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日本で後期高齢者医療制度と一緒に始まったメタボ検診については、
なにかと批判の声も上がっているところみたいですが、

“お上”がそこまで個人の生活に口を出すかよ……などと文句を言われながらも
口を出さずにいられない“お上”の事情としては、なるほど、要はこれか……という調査結果が
the Journal of the American Geriatrics Societyの8月号に
英国の Peninsula Medical Schoolによって発表されていて

それを報じたニュースがこちら。

高齢期の肥満は障害リスクを高めるものの死亡リスクは高めない
したがって医療・福祉制度にとっては「すでにスイッチが入った時限爆弾」


4000人の高齢者をBMIによって4つのグループに分けて5年間追跡したところ、
肥満と死亡との関係が見られたのは最も肥満しているグループのみで、
他のグループではむしろ移動や日常生活の困難との相関が顕著だった。

若者や中年層での肥満で死亡率が高くなることから、
これまでは、そのデータがそのまま高齢者にも当てはめられてきたが
高齢者の肥満は死に至るよりもむしろ障害を負うリスクを高めると考えた方がよい。

ということは、高齢者の中に肥満が広がりつつある現在、
医療と福祉の制度は将来爆発する時限爆弾を抱えてしまったようなものであり、
既に爆弾の時計はチクタクいっている……。

         ―――――――――

つまり、これは、もしかして、

いっそ肥満で死んでくれるんだったら、
“お上”も、まだ肥満を黙って見逃してくれるってことなのか?

死なずに要介護状態に陥られるとゼニがかかって困るから
「やせろ~、ほら、やせるんだ~」と号令をかけているというわけで。

実はそれがホンネだというのは、日本でも、ネットで読む限り英米でも
そこはかとなくニュースに漂う空気でみんな察知してもいるのだろうけれど、

こういうのを読むといつも不思議でならないのは、
医療や福祉が破綻するから、さっさと死んでくれた方がいいというのがホンネなら、

どうしてその一方で
不老不死に向けた研究に膨大なゼニを投入して血道をあげているのかということ。


 ---          ---        ---

昨日、NHKの「クローズアップ現代」の特集で
世界経済にパラダイム・シフトが起こった、もう元には戻らない……という話を聞いた。
その直後に、番組とは全然関係ない以下のブログを見かけたところ、
頭の中でこの2つが連結した。


番組では誰もそうは言わなかったけど
もう起こってしまったという、その世界の経済構造のパラダイム・シフトというのは、
こんな気色の悪い街づくりに狂騒している人たちが世界経済の主役であり、
彼らのニーズに応じて各国の産業構造や経済政策を変えていくしかない時代が到来してしまった、
(もうこれからは国家や政府は当てにできない?)ということなんですよね、きっと。

ということは、もしかしたら

「湯水のごとくに研究費・医療費を使って
150歳までぴんぴんして長生きを目指す」対象に入れる人たちと
(詳細は「トランスヒューマニズム」の書庫に)

「ああ、あんたたちの方はもともと生産性が低いんだから
その生産性までなくなったら、さっさと死んでいいよ。
要介護状態なんてジャマくさいことになったら、悪いけど死んでもらうから」と
冷たく言い渡されてしまう人たちとに、

世界人口そのものが国籍や人種を越えてそのうち新しく分類されてしまう──
今の障害児・者切り捨ての動きはそのトバ口に過ぎない──

そういうパラダイム・シフトも同時に起こりつつあるということなのでは?

だって、ほら、世界の保健医療施策研究を既に私物化したとも見えるゲイツ財団
世界の医療にもコストパフォーマンスとアカウンタビリティ、
しかも、もう政府の出る幕じゃないって言っているのだし。
2008.08.27 / Top↑
Washington大学のIHMEについては
Ashley事件の背景として重要と思われる同大学とGates財団の関係を追いかけているうちに
Gates財団の私設研究機関に等しいと思われるこの研究所に行き着いたものだから、
IHMEについてあれこれ覗いてみたら、なんとも驚くことに
コスト・パフォーマンスの市場原理でもって世界の保健医療施策をチェックし改変していこうと
ものすごい野望を抱えた研究機関だった。

そしてWHOを始め各国の保健衛生の要人が理事に居並んでいるのだから
これはリアルに怖い話でもあるのですが、

(詳細は「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫に)

