2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
NYで38歳の脳性マヒの男性が一緒に暮らしていた母親に胸をナイフで刺されて殺された。息子に頼まれたので殺人ではなく自殺幇助だと母親は主張しているが、近所の女性によると、息子はそんなことを頼めるほどコミュニケーションが取れないし、自殺することを考えつけるほど知的レベルが高くないはずだ、と。警察は口論の後で母親が殺した殺人事件だと見ているとのこと。:男性が電動車いすを使っていたことを考えると、近所の人の証言は単なるステレオタイプで根拠がないとは思える。そういうやりとりがあった可能性はあるけれども、殺人行為は殺人だろう、と私は思う。何より、以下の自己啓発講師の殺人事件でもそうであるように、殺人の弁護に「いや自殺幇助だ」という論法がやたら出てくることが気になる。それと、母親が長年介護してきた事実だけで、Gilderdale事件が無罪になった英国では「献身的な母の愛」で免罪されてしまうのだろうな、と思われることも。
http://www.nytimes.com/2011/03/04/nyregion/04stab.html

ずっと補遺で追いかけてきたNYの自己啓発講師の殺人事件で、本人が保険金狙いでお金を払って依頼したのだから自殺幇助だという弁護を否定し、殺人で有罪に。:縛ってナイフで刺し殺したんだから、自殺幇助だという弁護が出てくることや、それがメディアで論争になることそのものがおかしい。しごく当たり前の判決。
http://www.nytimes.com/2011/03/04/nyregion/04speaker.html?_r=1

Maraachli君の無益な治療訴訟ケース(これまでMaraachiとしてきたのですが、 Maraachliの間違いでした)で、両親は国境越えしてとにかく米国に逃げ込もうと検討しているとか。詳細読めていませんが、ムチャすぎる。デトロイトの病院は受け入れを断っているのだから。ただ、それほどまでに翻弄され精神的に追い詰められていく両親の胸のうちを思うと、いったい何のため誰のための「無益な治療」停止判断なのか、と、やりきれない。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1362330/Parents-terminally-ill-baby-consider-mercy-dash-U-S-bid-extend-life.html

米国の死刑で使われてきた薬物が不足し、自殺幇助や動物の安楽死で使われている薬物に変更が検討されていた件を補遺で追いかけていますが、オハイオでその第1例となる死刑が執行されることに。:Wesley Smithなどが死にきれなかったケースを含むオレゴンの報告などにも触れ、死刑囚だから少々苦しめてもいいというなら、医師による自殺幇助では「安らかな死」が得られるというのも幻想に過ぎない、と、この件からのPAS批判を展開している。
http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5gPxESmO1p1cysM95F8k2Dy_i87Iw?docId=6146508

去年の選挙で知事が自殺幇助合法化を約束していたVermont州で、合法化ロビーが活動を開始したらしい。
http://www.necn.com/03/02/11/Death-with-dignity-allies-hit-road-in-Ve/landing_politics.html?&blockID=3&apID=62eebbe45c1e45e6a8609aa1c47acccd

最初のところをざっと読んだだけなのでイマイチ理解した自信がないのだけど、現在英国議会で審議されているNHSの改革法案では、GPのコンソーテイアムがNHSの予算分配権を握るらしいのだけど、GPに株式会社を運営することも可能にする???
http://www.guardian.co.uk/society/2011/mar/02/nhs-reform-surgeries-stock-market?CMP=EMCGT_020311&

英国では21年には未診断の認知症患者が50万人以上の上る見込み。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217780.php

英国、途上国への支援金を削減。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2011/mar/01/uk-cuts-aid-poorest-countries?CMP=EMCGT_020311&

日本のADHD学会について、Kebichan55さんのブログがエントリーを書いている。この中で言及されている「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」の毛利子来、山田真といった先生方は、確かワクチンについても情報の不均衡に疑問を呈しておられたような気がするので、非常に興味深いと感じつつ読んだ。ワクチンの背後を云々すると「陰謀説だ」という包括否定がすぐ出てくるのと同じく、「毛利一派」という括りでの一括否定があるらしいことも、あれこれと重なって興味深い。
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/51952977.html

これも日本語のブログ記事。イレッサの副作用死訴訟で、厚労省の官僚が製薬会社とつるんで日本医学会に「和解に応じないよう声明を出すよう」働きかけていた、という、とんでもないスキャンダルが出てきているのに、これがまた大きく報道されないのは、いかに?
http://blogs.yahoo.co.jp/e999jp/61636062.html

