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施行されてから12年のOregonの尊厳死法について
3つの重大な問題が統計を引いて指摘されています。

精神科の診察が必要な人がそのままスル―状態で自殺させられている。

2009年に同法で幇助自殺した人が59人だったことは
こちらのエントリーで紹介しましたが、この記事によると
その中の誰ひとりとして、精神科のアセスメントが必要だとされていない、
過去3年間で精神科のアセスメントに紹介されたのは
自殺希望者総数の1%に過ぎない、とのこと。

この点については去年、州保健局からも懸念が表明されており、
08年の志願者の25%がうつ状態だったことから考えると、
1%しかアセスメントを受けていないというのは問題が大きい。

ほとんどのケースにCompassion & Choiceが関与している。

12年間の総件数のうち、C&Cが関与したケースが78%もある。
08年だと、88%に関与。09年には97%、59件のうち57件に関与している。

限られた医師だけが致死薬を処方している。

2001年から2007年の7年間に1人もしくは複数の患者に
同法のもとで致死薬を処方した医師は109人。

Oregonで現役活動中の医師が約10000人なので、
わずか1%に過ぎない。

また、このままだと109人が271件の処方箋を書いた計算になるが
実際には271件のうち61%は01年から07年の7年間に起こっており、
その7年間の処方箋はたった20人の医師によって書かれている。



これは、つまり、
C&Cがせっせと死にたい人を探しては、
ぴたりと張り付いてゴールまで「支援」をし、

その「支援」では、
C&Cの息のかかった、ごく少数の医師が、
C&Cが連れてくる患者を受け入れて、せっせと処方箋を書いている……ということ。

精神科に紹介される人が少ないことの背景は、そういうことでしょう。

Brown首相の「合法化はやめておこう」という呼び掛けを
「OregonやWashingtonでちゃんと機能して弱者が守られているのに
同じことが英国人にできるとは信じないのか」と即座に叩いたDebbie Purdyさんは、
こういうのを知らないのでしょうか。

……あ、あの人は自分たち夫婦以外のことは目に入らないんだった。

……てか、彼女には、もう何年も前からC&Cがべったり張り付いてるさね。
2010.03.11 / Top↑
前のエントリーの続きです)

Angelaの「生命の危機」はもちろん、健康問題すらどこにあるのかがはっきりしない。

・「エビデンスにより、子宮摘出は緊急であり必要」とも
どうせAngelaは普通の青少年・成人として暮らすメリットはないのだから、
長期的な影響を考えるには値せず、「短期的問題の方が重要」として、
短期的には「健康全般とともに生命の危機が基本的な問題」とされているのですが、
非常にあちこちに分散されて説明され(わざとかと思うほど)把握しにくくなっている
Angelaの健康状態に関する事実関係を整理してみると、

・出血が非常に多く、血の塊もある上に、特に夜間などに漏れるなど、
衛生上の問題が生じるほどである(母親)というのですが、
大量の出血は「2007年11月に収まった」のだから、解決している。

(ちなみに2007年とは、Angela9歳。初潮の年です)

・2007年11月に多量の出血が収まった際に、「貧血になっていたので、
鉄剤の治療で正常範囲に戻さなければならなかった」というのですが、
こう書いてあるのだから、結局これも解決している。

・生まれた時からてんかんの発作があって、母親の話で
「生理が重い時に起こりやすい。発作の予兆は様子を見ていればなんとなくわかるが、
不順な生理がいつ起こるか分からないので、いつも気が抜けない」「生理が重い時によく起こる」
しかし、一方「てんかん発作は現在のところ薬でコントロールできている」とも
書かれているので、それなら母親の証言内容は、以前の話なのでは?

