これ、地味な記事だけど、昨今どんどんビッグ・ブラザー社会化している英国では、とても今日的に本質的で重要な問題を含んでいると思う。狂牛病がひそかに蔓延して、実は多くの人が知らず知らずにかかっている恐れがあるため、どれくらいの人が目立った症状がないまま感染しているかを調べる唯一の方法として、英国政府は法医学者らが解剖の際に調べてくれることを望んでいるのだけれど、解剖は死因の特定のために行うものであり、その際に研究への協力を遺族に求めることになると、本来の法医学者の立場の中立性が失われ、仕事への信頼を失う、と法医学者らは反発。その反発にエールを。でも、“科学とテクノで何でも予防、なんでも簡単解決万歳”の文化からは「法医学の中立性と信頼という利益と、狂牛病蔓延の実態が把握できないままに放置される害やリスクを検討すれば、法医学の中立性がなんぼのもんじゃい」的な反論が出てきたって、もう、たぶん驚かない。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8207034.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8207034.stm
去年英国のNHSが医療過誤訴訟の賠償金として支払った総額は8億ポンド以上。産科の医療過誤訴訟が最も高額であるものの、中には将来に備えて凍結保存した癌患者の精子が解けて使い物にならなくなって、精神的なダメージを受けた、との訴訟も数件。3年前は6億ポンドだったのに、この3年間で急増。:科学とテクノの時代の変化を受けて、医療過誤訴訟の内容も、そりゃぁ、変わっていくのでしょうし、科学とテクノで医療費を削減というシナリオには、これ以外にも思いがけない盲点は結構あるんじゃないのか、という気がするのですが?
http://www.guardian.co.uk/society/2009/aug/19/nhs-legal-costs-compensation
http://www.guardian.co.uk/society/2009/aug/19/nhs-legal-costs-compensation
2009.08.19 / Top↑
Medical Groups Promoted HPV Vaccine Using Funds Provided by Drugmaker
The Washington Post, August 19, 2009
The Washington Post, August 19, 2009
米国医師会雑誌JAMAに発表された分析によると、
The American College Health Association
The American Society for Colposcopy and Cervical Pathology
The Society of Gynecologic Oncologists
という、HPVワクチンを強力に推奨してきた3団体に対して、
The American Society for Colposcopy and Cervical Pathology
The Society of Gynecologic Oncologists
という、HPVワクチンを強力に推奨してきた3団体に対して、
それぞれ19万9000ドル、30万ドル、25万ドルが
HPVワクチン Gardasil の製造元である Merckから支払われ
HPVワクチン Gardasil の製造元である Merckから支払われ
3団体は、その資金によって、
それぞれの学会員にGardasilに関する情報提供を行ったことが明らかに。
それぞれの学会員にGardasilに関する情報提供を行ったことが明らかに。
また、それら3団体がHPVワクチンを推奨する際の戦略も
Merckが使っているマーケティング戦略そのものと同一で
副作用リスクを過小に、子宮がんリスクを過大に単純化している、とし、
Merckが使っているマーケティング戦略そのものと同一で
副作用リスクを過小に、子宮がんリスクを過大に単純化している、とし、
論文執筆者は
「何が起こっているかというと、
マーケッティングと医学教育を画する一線が曖昧になっているということでしょう」と。
「何が起こっているかというと、
マーケッティングと医学教育を画する一線が曖昧になっているということでしょう」と。
(ここで medical education とされているのは、文脈からすると
それぞれの学会が学会メンバーに対して情報を流すことを指しているように思われます)
それぞれの学会が学会メンバーに対して情報を流すことを指しているように思われます)
2006年にFDAがGardasilを承認してからの
Merckのあまりにも過激なGardasil売り込み戦略には批判が多く、
特に学齢期の女児への義務付けを狙っての売り込みは物議をかもして
