米国ミネソタ州WasecaのBert Holbrookさんは先週末に80歳の誕生日を祝った。
2005年にはダウン症の人の寿命は55歳だといわれるところまで延びたが、
Bertさんが生まれた当時、ダウン症の人の平均寿命は9歳だといわれ、
受けられる医療もほとんどなく施設に入れられるのが当たり前の時代だった。
Bertさんが生まれた当時、ダウン症の人の平均寿命は9歳だといわれ、
受けられる医療もほとんどなく施設に入れられるのが当たり前の時代だった。
しかしダウン症と診断されたBertさんは家で両親に育てられ、
家業の食品店を手伝いながら「みんなと付き合って」大きくなった。
家業の食品店を手伝いながら「みんなと付き合って」大きくなった。
Bertさんは町の人みんなを知っていて、町中どこでも不自由なく往来していた。
町の人はみんなBertさんのことをジュニアと呼び習わしていて、
今でも見かけると「よぉ、ジュニア、どうだい?」と声をかける。
町の人はみんなBertさんのことをジュニアと呼び習わしていて、
今でも見かけると「よぉ、ジュニア、どうだい?」と声をかける。
年齢と共に認知症が出て耳も聞こえなくなり、最近では車椅子が常時必要となったが、
中間的(ナーシングとアシスティッドの?)介護施設で7人の入所者と一緒に暮らしている。
中間的(ナーシングとアシスティッドの?)介護施設で7人の入所者と一緒に暮らしている。
施設で親しくなった女性がいて、
2人は一緒にアヒルに餌をやったり買い物に行ったり。
2人は一緒にアヒルに餌をやったり買い物に行ったり。
84年に母親が亡くなった後は姉(妹?)がインディアナに住んでいるだけで
身近な家族はいない。
身近な家族はいない。
去年の12月に
それまでダウン症の最長寿のギネス記録を持っていた男性が68歳で亡くなったことを知った
ホームの看護師がBertさんの方が長寿なのではないかと考え、
ギネスに記録申請をした。
それまでダウン症の最長寿のギネス記録を持っていた男性が68歳で亡くなったことを知った
ホームの看護師がBertさんの方が長寿なのではないかと考え、
ギネスに記録申請をした。
ギネスからコンタクトがあり、詳細な書類を提出して
現在結果を待っているところ。
現在結果を待っているところ。
もう18年間もBertさんに関ってきた、その看護師は
「ギネス記録だとなったら、みんなが大騒ぎになって、
ジュニアは人が大好きだから、そういうの、きっと喜ぶと思うんですよ」と。
「ギネス記録だとなったら、みんなが大騒ぎになって、
ジュニアは人が大好きだから、そういうの、きっと喜ぶと思うんですよ」と。
記事には書かれていない苦労もきっと沢山あったのだろうとは思うのだけれど、
この人の穏やかで柔らかな顔の表情を見ていると、
家族に愛され、小さな町の温かい人々に囲まれて
それなりに幸福な80年を生きてきた人なのだなぁ……ということが感じられるようで。
家族に愛され、小さな町の温かい人々に囲まれて
それなりに幸福な80年を生きてきた人なのだなぁ……ということが感じられるようで。
米国でおなかの子どもにダウン症があると分かったら、
その子の人生はゼッタイに不幸なものになる、
生きるに値しない命なのだと決め付けて
中絶を選んでいる9割もの人に
その子の人生はゼッタイに不幸なものになる、
生きるに値しない命なのだと決め付けて
中絶を選んでいる9割もの人に
こんなに柔らかな表情で80歳を迎えたダウン症の人もあるのだと、
Bertさんの存在を知ってもらえたら、と思う。
Bertさんの存在を知ってもらえたら、と思う。
そのためにも、Bertさんにギネスの認定が下りますように。
──なんだかね、
親が逝ったあとも幸福に生きていく我が子の姿を
見せてくれる水晶玉がどこかにないものか……と、時に夢想してたりするもんだから。
見せてくれる水晶玉がどこかにないものか……と、時に夢想してたりするもんだから。
2008.09.03 / Top↑
前のエントリーチンパンジーに法的権利認めるを書いた時に覗いてみたサイト
大型類人猿に法的権利を認めようと活動する世界規模の組織のようで、
6月にスペイン議会がチンパンジーの法的権利を認めた決議については、
「スペイン政府が我々GAPの趣旨に支持を表明した」と勝利を謳い、
スペインのGAP仲間の活動を称えています。
6月にスペイン議会がチンパンジーの法的権利を認めた決議については、
「スペイン政府が我々GAPの趣旨に支持を表明した」と勝利を謳い、
