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Kevorkian医師の死を機に
米国メディアでは自殺幇助合法化議論が再燃している中、

キリスト教医師協会(学会?)の幹部の一人 Jonathan Imbodyという人が
ヨーロッパと米国で合法化した国で起こっている以下の「すべり坂」現象を指摘し、
合法化論者に、再考を促している。

・小国オランダで2001年に合法化された医療殺人(medical killing)では
本人の同意なしに死なされている患者が年間900人もいると推定される。

・ウツ病患者が、精神科医の評価も治療もなしに死なされている。

・安楽死を当局に隠している医師がある。ある地域では安楽死の半数が報告されていないままになっている。

・オレゴン州で規定されている2人目の医師の相談書は
本来は客観的なものであるはずなのに、連続61件の内58件で
たった一人の自殺幇助アドボケイトの医師によって書かれていた。

・すべり坂が安楽死を際限なく広げ、
今や「よいQOLにはならない」と判断された新生児、
ターミナルではない病人、ウツ病患者を対象にしているうえに、
医療制度の方向によってはオランダでは
「70歳以上でこれ以上生きたくない人」は誰でも対象になる可能性もある。

・緩和ケアがコスト効率のよい医療殺人にとって代わられつつある。
オランダの医師の一人は「緩和ケアなんかいらない。
安楽死をやっているんだから」といった。

そして、この人は、
結局のところ、自殺幇助と安楽死は
自己決定権の否定と尊厳のない死への最短距離だと、主張している。

LETTER TO THE EDITOR: The slippery slope of assisted suicide
The Washington Times, June 8, 2011


私も全くそう思う。

いくら「死の自己決定権」だ「自己選択」だと言われても、
そこに用意されているのが「死ぬ」という一方向にだけ認められる自己決定でしかないなら、
それは「自己決定」ではないではないか、と思う。

さらに言えば、既に医療費削減という社会からの要請と同時に
高齢者の自殺幇助があからさまに語られるようになってきた以上、
もはや自己決定権を盾に取った議論は化けの皮がはげている、とも思う。

結局は医療費削減のための自殺幇助合法化なのならば
「セーフガードさえあれば“すべり坂”など起きない」なんてウソで
最初から「すべり坂は織り込み済みの自殺幇助合法化論だった」または
「すべり坂を起こすための自己決定権議論だった」ということになるのでは?



【関連エントリー】
OR州の「尊厳死」:97%にC&Cが関与、たった20人の医師がせっせと処方(2010/3/11)
オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず(2010/8/17)

WA州の尊厳死法、殺人の可能性あっても「問わず語らず」で(2010/9/16)
WA尊厳死法の「すべり坂」、エビデンスがまた1つ(2010/11/2)

「やめておけ、豪の安楽死法は失敗だったぞ」と緩和ケア医がケベックの医師らに(2010/10/8)

ベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)
オランダで安楽死が増加し保健省が調査。緩和ケアの崩壊も(2010/6/21)
幇助自殺者が毎年1割ずつ増えるオランダで「安楽死クリニック」求める声(2010/8/12)

「介護保険情報」10月号に以下の文章を書きました。
「セーフガード崩れる尊厳死法の実態が明らかに」
2011.06.13 / Top↑
日本語ニュース。中国でiPodほしさにブローカーにたぶらかされて腎臓を売った17歳の少年。
http://slashdot.jp/apple/article.pl?sid=11/06/08/000236

英国の介護者週間恒例の介護者実態調査で、介護者の75%は介護負担から健康を害しており、そのうち76%はウツ病、不安やストレスといった精神的な問題を抱えている。
http://www.express.co.uk/posts/view/252238/Carers-are-collapsing-from-stress

英国の介護者の5人に4人が、サービス・カットに不安を覚えている。
http://www.thisishampshire.net/news/9076248.4_out_of_5_carers_in_the_SE_fear_consequences_of_cuts_to_care_services/