Merck側もさすがに義務付けは諦めた経緯も。
Merckのあまりにも過激なGardasil売り込み戦略には批判が多く、
特に学齢期の女児への義務付けを狙っての売り込みは物議をかもして
Merck側もさすがに義務付けは諦めた経緯も。
Merckを批判してきた側にとっては
今回の論文の分析はMerckのGardasil売込みが不当である新たな証拠だと。
今回の論文の分析はMerckのGardasil売込みが不当である新たな証拠だと。
MerckによるGardasil治験に協力しつつもMerckの戦略に批判的な医師は
「この論文は、Merckが医療界のオピニオン・リーダーに働きかけて
不利な情報を出さずにGardasilを売り込むことができたことを明らかに示している」。
「この論文は、Merckが医療界のオピニオン・リーダーに働きかけて
不利な情報を出さずにGardasilを売り込むことができたことを明らかに示している」。
Merckの方では
金額はディスクローズされており、
助成金はMerckとは無関係にワクチンの情報提供に使われる目的のもので
その情報提供プログラムには関与していない、
したがって助成金の提供には問題はない、と主張。
金額はディスクローズされており、
助成金はMerckとは無関係にワクチンの情報提供に使われる目的のもので
その情報提供プログラムには関与していない、
したがって助成金の提供には問題はない、と主張。
【HPVワクチン関連エントリー】
ワクチン拒否問題でまたもDiekema医師コメント(2008/9/2)
「HPVワクチン」検索結果の怪(2008/9/2)
英国でHPVワクチン義務化、親の反発必至(2008/9/5)
ノーベル賞選考過程にHPVワクチン特許持つアストラゼネカ関与の疑惑(2008/12/18)
CA州で女児4人に1人がHPVワクチンを接種(2009/2/21)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
ワクチン拒否問題でまたもDiekema医師コメント(2008/9/2)
「HPVワクチン」検索結果の怪(2008/9/2)
英国でHPVワクチン義務化、親の反発必至(2008/9/5)
ノーベル賞選考過程にHPVワクチン特許持つアストラゼネカ関与の疑惑(2008/12/18)
CA州で女児4人に1人がHPVワクチンを接種(2009/2/21)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
2009.08.19 / Top↑
ずっと前から一度まとめておきたいと思っていたカナダの事件。
2005年に亡くなったトリソミー13の Annie Farlow ちゃんを巡って、
トロント子ども病院(Toronto’s Hospital for Sick Children)は
重症障害があるというだけで、独断で救命治療を手控えたのではないか、
もしくは過剰な麻酔薬投与で死なせたのではないか……との
疑惑が取りざたされている事件です。
トロント子ども病院(Toronto’s Hospital for Sick Children)は
重症障害があるというだけで、独断で救命治療を手控えたのではないか、
もしくは過剰な麻酔薬投与で死なせたのではないか……との
疑惑が取りざたされている事件です。
最終的に事実関係が確認されていないし、
どうやら、このまま究明されることもなさそうな展開なので、
病院サイドとAnnieちゃんの両親サイドの言い分は食い違ったまま、
母親のBarbaraさんが無益な治療論に対抗するアドボケイトに祭り上げられてしまった観もある
ちょっと、すっきりしないところのある事件なのですが、
どうやら、このまま究明されることもなさそうな展開なので、
病院サイドとAnnieちゃんの両親サイドの言い分は食い違ったまま、
母親のBarbaraさんが無益な治療論に対抗するアドボケイトに祭り上げられてしまった観もある
ちょっと、すっきりしないところのある事件なのですが、
諸々の情報から、Barbaraさんが主張する事実関係はだいたい以下。
両親は妊娠中におなかの子どもがトリソミー13であることを知らされ、
トロント子ども病院の遺伝カウンセラーに紹介された。
心臓に欠陥があって手術が必要になる、生まれてもすぐに死ぬ確率が高い、
助かったとしても長くは生きられないと、暗に中絶を勧められたが、
調べてみたら、生き延びて自分なりの生を生きている子どもたちもいることを知り、
そうした子どもたちを育てている親の話を聞いたりもして、生むことを決断した。
Annieちゃんは2005年5月25日に誕生。
生まれた時には心臓に問題はなく、
アプガー(正常を10とする新生児の健康度を測るスケール)は 8ないし9だった。
6週間で退院したが、生後80日目に呼吸困難を起こし、
近所のクリニックを経てトロント子ども病院へ搬送される。
