2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
昨日の朝日新聞に、日本はワクチン後進国だとする記事が出ていた。

米国をスタンダードとして「日本はこんなに遅れている」
「もっと米国並みに接種を義務付けるワクチンの種類を増やさなければ」というトーンだった。


たぶん米国を意識した「国際水準」が“印籠”として振りかざされた
今回の臓器移植法改正議論とまったく同じ論法。

もちろん私には一つ一つのワクチンの是非など分からないし、
そんなことを云々する資格もない。

けれど、たまにニュースを追いかけてみるだけでも
子宮がんを予防するヒトパピローマワクチン(HPV)には
英米でも副作用を懸念する声はいまだに根強いし、

HPVの発見に結びついた研究にノーベル賞が授与されたウラでは
巨大製薬会社の激しいロビー活動があったとの噂もあった。

ここ数年の巨大製薬会社の治験にまつわる訴訟やスキャンダルや
研究者との癒着スキャンダルについて多少は読みかじっているし、

“何でも科学とテクノで簡単解決”文化の蔓延を感じさせるニュースが相次いでいることにも、
その背景にそうしたスキャンダルを起こす利権構造が絡んでいるらしいことにも懸念を感じている。

米国では、ちょっと常軌を逸したほど過激なワクチン反対運動が起きていて、
私は決して運動そのものを肯定するつもりはないけれど、

営利優先で人命を軽視しているとしか思えないビッグ・ファーマ(巨大製薬会社)への不信が
その背景にはあるのだろうな……という点は分からないでもない。

今みたいに何でも薬とワクチンで予防しようと、いろんな研究が行われていけば、
(最近読んだだけでも、今後、乳がん、前立腺がん、糖尿病、エイズのワクチンができるとか)
一体どこまで子どもに接種するワクチンが追加されていくのか
短期間に子どもにいくつものワクチンを接種することのリスクは本当にないのか、
本当はその安全性など、誰も確認できないのではないのか、と
何でもワクチンさえ開発すれば解決するような風潮は心配になってしまう。


医学研究の最先端を競い合っている研究者にとって米国がスタンダードなのだろうことは想像できるけれど、
それと臨床現場とはまた別だろうから、

ビッグ・ファーマが暴走する米国の医療を
国際水準として追いかけるべきスタンダードと捉えるよりも、
むしろ、どちらかというと「おいおい、大丈夫か?」と距離を置いて眺めている医師の方が
日本の臨床現場にも本当は多いのではないのか……という気がしてしまうのですが
これは私の希望的観測というヤツなのでしょうか。


米国医療の危惧されるべき実態はほとんど報道されることなく、
日本の医療をある一定方向に誘導しようとする局面になると
必ず「米国では」「国際水準では」と、定番の“印籠”が持ち出されてくることに、
私の頭の中では昨日も赤ランプが点滅したのですが……。




2009.08.08 / Top↑
女性の更年期ホルモン補充療法に使われるホルモン剤が主要商品であるWyeth社に対しては
ホルモン療法の副作用をめぐって8400件の訴訟が起こされている。

その訴訟に関連して提出された文書によって、
1998年から2005年までに発表された
ホルモン補充療法の効果と副作用に関する論文26本が
Wyeth社に雇われたゴーストライターによって書かれたものであることが判明。

それぞれ、ホルモン剤の効果を強調する一方で、
肌の老化や心臓病、認知症などのリスクが高まる副作用については過少評価していた。

また、いずれの論文でも、Wyeth社の関与や金銭関係についての
ディスクロージャーは一切行われていない。

これらホルモン剤の売り上げは2001年には200万ドルに跳ね上がった。

その後、ホルモン剤には乳がん、心臓疾患、脳卒中のリスクが上がることが判明し、
連邦政府の治験が中止されるに至って、リスクが広く認識されるところとなった。
また、その後の研究でも、高齢患者では認知症のリスクがあることも判明している。

Robert Wood Johnson 医大産婦人科教授 Dr. Bachmannを主著者として
2003年に The Journal of Reproductive Medicineに刊行された論文は、
Design Writeという医療コミュニケーション企業(要は論文代筆企業?)が
Wyeth社に対して持ちかけた論文企画の1本。

Design Writeの社員が書いたアウトラインをBachmann医師に送り、
了解を取った上で今度は下書きしたものに、
Backmann医師が一箇所だけ訂正して発表された。

この論文でDW社はWyeth社から25000ドルの支払いを受けた。
論文はDW社のライターの名前をいくつか挙げて、その“編集協力”に感謝している。

Wyeth社は、DW社のような医学論文を代筆する会社数社と契約している。

これまでにも医学論文には陰で製薬会社が関与していることが取沙汰されてきたが、
実態は、Wyeth社のみに留まるとも思えず、
これまで考えられていた以上の広がりを見せていると思われ、

医学論文のゴーストライティングを研究したことのある
NYのMount Sinai School of Medicine 老年医学の助教授 Dr. Joseph S. Rossは
「もう、ほとんど野球のステロイドみたいなもんですね。
誰がやっていて、どの選手がやっていないなんて、見分けられない。
どの論文が汚染されていて、どの論文は違うなんて、見分けがつかない」



この記事を読んで、改めて憤りを覚えるのは、

このたびDiekema、Fost医師らが書いた成長抑制論文
重症児が3歳になったら、ホルモン大量投与による成長抑制を
選択肢として親に提示しろと結論しているのだけど、

その中で、ホルモン大量投与の副作用については「ごく小さい」と、
ほとんど取るに足りない問題として切って捨てている。

それは、一体どういうことなのだろう?

そういうホルモン剤を、成長抑制目的で幼児に大量投与することについて
医師や研究者の間から批判が出てこないのは、これまた一体なぜなのだろう?


2009.08.08 / Top↑