そのIHMEが4月にBritish Medical Journalに発表した論文が
一部メディアで話題になりました。

世界の戦争死のデータを洗いなおしてみたら、
戦争による死者の実数はこれまで言われてきた3倍に達している、という内容。

統計だらけで私には到底読めませんが、元論文はこちら
(もっとも一部データは推論に過ぎないという批判も出ているようです。)


春にこの論文に関するニュースを見た時には
IHMEの意図との関係において、この内容をどう解釈すればいいのか
よく分からなかったのですが、

ここへきて、上記論文関連でちょっと面白い記事が目に付きました。
ゲイツにとっては、世界の医療は外交施策を動かさなくちゃ」というタイトルの記事。

For Gates, global health should drive foreign policy
Robert Fortner
Crosscut, August 22, 2008


何よりこの記事が面白いと感じるのは
これを書いたRobert Fortnerという人が元マイクロソフトの社員で
Bill Gates と Paul Allen が研究にかける熱意について
もっか本を執筆中の人物だということ。

従って、全文、Gates氏寄りの視点から書かれており、
無批判なので、それだけホンネが不用意に露呈されているらしいところ。

確かに戦闘テクノロジーの進歩によって
戦闘現場で激しい死に方をする兵士は減っているのだけれど、
その周辺で、巻き込まれる一般市民の死や、
戦争が引き起こす病気や飢餓による死者の数までカウントすると
戦争死の数は決して減ってはいないというのが上記IHMEの論文の調査結果であり、
従ってグローバル・ヘルスの観点から言って戦争は得策ではないというのが
その論文の主張のようです。

それだけなら、たいしたことない話ですが、
そこで、Fortner氏はこれまでのGates財団のこの方面での努力をたどって見せるのです。
こっちの話が、なかなかすごい。

2003年には外交問題評議会(Council on Foreign Relationsに資金を提供して
Global Health and Foreign Policy Fellow という研究助成制度を創設。

初めてその助成金を受けたのはジャーナリストで
AIDSの流行は国家の安全保障に関わるという論文をまとめて
当時、予防に軸足を移そうとしていた世界のAIDS施策に対して、
ワクチン研究を中心にすえた施策続行の重要性を訴えた、とのこと。
(ワクチンによる集団的な医療活動collective actionは
ゲイツ氏が考える最も効率的な世界保健施策なのだし。)

2006年にはJohns Hopkins Universityにthe Global Health and Foreign Policy Initiativeを設立。

そのHPによると「ゲイツ財団からの気前の良い資金提供を受けて」
「医療と政治・経済・安全保障とを繋ぐ」研究をするべく設立されたとのこと。

で、2007年には冒頭で触れたワシントン大学のIHMEを創設。
この記事はIHMEについて次のように、あられもない書き方をしています。

IHMEは
エビデンスに基づいた施策とアカウンタビリティを追求するGates財団の姿勢を代表するもので、

現に効果を見せているのはどの施策であり、
(世界中の人々の)死因はなんなのか(何の、または誰の責任で死んでいるのか)を
見極めようとするものである。

ワシントン大学の研究機関であるIHMEは
やはりゲイツ財団の私設研究所だというホンネがここにはボロッとこぼれていますね。

で、その財団の私設研究所IHMEは2010年までに
世界中の保健医療施策の“通知表”を作成してくださるのだそうで。

さらに、この記事によると、
ここ最近にGates夫妻があちこちでしゃべっていることの要点は
「もう世界の保健医療をどうにかするのは国家レベルでは無理。
 食糧も医療も教育も得られないでいる貧しい人を助けることが出来るのは
もはや非営利セクターのみ」
ということのようなのですが、
この「非営利セクター」って、その辺のNPOのことではなくて、
ひとえにGates財団のことを指して言っているわけでしょうね。もちろん。

……ということは、
「もう国家だの政府だのはすっこんで、
世界の保健医療施策はゲイツ財団に任せなさい。
ついでに言わせてもらうと、
効率的な保健医療施策を有効に打つためには
我々は外交にも口を出させてもらいますよ」って?

確かに、この記事を読んでいると、
FortnerはGates氏を既に「世界の帝王」として位置づけており、
「帝王様」はかしこくもこのように考えておられる……みたいなトーンでもあり……。
2008.08.27 / Top↑