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Exhibit A “アシュリー療法”に関する各州の法的要件問い合わせ先

Exhibit B  アシュリーの両親のブログ

Exhibit C  2007年1月8日付けWPASからワシントン大学宛書簡

      調査開始の通達。協力要請。資料請求。発達障害法その他からの関連抜粋添付

Exhibit D 2007年1月10日にWPASから子ども病院宛書簡(文面同上)

Exhibit E ワシントン大学医学部インフォームド・コンセント・マニュアル(2001-2004)

「代理決定者の権限の制約」の項目の1.Sterilization of Mentally Incompetent Person で、代理決定は不可、裁判所の命令が必要と明記されている。2.Limits on Guardianship でも、代理人が同意できない場合を精神科について3つ挙げ、その次に「この制限の意図は、その人の身体の尊厳に影響を及ぼす、侵襲性が高く不可逆的な治療については、法的代理人が同意する前に裁判所の命令が必要ということである」とも明記。

Exhibit F 1月22日付、子ども病院からWPAS宛書簡(両者は1月22日に会談しており、その際に手渡しされた)

Exhibit G 子ども病院の成長抑制/不妊検討サブ委員会資料

Exhibit H 子ども病院倫理委員会の職務規定

Exhibit I 子ども病院の、患者が未成年の場合のIC決定方針

 方針の基本は「患者の最善の利益」とする。代理決定者には6つの優先順位あり。決定のフローシートのNの項目が「発達障害のある人」。誰が代理人になれるかという点しか触れていない。最後に、親の代理決定があれば、病院スタッフは決定の責任を問われないと但し書きあり。

Exhibit J 2007年1月23日付、子ども病院からWPAS宛書簡

  前日に両者が会談したことが書かれている。

Exhibit K 子ども病院の未成年の不妊についての方針

 親も代理人も知的に同意能力のない患者に代わって不妊手術への同意はできない。同意できるのはIC可能な成人のみ。それ以外は裁判所の命令が必要。子ども病院では、裁判所の命令が出た後も医療部長、倫理委、理事会(general counsel)の承認が必要。通常は親または法定代理人が裁判所の命令を求めるが、病院が命令を請求しなければならない場合の最終決定は院長またはCEO。

Exhibit L  子ども病院特別倫理委委員会会議/相談の記録(2004年5月)

 リスクと利益を量りにかけるという論理。

 話題になったこととして、

    1.背が低いと、アシュリーに具体的にどのようなメリットがあるか
    2.生理回避には他の方法があるのでは?
    3.乳房切除がどのようにQOLの改善に結びつくのか?
    4.誰の利益か? 患者が親か?

 結論は長期的なアシュリーへの利益がリスクを上回るというコンセンサスだった。

Exhibit M re Hayes の判例資料

Exhibit N re K.M. の判例資料

Exhibit O  弁護士Larry Jones からアシュリーの父親への手紙(2004年6月10日)

 子宮摘出術について、アシュリーの利益を代理する法定代理人または弁護士を立てる必要があるかどうかの問い合わせに答えたもの。答えは目的が不妊ではないのでその必要はないとする。文中でHayes, K.M、Morinaga事件について解説しているが、捉え方がWPASの解釈とずいぶん違っている。
 結論として、「もしアシュリーが子宮がんだったら摘出できるのだから、不妊以外の目的のother compelling medical reasons なら認められる」とする。
 同じく結論の2点目「アシュリーの状態の永続性」のところで、「アシュリーには親を訴える訴訟を起こす能力はないし、前にもちょっと言ったように、子ども病院を被告にして訴訟を起こす一流弁護士は殆どいない。陪審員に人気の子ども病院とその医師らが被告に含まれていたら、まず勝ち目はないから」

Exhibit P WPASから子ども病院宛書簡(2007年3月27日)

 調査がほぼ終わり、最終的に必要な情報請求。それとともに調査報告と同時に改善の申し入れを行うことの予告。WPASとの間で同意文書を作ることを病院側に要求している。

Exhibit Q 子ども病院からWPAS宛書簡(2007年4月5日)

 前日に両者は会談。その際に、病院側はWPASの言動は権限を越えていると発言した様子。そう考えていることを重ねて書いている。また、「アシュリー療法」に関与した職員個人に対しての懲罰処分を文中で拒否していることから、それを求めるWPAS側と緊迫した交渉が進行していたことが伺われる。