・また、発作の頻度や、程度、発作によって重積状態に至ったことがあるのかないのか、
発作そのものがAngelaに及ぼす影響は具体的に何なのかについては、
まったく情報が出てきた様子はない。

・以上の事実関係から、現在も続いている健康問題は
生理による「痛みと疲れ」。それから「生理が重いと発作が引き起こされる可能性(can)」のみ。

・経口の避妊薬やDepo Provera(Diekema医師の03年論文で特記されていた薬)を含め
様々な治療が行われたが満足な効果が得られなかった、とある(現在完了形)のが
何を目的にした「治療」なのか、どういう「効果」がなかったのが不明。

「痛みと疲れ」と「けいれん発作を誘発する可能性」、
「母親のケア負担」をなくすこと(後半になって突然出てきます)だけを目的に
生理そのものを止める「治療」が試みられていたのでは?

それでは子宮摘出を医師が「唯一の治療法」と主張するのも、
「生理を止めることを目的とすれば」あとは子宮摘出だけが「唯一の治療」ということでしかありえず、

まるで貧血を防いだり、けいれん発作を防ぐための「唯一の治療」であるかのような印象を
全文を通じて与えているのは、非常に恣意的なミスリードだということになる。

これら事実関係のどこにも「健康一般」改善の必要、
まして「緊急」に回避すべき「生命の危険」は見当たらない。

したがって、なぜ子宮摘出が「緊急」で「必要」なのかについては全く説明されていない。

手術のリスクの検討は、重大な事実から目をそむけている。

・判事は医師らが「手術のデメリットは非常に少ない。
内臓を傷つける可能性がないことはないが、開腹手術は初めてだから大丈夫だろう」
というので満足しているが、

Angelaは以前に全身麻酔で埋め込み型避妊薬のロッドを入れる手術を受けており、
その際には感染症を起こして術後1カ月difficult consequencesを体験している。
しかし、この事実は子宮摘出手術のリスク検討で全く顧みられていない。

結論では、根拠が「生命の危険回避」から「QOLが向上する」ことにすり替わっている。

他に、「母親の生理ケア負担が軽減される」ことも持ち出されており、
一体何の目的で行われる子宮摘出なのか、何を根拠に認めるのかが曖昧なまま
「法にのっとって判事が子どもの最善の利益と判断したのだ」と言い張っている。

             ―――――――

個人的に特に不可解だと感じる点は、
なぜ11歳で判断してしまわないといけないのかという点。

・あれこれ検査しても生理不順や多量の出血の原因は不明だった、とされているのですが、
生理って、始まりの数年間は不順だし量も多いのが普通なのではありませんか?

でも、たいていの女性は、そのうち周期も量も安定してくるのだとすれば、
現在12歳になる直前だというAngelaは07年には9歳、初潮の直後。
割と早期に大量の出血は収まったということになるし、
初潮から2年や3年しかたっていない子どもの生理不順を根拠に、
子宮摘出を「唯一の治療法」だと、目的不明のまま、正当化する産婦人科医というのが理解できない。

・また、私は専門家ではないし、娘もRett症候群ではないけど、
うちの娘にも難治性のてんかんがあって、てんかんのある重症児は沢山見てきました。

確かに、生理の時に発作が起きやすいということは、あるかもしれない。
私は娘が小さい頃は、低気圧の日は要注意だと感じていました。

ただ、てんかん発作も生理と同じように子ども期から思春期を経て成年期へと
ライフサイクルによる変化が非常に大きいような気がする。
思春期に増加傾向を見せ、青年期に落ち着くというパターンが
一般的にはあるんじゃないでしょうか。

それなら、何度も重積を起こして死にそうになったというのでない限り、
あと数年は様子を見てから考える余地だって十分あるような気がするのですが
この点、日本の専門家のお医者さんたち、いかがお考えでしょうか。


以下の米国イリノイ州の検討過程と比べてみてもらうと、
この判決の検討姿勢がいかにいかがわしいか、よく分かると思います。




その他に、非常に大きな問題点として、
Ashley事件でのDiekema医師らの正当化の論理が
そのまま使いまわされているとしか思えない点、

Ashley事件で出てきた批判を前提に、
それに対してあらかじめ応えておく、といった箇所などが多々あり、

AngelaケースはAshley事件からKatie事件に繋がる大きなキャンペーンの中に
十分に意識的に位置付けられているという感じを受けるのですが、
これについては、また別途まとめます。
2010.03.11 / Top↑
Angelaケースの判決文を読んでみました。

