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6日に以下の掲示板(英語)で
「知的障害のある子どもに成長抑制は最善の選択か?」とのトピックが立てられました。


8日午前0時半の段階で書き込みは5本。

これまでの論争でも出てきた典型的な意見ばかりですが、
この問題への興味関心はまだ続いていますね。
2008.08.08 / Top↑
ずっと昔。娘が養護学校の小学部に入ってしばらくしてからのこと。

場所がどこだったか記憶が曖昧なのだけど、
娘の車椅子を押して歩いていたら
どこかで「あらぁ、ミュウちゃん!」と大きな声が上がって、
見たことのない女性が駆け寄ってくるなり
車椅子の前にしゃがみこんだ。

「こんなところで会うなんてねぇ。
 どうしてた? 元気そうじゃない」

ニコニコしながら娘の手をとり、
しゃがんだまま、あれこれと話しかける。
娘の方もニコニコ応じている。

そのうち私に気がついて「あ、お母さんですよね……」と立ち上がったところで、
その人はもともと急いでいた途中でもあったらしくて、
誰かに呼び立てられ急かされて、そのまま行ってしまった。

ほんの数分間の出来事で
こっちも、つい会釈だけで見送ってしまった。

たいていのオトナは親の方にまず話しかける。
どうかすると学校の先生の中にも
娘がそばにいても親とだけ話をして去って行く人がいる。

いきなり娘に声をかけ、直接話しかけて、
親とはロクに言葉も交わさずに去っていった人というのは初めてだった。

その人が娘にどう接してくれているかが、それだけで伝わってくる。
束の間の出来事がさわやかに心に残った。

「あの人、学校の先生?」
「それとも、ボランティアさんとか?」
歩き出しながら、車椅子の後ろから聞いてみる。
娘は今はヘラヘラするのみ。

そのヘラヘラを見ながら
母はじわぁっと楽しくなってきた。

「そうかぁ、お母さんの知らないミュウの知り合いかぁ……」

それまでの通園施設では規模も小さいし、
先生方の数もボランティアの人も限られていた。
親が送り迎えしたり、しょっちゅう園にも出かけて
娘の世界の登場人物は、親が把握できる範囲だった。
それで、娘の世界は母親の世界の片隅にすっぽり納まっているものと
私は勝手に思い込んでいたものらしい。

全介助の子どもだから、寝たきりで言葉がないから、と
無意識のうちに親が勝手にそう思い込んでいた。

なんて親って傲慢なんだろう。

娘の方は親と離れて過ごす親の知らない世界をちゃんと持っていて、
そこで親の知らない経験をし、いろんな人と出会って、
親の知らない人間関係をしっかり持っている――。

親の世界の範囲内に小さな世界を与えられているわけじゃない。
親の世界をはみ出して、自分の世界を広げている。
いいじゃないか。それ――。

やるじゃないか、ウチの子。

      ――――――――――


「生後6ヶ月のメンタルレベルのAshleyに必要なのは
家族という小さな世界」

Diekema医師の言葉を読んだ時、
すぐに頭に浮かんだのは、この時のことだった。

重症児は家族以外には愛されることなどありえないとの前提に立ち、
家族との狭い世界で生きていけばそれが本人の幸福だと考える人に
障害児の医療や福祉を云々する資格があるのか……と、それからずっと思っている。
2008.08.06 / Top↑
まだマウスでの実験段階らしいのですが、
飲むだけで脂肪を燃焼して筋肉を発達させ、
運動機能がアップするという薬が開発されており、
なかなかいい結果を出しているのだそうで。


研究している人は、
将来この薬が人間にも使えるとなれば
糖尿病など運動が必須だといわれる人への光明になると言い、

批判する人は
そんなものを作ったらスポーツで悪用・濫用されると懸念しているらしいのですが、

そのうち、私たち、
食事の代わりにピルを飲み、身体を動かす代わりにピルを飲み、
セックスや睡眠だってピルで代用できるようになったりして。

そしたら、人間は何して暮らすのかしらん。

トランスヒューマニストたちが、
薬とテクノで長時間働ける兵士や看護師を作れば社会の生産性が向上して云々……
と言っている伝で行けば、

例えば座業の人にこの薬を飲ませれば
座ったまま働き続けても運動不足になどならないから
これまた長時間の労働が可能となるわけですが、

それって拷問であり、奴隷労働でしょう?