スペインのGAP仲間の活動を称えています。
GAPの活動目的は「大型類人猿に関する宣言」に明示されており、
大型類人猿に関する宣言
平等なものたちのコミュニティを拡大し、
全ての大型類人猿(人、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータン)を
そこに含めるよう要求する。
平等なものたちのコミュニティとは、
我々が一定の基本的道徳上の原理または権利を
相互の関係を統御し法的な実行力あるものとして享受する
道徳的なコミュニティである。
平等なものたちのコミュニティを拡大し、
全ての大型類人猿(人、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータン)を
そこに含めるよう要求する。
平等なものたちのコミュニティとは、
我々が一定の基本的道徳上の原理または権利を
相互の関係を統御し法的な実行力あるものとして享受する
道徳的なコミュニティである。
それら原理と権利とは
1.生命を守られる権利
2.個人の自由を守られる権利
3.虐待の禁止
2.個人の自由を守られる権利
3.虐待の禁止
その根拠はHOMEに書かれているところによると、
98%まで人間と同じDNAを持ち、
感情があって道具を使う能力や言語まで習得できることなど。
98%まで人間と同じDNAを持ち、
感情があって道具を使う能力や言語まで習得できることなど。
動物愛護と捉えられないこともないのでしょうが、
私にはそれよりもトランスヒューマニスティックな匂いがしてしまう。
私にはそれよりもトランスヒューマニスティックな匂いがしてしまう。
そして、
この世界規模の団体の本拠地はというと……米国Washington州 Seattle。
この世界規模の団体の本拠地はというと……米国Washington州 Seattle。
2008.09.03 / Top↑
法的強制力を持つものではありませんが、
サルに動物園での飼育は認めるものの
サーカスやその他の芸をやらせてはならないという決議が
スペインの議会で行われた、とのこと。
サルに動物園での飼育は認めるものの
サーカスやその他の芸をやらせてはならないという決議が
スペインの議会で行われた、とのこと。
世界各地でチンパンジーを始めとする大型類人猿に法的権利を認めようとの
動きが起こっており、
動きが起こっており、
オーストリアでは去年、
動物愛護団体がチンパンジーをMatthew Hiasl Panと名づけ、
法的権理が認められる人格(person)であることの認定を求めて
裁判所に法的代理人申請を行った。
動物愛護団体がチンパンジーをMatthew Hiasl Panと名づけ、
法的権理が認められる人格(person)であることの認定を求めて
裁判所に法的代理人申請を行った。
飼育施設が経営難に陥ったことから
チンパンジーに財産権が認められれば
寄付を受けることが可能となりホームレスとなることを防げる、との狙い。
チンパンジーに財産権が認められれば
寄付を受けることが可能となりホームレスとなることを防げる、との狙い。
オーストリアの裁判所が却下したため、
活動家らは欧州人権法廷に訴え出て闘争を続行する予定。
活動家らは欧州人権法廷に訴え出て闘争を続行する予定。
What’s next in the Law? The Unalienable Rights of Chimps
By Adam Cohen
The New York Times (Editorial Observer), July 14, 2008
By Adam Cohen
The New York Times (Editorial Observer), July 14, 2008
この社説によると、
チンパンジーは人権が認められるべき人格であるとする活動家らの根拠は
チンパンジーのDNAの98%は人間と同じで、
類人猿は複雑なコミュニケーション技術をもち細やかな情で繋がっている、
寂しさや悲しさも経験するのだから、
一定の尊重に値する、というもの。
チンパンジーは人権が認められるべき人格であるとする活動家らの根拠は
チンパンジーのDNAの98%は人間と同じで、
類人猿は複雑なコミュニケーション技術をもち細やかな情で繋がっている、
寂しさや悲しさも経験するのだから、
一定の尊重に値する、というもの。
そして、
「不可逆的な植物状態に陥った人に権利があり、
