2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
前のエントリーの続きです)

起訴の公益ファクターとしては
1. the victim was under 18 years of age;
2. the victim did not have the capacity (as defined by the Mental Capacity Act 2005) to reach an informed decision to commit suicide;
3. the victim had not reached a voluntary, clear, settled and informed decision to commit suicide;
4. the victim had not clearly and unequivocally communicated his or her decision to commit suicide to the suspect;
5. the victim did not seek the encouragement or assistance of the suspect personally or on his or her own initiative;
6. the suspect was not wholly motivated by compassion; for example, the suspect was motivated by the prospect that he or she or a person closely connected to him or her stood to gain in some way from the death of the victim;
7. the suspect pressured the victim to commit suicide;
8. the suspect did not take reasonable steps to ensure that any other person had not pressured the victim to commit suicide;
9. the suspect had a history of violence or abuse against the victim;
10. the victim was physically able to undertake the act that constituted the assistance him or herself;
11. the suspect was unknown to the victim and encouraged or assisted the victim to commit or attempt to commit suicide by providing specific information via, for example, a website or publication;
12. the suspect gave encouragement or assistance to more than one victim who were not known to each other;
13. the suspect was paid by the victim or those close to the victim for his or her encouragement or assistance;
14. the suspect was acting in his or her capacity as a medical doctor, nurse, other healthcare professional, a professional carer [whether for payment or not], or as a person in authority, such as a prison officer, and the victim was in his or her care;
15. the suspect was aware that the victim intended to commit suicide in a public place where it was reasonable to think that members of the public may be present;
16. the suspect was acting in his or her capacity as a person involved in the management or as an employee (whether for payment or not) of an organisation or group, a purpose of which is to provide a physical environment (whether for payment or not) in which to allow another to commit suicide.

容疑者が得る利益の程度については常識的に判断する、という内容のことが
注記されています。

不起訴の公益ファクターとしては
1.the victim had reached a voluntary, clear, settled and informed decision to commit suicide;
2.the suspect was wholly motivated by compassion;
3.the actions of the suspect, although sufficient to come within the definition of the offence, were of only minor encouragement or assistance;
4.the suspect had sought to dissuade the victim from taking the course of action which resulted in his or her suicide;
5.the actions of the suspect may be characterised as reluctant encouragement or assistance in the face of a determined wish on the part of the victim to commit suicide;
6.the suspect reported the victim's suicide to the police and fully assisted them in their enquiries into the circumstances of the suicide or the attempt and his or her part in providing encouragement or assistance.

なお、去年9月の暫定案の起訴・不起訴それぞれのファクター原文はこちらのエントリーに。

ざっと読み比べてみて、すぐに目につく大きな改正点は

・暫定案の「ターミナルな人、不治または進行性の重症身体障害のある人」という
対象者要件が削除された。

・「自己決定能力」がMCAの規定によるものとして明確に定義された。

・医療者、介護者または刑務官など職業上の権限を持つ者が
職務上の立場で担当する者に対して行動する場合を起訴ファクターとして明示。

・一部の自殺幇助合法化アドボケイトらのネットでの教唆や情報提供や、
ボランティアでの幇助、Dignitas(名指しはされていません)の行為などを起訴ファクターとして明示。

これらは、概説での
「すべての事件が詳細な捜査対象となる」とか
「まず詳細なエビデンスを検討する」
「慈悲殺とは一線を画す」といったことの確認、強調とともに、
確かに評価できる点ではあるのですが、

私がとりあえず個人的に感じる疑問としては、

・ターミナルな状態だとか不治の重症障害などの対象者要件をはずし、
特定の状態の人への法的保護が薄れる状況は避けたものの、その逆に、
英国における「死の自己決定権」を包括的に認めてしまったのでは?
そして、その「死の自己決定権」に基づいて、
一定の自殺幇助を事実上、合法化するものなのでは?

・容疑者があくまでも「大きな利益を得る立場にはなく」
「決心を翻させようと説得した後に」「思いやりからのみ」
「しぶしぶ」幇助したことを不起訴ファクターとしている点について、
介護する人される人の間にありうる非常に複雑で微妙な関係を思うと、
表面的には分からないことも多いんじゃないのかなぁ……と。

・当人の自殺の決意が「自発的で、明白で、迷いがなく、
なおかつインフォームされた決意」であることが条件とされているのだけれど、
informed decision というところに、暫定案にあった「ターミナルな人、
不治や進行性の重症身体障害のある人」という要件の残滓が
臭うような気がするのだけど、気のせいかな。

・誰かがどこかで「薬を飲めない人にコップを口元まで持って行って飲ませるのも、
自分でできないから枕を顔に押し付けてくれと頼まれて、それをやるのと、
どう線引きするんだ」とガイドラインの発表前に書いていたけど、