Alex SchadanbergのEuthanasia Prevention CoalitionやWesley Smithなんかが力を入れてやってきた安楽死・自殺幇助国際シンポ、第3回はバンクーバーで6月3,4日にあり、大成功だったとか。
http://www.lifesitenews.com/blog/the-third-international-symposium-on-euthanasia-and-assisted-suicide-a-trem/

月曜日にBBCが放送する実際の自殺幇助場面を含む番組で、プレゼンターを務めているアルツハイマー病患者で作家のPratchettが自らの自殺の考えを語っている。Dignitasヘ行くつもりなんだとか。
http://news.nationalpost.com/2011/06/11/author-pratchett-plans-his-own-suicide/
http://www.guardian.co.uk/books/2011/jun/12/terry-pratchett-dignitas-suicide-euthanasia

上記放送を巡って、BBCには自殺幇助合法化推進バイアスがかかっている、との批判。
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/uk/bbc-accused-of-prosuicide-bias-16010818.html

BBCには去年も同様の批判があった。
BBC「世論は慈悲殺を支持」の怪(2010/2/1)
「BBCは公金を使って安楽死を推進している」と議員らが批判(2010/2/5)
自殺幇助に関する偏向報道で、BBCチェアマンに大物議員が会談申し入れ(2010/2/23)

Bill Gatesが今度は、スモーカーの多い中国で副流煙の問題をどうにかしよう、と中国の財閥と一緒に。:この人、今や比喩でも何でもなく世界の保健相なんですね。誰がいつ任命したのか、私はずっと前から不思議なんだけど。慈善資本主義は、一定規模を超えてカネが動くようになると、議会制民主主義を逸脱してしまっている、とも思うんだけど。
http://seattletimes.nwsource.com/html/nationworld/2015290275_apaschinasmoking.html

ProPublicaが、医療機器を使って医師が儲かる仕組みについて。
http://www.propublica.org/blog/item/more-scrutiny-for-doctors-profiting-from-medical-devices-they-use
2011.06.13 / Top↑
9日、WHOと世界銀行が
障害児・者に関するグローバルな報告書the World Report on Disabilityをまとめた。

1970年代には世界の人口の約10%だと試算されていた障害者は
高齢化と慢性病の増加によって増え、今では10億人。総人口の15%に。

障害者の権利運動が行われインクルージョンに向けた変化もあるものの
総じて障害者は差別される地位(second-class citizen)に留まっており、
5人に1人は多大な困難を経験している。

途上国では医療を拒否される確率が健常者よりも3倍も高く、
障害児が学校に通ったり卒業まで在学する率も低い。

OECD諸国の健常者の就業率が75%であるのに比べて
障害者の就業率は44%にとどまる。

バリアとしては、スティグマ、差別、
適切な医療とリハビリを受けられないこと、
交通手段、建物、情報へのアクセスが十分でないこと。
途上国では事情はより深刻である。

著者の一人、Tom Shakespeareは、
問題のない国はない、というのが報告書のメッセージだ、と述べて

特に報告書から見える最もショッキングで大きな問題は
医療における差別だ、と。

WHO事務局長のMargaret Chan医師は
障害は人であれば経験すること(disability is part of the human condition)だと指摘し、
「私たちのほとんどが人生のどこかの段階で永続的な障害や一時的な障害を負います。
障害者を差別し、多くの場合社会の周辺に追いやってしまう原因となっているバリアを
取り除くために我々はもっと努力しなければなりません」

Lancaster大学の障害研究センターのEric Emerson教授は
「英国の障害者、とりわけ知的障害者が受ける制度的な差別は
これまでも多くの独立系の調査報告で指摘されてきた。

障害者の健康と福祉は
彼らの障害から直接的に引き起こされる結果ではなく、
社会が障害者をどのように遇するかによって引き起こされた結果なのである」

報告書は特に各国の状況を比較してはいないが
最も優秀な実践例として特に英国の障害者差別(禁止)法2005を挙げた。
公共機関に平等とダイレクト・ペイメントの推進を義務付けたことを評価したもの。