Bill Gatesが全米の知事会その他でこのところ、米国の教育制度について大胆な改革を提唱する発言を続けて、珍しく批判されている。「コンピュータ方式の計算をするな」「わたしたちの子どもは、ウィジェットではない」という声も。実際、その改革案の1つというのは、優秀な教師には給料を増額して沢山の生徒を教えてもらう、デキの悪い教師には小さいクラスを担当させよう、というもの。詳しくは読んでいませんが、当然、生徒の能力も数値化して、上位の子どもたちを優秀な先生に、下位の子どもたちをその小さなクラスに振っていくんでしょうね。この感覚、あの腎臓の分配方式と全く同じだと思いませんか?
http://blogs.edweek.org/edweek/teacherbeat/2011/03/governors_take_the_measures_of.html
http://www.thenewamerican.com/index.php/opinion/sam-blumenfeld/6496-why-bill-gatess-billions-will-not-improve-education
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704728004576176802077647470.html?mod=googlenews_wsj
http://www.businesswire.com/news/home/20110304005910/en/NCTR-Bill-Gates%E2%80%99-Views-Teacher-Pensions-%E2%80%9CDo
http://wallstreetpit.com/65063-gates-rants-ponzi-science
http://www.nytimes.com/2011/03/03/education/03teacher.html?nl=todaysheadlines&emc=tha23
http://www.oregonlive.com/opinion/index.ssf/2011/03/education_reform_our_children.html

中東の政情不安で、70年代のオイルショック再来。
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/mar/03/chris-huhne-oil-prices-green-economy?CMP=EMCGT_040311&

前から多いと言われている英国で、さらに監視カメラが増加中。
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/mar/02/cctv-cameras-watching-surveillance?CMP=EMCGT_030311&
2011.03.05 / Top↑
「米国で認知され始めた『介護の力』」

「チョコレートは確かに薬じゃありません。でもソラナックス(抗不安薬)より効きますよ」

2010年の大みそか、ニューヨーク・タイムズの記事で、こんな印象的な言葉と出会った。新年が明けても電子版で「最も読まれた記事」ランキング上位にしばらく留まった、その記事のタイトルは「アルツハイマー病の患者本人の思いのままに、チョコだってあげちゃいます(Giving Alzheimer’s Patients Their Way, Even Chocolate)」。

問題行動が激しく他の施設を断られたり追い出された認知症の高齢者を受け入れ、落ち着きを取り戻すことに成功してきた、アリゾナ州のキリスト教系ナーシング・ホーム、ビーティテューズ・キャンパスは、その優れた認知症ケアで数々の賞を受賞している。研修プログラムには全米から多くの医療関係者が集まってくる。98年開設の認知症ユニットは46床で、認定看護助手(CNA。日本の介護職にあたる)が1:8、看護職が1:22の職員配置。

個別ケアで明るい気分を引き出す
同ホームのケア方針の柱は徹底した個別ケアだ。個別プランは、「私は」と本人視点の一人称で書く。何時に寝ようと何時に起きようと、入浴や食事の時間もまったく自由。そのため、活動プログラムも全職員による24時間体制となっている。集団活動は行わず、あくまでも個別プログラムに沿った1対1対応。時刻とは関わりなく、感覚を刺激する活動と感覚を鎮める活動とのバランスをとって、その人のリズムに合わせる。

食堂は、個々の入所者の栄養管理情報を備え、いつでも個別対応が可能な24時間営業のレストランだ。寝酒もOKだし、夜中の2時に食べたいものを食べたっていい。医師お墨付きの減塩・低脂肪食こそが、実は食欲減退の犯人だったりもする。みんなで一斉に食べる環境では気が散るために、後で空腹から不穏になる人もある。食べたいものがベーコンやチョコだってかまわない。楽しい・嬉しい気持ちになることが問題行動の軽減につながる。

しかし今でこそ同施設のケアの力を高く評価する州当局も、かつてはカルテにチョコレートの記述を見つけて、不適格施設に指定しようとしたことがあったそうだ。
冒頭は、そのエピソードを語った認知症ケア・プログラム担当者の言葉である。彼女のエプロンのポケットには誰もが好きなチョコが常に入っている。入所者それぞれの好物も頭に入っている。不穏になりそうな時、まずは好物をちょっと口に入れてあげる。その風味に、ふっと表情が和らぐ。それは確かに、私たち誰もが知っている、日常のささやかな安らぎだ。

介護アプローチの力を科学的に実証
未だに決定的な治療法が見つからない認知症の高齢者に対する、こうした介護アプローチのポテンシャルが、米国で評価され始めている。これまで、主観的だとか偶発的な結果に過ぎないといわれては軽視されてきた介護アプローチの有効性が、退役軍人省や国立老化研究所など政府機関によって研究され、科学的に検証されようとしている。

例えば、周辺環境の工夫によって気分や行動の変容を図るものとしては、米国医学会誌に08年に発表された実験がある。日中の施設内の照明を明るくすることによって体内時計のリズムがよくなり、入所者のウツ状態や認知機能ばかりか認知以外の機能の低下も改善された。「とりあえず何か一つをと思うなら、まず照明を明るく」と勧める専門家もいる。

ビーティテューズの認知症ユニット(4階)のエレベーターの前には、真黒な四角いマットが敷いてある。認知症が進んだ高齢者の目には穴に見えるようだ。マットの端に沿って歩く人はいても、踏み越えていく人はいない。逆に、乗ってもらいたい時には白いタオルでマットを隠す。エレベーターのドアが開く時は、スタッフがさりげなく正面に立ち、思い切り大きな笑顔で「こんにちは」と声をかける。目の前の人にニコニコ顔で挨拶されると、人の注意はつい笑顔に向かうものらしい。

