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今朝書いたエントリー遺伝子診断、無用のストレスが身体に悪いだけ
髣髴とさせるような記事が出てきました。

Googleの創設者の1人で現在も技術部門の社長を務める Sergey Brin氏が
自分の遺伝子を調べてもらったところ、
パーキンソン病になりやすい遺伝子の変異が見つかった、と
自らのブログで告白。

同じ遺伝子変異のあるBrin氏の母親は現在パーキンソン病にかかっている。

生涯のうちにパーキンソン病にかかる確率は20~80%だと氏自身は書いているが、
専門家の話では「この変異があっても発病しない人もいる」とのこと。

発病する人の多くは50代、60代での発病。
氏自身は現在35歳。

運動がパーキンソン病の予防に良いといわれているなど
これから病気についての情報を収集し、
今後の生活を通じて予防の努力をする、とのこと。

また米国で13番目のお金持ちだと言われるBrin氏は
今後パーキンソン病の研究に資金を提供していく、とも。


20%~80%の確率。
発病しない可能性だって、ある。

それでも35歳にして知ってしまったら、
ものすごい時間とエネルギーを費やしてパーキンソン病について
ありとあらゆることを調べ尽くそうとするだろうし、

他に何か予防のために出来ることはないか、
常に気にかかって強迫観念のようになりそうな気がする。

それは、まだ病気になってもいないのに、
自分の健康なはずの日常を病気に早くも蝕まれてしまうようなものじゃないだろうか。

そして、日々が恐怖との戦いになるのでは?

Brin氏の発言内容そのものが
人は知ったら対策を立てずにいられない、
したがって苦しまずにいられないことを物語っている。

もしも同じ変異があっても知らないままに50歳で発病するとしたら、
少なくとも、まだ15年間はこれまでどおりに安穏と暮らせただろうに。

この人はこれから、何でもない体のだるさや、ちょっとしたぴくつきなどにも
いちいち「ついに来たか」とビクビクして暮らすことになるんじゃないだろうか。

知ってもどうにもならないことなら、
知らないでいた方がいいことも人生には結構あるような気がする。
2008.09.19 / Top↑
またか……という気のするニュースですが、

販売戦略によって超ヒット商品になっている Zyprexa と Risperdal。
実はそれまでの、はるかに安い薬と効果が変わらないばかりか独自の副作用があることが
成人だけでなく、このたび子どもでの実験でも確認されたとのこと。

それで、NY Times の社説が

それまでの安価な薬との比較検証が行われるより前に
製薬会社の激しい売り込みによって広く使われるようになる。
大人にこれだけ使われるのだから信頼性があるとばかりに医師が子どもにも処方する。

パワフルな販促キャンペーンで爆発的に売れるようになる前に、
最初の段階で新薬とそれまでの薬とを比較検証すべき。

Two More Blockbusters Fall Short
The New York Times, September 18, 2008


2005年に米国精神衛生研究所(NIMH)が行った大規模な研究で
新しく開発された抗精神病薬の効果はそれまでのはるかに安い薬と変わらない
という結果が出ていましたが、それは成人の話。

このたび、同じNIMHによる小規模な研究は8歳から19歳を対象にしたもので
結果は同じで効果は安い他の薬と変わらない。

ただしZyprexa(Eli Lilly) と Risperdal (Janssen)にはそれまでの商品になかった
肥満が起きる、コレステロールとインシュリン値に影響するなどの副作用がある。

It is another disturbing example of how aggressive marketing can propel drugs to blockbuster sales even though they are no more effective, and possibly more risky, than older versions.

どこにも「製薬会社が」とも「政府が」とも実は書いていないのですが、
でもこの社説が疑問視しているのは「とにかく売らんかな」の製薬会社の姿勢であり、
儲けるべき人たちが然るべく儲けた後になって研究が行われるという辺りに見え隠れする
(社説には一言もそんなことは出てこないけど)
官との癒着の構図なのではないでしょうか。

読んでいたら、全く無関係な事件ではあるのだけれど、
日本で問題になっている事故米の転売問題と重なってしまった。
2008.09.19 / Top↑
NBICレポート第一章の8つの論文のうち、
NSF(米国科学財団)のMihail C. Roco 氏の講演の中で目に付いた
興味深い箇所について。