Exhibit R  アシュリーに関しての病院の請求書

 両親がブログで全額が保険で支払われたと書いていたが、総額はこの請求書では26389ドル15セント。ただし、医師らへの支払い、その他は別途のため、実際にかかった総額は不明。なお、2枚目最下段にPREMERA MICROSOFTの記述あり。

Exhibit S Scott Stiefel の履歴書

Exhibit T 子ども病院とWPASの署名入り合意文書

  合意は2007年5月1日から5年間の期限付き。

追記 Exhibit Fの日付について誤りがあったため、6月13日に訂正しました。
2007.06.03 / Top↑
Ⅳ 関連の法的要求事項

A.憲法上の権利:privacy and liberty interests

1.privacy and liberty interests generally

Skinner v. Okrahoma, Addidngton v.Texas, Harper v.Washington, Cruzan V. Director, Missouri Dept. of Health, Gristwold v. Connecticut, Roe V. Waide などの判例により、生殖に関わる選択を個人的に行う権利、侵襲的な医療処置を意に反して受けなくても良い権利、生命維持医療を拒む権利、本人の望まない不妊術を拒む権利などが認められている。

2.インフォームドコンセントで同意できない(not competent)大人と未成年の治療決定に関して必要な法的手続き

 末期治療の決定については、しかるべき手順を踏んで任命された裁判所認定の代理人が決定できる。それ以外の決定では、侵襲性が高く不可逆的な治療(電気痙攣治療、本人の望まない抗精神病薬の使用、本人の望まない不妊手術)については、法定代理人でも不可。緊急の場合を除き、裁判所の命令が必要。
 未成年の場合、親の決定権は成人の法定代理人よりも広いが、ワシントン州では本人の望まない精神科への入院、命に関わるような緊急時でない場合の電気痙攣治療、精神科手術、成熟した未成年の妊娠中絶、不妊手術、それ以外の侵襲性が高く不可逆的な治療、特に親と子の利害が異なっている場合には、裁判所の審理と許可が必要。
 1980年のre Hayes 判例(16歳女児、機能は4,5歳。性行為あり妊娠の可能性を恐れた母親と医師が不妊手術を求めた)では、ワシントン州最高裁は発達障害のある子どもの親に不妊治療への同意権を認めなかった。本人の望まない不妊治療は本人の憲法上のプライバシーと自由権を侵すとの判断が示されたもの。不妊手術については、公平な立場の法定代理人または弁護士が子の利益を代理してヒアリングが行われることが必要。また、この判決によって、裁判所が発達障害のある人への不妊手術を認める基準が示された。

1.子どもが自分で不妊手術への決定ができない。

2.予見可能な将来において、不妊手術について説明を受けた上で判断ができるだけの発達がその子には見込めない。

3.その子どもが身体的に生殖可能。

4.その子どもが現在または近い将来において、妊娠に繋がりそうな状況で性行為を行うと思われる。

5.その子どもは、子どもの世話をする能力を永久的に持たない。

6.監督、教育、トレーニングを含め、不妊手術ほど過激でない避妊手段が役に立たない、または使えないことが証明されている。

7.提案されている不妊法は、その子どもの身体への侵襲度が最も低いものである。

8.可逆的な不妊法または、その他のより過激でない避妊方法がすぐには使えず、なおかつ

9.科学の発展によって、その子どもの障害の治療がすぐに見込める状況にない。

 K.M.の判例では、法定代理人が立てられたが、親と医師の言い分を認めたために裁判所の許可が下りた。が手術実施前に上訴、上訴裁判所は法定代理人は本人の利益を熱心に(zealously)に主張する必要があり、ただ立てただけでは「無意味なジェスチャー」に過ぎない、改めて弁護士を代理人とするように指示し、差し戻した。本人の利益を充分代理する、公平でアドボケートとして効力がある代理人が必要との判断が示されたもの。

 アシュリーのケースでは、成長抑制と乳房芽の摘出については前例がないが、侵襲性が高く不可逆的な治療であることを考えると、裁判所の命令が必要。

B.“アシュリー療法”がアシュリーに対して実施される前に、裁判所の命令が必要であったか?