ドイツではいくつかの施設が、建物正面に本物そっくりなバス停を作って徘徊防止に成功している。長期記憶の残っている高齢者は、施設を出たところに昔から見慣れた緑と黄色のバス停を見つけると、そこでバスを待ち始めるそうだ。頃合いを見てスタッフが「バスが来るまで時間があるから、お茶でも飲んで待ちませんか」と中に誘う。

09年に発表されたアイオワ大学とハーバード大学の研究では、海馬の損傷で記憶障害のある患者に、悲しい気持ちになる映画を見てもらった。6分後には映画を見た記憶は失われたが、映画によって引き起こされた感情そのものは30分後もまだ続いていた。楽しい気持ちになる映画でも結果は同じだった。一見「不穏」と思われる行動の背景には、記憶の消失のために原因となった出来事を説明できないだけで、何かに誘発された気持ちが持続している事情があるのでは、と研究者は推測する。

介護者支援の効力
その人の生活歴から明るい気持ちを引き出すアクティビティを見いだし、在宅ケアの介護者に手ほどきをする作業療法の個別活動プログラム(TAP)も注目されている。TAPでは、認知症患者本人の残存能力、発症前の役割、習慣や興味などのアセスメントに基づいて、本人に明るい気持ちをもたらし家族も導入しやすいアクティビティを見つけ出していく。

介護者との8回のセッションを通じてアセスメントを繰り返しながら、4ヶ月間に渡って展開した実験で、効果が認められたことが、オックスフォード大学の老年学雑誌に報告されている。発症前に釣り好きだった男性は、釣りの用具箱をセッティングする能力が残っていたので、毎日用具箱を渡してやってもらったところ、4カ月後には以前よりも明るく活動的になり、同じ質問の繰り返しや介護者への付きまといなどの問題行動が減少した。本人が変わり問題行動が減ると、介護者にも精神的なゆとりが生まれ、介護に自信ができる。

介護者支援によって施設入所を遅らせることができるとのエビデンスも出始めている。ニューヨーク大学が1987年から2005年まで、認知症の配偶者を介護している約400人を対象に行った実験では、6回の個別カウンセリングを受けてもらい、その後も必要に応じて電話相談を受け付けたグループでは、何もなかったグループよりも、患者の施設入所を1年半遅らせることができた。

また保健省と退役軍人省とが6ヶ月間行った認知症の介護者支援研究では、介護者をランダムに分けたグループの一方には個別カウンセリング(自宅で9回と電話で3回)と、ディスプレイ付き電話による支援グループ活動への参加を5回提供した。もう一方のグループには啓発資料と簡単な電話での聞き取りを2回提供したところ、ウツ状態を訴えた介護者の割合は前者で12.6%、後者で22.7%だった。また前者では患者本人の通院回数も減った。病状に変化はなくとも、介護者が変わると患者本人にも良い影響がもたらされることがわかる。「介護者支援への投資は患者の在宅期間を延ばし、コスト削減につながる」と退役軍人省の関係者は言う。

ビーティテューズでは、新しい患者が入所すると、それまでの施設で出されていた抗精神病薬をやめて、投薬を痛みのケアに焦点化する。拘束せず、時間をかけて経管栄養から経口食に移行。おむつも極力はずしてトイレに誘導する。やってみれば案外にできる人が多いし、このやり方の方が結局はケア・コストも低いという。

発症前に愛用していた香水をつけてあげると落ち着いた女性もいる。また別の女性は、赤ちゃん人形を肌身離さず持ち歩き、若い頃の育児の通りに世話をすることで会話や食べる意欲を取り戻した。母親としての自分に誇りを持っている人だったのだろう。

「その人の持つ力に気付くことが私たちの仕事」と、同ホームのスタッフは語る。どのような人生を過ごしてきたか、一人一人の生活歴をしっかり知ることから個別ケアは始まる。「気づいてもらえるほど、誰かが自分のことを大切に思ってくれている……そう感じられることが大事なんです」。

「誰かが自分のことを大切に思って」というところで、この人が使った動詞はCare――。

この記事を読み、何年も前に取材先で聞いた言葉を思い出した。

「体調を崩し、食べられなくなったからといって、なぜ、すぐに点滴だ、チューブだという話になるのか。なぜ、卵焼きを焼いて食べさせてみようという発想ができないのか」

日本でいち早く拘束やチューブ・オムツ外しに取り組んできた福岡の医療法人笠松会、有吉病院の有吉道泰院長の言葉だ。食を単なるカロリーと栄養の問題に貶めず、チョコや卵焼きが象徴する人として当たり前の生活へ、さらに尊厳ある生を支えるケアへと繋いでいくもの――。それが、食にとどまらず、すべてに通じいく「Careの心」であり、すなわち「Careの力」ではないだろうか。

こうした介護アプローチの底力は、実は日本の介護現場にだって、たくさん蓄積されている。それこそが、世界に冠たる日本の介護保険の、何よりの財産なのではないか――。初春に、そんなことを考えた。
その財産がしっかり生かされるような展望が、介護保険に大きく開ける年でありますように。



「介護保険情報」2011年2月号
連載:世界の介護と医療の情報を読む
2011.03.05 / Top↑