おそらく、
Internet ExploreやOutlookの開発者の頭が悪いはずはないのでしょうが、
Internet ExploreやOutlookの開発者の頭が悪いはずはないのでしょうが、
でも、だからといって、
彼の言うことや、トランスヒューマニストたちの描く「ひたすらハッピーなことだらけの近未来」を
「そんなのSFじゃん」と一笑に付して終わるわけにいかないのは、
彼の言うことや、トランスヒューマニストたちの描く「ひたすらハッピーなことだらけの近未来」を
「そんなのSFじゃん」と一笑に付して終わるわけにいかないのは、
例えば、
Naamの著書の スマートドラッグ云々の下りには、
アンフェタミンと違って、覚醒後のリバウンドがないモダフィニルに注目した米軍が、
「連続補助能力(Continuous Assisted Performance)プログラム」の一環として
パイロットをはじめ兵士への使用を実験している、
という話が出てくるのですが、
アンフェタミンと違って、覚醒後のリバウンドがないモダフィニルに注目した米軍が、
「連続補助能力(Continuous Assisted Performance)プログラム」の一環として
パイロットをはじめ兵士への使用を実験している、
という話が出てくるのですが、
(このプログラムの名前の訳だと「何度も補助する能力」みたいですが、
実は「薬の力を借りてパフォーマンスを持続させるプログラム」の意です。)
実は「薬の力を借りてパフォーマンスを持続させるプログラム」の意です。)
そこのところの訳注には以下のように書かれています。
米国防総省国防高等研究計画局「DARPA」のプロジェクト。
長時間の集中を要求される爆撃機パイロットは、
出撃時には覚醒剤、休息時には睡眠薬という服用サイクルでミッションをこなすという。
しかしこれらの薬剤には副作用があり、
また数日間連続する戦闘に用いるわけにはいかない。
そこでDARPAは最新科学の成果を取り入れて、
1週間24時間ぶっ通しで兵士に任務を遂行させられる手段を開発しようと試みている。
また、5日間食料なしで戦える方法なども研究している。
(P.62)
長時間の集中を要求される爆撃機パイロットは、
出撃時には覚醒剤、休息時には睡眠薬という服用サイクルでミッションをこなすという。
しかしこれらの薬剤には副作用があり、
また数日間連続する戦闘に用いるわけにはいかない。
そこでDARPAは最新科学の成果を取り入れて、
1週間24時間ぶっ通しで兵士に任務を遂行させられる手段を開発しようと試みている。
また、5日間食料なしで戦える方法なども研究している。
(P.62)
(こういうのって、兵士の人権問題にはならないのでしょうか……?)
その他にも、やはりDARPAが、
脳とコンピュータをインターフェースでつなげて、
マヒ患者にロボットアームをコントロールさせる実験に
2400万ドルを提供したり、
脳とコンピュータをインターフェースでつなげて、
マヒ患者にロボットアームをコントロールさせる実験に
2400万ドルを提供したり、
サルの脳に電極を埋め込んでロボットアームを制御させる実験にも
(こちらは好調で、人間への応用実験が既に始まりそうだとか)
資金提供しているのは、
(こちらは好調で、人間への応用実験が既に始まりそうだとか)
資金提供しているのは、
それが兵士の戦闘能力向上に利用できるとの目論見があるからだ、とも。
いかにトランスヒューマニストたちの言っていることが
他愛無いユートピアやSFのように思えたとしても、
他愛無いユートピアやSFのように思えたとしても、
アメリカ政府が本気で彼らと同じ方向を向いているのだから、
障害者へのテクノロジー応用実験はこれからも進められていくのでしょう。
障害者へのテクノロジー応用実験はこれからも進められていくのでしょう。
2007.11.19 / Top↑
世界トランスヒューマニスト協会のサイトの感触では、
Naamは彼らのサークル内で、小粒だけど“若手ホープ”という感じの人。
Naamは彼らのサークル内で、小粒だけど“若手ホープ”という感じの人。
そのためか表現も稚拙で、底の浅さが剥き出しという観は否めないのですが、
もともとトランスヒューマニストたちが言っていることというのは
ディテールや使っている言葉が違っているとしても
いかにもサイエンスなデータや大層な言葉を駆使して
読者をいかに幻惑するかという技術の巧拙に過ぎず、
内容的には、なんと没個性なのかと驚くほどに、
誰も彼も同じ近未来を描いているのです。
ディテールや使っている言葉が違っているとしても
いかにもサイエンスなデータや大層な言葉を駆使して
読者をいかに幻惑するかという技術の巧拙に過ぎず、
内容的には、なんと没個性なのかと驚くほどに、
誰も彼も同じ近未来を描いているのです。
それを念頭に、大物の諸先輩方と同じく、
新興テクノロジーが進めば、障害者も障害を克服することができるのだと説く、
この“若手ホープ”の障害観の1例を挙げると、
新興テクノロジーが進めば、障害者も障害を克服することができるのだと説く、
この“若手ホープ”の障害観の1例を挙げると、
……「頭のよくなる薬」「頭のよくなる遺伝子」だけでも、現在、精神障害と闘っている何千万という人々が救われることになるのだ。
「超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会」 (P.67)
「超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会」 (P.67)
頭が良くなりさえすれば精神障害は改善される……って、
精神障害というのは「頭が悪い」ことでした?
