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今朝のエントリーで紹介した豪の重症児の子宮摘出訴訟について。



えらそーにリンクしてみたものの、実は判決文はまだ読めていないので、
事実関係の情報ソースは以下の記事3本のみです。

(その後、読んで、こちらにまとめました。)

DISABLED GIRL CAN BE STERILISED: COURT
THE MIKIVERSE, From the westaustralian.com.au, March 10, 2010



(Telegraphは Ashley事件には触れているのに自国の Katie事件には一切触れていない)


【とりあえずの事実関係の整理】

・名前はAngelaとのみ。11歳。

・レット症候群。


・意思疎通できない。
「三か月児のようにふるまう acts as a three-month-old baby would」
 話すことができない。
 身体の動きを制御することができない。
 食事も移動も入浴も両親の介助に依存。
「膀胱をコントロールできないのでオムツを使用」。
立つことができないので、(歩く時は?)特殊な歩行枠に「体を縛り付けなければならない」。

・生まれて以来てんかん発作があるが、現在は薬でコントロールできている。
 9歳の時から生理の出血が多いと発作が起こりやすい(「と両親は考えている」との表現も)。
母親の話では生理の不順で痛みと疲れがある。
母親の話では3人の産婦人科医が子宮摘出が最善の解決策だと合意した、とのこと。

・2009年3月に専門家から子宮摘出を勧められたが
Queensland Health(英国のNHSに当たる)は弁護士の助言により
裁判所の命令なしにはできないと判断した。

・オーストラリアでは92年に、子どもへの侵襲度の高い不可逆的な医療については
親の判断ではなく裁判所の命令が必要と高等裁判所の判例があり、
それに基づいて、家庭裁判所が判断することとなっている。

・判決は子宮摘出について「緊急であり必要だった」
「Angelaには正常な青少年・大人として生活することはできない」
「検討の基本は、Angelaの健康全般と生命へのリスク」

・Brisbane 家庭裁判所のPaul Cronin判事は
この決定はAngelaの生活を改善し、したがって「本人の最善の利益だ」と。

・両親は南アメリカで結婚、91年にオーストラリアに移住。


【メディア記事に引用された各方面のリアクション】

Mark Patterson, the National Council on Intellectual Disability

92年以降のシステムが良好に働いた事例として、支持。
人権よりも、“本人の尊厳”が優先されたケースだ、とも。

「こういう子の家族は、本当に大変な思いをしてきているんです。
できる限りの手を尽くしてから、お手上げ状態となり
『これ以上、どうすればいいんだ?』と言っているんです。
そういう人の言うことなんだから、give them a bit of a break 聞いてあげましょうよ」

「難しい問題ですが、我々としては現実的に考えます。
我々が不妊手術をダメだと言ったら、家族の日々の生活は楽になりませんからね」

(この人だけは、3本の記事のすべてに登場しています。
どうも、ちょっと、言うこともヘンだ。まさか、手が回っている……?
それとも、ここは知的障害者のアドボケイトじゃなくて親のアドボケイトなのか?)

Dr. Leanne Dowse, the University of NSW

「2008年7月にオーストラリアは国連障害者人権条約に署名している。
条約は障害者に身体の統合性を尊重される権利を認めている。
それは、すなわち、こういうことから障害者が守られることが第一義」

Carolyn Frohmader, Women with a Disability Australia

「不妊手術と言えば、いつでも女の子ばかり。
不妊の事例を調べてみたら分かりますが、男の子は一人もいません。
どんなに知的障害が重くても、男の子はいないんです」

Therese Sands, People with Disabilities Australia

「未だに子どもたちが不妊手術を行われているなんて問題だと思います。
私たちの考えでは、判事であろうと親であろうと、それが生死にかかわるのでない限り
子どもに不妊手術を行う権利は誰にもありません」

Daily Mailに引用された「ある障害児の母親」

「これに関してはAngelaの両親に完全に賛成。
重症児の娘がいて、ずっと闘い続けているのだけど、
まだ娘の子宮摘出を実現できていません。
生理の間は、癇癪を起すし、ものすごく攻撃的になるんです」

(こういう理由で許されるとなると、重症児だけではなく、
いろんな障害児に適用されていきそうですが)


【ブログ:支持】

State approval for bona fida medical care…
the Faithful Penguin, March 9, 2010

この人は「米国では年間5万人がてんかん発作で死んでいるのだから
この決定はAngelaの命を救うものだ」と。

(てんかん発作のある女性みんな子宮摘出させるんですか? 命を救うために?)