しかし英国人であるShakespeareは
「ダイレクト・ペイメントの仕組みと、
自立生活給付などの支援や仕事へのアクセスでは英国は優秀だが
これまでに整えられてきたものが今は脅かされている。
自立生活給付金のカットやその他の支援も変更が行われており
昔はよかったが、ということになりそうだ」


One billion people disabled, first global report finds
The Guardian, June 9, 2011

同レポートに関するLancetの論説はこちら。


英国の社会保障費カットはこのところ毎日のようにニュースになるほど
大きな影響を及ぼして障害者・高齢者を脅かしているので、
Shakespeareの最後の発言は非常にリアルに聞こえた。

英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモ(2011/5/11)


ただ、ものすごく素朴に疑問に思うのは

WHOと世銀って、ゲイツ財団・IHMEと大の仲良しで、
DALYでもって世界中の医療保健施策の効率化を計ろうとしていたり、
遺伝子診断や早産・死産撲滅など、優生思想が匂う運動を推進していたりしながら
その一方で、こういうことを言うのって……?


それはShakespeareの発言にも通じていく疑問で、

医療における障害者差別が一番の問題だというけど、
そんなのは、この報告書が出てくる前からみんなが経験し言っていることで、
その現実を知らないわけでもなかろうに、

また医療で差別されているからこそ、
英国障害者の7割がPAS合法化に懸念してもいるのだろうし、
その懸念の背景にある不信を理解できないわけでもなかろうに、

自殺幇助合法化議論では医療における障害者への差別は言わず、
障害者にも自殺幇助を認めろ、と主張するのって……?


【関連エントリー】
Tom Shakespeareが「自殺幇助合法化せよ」(2009/3/15)
Campbell/Shakespeare・Drake:障害当事者による自殺幇助論争 1(2009/7/9)
Campbell/Shakespeare・Drake:障害当事者による自殺幇助論争 2(2009/7/9)
2011.06.13 / Top↑
友人から「えっ? 足りてたの?」脱原発Tシャツをもらった。「一枚は私が、もう一枚はあの人に」の2枚セット。誰かの「あの人」にしてもらえるって、とても嬉しいことなんだと知った。けっこうオシャレです。「町へ増殖していけ、私たちの意思表明」と、デザイナーの須永豪さん。
http://www.sunaga.org/works/311t.htm

英国のテレビドラマ Emmerdaleで、中途障害のため首から下が麻痺した青年が絶望して自殺を望み、身近な人に毒物を飲む手伝いをしてもらって死ぬ筋書きが、視聴者から批判を招き、監督機関Ofcomに苦情が寄せられている。自殺幇助がこのように安易にドラマで扱われるべきではない、子どもが見る時間帯に見せるものではない、など。一番上の記事に、当該場面の写真あり。また2番目の記事では、その主人公と同じ脊損の男性が、当初は落ち込んだがそこを乗り越えて生きる希望を持った体験談を語っている。
http://www.metro.co.uk/tv/865802-emmerdale-assisted-suicide-plot-sees-angry-viewers-complain-to-ofcom
http://www.mirror.co.uk/news/top-stories/2011/06/10/emmerdale-s-tetraplegic-actor-andy-walker-on-the-soap-s-harrowing-suicide-storyline-115875-23191022/
http://entertainment.stv.tv/tv/255930-emmerdales-assisted-suicide-scene-was-deliberately-horrific/

上記の話題の関連で、英国では06年に事故で全身マヒ状態になった23歳のラグビー選手が両親に付き添われてDignitasへいって自殺したが、両親は公益にならないとして不起訴となった事件がある。最近、彼の主治医が自殺意図を知っていたことを明らかとなり、物議を醸している。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63331880.html

BBCがDignitasでの幇助自殺の場面を放送するのは、ホテル王Peter Smedley氏だとのこと。
http://www.smh.com.au/entertainment/tv-and-radio/why-a-quiet-millionaires-suicide-will-be-shown-on-tv-20110609-1fu0q.html