精神障害というのは「頭が悪い」ことでした?
いまどき、こんな無知・蒙昧・認識不足がまだ残っているのかと唖然としますが、
つまるところ、「頭がいい」ことが至上価値である彼らにとって、
知的障害や精神障害は、きわめて単純に「その対極」とイメージされているだけ、
ということなのですね。
知的障害や精神障害は、きわめて単純に「その対極」とイメージされているだけ、
ということなのですね。
実際の障害については何の知識も持たないままでね。
―――――
ところで、彼がここで言っているスマートドラッグ、「頭のよくなる薬」とは、
アンフェタミンや、日本で今いろいろ問題になっているリタリン、プロザックなど。
アンフェタミンや、日本で今いろいろ問題になっているリタリン、プロザックなど。
それらの使用によって、
(もっと理想的には今後開発される新薬や、いずれ可能になる遺伝子操作によって、)
「感情や性格を自分で形作れる世界」(P.72)が来るのであり、
(もっと理想的には今後開発される新薬や、いずれ可能になる遺伝子操作によって、)
「感情や性格を自分で形作れる世界」(P.72)が来るのであり、
そういう時代においては自分がどういう人間であるかについて
自分で「しっかりと責任を持てるようになる」のだから、
「基本的には望ましい変貌である」(同)のだとか。
自分で「しっかりと責任を持てるようになる」のだから、
「基本的には望ましい変貌である」(同)のだとか。
この文脈に平行して、
アルツハイマー病や精神障害者の介護や治療、生産性の損失などが
いろいろ算出されており、
アルツハイマー病や精神障害者の介護や治療、生産性の損失などが
いろいろ算出されており、
さらに知能の向上が社会の生産性に直結しているエビデンスのつもりのデータも
いろいろ挙げられて、
いろいろ挙げられて、
また別のところでは、
カリフォルニア大学サンフランシスコ校とワシントン大学の研究者チームが
全ての妊婦が出生前診断を受けるのが望ましいと主張した(2004)ことに触れて、
カリフォルニア大学サンフランシスコ校とワシントン大学の研究者チームが
全ての妊婦が出生前診断を受けるのが望ましいと主張した(2004)ことに触れて、
その論文の主張の根拠とされた、
診断なしに生まれる障害児にかかる費用と、
全妊婦の診断にかかる費用との差し引き計算も
取り上げられている(P.155)ことなどを考え合わせると、
診断なしに生まれる障害児にかかる費用と、
全妊婦の診断にかかる費用との差し引き計算も
取り上げられている(P.155)ことなどを考え合わせると、
自分がどんな人間であるかが自己責任になった、
彼が「基本的には望ましい」と考える未来社会では、
彼が「基本的には望ましい」と考える未来社会では、
自分が社会の生産性に寄与できない人間であることを放置している人、
または、そうした人間を産もうとする人は、
または、そうした人間を産もうとする人は、
もしかして、粛清でもされるんでしょうか。
……なるほど“衝撃の”近未来社会。
2007.11.19 / Top↑
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