RocoはNSFの中でも米国科学技術会議のナノ関連サブ委員会の委員長、
財団と商務省が主催した2001年のNBICワークショップの中心人物でもあります。

NBICテクノロジーの統合によって
人類のパフォーマンスが劇的に強化・改善され、
現在は不可能な夢のようなことが可能となるのだという、
このワークショップが夢を描く未来に対して、

逆にそうしたテクノロジーのリスクを指摘する声もあるとして、
Roco氏が挙げているのがBill JoyというITの企業家。

Bill Joy はワークショップの前年の2000年に
Why the future doesn’t need us. という論文を発表し、
それだけ強力なテクノロジーには、またそれだけ大きな事故と濫用のリスクがある、
特にKurtzweilが提唱しているような、
人間をコンピューターと繋いで意思を持ち思考するロボットを作る技術のリスクは原爆をはるかに超える、
人間がそうしたロボットをコントロールし続けられる保証などない、
と警告しました。

Rocoはナノ科学と工学のポテンシャルについて語った講演の後半で
こうしたテクノロジーに伴うリスクについても
「長期的な利益と落とし穴の可能性を総合的に評価しなければならない」と述べ、
次いで「ナノ科学と工学は新たな生命体を生み、その生命体が人類を滅ぼす」との
Bill Joyの説を紹介しています。

ところが「リスクも検討しなければ」と自分で言った先から
Rocoは即座に「しかし、我々が思うに……」とJoyの指摘を却下するのです。

その理由がふるっていて、
Joyの描くシナリオのいくつかは単なる推測であり、
立証されていない仮説に過ぎない、というもの。

いや、しかし、それをいうなら、
あなた方の描く「身体も頭も思い通りになるバラ色の未来」こそ、
単なる推測と立証されていない仮説と、
見たいものだけを見て見たくないものに目をつぶることによって
成り立っているシナリオなのでは──?


          ―――――――

もう1つ、ついでに、
トランスヒューマニズムの元祖のような人物
Oxford大学のNick Bostrumが2001年に
Existential Risks(実存的リスク?)という論文(2002年に改定)で
これら新興テクノロジーに伴う人類滅亡リスクのシナリオを
Bill Joyよりもはるかに詳細に分析しています。

このNBICワークショップと同じ年ですが、
RocoがBill Joyにしか触れていないことを考えると
Bostrumの論文の方が後だったのかもしれません。

この論文はAshley事件を追いかけ始めた頃に見つけたのですが、
当時はこの論文の持つ意味がよく分かりませんでした。
その後、トランスヒューマニストらの考えについて少し分かってくるにつれて、
一度まともに読みたいと思いながら、まだ手がついていません。

最初の辺りにざっと目を通した感じでは、
地球温暖化や経済システムの破綻、人心の荒廃など、
現在すでに起こっている現象が想定されていたようでもあり
それだけにリアリティのあるシナリオが並んでいるのが不気味です。
2008.09.19 / Top↑
あなたが糖尿病、心臓病、癌にかかる可能性を遺伝子診断で調べてあげましょう…
…というビジネスが欧米で繁盛していますが、

Leicester大学のAmani教授がこうした検査の臨床上の有用性に
疑問を投げかけています。


確かに、こうしたよくある病気の遺伝子上のマーカーは
ある程度解明されてはきたけれども、
だからといって、そのマーカーがあるから必ずその病気を発症するというものでもないし、
発症するとしてもいつのことになるのか、
また生活習慣によってその可能性が防げるものかどうか
わからないことも多い。

むしろ可能性があると告げられて無用なストレスを抱え込んだり、
可能性は低いと言われて検診を受けなくなるなど、
現時点では弊害の方が多い。

特に現在のようにインターネットで無責任な診断が横行したり、
充分な医師のカウンセリングもなしに結果を知らされたり……
というビジネスには問題がある。

一方、同教授は
個々の発症のリスクを云々することにはメリットは少ないが、
ゲノム読解のテクノロジーは予防医学の対象となるグループを割り出すのには役に立つ、と。
(例えば心臓病予防でスタチンを飲んだほうがよい人たちを特定するなど)
2008.09.19 / Top↑