Guaradianに、その番組のプレゼンターで合法化アドボケイトの作家Prattchettの議論を支持するコメンタリー。Alexander Chancellor。この人、どこかで顔を見たことがある人なんだけど、すぐには思い出せない。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/jun/10/assisted-suicide-terrypratchett

Lancetに、先日すい臓がんで亡くなった自殺幇助合法化ロビーのGP、Ann McPherson医師の夫が追悼記事を書いている。Assisted suicide ではなく、Assisted dying という表現が使われている。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960855-6/fulltext?elsca1=TL-100611&elsca2=email&elsca3=segment

「ワクチンの10年」は多くのいのちを救う可能性があるが、その実現のための戦略として新たな科学への投資、ワクチン開発の創造的なモデル開発、製造から最果てのクリニックまで届けるサプライチェーン改善への資金。:ゲイツ財団の音頭で「ワクチンの10年」が言われるようになってから、ワクチンが語られる時、医療の問題というよりも、それは経済の問題として語られることが多くなってきた。サプライ・チェーンという言葉に、去年10月のワクチン・カンファで使われていた「ヴァリュー・チェーン」という言葉が重なった。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228081.php

髄膜炎ワクチン開発が有望。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228031.php

7月18から19日、シカゴで製薬会社と医療機器会社の、販売とマーケッティング法令遵守カンファ。:文字通り、法令遵守であって、いかに法令遵守を装うかの方法論を議論するカンファでないことを。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228022.php

製薬会社のランセンス取得におけるパートナーシップと連携マネジメント・カンファがフィラデルフィアで7月18、19日に。:多国籍にパートナーシップを広げて複雑化、階層化することによって、責任の所在をあいまい化し、いかにライアビリティを問いにくくするか、の方法論を議論するカンファではないことを。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228020.php

シカゴ大学の社会福祉行政の研究者らが、多職種協働による問題解決アプローチで社会福祉研究を、と。:社会福祉の問題は医療化によって解決するのではなく、こういう方向で、と願う。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228041.php

日本語記事。存亡の淵「マイクロファイナンス」(上)。インド版サブプライム・ローン。:ゲイツ財団が近しくお付き合いしているインドで。インドといえば有名な医療ツーリズムにも、自国の貧困層がただの下痢で死んでいるのを放っておいて……という批判がある。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110610-00000001-facta-bus_all

英国のヨウ素不足問題。さっそくLancetに。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110610-00000001-facta-bus_all

英国の健康における社会経済格差解消に向けた戦略。:ヘルシー・ホームズなどもその一環かも。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2962055-7/fulltext?elsca1=TL-100611&elsca2=email&elsca3=segment

来週、英国とスコットランドの介護者週間。
http://www.fifetoday.co.uk/news/local-headlines/caring_for_the_carers_1_1670552
http://www.yorkpress.co.uk/news/9077303.Carers____Week__Hail_the__unsung_heroes/
http://www.getbracknell.co.uk/news/s/2094163_a_week_of_care_for_hard_working_carers

英国最大のケア・ホーム運営母体Southern Crossが経営難のため家賃30%カットを求め、大家(といっても、こちらにも賃貸の大企業も)勢が猛反発。
http://www.guardian.co.uk/business/2011/jun/08/southern-cross-rent-jobs-cut?CMP=EMCGT_090611&

高齢者虐待予防戦略は、児童虐待の予防戦術に学ぶところは大きいものの高齢者の自己決定権をおろそかにできない複雑さがある。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960866-0/fulltext?elsca1=TL-100611&elsca2=email&elsca3=segment

英国では、こちらもコスト削減のため、レイプ犯の刑期を半減する案が官邸から出ていたらしいけれど、法務相によって撤回に。
http://www.guardian.co.uk/politics/2011/jun/08/kenneth-clarke-jail-terms-rapists?CMP=EMCGT_090611&
2011.06.13 / Top↑