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米国の「死の自己決定権」アドボケイト団体Final Exit Networkが
Georgia州をはじめ、いくつかの州で相当数の人に組織的な自殺幇助を行ったとして
幹部らが逮捕された事件については、去年の2月から追いかけてきました。

詳細は文末の関連エントリー・リンクにもありますが、
「介護保険情報」誌の連載「世界の介護と医療の情報を読む」の09年4月号でも
簡単に事件のあらましをまとめました。


そのFEN事件、昨日10日の公判で、
GA州の事件で逮捕された幹部ら4人が起訴の取り下げを訴えたらしいのですが、
(これについては昨日の補遺にも)

なんとFENはそれと同時に
GA州を相手取って言論の自由訴訟を起こしたとのこと。

この事件では、
自分たちは自殺したいという人たちに情報提供とカウンセリングを行っているが、
実際に手を下して幇助することはしていない、というのが当初からのFEN側の主張で、

自分たちは手を出していないのに、
しゃべったというだけで違法行為を問われるのなら
それは法律の方がおかしいのだ、と言いたいのでしょう。

現在のGA州法の自殺幇助関連の規定は曖昧で、
言論の自由に抵触するものである、と訴えた。

しかし、一連の事件の報道では、
とても「しゃべっただけ」とか「情報提供しただけ」とは思えなかったし、

昨日の法廷でも、
自殺希望者としてFENのボランティアと接触した、おとり捜査官の証言があり、
ヘリウム自殺する際には、ちゃんと死ねるように(頭にかぶった袋をはがないよう)手を抑えるのだと
そのボランティアが説明したという。

Suicide Rights Group Sues State
GPB News, December 10, 2010


私は09年2月の最初の報道の直後、FENの公式サイトを読んで
認知症やパーキンソンの人には、まるで「決行できる間に決断しましょうね」と
そそのかすがごとき内容に驚愕しました。

今では、このサイトはアクセス不能となっていますが、
当時は他にも幹部の逮捕という事態に出したリリースが掲載されており、その中でも、

パーキンソン病、多発性硬化症、筋ジス、ルー・ゲーリック病などの神経系の病気やアルツハイマー病の人は、しばしば“終末期”と呼べる状態になるよりもはるか前に生きる理由も意思も失います。癌、脳卒中、慢性心臓疾患、肺気腫、その他不治の状態と、負けると分かっている戦いを延々と続けなければならない人 たちも、必死で一呼吸一呼吸にしがみつくくらいなら尊厳のある終わりを望みます。

このような人々の多くは助けを得ることができません。Final Exit は耐え難い状態に苦しんでいる人々のために活動しています。Networkのボランティアはカウンセリング、支援、そして、あなたが選んだ時にあなたが選んだ場所で、自己処置のガイダンスを提供します。しかし、選ぶのは常にあなたです。死を急ぐように我々が勧めることは決してありません。

「あなたが(死ぬと)選んだ時にあなたが(ここで死ぬと)選んだ場所」に
FENが複数のボランティアを派遣していたことは明らかになっています。

そして、自殺しようとする人の傍にいて、
「自己処置のガイダンスを提供」していたわけだから、

それを「我々は情報提供はしたが、しゃべっただけで、手は下していない」とか
そんなのは言論の自由だとか言ったって……。




【FEN自殺幇助事件関連エントリー】
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
FEN事件で精神障害者の自殺を幇助したボランティア、有罪を認める(2010/1/13)
闇の自殺幇助機関FEN事件の4人を起訴(米)(2010/3/10)
FENが「Kevorkian医師の半生記映画見て“死ぬ権利”考えよう」(2010/4/22)
2010.12.12 / Top↑
Bill Peaceが成長抑制WGの論文をブログでとりあげ、社会サービスの不足を指摘している点など、部分的に評価している。特に、 Hasting Centerの関与を評価しているが、そんなの、成長抑制の是非とは、なんの関係もない。しかも、こともあろうに「症例によっては医学的に成長抑制が必要となる場合もあるだろう」 とは、一体なんだ?:Peaceは、07年当初に「Ashleyは私だ」と重症児とその他障害者の間に線引きすることを否定し、一貫して障害者の権利を侵害する差別だと批判してきた。ところが、ある日突然、彼はHasting Centerから呼び出しを受ける。非常勤の研究員として迎え入れたいので面接に来い、という話だった。さしたる業績もない自分に、なんで、あの権威ある Hastings Centerから誘いがあるのか、彼は自分でもさっぱり分からなかった。同センターについても批判的に捉えていたのだが、職についていない彼には現金収入も魅力だった(と少なくとも彼は自分にそう言い聞かせていたのだと思う)。面接を受け、彼はめでたく非常勤の研究員となった。そして今や、すっかり同センターのファンだ。ついでに成長抑制への批判の矛先も随分と鈍くなった。じゃぁ、「医学的に成長抑制が必要」なのかもしらんとアンタが認める障害児は、もう「私」ではなくなったのか?
http://badcripple.blogspot.com/2010/12/growth-attenuation-hastings-center.html

