングを行い、
医学的にクリーンなドナーだけを選んでおります」
また、
「障害児の数を増やして限られた資源をさらに無駄遣いすることは、あまり懸命ではない」
と、Peter Singer。
米国では全妊婦にダウン症候群の出生前診断を受けさせようと産婦人科学会が提言。
(これについては、あのNaamも「超人類へ!」の中で触れていました。)
英国の産婦人科学会は重症障害新生児の安楽死を提唱。
オランダでは2年前に
重症障害新生児の安楽死基準「グローニンゲン・プロトコル」が作られた。
米国では「不毛な治療」方針が
もっと“能力”のある患者のために病院ベッドを明け渡せと
最も自ら身を守る力の弱い患者たちに迫っている。
(「不毛な治療」については、
7月のシアトル子ども病院生命倫理カンファレンスでも主要テーマになっていました。)
……といった各国の動向を紹介し、最後に次のような言葉で締めくくっています。
バック判決から80年を記念する年に、
優生思想の犠牲者は過去の遺物だなどと愚かにも信じるのはやめよう。
いい遺伝子と悪い遺伝子を云々し、
障害のある命を傷物と考え、
ある命を他の命よりも重んじる医療施策を許している限り、
我々は日々、人権侵害を創り出しつづけているのだ。
優生思想の犠牲者は過去の遺物だなどと愚かにも信じるのはやめよう。
いい遺伝子と悪い遺伝子を云々し、
障害のある命を傷物と考え、
ある命を他の命よりも重んじる医療施策を許している限り、
我々は日々、人権侵害を創り出しつづけているのだ。
そういえば
1月の“アシュリー療法”論争の際、誰かがどこかのブログに書いていましたっけ。
「障害者の人権は慎重に守らなければならない。」
なぜなら、障害者に起こることは、いずれみんなに起こるのだから」
なぜなら、障害者に起こることは、いずれみんなに起こるのだから」
――― ―――
ちなみに、アメリカで最初に断種法を成立させたインディアナ州は
以下のように、その事実を公式に謝罪、
以下のように、その事実を公式に謝罪、
また、優生問題を考える100周年のイベントを行っている模様です。
インディアナ州優生思想に果たした役割を謝罪
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2007/04/13/national/a011006D33.DTL
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2007/04/13/national/a011006D33.DTL
インディアナ州の優生法制化100周年イベント
Indiana Eugenics : History&Legacy 1907-2007
Indiana Eugenics : History&Legacy 1907-2007
2007.12.02 / Top↑