法人格にすら言論の自由と平等な保護、訴えたり訴えられる権利が認められているのだから
チンパンジーを人格と呼ぶことはそれほどぶっ飛んだことでもあるまい」
「不可逆的な植物状態に陥った人に権利があり、
法人格にすら言論の自由と平等な保護、訴えたり訴えられる権利が認められているのだから
チンパンジーを人格と呼ぶことはそれほどぶっ飛んだことでもあるまい」
「類人猿に敬意を表することは
同時に人間の格を上げるのではないだろうか」
同時に人間の格を上げるのではないだろうか」
……というのが、この社説の主張のようですが、
障害のために言葉を失い、意思や感情を訴える術を失っただけかもしれない人には
人格を認めないばかりか「どうせ治らないのだから」といって
餓死させるようなことが行われている一方で、
そんなことを言われても……。
人格を認めないばかりか「どうせ治らないのだから」といって
餓死させるようなことが行われている一方で、
そんなことを言われても……。
オーストリアのケースに関する記事の一部を以下に。
――――――――
一定の知的能力で人格の有無に線引きをする「パーソン論」でもって
重い知的障害のある人に人権を認めず、
その逆に類人猿に人格を認めるのは
トランスヒューマニストらに共通の価値観。
重い知的障害のある人に人権を認めず、
その逆に類人猿に人格を認めるのは
トランスヒューマニストらに共通の価値観。
また彼らはsentience という言葉も多用しています。
感覚の有無で生命の種類に線引きを行い、
感覚のある生物をsentience と称しているのですが
分類の詳細についてはそれぞれのTHニストで違っていたりもするようです。
感覚の有無で生命の種類に線引きを行い、
感覚のある生物をsentience と称しているのですが
分類の詳細についてはそれぞれのTHニストで違っていたりもするようです。
Hughesの想像(提唱?)では
科学とテクノロジーによってサイボーグと化し、強化・進化した未来の人類社会では
民主的な社会を維持するため生命の種類によって市民権が4段階に分けられます。
科学とテクノロジーによってサイボーグと化し、強化・進化した未来の人類社会では
民主的な社会を維持するため生命の種類によって市民権が4段階に分けられます。
①“完全な市民権”を与えられるのは
「理性ある成熟した人格」という意識状態にある大人の人間と
認知能力がそれに匹敵するもの。
「理性ある成熟した人格」という意識状態にある大人の人間と
認知能力がそれに匹敵するもの。
②“障害市民権”が与えられるのは
「人格(自己意識)」がある意識状態が基準で、
人間の子どもと精神障害のある人間の大人、それから大型類人猿。
「人格(自己意識)」がある意識状態が基準で、
人間の子どもと精神障害のある人間の大人、それから大型類人猿。
③ “感覚のある財産”というステイタスになるのは
胎児、植物状態の人間、ほとんどの動物。
胎児、植物状態の人間、ほとんどの動物。
Hughesはこの意識状態をsentience(快と痛を感じる)と呼び、
苦痛を与えられない権利のみを付与します。③その他、権利を持たない“財産”と見なされるのが
胚、脳死の人間、植物、物品。
これらは Not sentient (感覚がない)。
胚、脳死の人間、植物、物品。
これらは Not sentient (感覚がない)。
つまり、
子どもと精神障害者は大型類人猿と同じ意識状態の範疇に入れられているわけですが
THニストは障害者を云々する割りに、その現実・実態に全く無知なので、
ここでいう「精神障害者」には「知的障害者」を含めている可能性があります。
子どもと精神障害者は大型類人猿と同じ意識状態の範疇に入れられているわけですが
THニストは障害者を云々する割りに、その現実・実態に全く無知なので、
ここでいう「精神障害者」には「知的障害者」を含めている可能性があります。
しかし、実際に彼が書いていることを読んでいくと、
ASLが植物状態と混同されていたりして、
上記の分類は、作った当人の頭の中ですら全く機能していません。
ASLが植物状態と混同されていたりして、
上記の分類は、作った当人の頭の中ですら全く機能していません。
詳細は以下のエントリーに
サイボーグ社会の「市民権」(2007年11月23日)
2008.09.03 / Top↑
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