08年のFEN自殺幇助事件で起訴されたFEN幹部の4人の公判。起訴不当を訴える見込み、と。
http://washingtonexaminer.com/news/2010/12/final-exit-network-group-be-ga-court-friday

世界銀行からブルガリア、クロアチアなどEUに新加盟した国々の高齢化と介護の不足に関する報告書。
http://www.sofiaecho.com/2010/12/10/1008642_bulgarias-aging-population-means-increasing-pressure-on-long-term-care-services-world-bank

ビッグ・ファーマのファイザーが、ナイジェリアで子どもの髄膜炎に関する治験を巡る訴訟を取り下げさせようと、検事の弱みを握るべく探偵を雇って汚職の証拠を探させていたことが、WikiLeaksが暴いた電報で明らかに。
http://www.guardian.co.uk/business/2010/dec/09/wikileaks-cables-pfizer-nigeria?CMP=EMCGT_101210&

ロシアがWikiLeaksのアサンジ氏にノーベル平和賞を授与すべきだ、と。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/dec/09/julian-assange-nobel-peace-prize?CMP=EMCGT_101210&

ハリケーン・カトリーナ直後の警察官による市民射殺事件で、新たに3人に有罪。背後から射殺、遺体を焼却し、ウソの報告書を書いていた。家族からの度重なる訴えも無視し続け、08年にPropublicaの調査が記事になってやっと警察内部で調査が始まった、とのこと。
http://www.nytimes.com/2010/12/10/us/10katrina.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a23

ProPublicaから、民間の営利施設での人工透析では、死亡率が高い、との調査結果。
http://www.propublica.org/article/new-study-shows-higher-mortality-risk-at-in-for-profit-dialysis-chains

ProPublicaはFacebookに人工透析のページを作っている。システムの不備を追及する構え? 
http://www.facebook.com/ProPublicaDialysis

人工透析と言えば、8日のNHKクローズアップ現代の「ある少女の選択~“延命”生と死のはざまで」について、疑問だらけになっていたところ、以下の開業医の方のブログで人工透析拒否への疑問が書かれていた。:華子さんのケースそのものを云々することは非常に難しいのだけれど、こういう番組の描き方や解説のされ方から、医療全体で起こりつつあることとして、いわゆるスタンダードではなく、倫理問題が取りざたされるような――しかも多くの場合、非常に高額な――医療や医療技術の応用が、莫大な資金が投入されて研究・提唱・奨励されていく一方で、呼吸器や胃ろうや人工透析といった、多くの患者が利用しているスタンダードな医療に「延命治療」というレッテルが次々に貼られていくような気がすることの気味悪さの方を考えてしまった。そのレッテル、色は「延命だから、すべからく無意味で無駄」色で、柄は「自己決定」模様で。
http://blog.goo.ne.jp/joshunaizensha/e/b8eb176ba24eb36b808640858eb50954

ちなみに、この番組を見て思い出したのは、米国で06年に15歳の少年が抗がん剤治療を拒否して論争となったAbraham Cherrix君の裁判。以下の07年のエントリーに概要を取りまとめています。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/13603796.html

失業状態があまりに長く続くと人間は仕事をする能力が低下するだけでなく、仕事を探そうという気力も失う、という話に続いて、障害者手当をもらっている人は米国人10人に1人。彼らが延々と手当てに依存しないためには……と言われても、障害のために働けないでいる人たちは仕事を探す気力がないわけじゃないと思うし、さらに、たぶん、その10人に1人の中には相当の割合でイラクやアフガニスタンで障害を負って帰ってきた米兵もいるし。
http://www.nytimes.com/2010/12/10/opinion/10orszag.html?nl=todaysheadlines&emc=a212

認知症予防に効能をうたわれてきたイチョウ葉エキスに、またもエビデンスが否定されている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210788.php

認知症を始め認知障害のある人を被験者とする研究で、十分なICが行われていない可能性がある。倫理綱領・ガイドラインが必要、と。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210733.php