その後、Annieちゃんが死亡するまでの24時間の非常に複雑な経緯の中で
特に問題となっているのは
・呼吸困難を起こしており、通常のプロトコルであれば
コードブルーとして集中治療室に連絡するところ、
呼吸セラピストだけを付き添わせて1時間も放置した。
(その間、医師らからは安楽死が何度かほのめかされた)
・医師らには呼吸困難の原因が肺炎ではないと分かっていたのに、
両親には肺炎だと告げ、本来の症状に必要な治療をしなかった。
・Annieの呼吸はセラピストがバッグで呼吸を手伝う状態にまでなったが、
血中酸素濃度センサーのアラームは切られており、鳴らなかった。
・酸素濃度の数値が急激に低下していることに母親が気づいて看護師を呼び
Annieはやっと集中治療室に運ばれたが、すると今度は
「肺炎ではなく手術が必要な状態。でも本人が手術には耐えられない」と説明が変わり、
動転していた両親は医師らの説得に応じて挿管を拒み、蘇生拒否(DNR)に署名した。
その後、まもなくAnnieちゃんは死亡。
苦しみ続ける我が子に寄り添いながら助けてやれなかった24時間が
両親にはトラウマになっている。
Annieちゃんの死後、不信感をぬぐえない両親がカルテを入手したところ、
さらに疑惑を招く事実が明らかに。
・ 電子カルテの最後の部分が削除されていた。
・ 両親がインフォームドコンセントとしてDNRに同意するよりも前にAnnieはDNRとされていた。
・医師の処方箋なしに薬局の棚からAnnieの名前で大量のフェンタニールが持ち出されていた。
説明を求めた両親に対して、病院は回答を拒否し続けたので
両親は疑惑を公にするためにHPを立ち上げ、オンブズマンに訴えるなど闘い始める。
トロント子ども病院には、
重症障害のある子どもには救命治療を手控える暗黙のプロトコルがあるのではないか、
Annieはフェンタニールの過剰投与で意図的に殺害されたのではないか、
というのが両親の疑惑。
当初1時間、放置したのは、子どもの苦しみを見せて
親の方からDNRを言い出させるよう仕向けたのではないか、とも。
その後、the Office of the Chief Coronerの小児死亡検証委員会は2007年に
Annieにフェンタニールが投与された証拠はないとしたものの、
死の直前24時間の経緯については「適切な医療の形態を反映したものではない」と報告。
納得できない両親は今年に入り、病院と2人の医師を相手取って
人権裁判所とsmall claim裁判所(小さな苦情を扱う簡易裁判所?)に訴えを起こしたが、
手続き上の不備や、病院側が望む上級裁判所での審理には巨額の費用が予想されるためか、
ちょっとよく分からない二転三転があった後に
今年6月、両親が訴えを取り下げた模様。
トロント子ども病院の遺伝カウンセラーに紹介された。
心臓に欠陥があって手術が必要になる、生まれてもすぐに死ぬ確率が高い、
助かったとしても長くは生きられないと、暗に中絶を勧められたが、
調べてみたら、生き延びて自分なりの生を生きている子どもたちもいることを知り、
そうした子どもたちを育てている親の話を聞いたりもして、生むことを決断した。
Annieちゃんは2005年5月25日に誕生。
生まれた時には心臓に問題はなく、
アプガー(正常を10とする新生児の健康度を測るスケール)は 8ないし9だった。
6週間で退院したが、生後80日目に呼吸困難を起こし、
近所のクリニックを経てトロント子ども病院へ搬送される。
その後、Annieちゃんが死亡するまでの24時間の非常に複雑な経緯の中で
特に問題となっているのは
・呼吸困難を起こしており、通常のプロトコルであれば
コードブルーとして集中治療室に連絡するところ、
呼吸セラピストだけを付き添わせて1時間も放置した。
(その間、医師らからは安楽死が何度かほのめかされた)
・医師らには呼吸困難の原因が肺炎ではないと分かっていたのに、
両親には肺炎だと告げ、本来の症状に必要な治療をしなかった。
・Annieの呼吸はセラピストがバッグで呼吸を手伝う状態にまでなったが、
血中酸素濃度センサーのアラームは切られており、鳴らなかった。
・酸素濃度の数値が急激に低下していることに母親が気づいて看護師を呼び
Annieはやっと集中治療室に運ばれたが、すると今度は
「肺炎ではなく手術が必要な状態。でも本人が手術には耐えられない」と説明が変わり、
動転していた両親は医師らの説得に応じて挿管を拒み、蘇生拒否(DNR)に署名した。
その後、まもなくAnnieちゃんは死亡。
苦しみ続ける我が子に寄り添いながら助けてやれなかった24時間が
両親にはトラウマになっている。
Annieちゃんの死後、不信感をぬぐえない両親がカルテを入手したところ、
さらに疑惑を招く事実が明らかに。
・ 電子カルテの最後の部分が削除されていた。