【ブログ:批判】

2010.03.10 / Top↑
【お詫び】

某MLに「FENの4人に有罪判決」と誤報を流してしまいました。
実際は「起訴」に過ぎないのを、早とちりしてしまったものです。
逮捕からずいぶん経っているので、もうとっくに起訴されたんだとばかり思いこんでいたところに、
オーストラリアの重症児の子宮摘出ニュースで頭がオーバーヒートして、
つい、見たいものを見てしまいました。お詫び申し上げます。

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当ブログで事件当時、かなり追いかけたFEN事件で
プレジデントのThoman Goodwinら4人に対して
自殺幇助、証拠隠滅、組織犯罪防止法(?)違反の容疑で起訴。

FENそのものも起訴された、とのこと。

この大陪審で起訴になったのは、当初逮捕のきっかけになった癌患者男性の自殺幇助。

事件発覚のきっかけは、このジョージア州での自殺幇助ですが、その後、
いくつかの州にまたがる活動で何十人もの自殺を幇助したことが確認されています。

弁護士は、「なに、ウチのクライアントは無罪になるさ」と。


こちら、Seattle Post-Intelligencerにもっと詳細な記事。
(シアトルの地元大手新聞は、自殺幇助関連記事は熱心に報道していますね。さすがに、と言うべきか)
http://www.seattlepi.com/national/1110ap_us_assisted_suicide_network.html


事件の詳細は以下に関連エントリーをリンクしましたが、
我ながら、いくらなんでも、こんなにあったら読みたくねーよ……と感じます。

事件の概要は「介護保険情報」2009年4月号の連載で書きました。
こちらで読めますので、よろしかったら、どうぞ。

(リンク記事の後半がFEN事件です。
FENのHPは今は閉鎖されたようですが、
当時読んだ仰天の内容をまとめています)


2010.03.10 / Top↑
オーストラリア、クイーンズランドの11歳の重症児Angelaに対して、
生理が不順で貧血を起こしたり、てんかん発作を誘発しているとの理由で
両親が子宮摘出を求めていた裁判で、
Queenslandの家庭裁判所は2月16日、
両親の訴えを認める判決を下した。

Angelaは食事も移動も入浴も全介助の重症児。
意思疎通ができず「3か月の赤ん坊のようにふるまう」。
記事の書き方をそのまま引くと
「膀胱のコントロールが全くできず、おむつをしている」。

母親によると9歳の頃から生理不順で、痛みと疲労がみられたが、
薬が効かず、医師3人がAngelaには子宮摘出が望ましいとの見解を示した。

Angelaの担当医は裁判で、多量の出血が貧血を引き起こしている、
将来の妊娠を考慮しなければならないような知的な能力を
Angelaが身につけることは、この先も決してない、と証言。

ある小児科医は「妊娠するようなことがあったとしたら
それはAngelaにとっては、たいへんな悲惨なこととなる」と。

家裁のCronin判事は、この決定はAngelaの生活を改善するだろう、と。

しかし障害者団体からは虐待、人権侵害であり、
障害児をケアすることに苦労している夫婦のための「簡単解決」だと批判。

NSW大学の障害学の学者 Dr. Leanne Dowseは
両親が障害のある子どもに侵襲度の高い不可逆な医療を求めた訴訟で
裁判所がそれを認める判決は長年出ておらず、珍しい“unusual” と指摘。

障害のある子供のための決定権が誰にあるかという問題のほかにも、
この事件によって障害者の介護者への支援サービスが足りないという問題も
浮き彫りになった、

1980年代から政府が地域生活支援を改善することなしに
入所サービスを削減してきた結果、家族の負担が大きくなってしまった、

「それでなくともニーズが満たされずに苦労している家族にとって、
生理は、また厄介が一つ増えた、ということになってしまう」と。

Parents win bid to sterilize daughter
The Brisbane Times, March 9, 2010


ニュースを知ったばかりで、今は、まだ、ちょっと戸惑い気味。

早速に、物書きをやっている障害児の母親が
ブログで、Ashley事件、Katie事件と一緒にして批判している。

much ado about nothing
Alex Field, March 9, 2010

このケースは、今後、やはり
AshleyやKatieのケースを引き合いに出して
同じ問題として論じられるのだろうなというのは
私も記事を読んで、すぐに思った。

特に、「どうせ生後3カ月の赤ん坊と同じ」
「どうせ、この子には無用の子宮」
などはAshley療法正当化の論理と全く同じ。

それから
親と医師は「生理による貧血や発作」など「健康上の問題解決」を理由にしているのに、
判事の「生活を改善させる」という発言は「QOL向上=本人利益」と捉えるもので、
じゃぁ、容認の根拠は健康上の問題ではなくQOLにすぎないのか、という点が、ものすごく不可解。

ただ、「貧血とてんかん発作」は
Ashley事件にもKatie事件にもなかった「本人の健康問題」なので、
そこは整理した上で考えなければならないケースなのではないか、という気もするけど、

なにしろ、もっと詳細な事実関係が分からないうちは何とも言えない。

ものすごく気がかりなニュースではある。

……というか、自殺幇助合法化ロビーが世界中で次々いろんな事をしでかしてくれるように
Ashley事件でも、これから世界のあちこちで、いろんな事がしでかされていくのかなぁ……なんて
つい考えさせられてしまうのが、本当にウンザリだ。

【追記】
その後、こちらのエントリーで事実関係を整理しました。


2010.03.10 / Top↑