Facebookの創設者Zuckerberg氏(26)を含む米国で最もお金持ちの17人が、資産の多くを慈善に提供すると約束。:で、もちろん発言権も行使する……。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/09/AR2010120901759.html?wpisrc=nl_cuzhead

12月8日から10日、北京でアジア高齢化会議。参加は中国、インド、インドネシア、日本、米国。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210837.php

アフガニスタンの女性は結婚の強要や名誉殺人など、今だに虐待されている、と国連の報告書。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/09/afghan-women-abuse-united-nations?CMP=EMCGT_101210&

94年にルワンダで100日間で80万人のツチ族が殺された大虐殺の文書を公開。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/10/rwanda-unveil-genocide-archive?CMP=EMCGT_101210&

母親の血液検査で、胎児の遺伝病のいくつかをDNAスクリーニングすることが可能に?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210840.php

乳がんまたは子宮がんの発症に関連する遺伝子変異のある女性が、どの程度の割合で予防的摘出手術を受けているか。検査前の気持ちが手術への決断に如何に影響しているか。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210733.php

人工呼吸器をつけている患者さんが音楽を聴くことの効用。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210786.php

ERで医療補助を行うロボットの開発。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210717.php

タバコの副流煙が子どもの多動や問題行動に影響しているとの調査結果。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210948.php
2010.12.12 / Top↑
新生児への遺伝子診断技術が登場したのは1990年代。
必須アミノ酸の一つを利用できない病気(PKU)の発見を可能にするものだった。

その後、対象となる病気が増えて、米国小児科学会は2005年に
それまでの対象を大幅に拡大し、29の項目と24のサブ項目とを
スクリーニングの対象に義務付けるよう勧告した。

09年には全州で29のうち少なくとも21の病気・障害のスクリーニングを義務付けており、
全項目を義務付けている州も44に及ぶ。

05年の勧告の際、小児科学会の理由は
診断を求めて親が右往左往することを避けるために、というものだったが、

このたび、Journal of Health and Social Behaviorの12月号に発表された
UCLAの社会学者らの調査によると、むしろ
発症リスクにおびえ、過剰な予防に執着したり、
医師が無用だと判断しても予防手段を捨てられない親の姿が明らかになった。

中には、感染防止のために母親以外には一切の世話を認めない父親や、
子どもの発症兆候を見逃してはならないと仕事をやめる親まで。

スクリーニングで珍しい病気や障害の発症可能性があるとされると、
何年にも渡って親は医師から教えられた予防手段を守り、
真夜中に子どもを起こしたり食事制限や人との接触を制限し
フォローアップで検査を受けさせる。

しかし多くの場合、何年間も検査結果が陽性にならないまま
やがて子どもたちは成長して、29項目がリスクファクターにならない年齢を迎える。

そうして何年もたち、医師の方はもう心配ないだろうと考えても、
長年おびえ続けてきた親の方が予防体制を解くことに警戒が強く、
医師と親の間でトラブルになることも。

論文主著者のStefan Timmermans教授は、今のスクリーニングは
生まれた直後に「ご出産おめでとうございます。お子さんは珍しい病気を発症するかもしれません。
ただ、我々には確かなことは分からないし、いつになったら確かなことが分かるかも分かりません」
と告げるようなものだと語り、

このような「(発症)待機患者」親子は
新生児遺伝子スクリーニングの“コラテラルダメージ”だとして、
そうした親子を大量に作り出している現在のスクリーニングに疑問を呈している。

Study Raises Questions About Genetic Testing Of Newborns
MNT, December 8, 2010


この研究が、社会学の人たちによるものだという点が
非常に興味深いと思った。

だから、たぶん、医学の人たちは
この結果をあまり相手にしないのだろうけど、

では医学の分野の人たちは
どこまで、こうしたフォローアップの研究をしているのだろう?

小児科学会が「診断を求めて右往左往することを減らす」ことを理由に
スクリーニングの対象を広げたのであれば、小児科学会にこそ、
その理由の正当性を検証する責任があるはずだろうと思うのだけど。


そういえば、08年にGoogleの創設者Brin氏が遺伝子診断を受けたら
パーキンソン病の遺伝子変異が見つかったということで
確率20~80%の発症予防に残りの人生、全力を尽くす、とばかりに
燃えていたけど、あの人は、その後どうしておられるのだろう?


【追記】
Google のBrin氏はお元気なようです。
http://bits.blogs.nytimes.com/2010/03/22/interview-sergey-brin-on-googles-china-gambit/


【関連エントリー】
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