1.子宮摘出術

 アシュリーの両親の弁護士は、父親への手紙の中で子宮摘出術は不妊を目的としたものではないので、Hayesの判例が適用されないとの判断を示しているが、Hayesの判決の中に「不妊手術命令が出されるべきかどうかを決定する、いかなる手続きにおいても、知恵の遅れた人は公平な法定代理人によって代理されなければならない」と述べられている。
 また、アシュリーの両親の弁護士がK.M.の判例を引いて、アシュリーはこのケースの子どものように親を訴えたり、モノを言うこともないのだから当てはまらないと述べている点について、法律上の権利が障害の重さによってグラデーション状態に漸減するわけではないと反論。

2.乳房芽とホルモン療法

 侵襲性が高く不可逆的な治療により、憲法で保障されたプライバシーと自由権が侵されている。

3.障害に基づいた差別

 発達障害がなかったら認められない行為が障害を理由に認められることそのものが、差別問題となる。障害を理由にした差別は州法でも連邦法でも禁じられている。

Ⅴ.不妊治療と成長抑制が求められた場合に発達障害のある人の法的権利を守るための改善策とその他組織改革

 アシュリーのケースでは、裁判所の命令が求められなかったことからアシュリー本人の立場も代理されることがなかった。その反省に立ち、子ども病院は以下の手段をとることでWPASと合意した。

A.成長抑制医療介入に関する方針と手順の実施

 裁判所の命令なしに発達障害のある人に成長抑制を行わない。裁判所の命令があった場合、子ども病院はさらに倫理委員会で検討を行う。方針と手順についてはWPASと密に相談し、2007年9月1日までに策定する。
 さらに、それら手続きなしに治療が行われたり薬が処方されることがないよう、病院のコンピュータ・システムにセーフガードを儲ける。また成長抑制療法に裁判所の許可が下りた場合は、プライバシー法の範囲で、子ども病院はWPASに通知する。

B.改善策
 上記コンピュータ・システムの改善。職員への教育。

C.裁判所の命令なしには不妊手術を行わない。

D.倫理委のメンバー

 子ども病院はWPASから推薦を受け、倫理委のメンバーに発達障害のある人のアドボケートが出来る人を任命する。また、発達障害のある人に関するケースでは、倫理委は内部外部の専門家に相談する。WPASがその他の領域の専門家を倫理委に含めるべきだと勧める場合には、子ども病院は注意深く検討し、WPASと相談する。

Ⅵ 結論

 裁判所の許可なしにアシュリーに行われた不妊手術は、明らかに憲法とワシントン州法への違反。裁判所の命令が求められなかったために、結果として不妊治療や「アシュリー療法」全体の合法性が検証される機会もなかったことになる。

 これまでの判例に見られるように、親や代理人、医師の利益が不妊を求められる子ども自身の利益と同じであるとは限らない。だからこそ法律に定められたしかるべき手順を踏むことが重要。アシュリーのケースで裁判所が命令を出していたかどうかは不明。今後の同様なケースで裁判所の判断がどうなるかも分からない。引き続き社会として発達障害のある人をどのように尊重していくのかの対話が必要。アシュリーと家族の直面している問題は全国に見られる。介護や支援サービスの不十分の問題は確かにある。それでもなおかつ、障害のある人やアドボケートは自立生活運動を推進し、地域と施設での介護状況の改善に協力して努力をしてきたことも事実。
 アシュリーのケースで巻き起こったメディア報道と論争を好機として、論争のあらゆる立場の人が加わって、ソーシャルサービス提供システム改善策を模索すればよい。WPASはこの問題をアシュリーと子ども病院だけの問題とせず、広く啓発活動を行う。(Executive Summaryに「次のステップ」あり。)
2007.06.03 / Top↑
WPASの調査報告書の概要を以下に。ただし、個々の訳語はあまり吟味したものではありません。あくまでご参考までに。



「アシュリー療法」に関する調査報告書 

2007年5月8日
Washington Protection & Advocacy System
(2007年6月1日より Disability Rights Washington に改名)

WPASとは
 The Developmental Disabilities Assistance and Bill of Rights (DD) Act(発達障害支援および権利章典法)、the Protection and Advocacy for Individuals with Mental Illnesses Act(精神障害者のための保護及び権利擁護法), the Protection and Advocacy for Individual Rights Act, the Revised Code of Washingtonなどに基づき、ワシントン州において障害者の保護と権利擁護サービスを提供する民間NPO。設置は連邦政府により各州、テリトリーに義務付けられており、全国で57のP&Aシステムがある。活動資金の大半は連邦政府が提供。発達障害のある人への虐待とネグレクトが疑われる場合に、調査を行う法的権限が与えられている。

