2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
現在、最初の Executive Summary とOverview を読んだところで
その中から印象的な部分を拾ってみると、

まずNBICの4分野がどのように統合・協働できるかというイメージは

認知(Cogno)の科学者が考えたことを
ナノ(Nano)の専門家が作り、
生物学(Bio)の専門家がそれを実行に移して
IT(Info)の専門家がモニターしコントロールする。

私はこれを読んだ時に、
現在では、モニターどころか、
このどの段階であれIT技術を抜きには何も出来ないという事実を考ると、
ゲイツ財団の慈善資本主義と、その独善的な価値観、強引な介入姿勢を思い、
改めて「コントロールする」という言葉に背筋が冷える思いがしました。

(ゲイツ財団云々についての詳細は「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫に)


レポートの50を超える論文によって描かれているのは
上記のようにNBICのテクノロジーを統合して
人類の能力を強化していこうとする壮大な構想なわけで、

その「主要テーマ」として挙げられているのは

・技術統合の全体的な可能性
・人間の認知とコミュニケーションの拡大
・人間の健康と肉体的能力の改善
・集団と社会のアウトカムの強化
・国家安全保障
・科学と教育の統合

20年後には現在のハイテクの領域を超えて、
NBIC技術の統合が非常に大きなインパクトを与えると予想されているのは具体的には

・労働効率
・人間のライフサイクルにおける肉体と精神
・コミュニケーションと教育
・精神保健医療
・航空学・宇宙飛行
・食物と農業
・維持可能でインテリジェントな環境
・自己表象とファッション
・文明の変容

これら一つ一つは漠然と抽象的な領域名のように思われますが、
それぞれの領域で具体的にどういうことを起こそうとしているのかを考えながら読むと、暗澹とする。

例えば「労働効率」という項目に書かれていることは
NBICの統合によって更なるコスト・パフォーマンスの向上を追及できる可能性であり、
アメリカ企業が国際的に生き残っていくためにそれは光明なのだというトーンが
そこに如何に明るく漂っているとしても、

グローバリズムが今現在でも引き起こしている深刻な格差と
人間を使い捨ての労働消費材としか見なさない企業の姿勢の蔓延を考えると
NBICの統合によって更なるコストパフォーマンスを追及すれば
それらの問題は解決されるよりもむしろ悪化するだろうとしか思えない。
2008.09.12 / Top↑
7月1日のエントリー「UW周辺の動きと米政府のNBICレポート」その他で触れたものですが、

米国科学財団と商務省が2002年にまとめた
「人類の能力強化に向けたテクノロジーの統合」という400ページ近いレポートがあります。

2001年12月3,4日の両日、
米国科学財団と商務省とがワークショップを行い、産官学の専門家を集めて、
ナノ、バイオ、インフォ、コグノの4領域(NBIC)のテクノロジーを統合して、
人類のパフォーマンスを向上させる未来を模索しました。

その成果をまとめて翌年6月に発表されたのが、この大部のレポートです。

CONVERGING TECHNOLOGIES FOR IMPROVING HUMAN PERFORMANCE
The National Science Foundation
The Department of Commerce
June 2002

レポートそのものは、もうかなり古いものとなって
それぞれの分野の研究も既にもっと進んでいるものと思われますが、
米国政府が2001年の段階で既にトランスヒューマニストらと同じ夢を見ていたことを物語る
貴重な資料だと私は考えているので
全部を読み通すことは無理にしても、
興味のある部分のつまみ食いくらいはしてみたいと
ずっと考えていました。

上記エントリーで夏休みに入ったら読むという目標を立ててしまったので、
少しずつ読んでいこうかと「NBICレポート」という書庫を作ってみました。


2008.09.12 / Top↑