障害のある息子がいる女性が職場でフレックスで働きたいと申し出たのに認められなかった、
障害のない子どもの親には認められているのに
子どもに障害があるために「怠けている」などと責められた、差別だとして
まずは英国の雇用裁判所に訴え、
雇用裁判所がヨーロッパ法廷に持ち込んでいたもの。
障害のない子どもの親には認められているのに
子どもに障害があるために「怠けている」などと責められた、差別だとして
まずは英国の雇用裁判所に訴え、
雇用裁判所がヨーロッパ法廷に持ち込んでいたもの。
それは職場での平等な扱いを定めたEUのディレクティブに反するかどうか、
また discrimination by association が認められるかどうかが焦点となっていました。
また discrimination by association が認められるかどうかが焦点となっていました。
このたびヨーロッパ裁判所が出した判断で
全面的にこの女性Colemanさんの勝訴。
全面的にこの女性Colemanさんの勝訴。
この裁判は英国の介護者全体の権利に関るものと注目されていたため、
以下のTimes の記事は冒頭で
「英国の600万介護者は本日、画期的な勝利を勝ち取った」と。
以下のTimes の記事は冒頭で
「英国の600万介護者は本日、画期的な勝利を勝ち取った」と。
Relatives of disabled win groundbreaking victory after Sharon Coleman discrimination case
The Times, July 18, 2008
The Times, July 18, 2008
判断の具体的な文言としては
Where an employer treats an employee who is not himself disabled less favourably than another employee in a comparable situation, and it is established that the less favourable treatment of that employee is based on the disability of his child, whose care is provided primarily by that employee, such treatment is contrary to the prohibition fo direct discrimination laid down by the Directive.
従業員本人に障害がなくても、
その人がケアしている子どもに障害があって、
その障害が理由となって他の従業員よりも扱いが悪くなったならば、
それはEUのディレクティブに反する差別である……と。
その人がケアしている子どもに障害があって、
その障害が理由となって他の従業員よりも扱いが悪くなったならば、
それはEUのディレクティブに反する差別である……と。
しかも「そんなことしていない」という立証責任があるのも雇用主の方。
企業サイドからは、こんな訴訟がどっと増えるんじゃないか
現実にどう対処すればいいのかなど不安の声も。
現実にどう対処すればいいのかなど不安の声も。
英国はこの判断を受けて
1995年制定の障害差別法がこの判断に添える内容になっているかどうかを検討し
そうなっていなければ改定を迫られることになります。
1995年制定の障害差別法がこの判断に添える内容になっているかどうかを検討し
そうなっていなければ改定を迫られることになります。
2008.07.18 / Top↑
The Lancet 誌が“世界中の学生がグローバル・ヘルスに興味をもってくれるよう”
開設している投稿サイト the Lancet Student に、
イスラエルの医学生がAshley事件を論じる論文を寄せています。
開設している投稿サイト the Lancet Student に、
イスラエルの医学生がAshley事件を論じる論文を寄せています。
タイトルは「医療の傲慢の極地」なのですが、
学生さんの書いたものだからなのか
たいした意味もない表を大げさにつけている割には
内容がよく分からないものになっているし、
学生さんの書いたものだからなのか
たいした意味もない表を大げさにつけている割には
内容がよく分からないものになっているし、
結論と思われるものに至っては、むしろタイトルの逆のような……
なんだか意味不明のヘンな論文。
なんだか意味不明のヘンな論文。
しかし、こういうのが医学生の意識なのかぁ……?
と思って読むと、いろいろ考えさせられる。
と思って読むと、いろいろ考えさせられる。
それから巻末の参考文献は参考になりました。
(米国産婦人科学会倫理委員会が2007年に
「障害者を含む女性の不妊術に関する意見書」を出していることを
ここで知ったので、読んでみました。
これについては、近くアップします。)
(米国産婦人科学会倫理委員会が2007年に
「障害者を含む女性の不妊術に関する意見書」を出していることを
ここで知ったので、読んでみました。
これについては、近くアップします。)
この論文で気になった箇所をいくつか挙げておくと、
・成長抑制を「proactiveな手段」だと書いていること。
たぶん「前もって積極的に手を打つ」といったニュアンスと思われ、
例えば胃がんの遺伝子が見つかったから胃を摘出して予防するとか、
もっと極端には胚の段階で遺伝子操作をして病気予防することまで
含まれそうな響きの言葉だな、と。
例えば胃がんの遺伝子が見つかったから胃を摘出して予防するとか、
もっと極端には胚の段階で遺伝子操作をして病気予防することまで
含まれそうな響きの言葉だな、と。
イタリックで強調してあるので、
Ashleyの親の考えをこのように受けたものとも考えられますが、
それにしても医学生がこういう言葉をさらっと使ってしまうこと自体が、
科学とテクノの簡単解決文化の浸透というか、
6歳の子どもにホルモンを大量投与することを既に肯定している文化が匂うような?