「犠牲者が身体的にできることを手伝ってはいけない、
手伝いは小さなものでなければならない」という点と、
「犠牲者の命を終わらせる行為は殺人または過失致死」という点の間で、
現実の判断はどういう行為までを許容していくのだろう。

・ガイドラインそのものが
「自殺したいという人がどうしても気持ちを変えなかったら、
その人が自分でできない部分については少々なら手伝ってもいいですよ」と
いうことにしてしまったわけだから、いったん許容されてしまった以上、
その許容される行為の範囲は、この後、様々な事件が出てくるにつれて、
(例えば判事の間の判断のばらつきによって)広がっていく可能性はないのだろうか。

・自殺幇助と慈悲殺を明確に区別し、慈悲殺は断固として起訴する、と
強調してあることは評価できるのだけれど、Gilderdale事件を振り返ると、
公訴局がそこを区別して起訴しても、その後、判事がそこを区別せず
「愛と献身」で無罪放免するところまで英国の空気が高揚していることのも事実。

それだけに、その空気に流されず、あくまでも現行法にのっとって
理にかなった「明確化」がされたとも言えるのかもしれないのだけど、
このガイドラインで果たして合法化に向けた流れに、どの程度の歯止めがかかるのか……。
2010.03.08 / Top↑
ガイドラインそのもののサイトはこちら

まず、最初に、いくつかの項目ごとに述べられている概説や注記事項から
個人的に特に目に付いた点を、以下に。

【捜査】
・自殺を勧めたり幇助した事件は全て警察の捜査対象となる。

・自殺を勧めたり幇助することは現行法では最高14年の懲役刑となる犯罪行為である。

・このガイドラインはPurdy判決を受けたもの。ただしPurdy判決は法を変えるわけではない。
(法改正は議会にのみ可能)

【決定過程】
・警察の捜査を受けて、検察が起訴の有無を判断する場合には the Full Code Testによる。

・Full Cord Testとは、(1)証拠段階、(2)公益段階の2つの段階を順次踏んで起訴の有無を検討するというもの。どんなに重大な、または難しいケースであっても、証拠段階を通過しない限り公益段階の検討は行わない。起訴を正当化する証拠が十分にある場合にのみ、公益において起訴が必要かどうかの検討を行う。

・Full Cord Testを通過したケースについてのみ、DPPは起訴に同意する。

【証拠段階】
・1961年自殺法のセクション2が修正され、2010年2月1日に施行となった。それにより、検察は自殺教唆または幇助の行為が行われた時期を特定しなければならない。その時期が2010年2月1日以降であれば、同法セクション59とthe Coroners and Justice Act 2009のスケジュール12が適用される。

(この後を読むと、改正の内容は、インターネット上で不特定多数に向けて自殺を勧めたり幇助したりすること、またその意図をもった誰かをそそのかしたり幇助したりすることに拡大された、ということではないかと思われます。教唆について、改正前と後で英語の文言は変わっています。私は専門的にはどういう訳語が正しいのか知りませんのでお断りしておきます。)

特に「自殺を勧めたり幇助することと殺人または過失致死との別」の項目では
以下のように書かれています。

・自殺の行為とは、犠牲者が自分の命を奪うこと。

・ひとえに他者の望みに応じることのみを目的で行うことであるとしても、他者の命を終わらせる行為は殺人または過失致死である。

・例えば、犠牲者が自殺を試みて、意識を失っただけに終わった場合に、その犠牲者の死の原因となる行為を行うとすると、たとえ当人は犠牲者の明らかな望みを実行するだけだと考えていたとても、それは殺人または過失致死である。

【公益段階】
・公益のアセスメントは、単にあてはまる両ファクターの件数を比較して決めるものではなく(チェックボックス・タイプの検討ではない)、個々の事件の事実と性格に応じて検討される。

・1つのファクターに当てはまらないことは、それだけで直ちにそのファクターの反対の判断となるわけではない。犠牲者が「18歳以下」ではなかったというだけで、起訴ファクターが不起訴ファクターに変わるわけではない。

・自殺の状況と犠牲者の精神状態に関する情報源が容疑者のみということが時にあり得るが、検察官も捜査官も可能な限りのリーズナブルな関係筋の事情聴取を徹底することによって容疑者の説明の裏付けを取るべきである。

・もしも、事情聴取を全て終わっても、いずれかのファクターについて自殺の状況や犠牲者の精神状態に関する容疑者の説明に疑問がある場合には、そのファクターがあると判断するには情報が不十分と結論するべきである。

次のエントリーに続く)
2010.03.08 / Top↑