絶句……。

正直、私はもう気力がなくなりそうです。
が、どうも口だけは勝手に動く業でも背負っているみたいなので
「なんで、こんなのがまかり通るんだ?」と頭の血管がブチ切れそうになった
問題点をまとめてみました。

全部で5点あるので、2つのエントリーに分けます。
英語で書くための論点整理など準備段階として、ちょっと先走りでアップしています。
この後、あれこれと細かく修正していく可能性はありますので、どうぞ、ご了承ください。

また、医学・法学の専門知識などない素人が分析したものですから、
専門家の方々からフィードバックいただけると非常にありがたいです。
よろしくお願いいたします。


判決理由を一言で要約するなら
「判事の私が親と医師らの言う通りでいいと思うから」を超えるものではない。

② Angela自身の利益を代表する「中立の、子どもの弁護士:
Independent Children’s Lawyer」の任命と敵対的審理が検討手続きから省かれている。

その理由とは

・1975年の家族法の規定は
「必要とみなした場合に、裁判所はICLを任命してもよい」というものであり、
私はこのケースではICLの任命はAngelaの最善の利益にならないと考えた

・なぜICLの任命がAngelaの最善の利益にならないと考えるかという理由は2点で、

a.ICLの仕事の1つは調査だが、調査なら両親の弁護士と主治医とによって
包括的かつ広範に、既に行われているので、これ以上の調査は必要がない。

b.IClを任命したとすれば役割は反論することだが、
治療のデメリットについては主治医が述べていることで十分。

(ただし、判事が意見を採用した3人の医師のうち1人が主治医で
あとの2人の意見書も主治医が書いてもらって提出したもの)

この公判には地域局の局長代理としてMr.Gが加わっており、
Mr.Gは賛成も反対もしていない。それは反論する必要がないからである。
公益を代表する地域局が中立を保っているのは
現在のエビデンスで十分だからである。
特に地域局が母親の立場に反対していない点を重視。

(この後、関連の法文からICLの職務に関する項目を羅列し)

「これらの規定に鑑みて、
Angelaがこのケースで代理されることには利益がないと考えることに私は問題を感じない」と結論。

しかし、その結果、そこに引用された規定の中でICLの仕事とされている、

(5)の(c)手続きの過程で当人に関する報告や文書が使われることになる際には
その内容を分析して、最も子どもの最善の利益の決定に重要と考えるものを見極めて
裁判所がそれらの事項に適切に注意を払うことを保証する、ことや

(5)の(d)手続きに関連して子どものトラウマが最小になるよう努める、こと、

(5)の(e)それが子どもの最善の利益になるように問題解決の合意を手助けする、こと

は誰によっても行われなかったことになるし、

・一方「地域局の局長代理のMr.Gなる人物は
如何なる法的資格によって参加しているのか」
「地域局による公益判断は、このような“特別医療”の判断において
法的にどういう位置づけで重要視されるのか」については全く説明されていない。

・「親と医師らのいう通りに、子宮摘出は本人利益だと判事が考えるので、
本人利益を代表するICLは本人の利益にならない」とは、一体どういう検討“プロセス”なのか。

こんなの、すべて、本人のみの利益を代理する人を除外するための牽強付会の合理化に過ぎない。

・ついでに指摘しておくと、
「この子宮摘出は不妊を目的とするものではなく不妊は結果に過ぎないので、
本当は特別医療の規定対象にならないのだけれども、
侵襲度が高く不可逆であることから、敢えて高裁の判例によって判断する。
関連法では、親ではなく裁判所の命令で、ということなので親ではなく判事の私が判断した。

また、子どもの福祉に関する命令を出す時には
裁判所は子どもの最善の利益を最優先にしろということなので
それに従って、子宮摘出が最善の利益だと私が判断した」ということも
書かれているのですが、

そのプロセスは上記の通り。これでは
私に権限がある、その権限で私が認めた。文句あるか?」と言っているに等しい。

次のエントリーに続く)
2010.03.11 / Top↑