Ashleyの親の考えをこのように受けたものとも考えられますが、
それにしても医学生がこういう言葉をさらっと使ってしまうこと自体が、
科学とテクノの簡単解決文化の浸透というか、
6歳の子どもにホルモンを大量投与することを既に肯定している文化が匂うような?
・リスクについては「今後の観察研究によって見極めることが必要」
……って、じゃぁ、何例もやれってことですか?
リスクを見極めるためには実験が必要だからって?
リスクを見極めるためには実験が必要だからって?
・「社会の役割」については「我々の社会における障害児の価値について議論が必要」。
「社会における障害児の価値」だそうです。
こういうフレーズを躊躇いもなくしゃらり~んと書ける人には
医師になってもらいたくないんだけど……。
こういうフレーズを躊躇いもなくしゃらり~んと書ける人には
医師になってもらいたくないんだけど……。
ともあれ、その「価値」を見極めて対策を考えるために
彼は「多職種による学際的な議論」が必要だというのですが、
大変気になるのは彼が挙げている分野で、
彼は「多職種による学際的な議論」が必要だというのですが、
大変気になるのは彼が挙げている分野で、
内分泌、神経、外科、発達、それから倫理学。それだけ。
それを彼は an interdisciplinary group of experts (学際的専門家集団)と呼ぶわけです。
これは学生だから広い世界が見えていないのか、
それとも医学の世界にいる人の視野の狭さというものなのか。
これは学生だから広い世界が見えていないのか、
それとも医学の世界にいる人の視野の狭さというものなのか。
医学の世界の人にとって「専門職」というのは医師だけ……?と
感じる場面は身の回りにも沢山ありますが、
感じる場面は身の回りにも沢山ありますが、
でも、「社会の役割」という以上、それは「医療の役割」よりはるかに広いもののはずですが。
で、彼の結論らしきものは、たぶん
「現実には理想的な社会なんてないんだから
充分な介護支援が整っていなくて親に過剰な負担がある以上、
医師はこうした手段を勧めるだろう」というあたりなのかな。
「現実には理想的な社会なんてないんだから
充分な介護支援が整っていなくて親に過剰な負担がある以上、
医師はこうした手段を勧めるだろう」というあたりなのかな。
で、本文では「それもやむをえないだろう」というニュアンスで書き、
タイトルでのみ、そういうのを「医療の傲慢の極地」と呼ぶのか??
タイトルでのみ、そういうのを「医療の傲慢の極地」と呼ぶのか??
(Lancetがゲイツ財団の資金と繋がっていることと関係、あるかな。まさかね。)
―――――
そういえば、この前、人に教えてもらって
日本の厚労省が出した「安心と希望の医療確保ビジョン」というのをざっと読んでみた時に
「これからは“治す医療”だけじゃなくて“支える医療”もしっかりやるんだ」
みたいなことが強調されていましたが、
日本の厚労省が出した「安心と希望の医療確保ビジョン」というのをざっと読んでみた時に
「これからは“治す医療”だけじゃなくて“支える医療”もしっかりやるんだ」
みたいなことが強調されていましたが、
くれぐれも医師だけで支えられるとか、支えられるのは医療だけだとか
はたまた医師が他職種を叱咤激励しつつリーダーシップを発揮して主導するんだぞ……
みたいな医学教育はしないでほしいなぁ……と思ったんだった。
はたまた医師が他職種を叱咤激励しつつリーダーシップを発揮して主導するんだぞ……
みたいな医学教育はしないでほしいなぁ……と思ったんだった。
2008.07.18 / Top↑
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