Ⅰ イントロダクション

 2006年秋の論文発表から今年始めの両親のブログ立ち上げに続く論争の中で、一連の医療介入が合法的に行われたかという視点での議論は実質的に皆無だった。多くの苦情も寄せられた。報道内容を検討し、DD法に規定された虐待に当たる可能性があると判断し、調査に踏み切った。ただし、「アシュリー療法」を巡る倫理問題と法律問題は多岐にわたるが、この調査と報告書ではアシュリーの権利が侵害されたかどうか、DD法に規定された虐待とネグレクトをアシュリーが受けたかどうかという点のみを対象とするものである。

Ⅱ 調査の方法

 調査の開始は2007年1月6日。目的は、アシュリーがこうした療法によって虐待またはネグレクトを受けたかどうか、また法的権利を侵害されたかどうか、を判断すること。調査方法はA.文書を請求し審査、B.証人の面接、法的調査、C.医療の専門家への相談。

A. の文書の中には、今後の子どもに対する成長抑制や不妊手術の要望を検討するための委員会の運営方針、現在の倫理委員会のミッション・ステートメント、子ども病院のIC方針、未成年の不妊手術に関する方針(案)、「アシュリー療法」を検討した倫理委員会の記録などが含まれる。
また、子ども病院はWPASとの間で、今後の発達障害のある子どもの権利擁護に向けて改善と組織的改革を行うとの合意文書に署名。
当該外科手術は子ども病院で行われたものの、関与した医師はワシントン大学の職員であるため、同大のインフォームドコンセント方針を請求した。

B.面接したのは内分泌医(2月12日)と外科医(2月14日)。

C. 医療に関する相談役としては、発達障害に詳しい小児科医であり精神科医である、ソルトレイクシティのユタ大学神経精神科クリニックのScott Stiefel M.D.

Ⅲ 事実

A.両親がアシュリーを子どもの状態に留めることを望んだ。

ブログの中で子宮摘出は不妊手術を目的とするものではないと書いているが、利点の一つとして妊娠の可能性を避けることも挙げている。
民間の病院であるシアトル子ども病院において、ワシントン大学の職員である医師が外科手術を行った。

B.両親は「アシュリー療法」に関して子ども病院の倫理委に意見と勧告を求めた。

 子ども病院の倫理委員会は他職種構成で、医療倫理の訓練を受けた専門職と地域の人たち、それに子ども病院の弁護士。倫理的な問題が起きる可能性のある処置に関して臨床家と家族にガイダンスを求められた場合に強制力のない勧告を行う。
 2004年の倫理委では両親が一連の介入を求める論拠を提示し、担当医らが両親の求める外科的介入と薬剤による介入について説明sh地あ。倫理委は提案された介入について「アシュリー本人への長期的利益がリスクを上回るとのコンセンサス」にいたり、医療として倫理的と結論付けたが、不妊手術部分に関しては病院には決定する権限がないので、合法性については”court review”を求めるべく弁護士を雇うように両親に告げた。

C.子宮摘出を含め、療法に対する裁判所の命令は請求されず、許可も得ていない。

 アシュリーの両親が相談した弁護士Larry Jonesは娘に障害があり、発達障害のある子どもの親のアドボケイトとして仕事をしてきた人物。ワシントン州では知的障害のある子どもの不妊手術には裁判所の命令が必要としながら、アシュリーの場合は不妊手術が目的ではないので適用外との判断を示した。
 外科医は弁護士から父親宛の手紙のコピーと、倫理委員会の勧告文書の両方を受け取っている。彼は手術前に医療部長のところに相談に行ったとのこと。この弁護士の判断を持って倫理委の勧告した”court review”がクリアされたものとして、医療部長が最終的に手術の実施を承認したとのこと。

D.保険と請求

 両親はブログで、成長抑制、子宮摘出、乳房芽の切除の経費全額が保険でまかなわれたと書いている。「アシュリー療法」の推計を約3万ドルとも書いている。子ども病院は民間の保険会社が病院で行われた外科手術の支払ったことを認め、調整前で26、389ドルの請求書を提出。ただし、この中に外科医、麻酔医、内分泌医、各種評価、フォローアップ、ホルモン療法の経費は含まれていない。

E.懲罰と改善措置

 裁判所の命令なしに手術が行われたことに対して、誰かに何らかの懲罰処分があったかどうかを病院側に問い合わせたが、病院は組織的な過誤であり、今後への改善を行うとの見解。
2007.06.03 / Top↑