それに世の中に副作用のない薬はないんですよね。たしか。
そうやって「○○の代用」で飲む膨大な薬物の副作用って……

あ、どうせ奴隷だから、薬でボロボロになっても使い捨てでいいのか……。
2008.08.04 / Top↑
このところ、カナダAlberta 大学の教育心理学の教授 Dr. Sobseyが
インターネット上でAshley事件の特に乳房芽の切除に関して
立て続けに疑惑を指摘していましたが、

今度は障害者への虐待をテーマにした同大学関係機関のブログで
これまで書いてきたことを中心にAshley事件の10の疑問をまとめています。


10の疑問とは

1.なぜ元論文は乳房切除に触れていないのか。

2.医療保険の請求には「両側乳房切除」と明記されているのに、
なぜ父親も担当医も乳房芽の切除は乳房切除よりも侵襲度が低い別物と主張したのか。

3.小児の予防的乳房切除については既に倫理分野の文献があり、
正当化できないとの結論が出ているのに、
なぜ担当医らは前例がないので文献もないと書いたのか。

4.元論文で、外科手術の将来の苦痛の軽減が理由の1つとされているが、
乳房切除と子宮摘出に慢性的痛みの後遺症が頻発していることは、なぜ触れられなかったのか。

5.エストロゲンには非常に高率に体重増加の副作用があるにもかかわらず、
子どもの体重コントロールに使ったのはなぜか?

6.エストロゲンが連日6歳の子どもに使われた場合、
成人女性の30倍もの高濃度に匹敵するにもかかわらず、
担当医がそのリスクを成人女性の避妊目的のエストロゲン使用になぞらえたのはなぜか。

7.Ashleyの名前と顔が一家のHPで明かされているのに、家族の名前と顔は隠されているのはなぜか。
 Ashleyよりも家族の方により多くのプライバシーが求められるのはなぜか。

8.Ashleyの両親が子ども病院の資金調達に関っているとのウワサは? 
父親がマイクロソフトの役員であるとされており、
マイクロソフトは病院の資金調達と繋がっていることを思えば疑念も沸くものと思われ、
不要な陰謀説を招かないためにも解明された方がよい。

9.病院は独自に利害関係のない弁護士の意見を求めることをせず、
なぜAshleyの親の弁護士の裁判所にいく必要はないとの意見を採用したのか。

10.論文では成長抑制の目的をケア負担の軽減のための体重コントロールとしていながら、
倫理委員会の「懸念される問題」では「身長と性的発達を制限する積極的な介入」とされているのはなぜか。

疑問8の「ウワサ」は
当ブログの英語版で指摘している問題を指しています。


2008.08.04 / Top↑
The American Scientific Affiliation(米国科学協会)と
Canadian Scientific and Christian Affiliation(カナダ科学キリスト教協会)のジョイント学会が
8月1日から4日までOregon州 George Fox 大学で開かれており、

8月2日(土)の午前の全体会プログラムで
Diekema医師がAshleyケースについて講演を行っています。

タイトルは
Love, Justice, and Humililty: Reflections on Bioethics and Medicine
愛、正義そして謙虚:生命倫理と医療についての考察

同協会のサイトに出ている学会報告No2によると、
どうやら講演内容は1月18日のCalvin大学での講演とほぼ同じものだったようですが、
非常に気がかりなのは学会プログラムのDiekema講演の梗概(P.6)の内容。

Ashley事件の概要をまとめた後で、次のように書かれています。

Today, many physicians and institutions are struggling with whether to offer similar treatment when parents request it. At the same time, critics have charged that this form of medical intervention represents the worst of medical hubris and the unwise application of medical technology.

