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ここ数年、私がたまに拾っただけでも、
英語圏の“科学とテクノで簡単解決”文化は
まず「ビタミンDで心臓病・脳卒中予防!」に始まって、
あれよあれよという間に「ビタミンDはほとんど万能!」騒ぎとなり、
「みんなビタミンDのサプリを飲もうぜい!」キャンペーンの狂騒は
どう考えても異常だった。

当ブログの補遺だけでも、ざっとこんな感じ ↓

(09年4月27日)前立腺がんの治療に有効
(09年8月3日)米国の子どもはビタミンD不足
(09年9月24日)ビタミンDが不足すると歳をとって心臓病で死ぬ確率が上がる 
(2010年1月21日)ナーシングホームの高齢者に転倒予防でビタミンDを、という実験
(2010年5月12日)国際骨粗鬆症財団から「高齢者はビタミンD不足。もっとサプリを」
(2010年5月22日)MSの予防に有効

それで、今年7月14日の補遺で
ビタミンDのレベルが低いとパーキンソン病を発症する確率が高くなるという記事を拾った時、
私は「またビタミンD……」とコメントしている。

――でもね。

この2年、私は忘れたことがないほどに衝撃的で
上記のいずれよりも「どーよ、これ」な事実は、こちら ↓

子どものビタミンD不足サプリで補えと米小児科学会(2008/10/15)


これだけニュースになるのだから、
当然ビタミンDに関する実験数も爆発的に増えていたし、
これだけ「飲め、飲め」と医師や学者が煽ったのだから
ビタミンDの売り上げは09年には08年の82%増で、4億3000万ドルに。

ところが、米国とカナダ政府の求めによって
Institute of Medicineが14人のメンバーからなる専門家委員会を作り、
関連文献と統計を広範に調査したところ、
「レベルが高ければ高いほど健康によい」は
とんでもない大ウソ八百だと分かったそうな。

なにしろ、どうやら最初に「ビタミンDを上げると良い」と
口火を切った2本の論文は不正確なものだったという。

それでも、その後、どういうカラクリだったのか、
いくつかの研究機関が、それでは総人口の8割がビタミンD不足になるだろ、という辺りに
正常値を設定する論文を次々に繰り出した。

そうこうするうちに、
必要レベルに達するにはサプリで補う必要があるという説が独り歩きしただけでなく、

高レベルのビタミンDの効果は様々な研究がある割に結果にはバラつきが目立って
大したエビデンスがあるわけでもないのに、論文や本が出るたびに
必要とされるレベルはどんどん上がって行ったんだそうな。

しかし今回の調査で分かったのは、
もともと、ごく一部の人を覗くと、
ほとんどの人は普通に暮らしていればビタミンDもカルシウムも足りていて
サプリで補う必要がないばかりか、

むしろビタミンDの摂り過ぎは腎臓結石、
高レベルが維持されると骨折や総じて死亡率が上がるし
カルシウムの摂り過ぎは心臓病のリスクになる、という驚きの事実。

(製薬会社がさんざん儲けたあたりで「やっぱり安全ではありませんでした」と
調査結果が出てくるパターンは、驚きでも何でもなくて、もうお馴染みなんだけど)

報告書をまとめた委員会は
追加でビタミンDとカルシウムを補えと説く人たちは
人に飲ませる前に安全だと証明してみせなければならない、と。

Extra Vitamin D and Calcium Aren’t Needed, Report Says
The NY Times, November 30, 2010


米国小児科学会の説明を聞きたい――。


それにしても、スタチンしかり。ペニシリンしかり。
そして、次は……やっぱり、ワク××?
2010.11.30 / Top↑
Charlie Falconer上院議員といえば、去年6月に
自殺法改正法案を提出した人物。

同法案は7月に否決されたのですが、

今度は、Falconer卿が議長となり、上院に
幇助死(assisted dying)について検討する委員会が立ち上げられた、とのこと。

同氏がGuardianに語ったのは、おおむね以下の内容。

23歳の元ラグビー選手、Dan Jamesを両親がDignitasに連れて行って死なせた事件など
親族がスイスに連れて行って自殺させる事件は相次いでいて、
現在の自殺法の規定のもとでは犯罪だと思われるにもかかわらず、
誰もそれら親族を罪に問うだけの度胸がない。

この状況は、現行法に問題があるということではないのか、
今のままでは親族を守るために一人で死ななければならなかったり、
もっと生きられるのに早めに死ぬことを選ばざるを得ない人がいるのではないか、
との問題意識に基づいて

委員会では自殺幇助合法化の賛否両論を検討する。
また米国のオレゴン州、オランダ、スイスに実態に赴いて
合法化された自殺幇助の実態を視察する。

自分の自殺幇助で親族が罪に問われないとはっきりすることで
心の平穏が得られるのであれば、その方が良いだろう。

ただ問題は、
自分で選びたいよりも早く死ななければならないプレッシャーが
かかる状況もあるのだろうか、ということだ。
それについて委員会では医療職や司法によって
本人の自由意思を確認する方法を検討する。




委員会のメンバーには
29年前にラグビーの事故で首から下が麻痺したStephen Duckworthも加わっている。
彼は事故の直後に死なせてほしいと頼んだ友人に断られて、その後、生きる希望を取り戻したという。

しかし、自殺幇助合法化については、本当に一部の障害者が言うように危ういのか、
それとも一定の資力のある人だけがスイスへ行ける現状がフェアでないのか
まだどちらとも決めていないという。

(でも、この発言そのものが明らかに合法化に傾いている)

そもそも、委員会には合法化ロビーのDignity in Dying との繋がりが指摘されており、
アルツハイマー病で合法化アドボケイトの作家Terry Pratchettが
立ち上げの資金集めに協力たというのだから、
どう考えても“結論が先にありき”の委員会。

緩和ケア医で合法化に一貫して反対しているFinlay上院議員は
「委員会に近い人から、そこでは合法化すべきかどうかではなく
いかにして合法化すべきが議論されていると聞いている。
それで中立の委員会だと言えますか?」と。

Assisted suicide law to be reviewed by Lords
The Guardian, November 28, 2010


この委員会は中立なんかじゃねぇ! という声はこちらからも。 ↓
http://www.christian.org.uk/news/concern-over-assisted-suicide-commission/



【Baroness Finlay(Baroness は女性議員の称号と思われます)関連エントリー】

英国医師会、自殺幇助に関する法改正支持動議を否決(2009/7/2)
BMJの副編が「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」(2009/9/6)
Campbellさん率いる障害者団体連合が自殺幇助ガイドラインを批判(2009/12/22)
Warnock, Finlay, Purdy他が自殺幇助で円卓討論(2010/1/31)
「PAS合法化なら年1000人が死ぬことに」と、英シンクタンクが報告書(2010/10/26)
2010.11.30 / Top↑