・ 両親がインフォームドコンセントとしてDNRに同意するよりも前にAnnieはDNRとされていた。
・医師の処方箋なしに薬局の棚からAnnieの名前で大量のフェンタニールが持ち出されていた。
説明を求めた両親に対して、病院は回答を拒否し続けたので
両親は疑惑を公にするためにHPを立ち上げ、オンブズマンに訴えるなど闘い始める。
トロント子ども病院には、
重症障害のある子どもには救命治療を手控える暗黙のプロトコルがあるのではないか、
Annieはフェンタニールの過剰投与で意図的に殺害されたのではないか、
というのが両親の疑惑。
当初1時間、放置したのは、子どもの苦しみを見せて
親の方からDNRを言い出させるよう仕向けたのではないか、とも。
その後、the Office of the Chief Coronerの小児死亡検証委員会は2007年に
Annieにフェンタニールが投与された証拠はないとしたものの、
死の直前24時間の経緯については「適切な医療の形態を反映したものではない」と報告。
納得できない両親は今年に入り、病院と2人の医師を相手取って
人権裁判所とsmall claim裁判所(小さな苦情を扱う簡易裁判所?)に訴えを起こしたが、
手続き上の不備や、病院側が望む上級裁判所での審理には巨額の費用が予想されるためか、
ちょっとよく分からない二転三転があった後に
今年6月、両親が訴えを取り下げた模様。
詳細は、母親のBarbaraさんが情報公開のために立ち上げたこちらのブログに。
母親のBarbaraさんの書いたものを読み、メディアでの発言を読むと、
特に「フェンタニールで意図的に殺した」という主張などには、
子どもの死を受け入れられない親の苦悩ゆえの疑惑なのかなぁとも
思わせられてしまいそうですが、
特に「フェンタニールで意図的に殺した」という主張などには、
子どもの死を受け入れられない親の苦悩ゆえの疑惑なのかなぁとも
思わせられてしまいそうですが、
ターミナルでもなければ意識がないわけでもない生後2ヶ月の障害児 Kayleeちゃんから
あやうく心臓が摘出されるところだった、今年4月の事件。
あやうく心臓が摘出されるところだった、今年4月の事件。
父親は「重い障害があって、何もできないまま死ぬのなら
せめて誰かの役に立って死んで、この子の生を価値のあるものにしてやりたかった」といった
意味のことを言っていましたが、最終的には親が決断したこととはいえ、
救命可能でターミナルではない子どもから臓器目的で呼吸器を外したのは
まぎれもなく、トロント子ども病院の医師です。
せめて誰かの役に立って死んで、この子の生を価値のあるものにしてやりたかった」といった
意味のことを言っていましたが、最終的には親が決断したこととはいえ、
救命可能でターミナルではない子どもから臓器目的で呼吸器を外したのは
まぎれもなく、トロント子ども病院の医師です。
その取り外し行為を、何の抵抗も感じないでできる医師なら
生まれたばかりの我が子の障害を知らされて動転している親に
心臓提供への誘導があったとしても不思議ではないような気がします。
生まれたばかりの我が子の障害を知らされて動転している親に
心臓提供への誘導があったとしても不思議ではないような気がします。
私が個人的に耳にした未確認情報では
Kaylee事件に直接関わったスタッフの中には、Farlow事件に関与した同じ人物が含まれている、とも。
Kaylee事件に直接関わったスタッフの中には、Farlow事件に関与した同じ人物が含まれている、とも。
この2つの事件をつなげて考えてみると、どうしても頭に浮かぶ疑念は、
トロント子ども病院には、障害児の命を軽視する文化の土壌が実際にあるのでは……?
そして、それは本当に一部医師だけ、トロント子ども病院だけの問題なのか……?
そして、それは本当に一部医師だけ、トロント子ども病院だけの問題なのか……?
―――――――――――
Annie Farlow事件については
カナダAlberta大のWilson, Sobsey両教授が当初より積極的にフォローしておられます。
お二人のWhat Sorts ブログでの関連エントリはこちら。
カナダAlberta大のWilson, Sobsey両教授が当初より積極的にフォローしておられます。
お二人のWhat Sorts ブログでの関連エントリはこちら。
Annie Farlow, Sickkids, and an Ontario Human Rights Commission hearing
By Rob Wilson
What sorts of People, April 15, 2009
By Rob Wilson
What sorts of People, April 15, 2009
今年の裁判関連ニュース記事はこちら。
2009.08.19 / Top↑
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