今日、多くの医師や医療機関は親の要望があった場合に類似の治療を提供するべきかどうか頭を悩ませている。同時に、このような医療介入については医療の最悪の傲慢であり、医療技術の愚劣な応用であるとの批判もある。

The presenter, an author of the original paper, will explore the medical, social and other controversial treatments in profoundly disabled children. He will address whether the use of growth attenuation therapy can ever be justified and will examine the constraints that should be placed on the use of such treatment. In addition, the case will provide a framework for understanding the bioethical issues that arise in the use of novel and controversial medical treatments.

元論文の著者である講演者が、医療的に、社会的に、またその他の面でも論議を呼ぶ重症障害児の治療について考察する。成長抑制療法は果たして正当化されうるのか、またこのような治療にはどのような制限が設けられるべきかについて検討を行う。さらにこの症例は斬新で物議を醸す医療における倫理問題を理解する上での枠組みを提供するだろう。

学会プログラムはこちら


Diekemaという人は、どこまで恥知らずなんだろう。

あたかも当該ケースとは利害関係のない倫理学者が客観的な解説をするかのような姿勢で
成長抑制療法そのものを概念化しようとしていますが、

彼は当該ケースの当事者です。
Ashleyケースについてきちんと説明責任を果たすのが先ではないでしょうか。

真実を知っているはずの人たちが口をつぐんだまま、
仮にも科学系の学会でこのような講演が行われ、
重症障害児への成長抑制が医療的な概念付けをされていく。

誰か、これを止めなければならないと考える人はいないのでしょうか――。
2008.08.03 / Top↑
シアトル子ども病院生命倫理カンファレンスの取材に先駆けて
子どもの遺伝子診断についてブログで親の意見を募集し、その中で
Diekema医師のコメントを引用していた地元の新聞記者が
取材後の記事を書いています。

Genetic testing of kids could pose a dilemma
The Seattle Post-Intelligencer, July 29, 2008

記事の要旨としては、だいたい以下のような感じ。

子どもの遺伝子診断技術は進んできており、
6年前にはほんの一握りの病気で行われていたスクリーニングが
現在ほとんどの州で29の病気まで拡大されており、
ワシントン州ではフェニルケトン尿症と嚢胞性線維症を含む24だが
8月の終わりに1つ追加される予定。

これらは多くの州で義務付けられているが、
親が宗教上の理由でオプト・アウトすることはできる。
この先、診断対象が広がるに連れて親はこうした選択に悩むだろう。

一方、遺伝子の保有が確認されたとしても治療可能な病気ばかりではないし、
診断結果がどの程度信頼できるものかという問題もあり、
親としてはどう考えたらいいのか非常に気になるところである。

全米から小児の遺伝子診断に関っている医師・研究者が集まった
先週のシアトル子ども病院の生命倫理カンファレンスでは
診断によって予め病気に備えたり早期治療が可能になり研究も進むという意見がある一方、
まだ曖昧な部分が多く、診断したとしても
「あなたの子どもが嚢胞性線維症かどうか分からない」と答えるしかないという話も出て、
親の混乱以前に、専門家自身が倫理面について混乱をきたしている様子だった。

それでなくとも親には子どもを巡って心配事が多いのに、
これでは心配が増えるだけかも。

親が参考にするインターネットの遺伝子診断指針にばらつきがあるという点について
たいした発言ではないですが、再びDiekema医師の発言が引用されており、

「最も信頼が置けるのはNIH(国立衛生研究所)や大学の研究機関の指針です。
もちろん、かかりつけ医がベストな情報源ですけどね」

それよりも目に付いたのは、
「子ども病院は米国の数少ない小児科生命倫理センターの1つを抱え
 遺伝子診断論議の中心に近い存在である」
と書かれていること。

Ashley事件を振り返ると、
そういう病院がよくもあんな無責任な倫理判断を下したよね……と
改めて子ども病院「特別倫理委員会」の破廉恥に唖然とする。
2008.08.01 / Top↑