2ntブログ
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Ashley事件の真相については、
前のエントリーで書いたように、
資料の詳細な検証から一定の仮説に至ったわけですが、

その後、当ブログがトランスヒューマニズムにこだわっている背景には、
以下のような、いくつかの疑問があります。

なぜ(どこで?)Ashleyの父親はこんなアイディアを思いついたのか。

子宮摘出だけなら、確かにこれまでも聞いたことがないわけでもない話ですが、
医師ですら聞いたことがないという乳房芽の切除
ホルモン大量投与による成長抑制と一緒にして、
一度に3点セットでやってしまおうなどというアイディアは相当に奇抜で、

いかに頭脳明晰なAshleyの父親にしても、
これほど複雑なアイディアが、ある日突然に天啓のようにひらめいたはずはなく、
どこかに“アイディアの種”があったはずだと思うのです。

その種が父親の頭の中で後日芽を出し、
ITならお手の物である彼の熱心なリサーチを経て
“アシュリー療法”という具体案に結実した──。

その種を、彼は一体どこで拾ったのだろうか……という疑問。

それから、

本当に本人のQOLが目的だったのかどうか……という疑問。

Microsoftの役員である以上、
一部メディアが書いていたように「中流階級」などではなく
Ashley専属の看護師でも介護者でもセラピストでも好きなだけ雇って
QOLくらい簡単に維持できるお金持ちのはずだから

本当に、親のブログに書いてあるように
本人のQOLが目的でやったことなのかどうか……?
(詳しくは、「とても単純な疑問」の書庫を。)

もう1つ、

なぜこの事件の擁護に登場する人たちには
一風変わった、しかし同じような匂いが漂っているのか……という疑問。
(詳しくは、「擁護に登場した奇怪な人々」の書庫を。)

(この点については、中断したままになっている
シアトル子ども病院生命倫理カンファレンスの後半を聞いてから、
改めてまとめるつもりです。)

【追記】
その後、”A療法”擁護者の2つの系譜というエントリーにまとめました。



④それから、この事件の今日性というものが非常に気になること。
(詳しくは、「アシュリーの父親化する世界」の書庫を。)


……といった関心から、今年の年明けの論争からこちら、
気が向くままにあちこちの情報をつまみ食いしてきたわけですが、

トランスヒューマニズムがどういうものかという輪郭くらいは見えてくると同時に、
新興技術の発展が社会に様々なひずみをもたらしつつあることや
弱い者を押しのけ、踏みつけてでも、
強い者の論理がゴリ押しで通ろうとしている気配
を感じるにつけ、

今、Ashleyの問題に興味を持っている、
それゆえに、まだ結論が出ていない英国のKatieの問題にも注目している多くの人に、
ぜひ考えてみて欲しいと思うのは、

AshleyのケースとKatieのケースは
一見すると全く同じもののように思えるけれど、
実はまったく異質なものではないか、ということ。

どういう点で異質なのかについては、
今後、様々な角度から複数のエントリーで説明を試みようと考えていますが、

ここでとりあえず大雑把なくくり方をしてみると、

多くのトランスヒューマニストや
リベラルな(または過激な)生命倫理感覚を持った人たちと同じく、

Ashleyの父親は「強いもの」の側にいる人物であり、
“アシュリー療法”のアイディアも
最もきっぱりと白黒つけてモノが言える強者」の論理から生まれたものと思われること。

それに対して、Katieの母親のAlisonは、
彼らに切り捨てられようとしている弱者の側にいる人だということ。

娘の子宮を摘出したいと、子に対しては親の権力を行使しつつ、
世間に対しては弱者の側に立って声を上げているのだということ。
弱い立場から声を上げるからこそ、金切り声になるのだということ。

あのブログでのAshley父の
冷静この上ない論理的な文章とは違って。


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この回、できればAshley父とKatie母の決定的な違いのエントリーと一緒に読んでいただければ。
2007.11.30 / Top↑